Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退したウォーゲーマーの日記

【参考文献】ゴードン・W・プランゲ「ミッドウェーの奇跡(上下)」

ネット古書店から「ミッドウェーの奇跡(上下)」を購入。日本語版は1984年と古い本だが、ミッドウェー作戦史としては定評があるかなと。著者プランゲ氏は、元GHQ戦史室長であり、戦後に日本側の作戦当事者たちから直接聞き取った内容も含まれている。なぜ今これを買ったかと言えば、そろそろ「TSWW:Day of Infamy」のミッドウェー作戦シナリオに触れたいのと、先日ピーター・パーラの「無血戦争」を読み返していたら、ちょっと気になる部分があったので。

「無血戦争」では、軍用ウォーゲームや図上演習の歴史にも触れているが、その中でミッドウェー作戦前に行われた図上演習も採り上げている。ミッドウェー図演と言えば、日本軍プレイヤー兼アンパイアを務めた宇垣纏少将が、日本軍機動部隊がアメリカ軍の空襲を受けた際、命中弾を1/3に減らして、空母赤城と加賀の撃沈が無かったことにしたというエピソードが有名だが、今回そこはどうでもいい。パーラも「無血戦争」の中で、その判定を変更したからといって、そのウォーゲーミングが失敗したわけではなく、むしろそこで提示された問題を無視したことの方を重要視している。

そして「無血戦争」では、この図演にも参加していた、当時の第一航空戦隊航空参謀、源田実中佐による『アメリカ軍プレイヤーを務めた松田千秋大佐(戦艦日向艦長)がアメリカ人らしくプレイしなかったため、アメリカ軍に対する誤った印象を与えた』という言葉を紹介している。

アメリカ軍プレイヤーがアメリカ軍らしくプレイしなかった……ウォーゲームやTRPGでは、よく聞く話だが、この元ネタが載っているのが「ミッドウェーの奇跡」だったので、早速取り寄せて確認してみた。なるほど確かに本書には『松田大佐は、その可能性があったにも関わらず、ハワイから出撃してこなかった』とある。ミッドウェー図演は、まずミッドウェーを日本側が奇襲し、その後、機動部隊はフィジーサモアへ転戦し、さらにハワイを攻めるという段取りになっており、アメリカ軍空母部隊が出撃するのは、ミッドウェーが奇襲された後という想定だったようだ。そのため松田大佐も、空母部隊は出さず、ミッドウェーの陸上機(B17等)のみを使って日本軍機動部隊を空襲したところ、これが赤城と加賀を撃沈してしまい、判定がやり直されたと。

しかし、ややこしいのは、この時の松田大佐の陸上機空襲が、アメリカ軍の空母艦載機による攻撃だと誤解されているところか。日本の公刊戦史とも言える、戦史叢書80巻「大本営海軍部・聯合艦隊2」を見ても、以下のようにある。

この図演でミッドウェー攻略の最中に、米空母部隊が出現し、わが空母に大被害があり、攻略作戦続行が難しい状況となった。そのため統監部は、審判をやり直し、わが空母の損害を減らして演習を続行したが、攻略が遅れたため艦艇燃料が不足し、惨憺たる状況を呈した。聯合艦隊参謀長(宇垣少将)は、このようにならないように作戦を指導すると述べた。しかし参会者のほとんど全部が、米艦隊の出現はミッドウェー攻略後と判断していたので、たいした問題にはならなかった。(p419-p420)

この「米空母部隊が」という記述を、そのまま引用している書籍や記事もあるようだが、恐らくこれは戦史叢書が間違っていると思われる。実際には、陸上機による攻撃であり、松田大佐は、戦後のインタビュー(歴史と人物1981年9/10 123号)でも『足の長い飛行機で索敵する』ことを主軸にアメリカ軍プレイヤーとして指揮したとある。その結果、例の判定やり直しとなるワケだが、「無血戦争」では、実際、史実でも陸上機は攻撃したものの、有効な命中弾を与えられなかったのだから、宇垣判定の方が事実に適しているんだよ、とも言っている。このあたり、歴史ファンとしても、ウォーゲーマーとしても面白い。

