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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【全域戦場 Joint All Domain Operation】陸上戦 練習ソロプレイ Land Combat Exercise Solo-Play AAR

「全域戦場」ルールをいったん機械翻訳(ChatGPT4.0)に通したので、ざっくり翻訳の状態で、とりあえず陸上戦システムから練習してみた。

まず、一番「雑」な形の攻撃から。赤いZ(中国)軍の重統合作戦群(H-CCG)ユニットが、3ヘクス先にいる青いT(台湾)軍機械化歩兵(3-LY)ユニットを攻撃するとしよう。

まず第1陸上作戦フェイズの、情報化準備行動フェイズ。先手、情報化値7(カウンター左中央の金色の数値)のZ軍ユニットは、半移動を選択し、移動力4(カウンター右下)の半分、2移動力だけ使って道路を2ヘクス前進し、情報化値判定で10面体ダイスを1個振り、自身の7以下を出して連続アクションとしてさらに攻撃準備マーカー(突破火力が1.5倍になる)を置こうとした。しかし判定に失敗したので、連続アクションは不可となり、ここで準備行動は終了となる。ちなみにZ軍ユニットの突破火力(カウンター左下の39)は、T軍ユニットの突破火力(12)の倍以上のため、隣接ヘクスに入っても停止する必要はなく、全力移動を選んでいれば、そのままZOC to ZOC的な移動も可能だった。

続いて情報化値5のT軍ユニットが後手となる。防御側は受動的な行動しか選択できないため、T軍ユニットは防御準備マーカー(被ヒット半減)を配置して、Z軍の攻撃に備えた。

続いて情報化戦役行動フェイズ、一般的に言うところの攻撃フェイズ。先手・Z軍ユニットは、突破火力39で攻撃し、情報化値の差分+2を修正として、ダイス目は4+2=6で3ヒットを与えた。しかし準備防御マーカーがあるため被ヒットが半減(端数切り上げ)し、T軍ユニットが被ったヒットは2となった。T軍ユニットの物理防御力(カウンター中央下)は4なので、T軍プレイヤーは、10面体ダイスを2回(2個)振って、4以下が出れば被ヒットを無効にできる。今回は1回だけ判定に成功したので、T軍ユニットは1ヒットを打ち消し、1ダメージを被り、ステップロスする。

そして後手・T軍ユニットは、やはり受動的な行動として反撃を選択。10面体ダイスを1個振って自身の情報化値5以下が出たので、反撃に成功した(判定に失敗すると反撃時の突破火力が半減する)。ちなみに攻撃結果と反撃結果は同時に発生したと見なされるため、T軍ユニットがヒットを被った後でも、反撃に成功すれば、ヒットを被る前のステップの突破火力で反撃が行える。そのためT軍ユニットは12突破火力で攻撃し、情報化値の差分は-2、ダイス目は6-2=4。Z 軍ユニットに1ヒットを与えた。対するZ軍ユニットの物理防御力は6で、判定には成功してZ軍はノーダメージとなった。

そして攻撃を行ったZ軍ユニットも、反撃を行ったT軍ユニットも、双方ともに消耗マーカーが置かれ、翌ターンは突破火力、支援火力、移動力が0として扱われる。翌々ターンは突破火力、支援火力、移動力が半減(端数切り捨て)となり、ほぼ2ターン行動できなくなる。そのため、攻撃や反撃を行うかは慎重に選択するべきだし、しくじるとそのユニットはしばらく使えないと。

では、どうすればもっと効果的な攻撃が行えるのかと言えば、まずは単純に火力を増すという方法。ほとんどの地上ヘクスは、10戦力(ステップ)までスタックできるので、このようにZ軍の統合作戦群(4ステップ)ユニットを2つスタックしてもかまわない。ただし行動順としては、攻撃側、防御側として、まず情報化値7のZ軍ユニット、情報化値5のZ軍ユニット、情報化値5のT軍ユニットという順番になる。移動前にスタックしていても、情報化値が異なれば同時に移動はできない。

基本ルールでは複数ユニットの突破火力を足すルールが無いため、Z軍は2個ユニットがあっても、39突破火力と19突破火力で1回ずつ攻撃を行うことになる。選択ルール「共同攻撃」では、主攻ユニットに対して、助攻ユニットが情報化値判定に成功すれば、突破火力を足して一緒に攻撃が行える。この場合は、39+19=58火力で攻撃が行える。また、この画像ではZ軍ユニットが同一ヘクスでスタックしているが、目標ヘクスに隣接していれば、スタックしていなくても共同攻撃は行える。まあ、58火力で1回殴るのと、39火力と19火力で2回殴るの、どっちが効果的かはまだ不明……

