Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】「後期日中戦争 太平洋戦争下の中国戦線」

後期日中戦争 太平洋戦争下の中国戦線 (角川新書)
 

新刊「後期日中戦争 太平洋戦争下の中国戦線」を購入。あとがきにもあるように、研究者である著者御自身が『そういえば、太平洋戦争のときって、日中戦争ってどうなってたんだっけ』と質問され、その経緯を不思議なほどよくわかっていなかった……という執筆のキッカケは、同じように感じるウォーゲーマー諸氏も多いのではないかと思う。

自分も、ヨーロッパの東部戦線なら『1941年6月にバルバロッサ作戦でドイツ軍がソ連に侵攻して、秋のタイフーン作戦でモスクワ攻略につまづいて、翌1942年6月には青作戦でスターリングラードへ……』と、すらすら言えるのだが、この程度の簡単なレベルですら、中国戦線の推移が説明出来ない。まあ、ウォーゲーマーと言えど、中国戦線に対する歴史的な興味が薄いと言えばそれまでだが、我ながら、他人様の戦争には詳しくて、自分の国の戦争には疎いというのもどうかと思う。

しかしこれも著者御自身が触れられているが、日中戦争関連の書籍では、満州事変からの戦争初期については詳しく述べているものの、太平洋戦争開戦後の経緯については省かれているモノが多いのも事実。そのため本書では、日中戦争に長く関わった名古屋第三師団の戦歴を軸にしているので、それを物語的な柱として、日中戦争を理解していく入口になりそうに感じている。

また本書では、日本軍が行った細菌戦、毒ガス戦にも触れているが、その手の手段まで再現したウォーゲーム作品となると、これまた数少ないと思う。一応、21世紀のエウロパシリーズことTSWW(The Second World War)シリーズでは、選択ルールながらも、生物兵器化学兵器ルールが導入されている。TSWWでは、将来のシリーズ作として、日中戦争全体を扱った「The China Incident」も発売される予定なので、道徳的な善悪はともかく、ゲーム上で日本軍による細菌戦、毒ガス戦の再現も可能になるだろう。