- 作者: Air University Press,Martin van Creveld,Steven L. Canby,Kenneth S. Brower
- 出版社/メーカー: Independently published
- 発売日: 2019/07/16
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
日本でも「補給戦」「戦争の変遷」等でお馴染みのマーティン・ファン・クレフェルト他による「Air Power and Maneuver Warfare」を購入。Kindle版なら5ドルで買えたが、今回も書籍版を購入。しかしAmazon.Japanのオンデマンド印刷らしく、写真が不鮮明だったり、一部文字がズレているのが難点。
本書の初版は、1994年。アメリカの空軍大学(Air War College)で使われた軍事史用のテキストで、その名の通り、エアパワーと機動戦についての教科書的内容になっている。
序盤は、機動戦と消耗戦の違いについて。まずは機動戦の必須要素として、作戦テンポ(OODAループ)、重点、奇襲、複合兵科、柔軟性、非中央集権的な指揮を挙げているが、このあたり、よくウォーゲームでも表現される要素だなと。またその機動戦の定義を踏まえ、航空戦力の関与も含めて、第二次大戦時のドイツ軍のポーランド侵攻、フランス侵攻、ソ連侵攻を例にして解説している。
さらに赤軍の創設時からの進化に伴ったソ連軍式の機動戦も紹介し、その必須要素として、機動性と作戦テンポの速さ、決定的な戦区への兵力の集中、奇襲、戦闘活動性(アメリカ式に言うなら攻撃的精神)とイニシアチブの獲得、戦闘効率の維持、現実的な作戦計画、組織内の協調、縦深と、微妙に異なる性質も記している。また東部戦線におけるソ連空軍の戦力集中度(配置部隊の濃密さ)も記し、機動戦でのエアパワーの活用にも触れている。そろそろ「TSWW:Barbarossa」も発売されるはずなので、この独ソ戦あたりが一番読みたかった。
さらに中東戦争でのイスラエル、湾岸戦争についての章もあり。湾岸戦争については「あれは機動戦だったのか?」という疑問を、作戦テンポ(OODAループ)、重点、奇襲、複合兵科、柔軟性、非中央集権的な指揮に沿って解説している。つまり、テレビで多国籍軍の派兵状況が映し出されているのに奇襲効果はあったのか?等々。まあ、このあたりはざっと読み流した感じ。
クレフェルトも、本来は「戦争文化論」とか「戦争の変遷」の方が評価は高いかもしれないが、ウォーゲーマー的には「補給戦」や本書の方が直接役立つと思う。是非。