Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退したウォーゲーマーの日記

Victory Games「Pacific War」

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1985年にVictory Gamesから発売され、1987年にはホビージャパンから日本語版も発売された「Pacific War」を、昨年末にネットオークションで購入した。その名の通り、アジア太平洋戦争を、作戦戦略級レベルで再現したゲーム。すでに昨年、GMTのP500にも再版タイトルとして登場し、発売のGOサインとなる閾値の500を大幅に突破して、今日現在2143個のプレオーダーが入っている人気ぶりだ。どうやらストレートな形での再版となるようで、自分もこの機会に新GMT版を買おうかと思っているが、再版される前に、まず旧版に触れておきたいなと。

実は自分も、日本語版が発売された当時、このゲームを買おうかと思ったが、入手にしくじったのだ。たしか大学3年生か4年生の頃(1990~1991年)、本当にその日は『よし、今日はVGのPacific Warを買うぞ』と意気込んで、神保町の、今は亡き書泉ブックマートに向かった。ところが、その少し前まで店頭にあったはずの、日本語版の「Pacific War」がもう売り切れていたのだ。あわてて、他のポストホビー等のお店にも行ったが、すでに日本語版発売から3~4年経過していたので、どこにも在庫が見当たらなかった。もちろんインターネットも無い時代。どこかにある在庫を探せるはずもなく『ああ、もうPacific Warは買えないんだなあ……』と途方に暮れたのを覚えている。さらにそのショックからか、その後、中学生時代から集めていたウォーゲームをいったん処分・整理したりして、そういうトリガーになったという意味も含めて、自分にとって因縁のゲームなのだ。21世紀を迎えてからは、ネットオークションで何度もこのゲームを見かけてはスルーしてきたが、ようやくこのタイミングでの入手と相成った。 

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さて、まず本作で目を惹くのが、正積図法を用いられた地図盤(フルマップ2枚)である。たしか最初にVGから英語版が発売され、雑誌「タクテクス」に紹介記事が出た時も、この地図盤が掲載されていて、とても印象的だった。すでに当時、ホビージャパンの「太平洋艦隊」でも、同じ範囲の地図盤を目にしていたが、それとは明らかに異質な感じがしたのだ。ヘクス列の向きからしても、オーストラリアや東南アジアが上、日本が右、ハワイが左下というのも『えっ?』と思ったり。

恐らくこの図法が用いられた理由のひとつは「任意の地点から特定の2方向の長さが等しく表される」ところだろう。本作のゲーム手順は、まず先手の作戦実施プレイヤーが艦隊などを移動させ、その後、後手の反撃側プレイヤーが艦隊などを移動させる。しかし反撃側が移動できる距離は、その警戒態勢によって異なる。奇襲を受けた場合はまったく移動できないが、警戒態勢なら作戦実施側が移動した距離と同じだけ移動できる。さらに要撃態勢なら、作戦実施側が移動した距離の2倍を移動できる。

たとえば、もの凄くおおざっぱに言えば、作戦実施側の日本軍艦隊が、トラック島からガダルカナル島(距離13ヘクス)へ移動したとする。もし連合軍が警戒態勢にあったなら、同じくガダルカナル島から13ヘクス離れた、オーストラリアのケアンズから艦隊を対応移動させられる、という感じだ。

これ当然、地図盤上の距離が現実とは等しくなかった場合『いや、そんな遠くからは対応できないはずだ』とか『現実の距離的には近いはずなのにヘクス数的に対応できないのはおかしい』となるので、距離的な正確さを求めるシステムあってのことなのだろう。 

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マップ2枚を重ねて、南太平洋だけの地図盤にすることも可能。 

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さらにこのゲームは、作戦実施側・反撃側の接触フェイズ……つまり戦略移動、作戦移動とそれに伴う索敵が終わると、続いて戦闘サイクルと呼ばれる1日単位の移動・戦闘をくり返す手順に入る。言うなれば、作戦海域に向かうまでの接触フェイズはゆったりとした時間の流れで進む(数日が過ぎる)が、作戦現場海域に入ると、細かい戦闘を再現するため、小刻みな時間の流れ(1日単位)になっていく。

