Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Next War Series】GMT「Next War:Korea 2nd edition」

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昨年発売されたGMTの現代仮想戦シリーズ「Next War:Korea」第2版を購入した。以前は、本作の前身となる「Crisis:Korea 1995」(1991年発売)も、初版の「Next War:Korea」(2012年発売)も所有していたが、あいにく5~6年前に売却してしまった。その後、このシリーズから離れていたし、もう現代仮想戦はええやろと思っていたが、またこのタイミングで買い直すことに相成った。そのあたりの事情は、昨今の世界情勢や戦略的な論争とも絡む話なので、ちょっとご説明しておこう。 

実は「Next War:Korea」初版も、一応カウンターを切り離して、セットアップするところまでは持っていった。たぶん2013年頃だったと思う。しかし今ひとつプレイする気になれず、そのままゲームを仕舞った覚えがある。と言うのも、自分の中で『今さらこんな大規模な通常戦争は起こらないんだろうなあ』と思っていたからだ。なにしろその前後で、21世紀の「新しい戦争」「第4世代戦争(テロ戦争)」を掲げたクレフェルトの「戦争の変遷」を読んだり、それを上手く表現したウォーゲームに触れていたことが大きかったと思う。

2011年~2013年頃は、世界的規模のテロ戦争を扱う「Labyrinth」に触らせてもらったり、アフガニスタンでの治安戦を扱う「A Distant Plain」にも触れていたので、なるほど今時の戦争はこうなのか、といたく感心させられていた。この2作は、21世紀の「新しい戦争」を巧みに表現した名作だと思うし、今でも入手可能なので、対テロ戦争や第4世代戦争、治安戦(COIN)、低強度紛争といった軍事用語にご興味のある方は是非、触れていただきたい。

ただ問題は、自分個人が、あまりその形態の戦争に興味がなかったのだ。ゲームとしては良く出来ているけれど、自分がやりたいのは、治安警察やCIAのような役割ではなく、あくまで通常部隊同士の戦争だったということ。しかし「戦争の変遷」「Labyrinth」「A Distant Plain」のインパクトが強かったせいか、そういった既存の形態の戦争はもう無いようにも感じたし、「Next War:Korea」初版へのモチベーションも下がっていたわけだ。

しかしその後、「新しい戦争」学派に対する批判も見られるようになり、ロシアや中国の脅威に対して、アメリカ側も治安戦寄りの軍備力を見直しつつある。また最近の、ナゴルノカラバフ紛争のように、今では珍しくなった、既存形態の戦争も勃発しており、正規戦部隊と非正規戦部隊を組み合わせた戦争形態も表れ、またこの手のジャンルを探求したくなってきたのだ。

で、現代仮想戦ウォーゲームという枠で、自分にとって最もやり甲斐がありそうなタイトルを探すと、やはり「Next War」シリーズに戻って来てしまった。このシリーズもこのシリーズで、2017年からは、今時の新要素をサプリメント形式で追加するというスタイルに変わっており、変化の著しい現代戦を再現するには良いなと。まあ、このシリーズは、そもそもが面倒なシステムなので、後からルールを追加したら「屋上屋を重ねる」ことにもなるのだろうが、そこはもうつき合うしかない。 

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という長々とした理由から「Next War:Korea 2nd edition」を入手した次第。あらためて説明すると、本作は、21世紀の朝鮮半島での武力衝突を想定したゲームで、1ターン=3.5日、1ヘクス=7.5マイル(12km)という作戦級スケール。基本ルールでは、航空機は単なるポイント制だが、上級ルールでは機種別のカウンターを用いて、航空優勢を競い、制空・対地支援・打撃任務を行う。これは昔懐かしいGDW「The Third World War」からの直系の子孫とも言える。また上級・選択ルールでは、巡航ミサイル北朝鮮の核攻撃や化学攻撃、国際情勢による中国や日本の参戦などもあるが、それ全部入れるとプレイがかなり面倒になるので、プレイヤーの興味と力量に合わせて調整した方が良いと思う。

シナリオとしては、北朝鮮軍が韓国目指して南進するシナリオと、逆に韓国軍が北朝鮮へ北上するシナリオがある。また各シナリオは、開戦に際して、戦略的奇襲に成功した場合と、戦術的奇襲にしか成功しなかった場合があり、複数の開戦状況を選択できる。まあ、朝鮮半島情勢も、数年前の宥和ムードから一転しているし、韓国とアメリカの関係も以前とは違うようだし、引き続き様々な想定が必要かと思う。 

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陸上ユニットは、師団~旅団/連隊~大隊規模。2012年の「Next War:Korea」初版から、各国の戦闘序列も改訂されている。たとえば自衛隊では、初版に無かった海兵旅団が追加されているが、これは恐らく第1水陸機動連隊なのだろう(カウンター名は第5になっているが)。 

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上級ルールで用いる航空機カウンターにも、数値の見直しが見られる。特にF35戦闘機は、初版では空戦5だったのが、2版では4に変わっている。ちなみにF22ラプターは空戦力6、ロシアのSu-27が空戦力5、中国のJ31、J20も空戦力5という評価。ただしF22とF35、J31とJ20は長距離ミサイル攻撃能力(★★)を持ち、Su-27スタンドオフ能力(★)だけを持つ。まあ、こういった評価も、中国軍機の実情が分かってきたら、変わってくるのだろう。どうせプレイするなら、この機種別航空カウンターを用いてプレイしたいが、なかなか敷居も高いので、結構気合いが要りそうだ。

とにかく現代仮想戦ゲームは、この「Next War」シリーズを軸に触れていく予定。すでに他のシリーズ作も入手しているので、ぼちぼち紹介していこうと思う。