Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退したウォーゲーマーの日記

GMT「Storm Over Asia : Prequel to A World at War」

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GMTの新作「Storm Over Asia」が到着。こちらもサブタイトルに「A World at War前夜」とあるように、WWII戦略級ゲーム「A World at War」の前段階として、1935年~1940年のアジア太平洋戦域の政戦略を扱い、その結果を「A World at War」の開戦時戦力として持ち越すこともできる。言うなれば、ヨーロッパ戦域を扱う「The Gathering Storm」の姉妹編。

本作でプレイヤーが担当するのは、日本、中国、イギリス、ソ連という面々。一応、2人プレイでは日本vs中英ソ、3人プレイでは日本vs中国vs英ソというゲームも可能。もちろん、当時の中国にはさまざまな派閥があったが、本作では、国民党を中心として描いている。日本の国家戦略も統一がとれていなかったと思うが、そこもある種の「総意」として扱いながらも、ランダムイベント等でさまざまな派閥が勝手に動き始め、プレイヤーが望むような政戦略はなかなか取れない、という仕組みになっているはず。

また「The Gathering Storm」では、主要国(独伊英仏ソ)が、中小国に自国の旗カウンターを配置してその影響度を示すという仕組みだったが、「Storm Over Asia」では、中国の軍閥(Warloads)に対して、中小国のように旗カウンターを配置する。日本寄りの軍閥、国民党寄りの軍閥という形になるのだろう。また、ソ連は「The Gathering Storm」同様に結束度ルールがあり、粛清を行えば行うほど国家としての結束は高まるが、「Storm Over Asia」では、中国にも結束度ルールがある。これは国民党を基準として、中国の意思統一度を測るものであり、国共合作(United Front)ルールもあり。恐らく最新ルールは、専用サイトで更新されるはず。

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こちらが地図盤。中国は複数のエリアに分かれ、それぞれ日本、国民党、共産党軍閥、いずれかの影響度を受け、その影響度合いによって国共合作が進むか、後退するかという判断にもなる。COIN的だなあ。それ以外では、インド、ビルマ、タイ、マラヤ、オランダ東インド領、オーストラリア等があり、こちらにはイギリスなり、ソ連なりの影響や機密作戦などが行われるはず。 

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ランダムイベントカードは80枚(The Gathering Stormは144枚だった)。日本側のイベントをざっと見ると「関東軍の拡大」「拡大派の熱狂が高まる」「天皇が軍事的解決を支持する」「民意による拡大への圧力」「若手士官が大陸への拡張と建設に取り憑かれる」「財閥が政府立案者に協力する」「造船所の労働者たちが、愛国的な行動として休日を返上して働く」「豪雨により、日本国内の収穫が減じる」「参謀本部がコントロールを失う」……等々があって、後世の日本人としては、ああ、そっちに行ってはいけないのに!と思うような方向に行ってしまうのだろう。史学的にも『なぜアジア太平洋戦争は起きたのか?』というのは大きなテーマだと思うが、その原因となった複数の要素を垣間見れるという意味では、本作もなかなか教育的かもしれない。

また、9枚の中国軍閥リーダーのカードもあるが、あいにくこの顔写真を拝見して『ああ、あの人ね』と分かるほど、自分は歴史に詳しくない。張学良ってこういう顔だったんだな、という程度。それとも、今現在の中国人ウォーゲーマーの皆さんなら、すらすら分かるのだろうか。まあ、こちらとしては、あまり知らないからこそ、ゲームを通じて知るしかない。

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ほとんどが(部隊ユニットではなく)マーカー類というのは「The Gathering Storm」と同じ。 ただし「A World at War」にも登場する、日本軍空母「Koryu」「Yatagarasu」「Yurei」ユニットはあり、その建造を早めることも可能性としてはあり。

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「The Gathering Storm」発売の際に、購入者から『セットアップが分かりにくい』というクレームが来たせいか、本作では図版入りの解説シートが入っている。ソ連の粛清トラックも「The Gathering Storm」より見やすくなっている。もちろん記録シート類も多い。 

「Storm Over Asia」のルールそのものは、「The Gathering Storm」と体裁はほぼ同じなので、その差分さえ分かってしまえばプレイできるはず。とは言え、昨年末に「The Gathering Storm」を買って以来、本体ルールも70%ぐらい訳したが、この作業が遅々として進んでいない。「The Gathering Storm」は、各所で「ルールブックが読みにくい」と評されていたが、たしかに訳していても、あまり面白くない。分量的にはTSWWの方がずっと多いのに、あちらはルールを読むのが面白かったんだけどなあ。

実際、自分がもし本作をプレイしたら、自分の国が悪夢のような戦争に突き進んでいくプロセスを観察するわけだから、暗澹たる気持ちになりそうだ。しかし戦争前の日本の状況を学ぶことも大切だし、せっかくなら、こういったレベルのゲームで学びたいとは思う。一応「The Gathering Storm」の翻訳はまた再開すると思うが、正直言うと、他に誰か訳してくれるとありがたいなあと(^_^;)