このシステムを当時、雑誌「シミュレイター」のリプレイ記事で読んだ時は『なんだそりゃ?』 と思ったが、こうして現物を入手した今も『なんだそりゃ?』と感じている。

本作をデザインしたMark Herman氏は、SPI時代から名が知られ、今現在も「Churchill」やら「Versailles 1919」等、独特なシステムのゲームを世に送り出しているが、この「Pacific War」でも彼の天才ぶりというか、奇人変人ぶり(褒め言葉)が遺憾なく発揮されていると思う。

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こちらは、日本軍・連合軍用のプレイヤースクリーン。商船損耗表、各種戦闘結果表、索敵表が並んでいる。これも陸戦は、士気レベル差と、両軍部隊のステップ数の総和からダイスを振って決めるというシロモノ。海空戦も、すべて同じチャートに落とし込まれ(戦闘機の空戦だろうが、海上砲戦だろうが、対潜戦闘だろうが)、索敵表は、索敵機のエンジン数と距離、昼夜間、対象によって決定される。よりマニア向けの海戦ゲームほど細かくはないが、「War at Sea」のような陣取り合戦では満足できない自分には、これぐらいがちょうど良いかも。 

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こちらは、日本軍・連合軍用のディスプレイシート。上級ゲームとも言える、長期戦シナリオや戦略シナリオで用いる、より詳細なゲーム手順や、指揮/補給ポイントの管理、戦略爆撃などがまとめられている。しばらく出番は無さそうだ…… 

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こちらは、両軍の部隊展開表。2人で対戦プレイする場合は、両軍の部隊がどこにあるか隠すため、地図盤上には部隊マーカーだけを置いて動かし、中身のユニットは、こちらの展開表に置くことになる。まあ、ソロプレイなら隠す必要もないが、艦隊に関しては、主力艦隊と護衛艦隊を分けておかなければならないので、やはり必要と。 

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カウンターシートは9枚、カウンター総数2340個。艦艇は、軽巡洋艦以上は1ユニット1隻。駆逐艦以下は、1ユニット6隻。まあ、妥当なとこよね(駆逐艦まで1ユニット1隻のTSWWを眺めつつ)。やはり軽巡洋艦以上は、艦名ありが良いし。 

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艦艇ユニットの裏面には、長距離~中距離~近距離ごとの砲撃力や、艦砲射撃力、雷撃力、対潜力などが記載されている。 

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航空ユニットは、1ユニット=最大6ステップ、1ステップ=15機となっている。性能や練度を表す戦力レベルは3段階(優秀~普通~劣悪)。空戦力(A)、対艦力(N)、対地力(G)のはずだけど、たぶん日本語ルールブックのカウンター説明例、間違ってるよね? 

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地上部隊ユニットは、士気・対空力・ステップ数という、珍しい並び。一応、日本軍にしろ連合軍にしろ、師団毎に、微妙に士気差が反映されているので、陸上部隊にも個性は表現されている。 

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こちらは連合軍。青枠に白抜きはイギリス軍。赤いユニットは中国軍。 

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こちらが両軍の部隊マーカー。 

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航空基地は大小2パターン。そして艦艇や航空機、地上部隊や施設へのダメージを表す打撃マーカーがまるまるシート1枚分、用意されている。

シナリオは、小規模な戦闘シナリオが5本(真珠湾攻撃インパール作戦等)、中規模の短期戦シナリオが8本(珊瑚海、ミッドウェー、南太平洋海戦、マリアナ沖、レイテ等)、統合的な長期戦シナリオが6本(マレー侵攻、ガダルカナル作戦等)、フルキャンペーンと、1943年2月までを扱うハーフ・キャンペーンと揃っている。一応、陸海空の統合的なゲームだが、やはり主軸は海空戦。

自分の場合、ここ1年ぐらい、TSWWの海空戦(真珠湾ウェーク島、ミッドウェー)をプレイしてきて、作戦級と戦略級の中間レベルの海空戦でも結構面白いなあと感じてきた。とは言え、所詮TSWWは陸戦が主軸。だったら海空戦が主軸の作戦戦略級として、この「Pacific War」の短期戦シナリオあたり、自分には合っているかもなあと思っている。詳細な戦闘再現を求める海空戦マニアではないけれど、おおざっぱ過ぎるのも嫌という好みなので、ちょうど良いかなと。とりあえずGMT版が出るまでには、ソロプレイしておきたい。