一方、防御側のテクニックとしては、軽装歩兵部隊を都市/城市ヘクスに籠もらせると「市街戦」効果が得られ、たとえヒットを被っても、複数回、物理防御判定(生存判定)が行えるようになる。

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もっと堅実な方法としては、準備攻撃マーカー(突破火力×1.5倍、端数切り捨て)を載せてから攻撃する手がある。この場合、Z軍は、39x1.5=58火力、19x1.5=28火力となり、共同攻撃として86火力で1回殴ってもいいし、58火力と28火力で2回殴ってもいいと。ただ、火力判定表には最大で「75+」の解決欄までしかないので、ムダに火力を集中し過ぎても意味が無いかと思う。

また、半移動した後、情報化値判定に成功して準備攻撃マーカーを載せるという、連続アクションなら一気に攻撃態勢を整えられるが、それが無理なら、いったん敵ユニットに移動して隣接したうえで、翌ターンに(判定無しで)準備攻撃マーカーを載せることになる。これはこれで確実だが、(国土の狭い台湾では難しいだろうが)防御側が後退するかもしれないし、目標ヘクスに援軍が来るかもしれないし、準備攻撃前に砲爆撃を受ける可能性だってある。ではその支援砲撃について……

例えばヘクス1204にT軍砲兵ユニット(支援火力7、射程3ヘクス)がいれば、情報化準備行動フェイズの段階で、Z軍スタックが攻撃するより前に、準備火力を撃ち込み、成功すれば目標スタックを制圧(火力半減、阻害されない移動のみ可)できる。

準備火力を撃ち込める目標としては、自軍陸上ユニットから1ヘクス以内か(火力偵察)、自軍の情報化値6以上の陸上ユニットから2ヘクス以内(計器偵察)か、自軍の情報化値7以上の陸上ユニットから3ヘクス以内(無人偵察)にいることが必要。

上の図で、ヘクス1305にT軍特殊部隊(情報化値8)がいると、たとえT軍ユニットが隣接していなくても、ヘクス1107のZ軍ユニットの位置をドローンで特定し、それを知ったヘクス1204の砲兵ユニットが砲撃して制圧するのも可能と。いや、3ヘクス先って簡単に言うけど、このゲームだと45km先だぜ? 接敵していない45km先の敵をドローンで探知して砲撃ぶち込むとか、第二次大戦以前ではあり得ない。さあ、だんだんマルチドメイン作戦らしくなってまいりました……

じゃあ航空支援は……と言えば、まず攻撃ヘリコプターは、単純に移動力の大きなユニットとして考えればいい。他の陸上ユニットと火力を併せる共同攻撃を行ってもいいし、別個に攻撃してもいい。ただし気をつけなければいけないのは、移動中に敵ユニットから対空射撃を受けることと、射程は0(同一ヘクス戦闘のみ)ということ。

この場合、T軍ユニットは、対空力2(カウンター左上)、対空射程0(カウンターに書いてない)なので、10面体ダイスを1個振って情報化値5以下を出せば、対空射撃が可能になる。そしてまた10面体ダイスを振って、対空力以下の出目と同じ数のヒットを与える。このT軍ユニットの場合、対空力が2なので、10面体ダイスを振って、2が出れば2ヒット、1が出れば1ヒットということ。そしてヘリコプター側は、ヒットを受けた分の10面体ダイスを振り、それが自身の物理防御値(この場合は5)以下であれば、ヒットを無効にできる。もし1ヒットを被ったら任務を中止して帰投し、2ヒットを被ったら1ステップを失う。上記のヘリコプターユニットの場合は1ステップしかないので撃墜と。

海空戦コアキット「01-A」と連結させれば、航空機による対地攻撃も可能となる。対地攻撃は、第1陸上作戦フェイズより前の、第2空中作戦フェイズにて行われる。飛来した航空機が陸上ユニットから対空射撃を受けるのはヘリコプターと同じだが、もちろん、途中で敵航空機からの迎撃も受けるし、それをかいくぐって対地攻撃を行う必要がある。

