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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

GMT「A World at War」を学ぶ Part.2:1939年ポーランド戦

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http://aworldatwar.org/Files/Articles/Poland.pdf

今週末も「A World at War」のお勉強中。専門誌「ULTRA」の、1939年ポーランド戦の分析記事を訳したので、まずはそこから陸上戦闘を覚えていこうと。記事中には『ポーランドを正しく守っても、ドイツが正しく攻めても、たいした違いは生じない』と身も蓋もないことが書かれているが、そういう些細な戦闘でも分析記事を書いてしまうあたり、「A World at War=第三帝国」マニアの性(さが)を感じた(^_^;)

まず中小国であるポーランドは、枢軸側戦闘フェイズの終了時に、首都であるワルシャワを占領された時点で降伏する。そのためこの記事も、いかに効率よくワルシャワを攻めるか、守るか、という視点で書かれている。

記事中では、ポーランド軍の配置として4パターンが図示されているが、実際、大きな違いは無い。上写真は、最も基本的な配置(防衛計画①)で、3個ある2-3歩兵ユニットのうち2個を首都ワルシャワにスタックさせ、その周囲を1-3歩兵ユニットで囲み、ワルシャワに接する河川が無いN35ヘクスには、唯一残った2-3歩兵ユニットを配置。その隣のN36(ブレスト・リトフスク)にも1-3歩兵を配置し、都市(=基地)にしか置けない陸軍航空隊(AAF)ユニットは、ワルシャワとブレスト・リトフスクに配置している。

各都市には、5戦力までの陸軍航空隊を配置できるので、だったら首都ワルシャワに陸軍航空隊2戦力をスタックさせればいいじゃないかという意見もあり、実際そのパターンもあり得る。ただ記事中では、1カ所に陸軍航空隊をまとめた場合、航空優勢を取るための空中戦でダイスを1回振り合うだけだが、2カ所に分散させれば、ドイツ軍は2カ所に対して空中戦を仕掛けなければならず、ダイスを2回振らせた方が、ドイツ軍が損失を被る可能性が、僅かながら高まるとしており、今回はその分散策を採ってみた。 

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順番としては、まず移動フェイズ中に、航空優勢(ルール18.52)という敵航空基地に対する撃滅戦から始まる。ポーランド軍の2航空戦力に対して、ドイツ軍はそれぞれ1航空戦力を割り当てればいい。空中戦解決は、それぞれの航空戦力からダイス2個を振り合って、お互いの損失を出す形だが、優秀なドイツ軍は有利なダイス修整+2があるため、ダイス2個振って5を出さない限りは、必ずポーランド軍に損失を与えられる。逆にポーランド軍は不利な-2修整をくらうが、それでもドイツ軍に損失を与えたいので、2回ダイスを振った方が可能性が高まるよと。

そのように、まず間違いなくポーランド空軍は無力化されるので、次は陸上部隊によるワルシャワ攻略である。基本的に陸上ユニットはすべて、防御時に戦力+2となる(15.32A)ため、首都ワルシャワに立て籠もった2-3歩兵ユニット2個は、合計防御力8となる。そしてもしワルシャワを河川越しに攻撃した場合、さらに地形効果で+1防御力となり、ユニット2個の合計防御力は10となってしまう。そのため、河川を渡らずにワルシャワを攻撃できる、首都南東のN35ヘクス(2-3歩兵ユニット1個)を事前に奪う必要がある。ワルシャワへは、そのN35とN34ヘクスから攻撃することになるが、どこか1カ所でも河川越しでなければ、河川防御修整も得られないので(15.31C)。

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まずは移動フェイズ、オーバーランによってN34ヘクスを奪うところから。オーバーランは、2個以下のユニット(うち1個は機械化ユニット)で、戦闘比6:1が立つ必要がある。N34ヘクスを守るポーランド軍1-3歩兵ユニットは、防御時+2、戦闘訓練レベル(CTL)が0で首都や目標ヘクス以外で防御している場合-1となり、最終防御力2となる。

となるとドイツ軍が戦闘比6:1を立てるには、12戦力以上が必要ということで、4-6装甲ユニット2個、航空隊4戦力、合計12戦力によってオーバーランを行う。これは自動的に成功し、N34ヘクスはドイツ軍によって支配される。以前は「オーバーラン時の攻撃側の損失(15.34)」というルールもあったが、煩雑という理由で、すでに最新版ルールからは削除されている。

