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【全域戦場 Joint All Domain Operation】空戦 練習ソロプレイ Air Combat Exercise Solo-Play AAR

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「全域戦場」の陸上戦システムに続いて、今回は空戦システムの練習ソロプレイ。

とりあえず地図盤外のZ(中国)軍1B航空基地に、その基地所属のJ-11A戦闘機2個ユニットを配置し、沿岸部にはFZ(福建)レーダー基地ユニットを配置。台湾島北部にもTC-3レーダー基地ユニットと、TC-1航空基地にF-16AB戦闘機2個ユニットを配置してみた。

航空ユニットは、空中哨戒(CAP)、海上哨戒、対地/対艦攻撃、機動防御といった任務を行えるが、その際には2個ユニットまででフォーメーションを編成できる。今回は、攻撃側Z軍のJ-11A2個ユニットからなるフォーメーションが台湾海峡に向かい、空中哨戒区域(AAW)を設定しようとしたところ、T軍のF-16ABに迎撃される……という想定で動かしてみる。

J-11Aの航続距離は18ヘクス(カウンター右下の数値)だが、空中哨戒を行っている間の燃料消費も加味されるため、実際にはもっと短い距離でしか空中哨戒は行えない。

一方、T軍TC-3レーダー基地の探知モジュール(このゲームでは同系列の能力値をまとめてモジュールと呼ぶ)には、5/6/Wという数値が書かれている(基地カウンター左上の数値)。5はレーダー断面積(RCS)が小さい目標の探知距離、6はレーダー断面積が大きい目標の探知距離、Wは大型早期警戒レーダーを意味し、探知距離に敵ユニットが進入した場合、自動的に探知成功となる。

Z軍J-11A戦闘機はレーダー断面積が「大きい」目標なので、TC-3レーダー基地の6ヘクス以内に進入すれば、自動的に探知できる。しかしこれがレーダー断面積の「小さい」目標……例えば、ステルス機が相手なら、5ヘクスの距離まで近づかれてようやく探知することになる。

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今回の場合、Z軍J-11Aフォーメーションは、地図盤外の1B航空基地を発進し、2ヘクス移動したところで地図盤内に進入した。この地図盤端ヘクスですら、すでにT軍レーダー基地の探知範囲6ヘクスに入っているため、自動的に探知される(陸上の地形は関係なし)。と同時に、T軍TC-1航空基地で待機していたF-16ABフォーメーションに迎撃命令が下り、基地を発進した。この迎撃発進したF-16編隊も、Z軍レーダー基地の探知範囲7ヘクス以内なので自動探知されている。

ここでZ軍フォーメーションはいったん移動を停止し、迎撃フォーメーションと「同期飛行」を行うことになる。カードで示される「同期飛行」は3ラウンド制で、お互い1ヘクスずつ飛行し、最終的にどのヘクスで空中戦を行うか決定する。3ラウンドで決着がつかなければ、さらにラウンドを継続する。ちなみに亜音速の航空ユニット(早期警戒機やヘリコプター等)は、3ラウンドで1ヘクスしか移動できない。また超音速巡行能力を持つF-22ラプター、J-20戦闘機は、航続距離を追加消費することで各ラウンド毎に追加で1ヘクス移動できる。

また、今回は両軍ユニットとも高高度で飛行しているが、中高度、低高度を選んで飛ぶこともできる。

両軍が同一ヘクスに進入したら、フォーメーション・マーカーだけその場に残し、航空ユニットを別の場所に移して空戦を解決する。最初に両軍は、戦術態勢を選択してもいいが、今回は特に選ばず、素のまま空戦を解決する。ちなみに戦術態勢には「デンジャーゾーン(敵機との距離を詰めて、後手になるが、確実にヒットを与える)」「一撃離脱(与えるヒットと被るヒットがどちらも半減)」「自己防衛(対空火力半減)」等がある。

次に、敵ユニットの探知となるが、すでに両軍とも、レーダー基地によってお互いの編隊を探知している。もしこのレーダー探知支援が無かったら、それぞれ戦闘機単体の能力で敵機を探知しなければならない。J-11Aの探知値は3、F-16ABの探知値は6なので、それぞれ10面体で探知値以下が出れば探知成功だが、なかなか戦闘機単体のレーダー能力だけで敵機を見つけるのは難しく、今回のように自動探知できるレーダー基地や早期警戒機が必要になる。

次に空戦解決の順番を判定する。優先順位としては、小目標の探知距離と、空戦射程が高いユニットから攻撃を解決する。今回は、J-11AもF-16ABも、小目標の探知距離は1ヘクスなのでそこは互角。しかし空戦射程は、F-16ABが4、J-11Aが3なので、F-16ABが先攻となる。

そして第1空戦ラウンド。F-16ABの空戦力は3なので、10面体ダイスを1個振って、空戦力以下が出れば、その出目数が相手に与えるヒット数となる。今回の2ユニットの攻撃は、出目が6と3だったので、1ユニットは攻撃失敗、もう1ユニットは3ヒットを与えたことになる。与えたヒットは敵フォーメーションユニットに均等に配分されるので、2個のJ-11Aユニットに各1ヒットが与えられた。

ヒットを受けたJ-11Aユニットは、まず電子防御判定を行う。J-11Aの電子防御値は4だが、F-16ABはその防御値を-2下げる電子防御突破値を有している。そのためJ-11Aの電子防御値は4-2となり、10面体ダイスを1個振って、2以下が出ればヒットを打ち消せたが失敗し、1ヒットを被って帰投した(2ヒットを被ったら撃墜)。

