GMTの現代仮想戦Next Warシリーズに再挑戦……は良いのだが、あいにく2014年発売の「Next War:Taiwan」が品切れていたので、海外オークションで新品を入手。と言っても、特にプレミア価格は付いておらず、8000円程度(送料・手数料入れたら10000円超えたけど)。しかし到着から数日後、GMTにて「Next War:Taiwan 2nd printing」のプレオーダーが始まった。昨今の米中関係の悪化に配慮して、もうこのタイトルは出さないかと思ったが、悪化しているからこその再版なのかもしれない。まあ、再版されるにしても数年後だろうし、とりあえず初版を持っていても良かろうと。
本作のテーマは、中国軍による台湾侵攻。シナリオは「Next War:Korea」と同じく、中国軍が戦略的奇襲に成功したパターンと、戦術的奇襲にしか成功しなかったパターンの他、先に第2次朝鮮戦争を仕掛けておいてアメリカ軍の増援を朝鮮半島に引きつけたうえで台湾に侵攻するとか、尖閣諸島の占領を目論んで日本も参戦するなど、日本人としては物騒すぎる状況設定もあり。そのため、台湾本島を描いた地図盤の他に、海域マップもあり。こちらには、尖閣諸島の他に、南沙(スプラトリー)諸島も入っているため、当然その係争国である、フィリピン、マレーシア、ベトナムのユニットも登場する。
こちらは、台湾軍ユニット。陸上ユニットの大半は、1ステップの歩兵旅団ばかり。空軍も、F16戦闘機が主力で、中国軍の侵攻を防ぐには頼りない。
こちらは中国軍ユニット……なのだが、本作は6年前の作品であり、その間に中国軍の改編も進んだのか、情報が明らかになったかは知らないが、陸上ユニットの大半は、2019年発売の「Next War Supplement #2」で差し替えとなっている(そして強力になっている)。また航空ユニットに関しては、最新鋭J31戦闘機が空戦力6となっているが、これも後発の「Next War:Poland」で空戦力5に差し替えられている。J31戦闘機に関しては、いまだ輸出されておらず、その原因が性能の低さだとされているが、それを反映したのだろうか。
こちらは、アメリカ、日本、アセアン諸国のユニット。アメリカ軍航空機ユニットも「Next War:Poland」でその多くが差し替えられている。F35戦闘機は空戦力5から4に格下げされたが、F16戦闘機にはスタンドオフ能力が付き、B1爆撃機には対地支援能力が付く等々。自衛隊ユニットとしては、第1空挺団他が収録されている。このように、初版のカウンターの多くがもはや使い物にならないので、おとなしく再版を待つか、追加カウンターを入手した方が良いだろう。とは言え、他のシリーズ作もすでに品切れなのだけれど……
まあ、状況設定としては、もし中国軍が台湾に侵攻するなら、まず政治的にアメリカが介入しないようにしたうえでかなとも思う。上級シナリオでは、参戦レベルにも差があり、アメリカ軍による補給物資や特殊部隊のみの参戦から、海空軍のみの参戦、さらに海兵隊・空挺部隊の参戦、最終的に全軍の参戦という形があるため、長期シナリオによっては、そのエスカレーションも試せるかと思う。
最近の米中関係の悪化に伴い、書店でも、台湾を含んだ米中戦争を想定した本が数多く売られているが、嫌中国的なスタンスの本も多々あり、あまり扇情的な内容の本は読む気がしない。とは言っても、軍事想定として検証してみたいテーマであるのも確か。なるべくなら、1980年代に西側がソ連の侵攻を恐れていたように、何も軍事衝突が起こらないまま時が過ぎ、20年後ぐらいに『いや、あれこれ心配していたけれど、中国にはそんな意図も戦力もありませんでしたよ』というオチになってくれれば良いのだけれど……