Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Next War Series】GMT「Next War:Supplement #1」「Supplement #2」

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GMTの仮想現代戦「The Next War」シリーズに再挑戦ということで、2017年発売の「Supplement #1」と、2019年発売の「Supplement #2」も購入。この「Supplement」の登場によって、新要素が登場したり、機種や部隊が変わった場合には、後からシリーズ全作に適用できる追加モジュールを差し込むという形となった。たしかに現代戦ゲームは、数年経つとOut of Dateになる可能性が高いので、ゲーム本体を長持ちさせるという意味でも、シリーズ構想としても、良い試みかなと思う。 

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まず「Supplement #1」で導入されたのが、新たな航空戦ルール。「Next War」シリーズでは、基本ルールでは航空機は単なるポイント制であり、上級ルールでは機種別の航空機カウンター(スコードロン/ウイング単位)を使用する。しかしこの上級ルール、よくよく考えるとあまり現実的ではない。たとえば実際に、FA18攻撃機24機に、F35戦闘機24機が護衛につく、ということはない。本来は、FA18攻撃機2機+F35戦闘機2機+ワイルドウィーゼル機というような、ストライク・パッケージ単位で運用されるはずで、この「Supplement #1」で導入されたのも、それを再現するルールである。用意されたパッケージ・カウンターには、空戦力・対地支援力・打撃力が記されているが、機種名は入っていない。なので難易度としては、基本と上級ルールの間の、中間ルールという位置づけであり、それでいて、より現実的だと。しかし機種名が無いのも寂しい話だし、ストライク・パッケージの運用がやりたいなら、21世紀版の「Red Storm」とか出せば良いのでは?とも思う(それはそれで欲しい)。

また「Supplement #1」では、サイバー戦ルールも導入されている。各サイバー戦カウンターには、サイバー攻撃力・防御力・生存力が記されている。これを用いて、国連決議、電子偵察、航空優勢海上探知のダイスロールや、航空打撃の阻害、地上戦闘のコラムシフトに影響を与えられる。一度使用したカウンターは、生存判定(継続的にサイバー戦が行えるかどうか)を行い、失敗すると失われる。まあ、名前はサイバーだが、言ってみれば便利マーカーで、この「Next War」スケールでサイバー戦を取り入れるとすれば、こういった形になるのだろう。 

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また、本来は抽象的だった潜水艦ルールも、中国海軍の台頭を受けて、もう少し詳細な形のルールが登場している。潜水艦カウンターには艦名が入り、海上ボックスの支配を争う形になる。海上自衛隊からは「おやしお」「そうりゅう」が登場。またパトリオット、S300、S400といった対空ミサイルカウンターも登場している。

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それに続く「Supplement #2」では、ずばり反乱戦(Insurgency)ルールが追加されている。これは「Next War:Korea」で、アメリカ・韓国軍が北朝鮮を支配した後、北朝鮮ゲリラの抵抗を受けたり、逆に北朝鮮軍が韓国を支配した後、韓国ゲリラの抵抗を受けるという想定になっている。また「Next War:Taiwan」での中国軍支配後の台湾での反乱、「Next War:Indo-Pakisatn」でのインド支配後のパキスタンでの反乱、「Next War:Poland」でロシア支配後のポーランドの反乱を扱うことになる。

デザイナーズノートでも『プレイヤーは、プレイ中に不満を抱えるだろう』『1回プレイしただけでは好きになれないかもしれない』と書いてあるが、たしかに通常戦力同士の軍事衝突を想定した「Next War」シリーズファンからすると、あまり望んでいない、異質な展開になりそうだ。 

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反乱(Insurgent)カウンターは、地図盤上に裏向きに配置され、それがどれだけの戦力を有しているかは分からない。中には「政治活動中枢(PAC)」と呼ばれるカウンターもあり、これは都市部においてテロ攻撃を行える。テロ攻撃に成功すれば、勝利ポイントが稼げるので、反乱側としては、いかにこのカウンターを都市部に潜り込ませるかが鍵。この反乱側ユニットは、鎮圧側ユニットのいるヘクスにも浸透移動を行えるので、当然、鎮圧側としては、それを見つけ出すのが鍵になってくる。

ただ、ふと思ったのは、パキスタンで反乱勢力が湧い出てくるのは想像できるのだが、果たして実際に、台湾が中国に支配された場合、台湾の人たちはテロも含めた抵抗を行うのだろうか。もちろん、中国が苛烈な支配を行えばそうなるという想定なのだろうが、そこは中国としても、今の香港のように、住民側が仕方なく支配を受け容れつつ、非暴力的な抵抗を行う程度の支配で済ませるのかもしれない。このあたり、その国や文化によって、戦争や抵抗の形も違うのだろうなと。

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さらに進捗著しい中国軍の差し替えカウンターあり、THAAD(終末高高度防衛ミサイル)あり、北朝鮮の核攻撃ルールあり、ロシアのSu57戦闘機、K300P沿岸防衛用地対艦ミサイル等々、シリーズ作に追加できるカウンターも多々収録されている。ルールの大半は、選択式なので、これを全部入れる必要は無いし、興味のあるところだけ、つまみ食い的に採用すれば良い。

ちなみに、すでに「Supplement #3」もGMTのP500に上がっており、オーダーも700を越えているので、そのうち発売されるだろう。「#3」の目玉は、「Next War:Poland」の拡張マップ(カリーニングラードリトアニア、ゴトランド諸島)とのこと。「Poland」は現在、第2版も準備されているが、そちらに入る拡張マップとは違うのだろうか。まあ、このように、シリーズ全体を補完してくれるモジュールがあると、作品そのものが古くならないので、現代戦ゲームには向いているかと思う。