もう1ユニットは、電子防御判定に成功し、さらにJ-11Aの物理防御値6-F16ABの物理防御突破値3=3となり、10面体ダイスを1個振って3以下を出したのでノーダメージ。

そして返す刀でF-16ABに攻撃を行った。J-11Aの空戦力は6。10面体ダイスを振って出目は4。F-16ABの2個ユニットにそれぞれ2ヒットを与えた。

F-16ABの電子防御値は5、物理防御値も5。これがJ-11Aによって修正され(-2/-2)、どちらも3に低下した。2個のF-16ABはどちらも1ヒットは打ち消したものの、1ヒットを被り、帰投することになった。残ったJ-11Aが目標ヘクスに留まり、空中哨戒任務に就いた……という展開。

本来は、これに続いて第2空戦ラウンドも行われ、すでに両軍入り乱れて戦っているものとして探知距離と空戦射程を無視し、同時にヒット解決を行う。

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ちなみに各国の戦闘機を探知距離(小目標/大目標)の長い順に並べてみると、トップはさすが第5世代戦闘機、F-22ラプターとJ-20の4/5ヘクス。次いでF-15EFの3/6ヘクス、F-35Bライトニングの3/5ヘクス、さらにJ-15B、J-16、航空自衛隊のF-2ABの3/4ヘクスと続き、この探知距離順に先制攻撃が行える。

しかし後述するが、早期警戒機などとデータリンクでつながる距離にいれば、その早期警戒機の探知値(5/8とか7/13とか)をそのまま空戦の解決順に使えるので、たとえ戦闘機そのものの探知値は低くても、データリンク能力でそれを補うこともできる。

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探知距離が同じユニットの場合、空戦射程が長い方が優先して攻撃が行える。空戦射程順に並べてみると、トップはJ-20、J-10C、J-15Bの射程7(7ヘクス先を攻撃できるわけではない、単に射程の長さ)。次いでJ-16、F-22A、F-15CD、F-15EF、F-35B、F-2ABの射程5が続く。このあたりは、長射程空対空ミサイルPL-15、PL-12の存在が反映されているそうだ。

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さらに空戦力はまた別で、トップはJ-16の空戦力8。次いでJ-11Bの空戦力7、Su-30Bk、F-15が空戦力6、J-20、F-22A、F-2ABが空戦力5……となっている。空戦力はどれだけ多く相手にヒットを与えられるかを表しているので、兵装の多さから決まるようだ。ステルス機の空戦力が意外と低いのも、機体内に兵装を格納する必要があり、あまり多く空対空ミサイルを積めないためだろう。逆に空戦力が高い機種は、翼下にもりもりミサイルをぶら下げているため、レーダー断面積的に「大きく」なってしまい、発見されやすくなっている。たとえ空戦力が高くても、探知距離や空戦射程で先制されてしまうとその力を発揮できずに一方的にやられてしまうため、本作で実際に重要となるのは探知距離だと思う。

また、ヒットを帳消しにする電子防御値/物理防御値は、J-20の10/11、F-22Aの9/12、F-35Bの10/8が高く、たとえ敵機から修整値を受けても、高確率でヒットを無効にできそうだ。

逆に、敵機の防御値を下げる防御突破値としても、F-22A、F-35B、J-20の「電子防御突破値-5/物理防御突破値-3」がトップで、ヒットが当たりやすくなっている。さすが第5世代戦闘機というところか……

一応、航続距離や空戦力を犠牲にして対地/対艦火力を増す「爆撃搭載」マーカーや、空戦力や対地/対艦火力を犠牲にして航続距離を伸ばす「長距離」マーカーも用意されている。

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さらにE-3Bセントリー、KJ-200のような空中管制機は、空飛ぶ対空高機能レーダーとして自動探知能力を備え、E-2Dアドバンスド・ホークアイ、KJ-500のような早期警戒機も含めてコントロールノード(金色の点)として、データリンク送信距離6ヘクス以内にいる高度なデータリンク能力/コントロールノードを持つ戦闘機に、自身の探知距離を与えられる。しかしEA-18Gグラウラー電子戦機のように、電子妨害を行って、敵方のデータリンク送信距離を半減させるようなユニットもある。

例えば図のように、探知距離4のJ-20に対して、本来なら探知距離3のF35-B、探知距離2のF-15CDが後手に回るはずだが、E-2D早期警戒機のデータリンク送信範囲内にいるなら、E-2Dの探知値7を用いて空戦で先制できると。このように空戦とは言え、それを支援するレーダー、空中管制機、データリンク能力なども絡むため、戦闘機単体の能力よりも、航空作戦全体のチームワークを活かすことが重要になる。

実際に中国沿岸、台湾全島、宮古島、沖縄にはびっしりレーダー基地が配置されているので、双方が相手方の航空機を自動探知できるようになっている。とは言えこのレーダー基地を破壊すれば、探知網に穴が生じ、そこで一方的に優位に立てるわけで、敵防空網の制圧(いわゆるSEAD任務)が重要にもなってくる。

そういった対地攻撃や、さらには対艦攻撃、対潜作戦、艦対艦攻撃、上陸作戦、陸海空統合ルールと、海空戦コアキットにはさらなる要素が詰まっているが、それについてはいずれまた……