まあ、そんな雰囲気作りも進めつつ、いずれ「TSWW:Day of Infamy」ミッドウェー作戦シナリオに触れてみようと思う。

【参考文献】ミリタリーナレッジレポーツvol.26「小隊/分隊の戦術」

久しぶりに神保町に出て、FORGER氏とウォーゲーマーお茶会。他人とウォーゲームの話をするのも久しぶり。そしてその前に、書泉グランデの同人誌コーナーにも寄り、ミリタリーナレッジレポーツvol.26「小隊/分隊の戦術」を購入。現代の米英軍の小部隊戦術を解説した一冊で、建物の掃討(クリアリング)手順や、火力チームの連携、待ち伏せ、車輌移動、捕虜の取扱等々が記されている。

火力チーム単位で、建物を奪い合うレベルのウォーゲームと言うと、自分は触れたことがないが「Urban Operations」がかなり良さげ。なにしろフランス軍の市街戦教官が作ったというだけあって、各地でのリプレイを見る限り『本当の市街戦はこうなんだぞ』という再現度にこだわりがある模様。今現在も入手可能だし、日本語訳も付いているという意味でもオススメしやすい。

DVGの「Warfighter Modern」シリーズも、カードを多用して現代の小部隊戦を再現しているはずだが、あいにく日本語版が無いのが残念。カードはやはり、日本語訳が欲しいところ。

【Advanced Squad Leader】「Brevity Assault」

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イタリアの新興メーカーAdvancing Fireが出版した、ASLヒストリカル・モジュール第1弾「Brevity Assault」が到着。プレオーダー価格93ユーロ(約11700円)。発売後は103ユーロ(約12980円)になっている。お題はタイトル通り、イギリス軍がリビア・エジプト国境地域で行ったブレヴィティ作戦を含む、1941年5月~6月の、ハルファヤ峠、フォート・カプッツオ周辺の戦闘を扱っている。このメーカー最初の製品(しかもイタリア製)なので、さてどんな出来かなと、お試しの意味も含めて買ってみた。 

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まず、本作で最も特徴的なのは、作戦マップ上で部隊を動かし、それによってキャンペーンゲームを進める方式を採り入れていること。作戦マップと言っても、B4弱ぐらいのサイズの地図で、ポイント・トゥ・ポイント式に、ハルファヤ峠やカプッツオが配置されている。そのポイント毎に、既存のASL地図盤の組み合わせ例が載っており、進入した方向やらなんやらで、個別に戦闘を解決していく仕組み。まあ、戦術級ゲームでは良く見るアイデアだが、意外とASLでは珍しく、しかも製品版として発売されたものも少ないのではないだろうか。 

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こちらが、作戦マップ上に配置する部隊カウンター。戦闘はあくまでASLとして解決するので、このカウンターそのものには能力値は無く、配置面と機動面があるだけ。ちなみに多少、イタリア軍やイギリス軍のASL追加カウンターも入っているが、カウンターシートの「抜き」はちょっと甘い感じ。まあ、いきなり本家MMPクオリティを求めるのも酷よね。  

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シナリオは7本、キャンペーンゲームは3本収録。本作に収録された、ハルファヤ峠とソルーム以外の戦場では、既存のASL砂漠地図盤が必要になる。もちろんカウンターとしては、ドイツ軍用に「Beyond Valor」、イギリス軍用に「West of Alamein(砂漠ルールと砂漠地図盤)」、イタリア軍用に「Hollow Legions」が必要と。 そういや、そろそろ「Hollow Legions」の新版もプレオーダーに上がるかな。

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こちらがハルファヤ峠のヒストリカル地図盤。2枚構成で、かなり細長い戦場になっていて、我が家のテーブルには乗り切らない。まあ、88mm砲とイギリス軍戦車隊の戦闘になるから、レンジは長いし、どちらか1枚しか使用しないシナリオもあるので、一応実プレイも出来るかな。しかし地図盤自体の紙質はペラペラで、耐久性は低そう。平地の色も2枚で微妙に違っているので、次作からもっと頑張ってほしい。 

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こちらはソルームの地図盤。こちらもペラい紙質だが、サイズ的には我が家のテーブルにもOK。とは言っても、やはり主戦場というか、メインディッシュはハルファヤ峠戦だよな。

まあ、あれこれ書いたけれど、作戦マップを使うという実験精神は評価したいし、北アフリカ戦のASLヒストリカル・モジュールも、正規には発売されていないので、興味深い企画だと感じている。ハルファヤ峠戦というのも、北アフリカ戦の中ではメジャーだろうし。今のところヒストリカル物は、コレクション的に集めているだけだが、いずれ「Hollow Legions」が再版されたり、砂漠用のセットが発売されたら、プレイ候補に入るかも。 