そして4-6装甲ユニット2個のうち、1個がN34ヘクスに前進し、1個はN33ヘクスに留まる。この後置された装甲ユニットが、後々、突破・展開攻撃を行う予定になるので、あえて残しておくのがミソ。 

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さらに移動フェイズで、先ほどオーバーランで占領したN34ヘクスに、追加の3-3歩兵ユニットを1個送り込み(スタック制限は2個まで)、O33ヘクスには3-3歩兵2個ユニットを入れ、その背後にも突破・展開用の4-6装甲ユニットを準備する。このN34、O34ヘクスに集められた4-6装甲1個、3-3歩兵3個、合計13戦力で、ワルシャワ南東のN35を守る2-3歩兵ユニットを攻撃するわけだ。

ここから戦闘フェイズ。ワルシャワ南東の2-3歩兵は、防御+2、河川+1、戦闘訓練レベル修整-1で、最終防御力は4となる。戦力比13:4で、戦闘比は3:1。ここでさらに航空隊を注ぎ込んで戦闘比を上げたい気もするが、ポーランド戦時に用意されたドイツ軍の航空戦力は20戦力であり、すでに航空撃滅戦で2戦力、オーバーランで4戦力を使い、残り14戦力はワルシャワ攻略に取っておくことにする。

まあ、戦闘比3:1で、防御側に1個ユニットしかないなら、まず確実に2-3歩兵を除去できる。ドイツ軍としては無用な損害は避けたいが、最新ルール15.54では「大戦初期のドイツ軍のオーバーランと展開攻撃でのEXはEX-1とする」ため、損失を被ったとしても歩兵1個を生け贄に捧げれば良しと。

ドイツ軍は、この戦闘にも勝つと、戦闘訓練レベル(CTL)2を有し(41.92A)、攻撃部隊には装甲ユニットも加わっていたため、N35ヘクスには「突破(Breakthrough)」マーカーが置かれる。この突破マーカーが置かれたヘクスには、展開(Exploitation)移動によって、戦闘フェイズ中に攻撃していなかった機械化ユニット(戦闘訓練レベル1以上)を、移動力やZOCに関係無く配置できるので、オーバーランだけして戦闘はせずに後置してきた装甲ユニットを、N35ヘクスへと送り込む。 

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そして展開移動が終わると、いよいよ、展開攻撃によるワルシャワ攻略である。この展開攻撃に参加できるのは、装甲ユニットや、展開移動で降下してきた空挺ユニット、対地支援の航空ユニットだけなので、N34に前進している3-3歩兵ユニットは参加できない。そのためN34から4-6装甲ユニット1個、N35から4-6装甲ユニット2個、残っていた航空戦力14、合計26戦力でワルシャワを攻撃することになる。

対するポーランド軍は、2-3歩兵ユニット2個、各ユニット防御+2となるため、合計防御力8となる(N35から非河川越しの攻撃を受けるため、河川の防御効果は得られない)。

戦力比26:8=戦闘比3:1。ドイツ軍にとって最悪な「d=防御側は戦力の半分を失う」が出てしまうと、ポーランド軍2-3歩兵2個のうち、1個は除去できるが、ワルシャワはまだ堅持されてしまう。

ただし「A World at War」の陸上戦闘では、戦闘訓練レベル(CTL)1なら第2戦闘ラウンドも可、レベル2なら第3戦闘ラウンドも可となっている。ドイツ軍は、CTL2なので、ワルシャワへ再攻撃、再々攻撃も可能となる。その場合、戦力比も計算し直し、すでに航空戦力を使い切った状態で、4-6装甲ユニット3個=12戦力のみで、2-3歩兵ユニット1個=防御力4を攻撃し、やはり戦闘比3:1、最悪でも残った1個歩兵は除去できるので、空いたワルシャワに前進し、この展開攻撃の後に、ポーランドは降伏となる……

……とまあ、記事に書いてある通りにユニットを動かしつつ、そのルールどこに書いてあるんだよとルールブックと首っ引きになりながらも、基本的な陸戦の仕組みは理解できたかなと。自分からは、こういった理詰めの作戦研究はやらないが、理論的な記事を読むのは好きだし、今回もだいぶ助けられた。

ただ、前回も書いたが、手元にある2003年版のルール和訳と、最新版のルールがかなり違うので、自分で本格的にプレイするなら、まず最新版の和訳ルールを作るところからだなと。それもなかなか骨が折れる作業なので、とりあえず今回のように、最新版ルールが反映された攻略記事を読み、それに沿ってユニットを動かす練習を続けていこうかと思う。いやホント、先は長い……