Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】「台湾有事のシナリオ」

台湾有事を想定したウォーゲーム「Abandoned Fleet」を購入したので、何か参考になる本はないかなと思い、そのまんまのタイトル「台湾有事のシナリオ」を入手。この手の本は近年数多く出版されているが、やたらと扇情的な内容の本も多いのでそれは避けて、安全保障や国防の専門家によるシミュレーションという観点から本書を選んでみた。

本書を読むと、そもそも台湾有事が起きた際に、どの時点でそれが「有事」だと日本が判断し、関与するのかが難しいんだなと。いわゆる「グレーゾーン」という段階で、威嚇飛行が増えたとか、インフラへのサイバー攻撃が高まったとしても「いや、有事ではないんじゃないか」と躊躇しているうちに、いつの間にか「レッドゾーン」に移行していた……という事態も本書では想定されている。

特に、台湾在住の日本人が避退できないうちに有事となった際、中国側から「中国の船舶で在台日本人を避難させてあげるから、台湾や米軍に協力しないように」と交渉される可能性も挙げられているのもなるほどなと。そのように交渉されたら、昨今のウクライナ情勢でも見受けられるように「日本人の生命を優先して、戦争には関わるな」と主張する人たちも出てくるだろう。まあ、それが予見できているだけまだマシだけど、大抵こういった予見は無視されてしまうものだし、中国としては、まさにそのような、日本にとって抜き差しならぬ判断を迫られる状態に追い込むことも、台湾シナリオのゲームプレイヤーとしてはあり得るのだろう。まあ、いち民間ウォーゲーマーとしては、現実化しないことを祈るしか……