ちなみにこの「Brevity Assault」と同時発売されたのが、シチリア島でのヘルマン・ゲーリング装甲師団の戦闘を扱う「Biazza Ridge」。こちらも買うか迷ったが、今回はあくまでAdvancing Fireの味見ということでスルーした。ASL製品は(特にサード・パーティ製品は)、全部買おうとするとキリが無いので、どこかで諦めないとね。

【参考文献】「地図とグラフで見る第二次世界大戦」

新刊「地図とグラフで見る第二次世界大戦」を購入。書店さんで内容を確認してから購入し、そのまま喫茶店でお茶飲みながら眺めようかと思ったものの、予想より大きいサイズで断念……

本書は、第二次世界大戦を経済性、労働力、指揮、組織、作戦、ホロコースト、戦後処理などにわたって分析したうえで、視覚的に表現(インフォグラフィック化)したもの。単なる折れ線グラフや円グラフとも違うあたりが面白い。戦況図なども、あっさり省略してあるが、大まかな流れはつかめるし、こういったインフォグラフィック的なウォーゲームの地図盤も、もっとあっても良いのかも。

個人的に惹かれたのは、戦略爆撃によるドイツの合成燃料生産の低下、各国歩兵師団の装備比較、英米独の機甲師団の編成の推移、ソ連戦車軍の変遷、D-DAYでの第82・第101空挺師団の分散率、バルバロッサ作戦開始時からモスクワ近郊到達までのドイツ第7装甲師団の損耗度、ノルマンディ上陸以後のアメリカ軍補給網の改革、神風特攻隊の損失と戦果(艦艇1隻撃沈するのに83機喪失)等々……こういった統計や分析がお好きな方は是非是非。

アドテクノス「リターン・トゥ・ヨーロッパ」

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仮想・第三次世界大戦ゲーム「レッドサン・ブラッククロス(以下RSBC)」に続いて発売された、仮想・第四次世界大戦ゲーム「リターン・トゥ・ヨーロッパ(以下RtE)」を中古で購入。前の日記で書いたように、ネットで3部作をまとめ買いしたが、「RSBC」はプレイした形跡があったものの、「RtE」はカウンターを切っただけの状態だった。自分も、学生時代にこの2つを所有していた際は「RtE」まで遊ばなかった気がする。 いずれにしろ、30数年ぶりの再購入ということで。

ゲームスケールは「RSBC」同様、1ヘクス=100kmなので、地図盤も連結できるが、連結ルールや連結シナリオは無い。1ターンも「RSBC」は10日だったが、「RtE」では15日に変わっている。

ルール自体、「RSBC」独特の「移動しただけでステップロス」とか「1師団=4ステップ」ルールが無くなり、3段階の補給リンクも、単純に司令部か前線補給所の補給範囲内にいるかどうかという、オーソドックスな判定に変わっている。まあ、当時の制作陣も、いろいろと反省したのだろうし、ヨーロッパ戦線なら、インド戦線より補給はゆるくても良いのかなとも思う。しかしどうせなら「RSBC」そのままのルールで続編を作って連結シナリオを入れるか、逆に「RtE」ルールを使って、簡易的に「RSBC」をプレイするルールがあっても良かったと思う。まあ、今となっては、自作すれば良いのだけれど。

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設定としては、1950年、ヒトラーの死亡により、日独の第三次世界大戦が停戦。ロンメルを大統領、シュペーアを首相とする、大ドイツ連邦が成立する。これと平行して、イギリス首相チャーチルが、中立国アメリカにヨーロッパ奪還計画を提案。さらに1952年、アメリカ大統領に当選したパットンが「ヨーロッパ十字軍」演説をぶち上げ、イランの内戦を巡って、遂に米英日vsドイツの間で第四次世界大戦が始まるというもの。米英枢軸軍(総司令官ブラッドレー)の東方軍(総司令官モントゴメリー)は、イランからカフカス山脈を越えて、旧ソ連領に侵攻。モスクワ間近まで迫るも、東方総軍(総司令官マンシュタイン)の冬季反攻をくらってハリコフで米英6個軍が包囲壊滅するという状況に。

