今年7月に発売された「近未来戦を決するマルチドメイン作戦」を購入。21世紀の戦争では、今までの陸・海・空に加えて、宇宙・サイバー・電磁波領域も戦場となるが、その複合型の軍事領域を「マルチドメイン(多領域)作戦」「クロスドメイン(領域横断)作戦」と呼んでいる。これがロシアでは(ロシア軍は否定しているそうだが)「ハイブリッド戦」と呼ばれ、中国では「超限戦」「情報化戦争」などと呼ばれているが、本書では、そういった各国の新しい複合領域戦争を簡単に解説した一冊になっている。
また多領域戦争の実戦例として、ロシアの軍事行動を挙げ、エストニアへのサイバー攻撃や、ウクライナ戦争、シリア内戦での電子戦、宇宙戦も取り上げている。またウクライナ戦争で見られるような、民間武装集団に偽装した特殊部隊を送り込んだり、国家による攻撃とはすぐ分からないサイバー攻撃を活用するなどの欺瞞工作=21世紀の戦場の霧も紹介されていて興味深い。
やはり21世紀の戦争を扱うウォーゲームなら、こういった宇宙、サイバー、電磁波、情報戦という要素も取り入れてほしいと思う。ただ単に、軍艦や軍用機といった武器データだけをアップデートすれば最新の現代戦ウォーゲームになるわけではなく、もうすでに実装されつつある、こういった新手の戦争手法もゲームとして見てみたい。一応、欺瞞やらサイバー戦と同時に、既存の正規軍同士の武力衝突も想定されているわけだし、そこは今までのウォーゲーム・システムで良いとして、そこに新要素を上乗せするか、それとも新要素を加えてアレンジするか、いろいろ見せ方はあると思うのだが……