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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【全域戦場 Joint All Domain Operation】Package 01-B + DLC (台湾編・陸上戦コアキット+追加カウンターシート)

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中国・上海のウォーゲーム・メーカー、War Drum Games(WDG)の新作「全域戦場」シリーズの台湾編・陸上戦コアキット「01-B」と追加カウンターシート「DLC」2種も購入した。これは先日ご紹介した海空編「01-A」と連結できるもので、まさに陸・海・空・電子・サイバー領域を統合した戦場をカバーできるようになっている(難易度は上がるだろうが)。

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まず台湾本島のメインマップは、やや大きめのヘクスで区切られている(10面体ダイスとの比較でわかるだろうか)。1ヘクスは15kmを表し、1ターンは海空編「01-A」と同じく4時間となっている。第二次大戦系のウォーゲームで1ヘクス=15kmと言えば、GMT「Stalingrad'42」「Ukraine'43」が1ヘクス=16km(10マイル)なので、一般的には師団級、作戦級と呼ばれるスケールだが、1ターン=4時間となるともっと細かい作戦戦術級スケールと言える。そのあたりも、第二次世界大戦ウォーゲーム脳で向き合うと「???」となってしまうかも。

ちなみに「01-A」「01-B」ともに10面体ダイスが2個ずつ入っていて、すべての判定も当然10面体で行われるが、「0」ではなく「10」と書かれているのが珍しい。

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各陸上ユニットには戦力値(ステップ)があり、1ステップ=戦闘員50人~1000名(ずいぶん開きがある)、戦闘車両50台、ヘリコプター12~15機を表している。

こちらはZ(中国)軍陸上ユニット。画像ではちょっとわかりにくいが、上二段のユニットだけややサイズが大きい。こういった大きめのカウンターも使用するため、ヘクスも大きくなっているのだろう。これが4ステップを有する統合作戦群とか言う旅団規模の部隊で、さらに大隊規模ユニットに分割できる。

各陸上ユニットには、突破火力、支援火力と射程、物理防御力、行動値、防空火力、情報化値が記されているが、もちろん旅団規模としてまとまっていた方が突破火力も高まるし、支援火力、防空火力も頼もしい。ただ問題なのは、もし敵からネットワーク侵入を受け、マルウェアマーカーを置かれてしまうと、行動値、支援火力、防空火力が半減し、それを回復する際には、ステップ数と同じ数の10面体ダイスを振って、それが全部、そのユニットの情報化値以下を出す必要がある、というルールになっている。つまりステップ数が多いユニットほど回復が難しいと。であれば、大隊規模(1ステップ)に分割した方が、マルウェアに感染した場合も回復しやすいわけで、旅団として戦力を集中するか、ネットワーク攻撃に対処するために分割するか、悩まされそうだ。

そう、この陸上戦ユニットでは「情報化値」(近年の中国軍が重要視している、どれだけ高度に情報化されているか)がカギになっている。情報化値は、最良が9で、最悪が0だが、本作に入っている最優秀の情報化値ユニット8は、中国軍電子戦部隊、特殊部隊、空挺特殊部隊、台湾軍特殊部隊、「01-A」に含まれているアメリ海兵隊遠征部隊、である。優秀な7は中国軍機甲部隊、ヘリコプター部隊、台湾軍電子戦部隊、ヘリコプター部隊、6か5が一般部隊、4や3は台湾軍動員部隊……といったレーティング。

陸上作戦フェイズは、この情報化値の高いユニットから行動でき、攻撃も先制できるし、攻撃判定時には情報化値の差をダイス修正として用いる。また情報化値の高いユニットは偵察・探知能力も高く、敵ユニットの位置を特定しやすく、準備火力攻撃(砲爆撃)を行える。さらに反応移動、連続アクション、反撃、共同火力支援、対空射撃、電子妨害を実行する際の判定も、すべて10面体を1個振って情報化値以下が出れば成功となる。そういう意味では、GTS(Grand Tactical Series)の部隊練度(Troop Quality)みたいなもので、第二次大戦以前のウォーゲームなら「士気」とか「練度」と呼ばれていた便利な概念が「情報化」に置き換わったようにも感じている。

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こちらはT(台湾)軍ユニット。

陸上作戦フェイズは、まず準備セグメントで各ユニットに攻撃準備(火力1.5倍)マーカーや、防御準備(被ヒット半減)マーカーを置いたり、半分の行動力で移動し情報化判定に成功したらまた別のアクションを行うなど、戦闘準備を進める。

移動の際は、敵スタックに隣接するヘクスに入った場合、双方の合計突破火力値を比較して、自軍の半分以上の突破火力値を持っているなら移動を停止するという「火力こそパワー」な疑似ZOCルールになっている。また移動終了時に「ダイナミック制圧」(これどう訳そうかなあ)という概念があり、自軍スタックに隣接していて、突破火力値に3倍以上の開きがあると、問答無用に制圧マーカー(火力半減)が置かれるという面白いルールもある。

そこから戦役セグメントに移り、実際に攻撃し、反撃もし、予備状態マーカーを外して移動したり、戦略移動を行うなどする。いったん攻撃や反撃を行うと、消耗状態マーカーが置かれて火力と行動値が0となり、翌ターンは「待補(お休み)」状態となり、火力と行動値が半減(切り捨て)にまで回復する。

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陸上戦闘は、ファイアーパワー方式で、超ざっくり言うと、攻撃側の火力に応じて与えたヒットを出し、防御側は自身の物理防御値以下のダイス目を出せばそのヒットを相殺できる。つまり両軍プレイヤーがダイスを振る方式。さらに複数ユニットで攻撃する共同火力支援の場合は、やはり情報化値判定に成功する必要があるし、準備砲撃もあり、選択ルールながらも反砲兵火力(カウンター・バッテリー・ファイア)もあり。

さらに特殊部隊(選択ルール)による敵ユニット位置の特定、地上ユニットや施設ユニットへの攻撃もあり、電子戦とサイバー戦(選択ルール)も入れれば、敵情報ノードへの攻撃、ネットワークノードへの浸透も行われる。

……とまあ、こちらの陸上戦ルールも、地図盤のスケールは作戦級ながらも、やることは作戦戦術級という感じで、結構ディティールが細かい。戦闘毎に両軍がダイスを振り合うし、反撃も可能だし、それなりに手間もかかりそうだが、個人的には現代戦版GTSのようにも感じるので楽しめそうだ。

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さらに「01-B」用の追加カウンターシート「DLC」その①、Z(中国)軍空挺部隊セット。空挺特殊部隊は情報化値8と頼もしいが、意外と空挺部隊本隊は情報化値5と、そうでもなかったりする。また工兵部隊が不足しているそうで、防御準備状態の効果が薄かったり、渡河コストも余計にかかるなど、不便な面も表現されている。もちろん、空挺、空輸ルールも添付されている。

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続いて「01-B」用の追加カウンターシート「DLC」その②、T(台湾)軍のカテゴリーB、予備旅団セット。有事の際は、48時間以内に動員される部隊だそうで、陸軍士官学校や訓練センターの部隊に加え、大学の予備歩兵旅団などというユニットもある。ただ、特殊部隊訓練センター部隊ですら情報化値6(一般部隊並)、それ以外は情報化値4か3と、非常に頼りない……

 

……とまあ、「01-B」陸上戦コアキットも簡単に紹介してみたが、それなりにディティールの細かい作戦戦術級という印象で、個人的には大好物。これと「01-A」海空戦を連結すると、プレイするのはかなり大変そうだが、とりあえずそれぞれの戦闘領域をひとつずつ、確認していきたいと思う。