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一方、西方でも、米英枢軸軍が1952年6月6日にグレートブリテン島に上陸し、これを奪還。続く1953年6月6日には、カレーに上陸し、その一週間後にはパリも奪還。しかし調子に乗ったモントゴメリーが、一気にオランダへ侵攻しようとして、空挺作戦を敢行するも、親衛装甲軍の反撃を受けて失敗。とは言え、ドイツは東西から攻め込まれつつあり、ロンメルが核攻撃恫喝に出ると、先んじてアメリカ空軍がベルリン核攻撃を行おうとして、ドイツ空軍の反撃を受け、代わりにケルンに核爆弾が投下された。この報復として、ドイツはロンドンを核攻撃(ブラッドレー大将が死亡。ワシントン滞在中のチャーチルは難を逃れた)。怒りに燃えたパットンは、再びベルリン核攻撃を命じるも、これも失敗。代わりにドイツが、米英枢軸軍の基地があるアイスランドレイキャビクを核攻撃。これによってアメリカ国内に反戦機運が高まり、大統領の退陣要求が行われる中、そのパットンが自動車事故で死亡。1953年4月に停戦が相成った……という、後味の悪い筋書きになっている。

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陸上ユニットは「RSBC」同様、1ユニット=1個師団。ちなみに「RtE」 初版は、米英枢軸軍のカウンターシートが裏表逆に印刷されているそうで、今回購入したのもそれ。 

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1航空ユニットは、「RSBC」の30機ではなく、20~50機という換算。しかし相変わらず、この対地能力が上で、空戦能力が下に書かれているセンスは解せぬ。 

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艦船ユニットの能力値は、並びが変わり、対空力は数値ではなくA~Eというカテゴリーに変更。アメリカ海軍には、原子力空母、原子力潜水艦も登場する。 

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まあ、当時これを買った時も、プレイ欲よりも「RSBC」のその後が知りたい欲の方が強かったと思う。だから設定を読んでしまえば、なるほどそうなったかで終わり、プレイに至らなかったような。またその仮想史実も、乱暴な核の応酬で終わるという結末だったので、あまり魅力的ではなかったし。 

ウォーゲーム的に見ると、独創的だった「RSBC」と比べると、良く言えばオーソドックスなものに収まっているし、逆に言えば当たり障りの無いルールになっている。遊びやすいと言えば遊びやすいけれど、わざわざそのシステムに触れたいかと言われると、うう~んという感じ。とは言え、せっかく30数年ぶりに入手したし、以前持っていた時もほとんど遊ばなかったので、いずれ触れてみようとは思う。

アドテクノス「レッドサン・ブラッククロス」

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1985年にアドテクノスから発売された仮想戦ゲーム「レッドサン・ブラッククロス(以下RSBC)」を中古で購入した。と言うか、その続編である「リターン・トゥ・ヨーロッパ」(1986年)と、拡張キット「海上護衛戦」(1986年)と、3点まとめて買ってしまった。しかも3作とも以前持っていて、数年前の断捨離でいったん処分したのに、また買い直すという、何をしているんだお前はと自分でも思う。

いやキッカケは、先日「TSWW:Singapore !」のインパール作戦シナリオをプレイした後、補給の厳しい陸海空戦域級ゲームって面白いなあ、そういや「RSBC」もそういうゲームだったよなあ、あれって実は補給戦ゲームとして革新的な作品だったんじゃないだろうか……と思い出し、ふとネット中古を探したら、たまたま3点まとめて出品されていたので、即ぽちったと。まあ、いったん手放したモノをまた入手するのは、あまり褒められないが、そういうことも、ままあると……  

 ウォーゲーマー諸氏、また作家・佐藤大輔氏の読者ならご存じかと思うが、小説版「RSBC」と、このウォーゲーム版「RSBC」は、アメリカが参戦しなかったため、ドイツが第二次世界大戦に勝ち、日本と相対する、という前提は同じだが、戦場が異なる。小説版では、ヨーロッパを制したドイツが、亡命イギリス政府を追う形でカナダに入り、そこからアメリカ合衆国に攻め込むため、主戦場はアメリカ大陸となっている。もちろん、アメリカを支援する日本軍の戦力を吸引するため、ドイツ軍はインド洋でも作戦活動を行い、その根拠地であるソコトラ島上陸作戦が小説版のクライマックスでもあるのだが、あくまでインド洋は副戦場に過ぎない。日本軍は、次に太平洋を制するため、パナマ運河侵攻作戦を開始し……というところで、著者物故のため、小説版は永遠に中断されている。  