ちなみにこの写真の、Z軍J-16戦闘爆撃機(Su-27UBK フランカーBの改良型)は対地攻撃火力43(カウンター左下の数値)と、1個機甲旅団の全力攻撃並の破壊力を誇り、上手くいけば一発で4ステップ地上ユニットを吹き飛ばすことも可能。Q&Aにも「アパッチ攻撃ヘリ(火力19)の攻撃で1個旅団が半壊したけどこれでルール合ってるのか?」「それで問題ない」という質問が上がっていたので、そういう解釈なのだろう。

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盤面をシンプルに戻して、T軍ユニットがステップロスすると、2ステップしかない小型ユニットに置き換えられる。攻撃、反撃を行ったユニットには消耗マーカーが置かれ、前述の通り、ほぼ2ターン使い物にならなくなる。Z軍がT軍ユニットを排除してさらに前進するには、また別の攻撃スタックが必要になり、間断なく波状攻撃を行う必要も出てくる。そのため、準備フェイズで別の戦闘ユニットを予備に指定し、戦役フェイズでその予備を解除して、前線の戦闘結果如何で二次攻撃を行わせることもできる。

また第2陸上作戦フェイズの終わりに(そのターンのほぼ終わりに)「ダイナミック制圧」として、状態マーカーの有無に関係なく、本来の突破火力値で3倍以上の開きがあるなら、隣接ヘクスの敵ユニットに制圧マーカー(火力半減、移動を制限)を置ける。この場合、すでにT軍ユニットは突破火力値8に落ちているので、39突破火力値を持つT軍ユニットに制圧マーカーも置かれてしまうだろう。そのようにターンまたぎで敵ユニットを拘束することも可能と。

また、(特殊部隊と航空部隊以外の)戦闘ユニットは、編成上の指揮中枢(司令部)が地図盤上にいないと、連続アクションや、予備状態に入ったり出たりや、戦略移動などが行えない。しかし指揮中枢ユニットには、特に指揮範囲は記されていない。つまりネットワーク・リンクを用いた21世紀の戦場指揮は、物理的な距離には阻害されないと。一瞬、「指揮範囲はどこに書いてあるんだよ?」と思ってルールを探してから、ああ、そうか、21世紀では指揮範囲は無いんだ……と気づいた第二次世界大戦脳……(^_^;)

しかし補給に関しては、やはり物理的距離によって制限される。上の写真にあるZ軍補給部隊ユニットは、補給効率値8、補給範囲3(カウンター左上の数値)を持つ。これはターン終盤の休息フェイズにおいて、3ヘクス以内の、合計8ステップに補給を提供し、待補マーカーを外せるという意味。消耗マーカーは、休息フェイズになれば、補給線さえ通っていれば自動的に待補マーカー面に裏返されるが、待補マーカーを外すには補給部隊が必要になるということ。

さらに選択ルールの「サイバー戦」を用いると、例えばZ(中国)軍の電子戦部隊ユニットは「IEW」(電子戦・サイバー戦一体能力)を持つため、隣接ヘクスの敵ネットワークノードに侵入を試みることができる。情報化値が6以上のユニットはすべてネットワークノードとなるため、上写真のT軍ユニットも侵入対象となる。Z軍は、10面体ダイスを1個振り、目標ユニットの情報化値(上の場合は6)よりも出目が大きければ外部ネットワーク侵入成功となる。

さらに外部ネットワーク侵入マーカーが置かれたヘクスから、3ヘクス以内にいる同じ指揮系統にいるユニットに対して、続けて内部ネットワーク侵入判定を試みられる。こうして同じ指揮系統にネットワーク侵入が成功したら、それをマルウェア感染マーカー面に置き換え、支援火力、対空火力、移動力を半減させられる。

このマルウェア感染マーカーを取り除くには、ステップ数分のダイスを振り、そのダイスすべてで、自身の情化値以下を出す必要がある。上のT軍機械化歩兵ユニットなら、3ステップあるので、10面体ダイスを3個振って、全部で情報化値6以下を出す必要がある。なかなかキツい判定だが、兵力が多いユニットほどネットワークの混乱から立ち直るのが遅れるのも面白い……

 

……という感じで、おおざっぱに「全域戦場」の陸上戦システムを解読してみた。個人的には、21世紀版GTS(Grand Tactical Series)のように感じているので好印象。戦闘の段取りやディティールを細かく表現しているので、ある意味、納得しやすい。その代わり、ダイス判定が頻繁に行われるので面倒に感じるかもしれないが、あまり抽象化し過ぎると、第二次世界大戦系のウォーゲームと同じようになってしまうので、これぐらい詳細に表現してもらった方が、21世紀の戦争を感じられると思う。

さて次は、海空戦システムの解読に移ろう……