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その小説版が発表される以前に発売された、このウォーゲーム版では、ヨーロッパを制したドイツ軍が、1945年、イラン、カザフスタン方面から、アフガニスタンへ侵攻し、すでに旧イギリス領インドに進出していた日本軍と交戦する(西阿事変)。さらにその3年後の1948年、ドイツ軍が2個軍集団をもってインドへ侵攻、これが日独の全面戦争=第三次世界大戦となった……というのが、ウォーゲーム版「RSBC」の設定である。一応この設定では、いったんインド亜大陸の過半をドイツ軍が制したものの、オーストラリアに避難していたイギリス政府の援助もあって、日英連合軍が戦線を押し戻しつつあった1950年8月にヒトラーが死亡して、停戦が結ばれるという筋書きであった。まあ、戦場の規模はだいぶ違うが、いったん押し込まれた防御側が、戦線を押し戻したところで停戦というのは、1950年前後という時代からしても、史実の朝鮮戦争をモチーフにした展開だと思われる。 

ゲームのコンポーネントとしては、フルマップ2枚に、アフリカ東部からビルマまでが描かれ、小説版で名高いソコトラ島も入っているが、そこを奪い合うことはまず無いかと。カウンター総数も1000個以上と、ちょっとしたプチ・ビッグゲームになっている。1ヘクス=100km。1ターン=10日。外交・生産ルールは無いので、戦略級ゲームと言うほどでもなく、単なる作戦級と言うには規模がデカいので、その中間の、戦略作戦級ゲームとか、戦域級ゲームというくくりが正しいのだろう。

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1ユニットは、1個師団。単純に「戦闘力-移動力」が記されている。各師団は、表面が4ステップ状態、裏面が3ステップ状態、さらに損耗すると、マーカーを置いて2ステップ、1ステップ状態を表すという、あまり見ないスタイル。

で、最初に買った1985年当時『えっ?』と思ったのが、基本的に、移動した機械化、空挺、4ステップの非機械化ユニットは、移動しただけで1ステップ損耗するというルール。当時、高校生だった自分も『動いただけで戦力が落ちるの?』と驚いたが、軍隊とは移動しただけで損耗するものである、というデザイン・ポリシーも、本作の大きな特徴である。と言うか、本作発売から30年以上経ったが、そこまでやらせるウォーゲームというのも、あまり例を見ないと思う。

また各軍ごとに、総合補給拠点(ASH)、中継補給拠点(CSH)、前線補給拠点(FSH)というカウンターが用意され、それをつなげて、各師団を補給下に置くことが求められる。このルールも、買った当時は『めんどくせーなー』と思ったが、なかなかあの1980年代、そこまでやらせるゲームも珍しく、そこにもう一度触れたくて、買い戻したとも言える。今では、OCS(Opeartional Combat Series)や、TSWW(The Second Worls war)シリーズなど、補給面に厳しいゲームも多々あるが、ある意味、先駆的なデザイン哲学だったと思う。それが面白いとか、マトモに機能するかはまた別の話として。 

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こちらが航空ユニット。1ユニット=30機。カウンター右下が航続距離、なのは良いとして、左上から、対地攻撃力、対艦攻撃力、空戦力という並びはいかがなものか。自分の感覚だと、空戦力は上(空)に、対地攻撃力は下(地面)に、だと思うのだが、このセンスだけは、いまだに解せない。 

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艦船ユニットは、軽巡以上は1ユニット=1隻。小説版「RSBC」でも、インド洋で、ドイツの戦艦「フリードリヒ」と、日本の戦艦「尾張」「紀伊」が撃ち合うくだりがあったが、ウォーゲーム版では、さらにそれを超える「デア・フリートランデル(44cm連装砲✕4)」「播磨(56cm連装砲✕3)」も登場する。まあ、どちらも仮想史実では、第三次世界大戦には間に合わなかったのだけれど。また空母も、日本軍には「飛翔」級、ドイツ軍には「ヘルマン・ゲーリング」が登場。 

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海軍にも、海軍補給線カウンターが用意されており、簡便な形でそれが表現されているが、拡張キットの「海上護衛戦」を導入すると、わざわざ日本軍が輸送船団を編成し、それをドイツ軍のUボートが襲うという、小説版「RSBC・死戦の太平洋」的な場面が再現できるかもしれない。なにしろこちらは、2009年に初めて買った時も、まったくプレイせずに処分してしまったので、今回はいずれプレイしたい。 

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この「RSBC」のリプレイは、当時「タクテクス」誌にも掲載され、自分もそれを読んで、本作を買った覚えがある。執筆者は、もちろん佐藤大輔氏。後に、彼のウォーゲーム記事をまとめた「主砲射撃準備よし!」にも再録されているので、ご興味のある方は、中古で買ってみては……と思ったが、Amazonを見たら、今、高いのね! 申し訳ないけど、自分が持っているのは、どこかのBOOKOFFで200円で買ったモノ。いや、1990年代なんて、この手の本は、そこらの古本屋さんで手軽に買えたもので。ちなみにこの本には、同じくアドテクノスの「ニイタカヤマノボレ」「ドイツ装甲師団長」「自衛隊3部作」 シミュレイター「北海道侵攻」に関する記事も載っている。

余談ながら、佐藤大輔氏は、自分が作家仕事をしていた時期に、富士見書房の新年/忘年会で何度かお見かけしたが、一度もお声をかけることは無かった。なぜなら、こんなことを言うのもなんだが、見た目からして、心身とも不健康そうな人だと思ったから。いつも不機嫌そうで、パーティー開始の挨拶でも「出版と表現の自由」に関する檄文みたいなのを延々と読み上げ、腹を空かせた売れない作家の自分としては『早く終わらねえかなー、料理が冷めちまうなー』と感じたのを、今でも覚えている。その後、ほどなくして亡くなられたと聞いて、ああ、やっぱりあの時の不健康な印象は正しかったんだなと思い、特に驚きはしなかった。まあ、それは、目に見えない世界のお話しということで…… 

【参考文献】Gerhard.L.Weinberg「A World at Arms (New Edition)」

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先日購入した、シリーズ戦争学入門「第二次世界大戦」の著者、ゲアハード・L・ワインバーグの代表作「A World at Arms」が到着。初版は1994年刊行、この新版は2005年刊行なので、近年の研究も盛り込まれているはず。全1178ページ、本文920ページ、参考文献24ページ、注釈188ページという構成になっている。しかしレンガより重たいこのボリュームよ……

この「A World at Arms」も、評価の高い第二次世界大戦通史であり、独ソ戦の著作が多いDavid Stahelも『単独のガイド書としては最良』と評している。Amazonのレビューを見ても、7割方★★★★★と、おおむね評判が良さそうだ。さすがに到着したその日に、本書の全貌が分かるはずもないが、ざっと見てみると、ウィルモットの「大いなる聖戦」同様、第二次世界大戦を戦略的に俯瞰した一冊になっているようだ。ただ「大いなる聖戦」では、軍人や将軍名を極力排して、政治指導者の決断に焦点を当てていたが、この「A World at Arms」では、それなりにマンシュタインだパットンだジューコフだという名前も出てくるので、ウォーゲーマーとしては親しみやすく感じる。またビーヴァーの「第二次世界大戦(上中下)」では、民間人など「下からの歴史」的な証言も拾っていたが、そういう部分も見られず、あくまで「上からの歴史」に徹している。民衆史にあまり興味の無い自分としては、そこも好み。

どこまで近年の研究が取り入れられているかは、まだ分からないが、Amazonのレビューで『書き方が難解』とあったように、たしかに構成は上手くないかもしれない。と言うのも、1941年のモスクワ戦の章を読んでみたら、それを完全に説明しないうちに、長々とハンガリールーマニアの遺恨の話が出てきて、おいタイフーン作戦どこいった?という気になったので。

また、やはりAmazonのレビューで『終戦後、生き延びた日本の水兵と兵士たちは帰国し、被害は受けたものの、荒廃はしていない日本の再建に取りかかった』……とあるけれど、原爆を2発も落とされて『荒廃していない』は無いだろう、というツッコミもあった。そのあたり著者が、アメリカの戦争を聖戦化しているとの指摘もあり。そういう目で、シリーズ戦争学入門「第二次世界大戦」も読んでみると、たしかにそちらも、原爆投下によって日本は降伏に傾いた、という解釈にも読める。まあ、基本的にこういった本は、ある程度のバイアスもありとして読むのが良いのかもしれない。

しかし読むとは言ってもこのボリューム、いくら「おうち時間」があっても読み切れなさそうなので、とりあえず興味のあるところから拾い読みしようかと。 

A World at Arms: A Global History of World War II

A World at Arms: A Global History of World War II

 

ちなみに今回も実体本を購入したが、やはりAmazonのレビューで『Kindle版のスキャンの出来が悪すぎる』とあったので、もしご購入を検討の方はご注意を。