Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退したウォーゲーマーの日記

【The Second World War】「TSWW:Barbarossa」Part.1

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21世紀のエウロパ・シリーズこと、TSWW(The Second World War)の新作「Barbarossa」が今年4月に到着。お題はもちろん1941年6月の、枢軸軍によるソ連侵攻・バルバロッサ作戦を含む、東部戦線の諸戦役を1943年6月まで(つまりクルスク戦の手前まで)包括している。言うなれば、TSWW前期東部戦線セットであり、21世紀版「Drang Nach Osten」「Fire in the East」という感じか。

ボックスアートは、ドイツ軍バージョンとソ連軍バージョンがあり、自分はソ連版を選んだ。ドイツ版は、箱にデカデカと鍵十字が描かれているが、それが気に食わなかったわけではなく、単純にデザインとしてこちらが好みだっただけ。

その紹介がなぜ4ヶ月も遅れたかと言えば、到着した際、カウンターシートが1枚欠品していたのだ。実はこのゲーム、カウンターシートが28枚!も入っており、欠品に気づいた時は『まあ、多いから1枚ぐらい間違えるよな』とノンキに構え、メーカー側に連絡を入れたものの、その直後、イギリスが新型コロナウイルスの影響でロックダウンに。本作を販売しているTKC Gamesは個人事業なので、ディレクターからも『うちの年老いた母親に感染させてはいけないから、郵便局に行くのも控えている』と言われては『お、おおぅ、お大事にな』と言うしかなく、その後も、ディレクター本人が熱で寝込んだり(コロナではなかった)して、ようやく7月中旬に欠品シートが到着。しかし他の新作もどっと到着していたので、それをひととおり紹介し終わったところで、ようやくこの超大作について語れることに。いや、長かったね。

今回も、自分が購入したのはLieutenant版……地図盤とカウンターだけが印刷され、ルールブックやチャートはDVD-ROM化されたバージョン。そのおかげでだいぶ安くなったが、すべてを印刷したColonel版だと435ポンド(約6万円)となる。価格的にも、超大作である。 

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では、恐らくウォーゲーム史上最大の独ソ戦ゲームである本作の戦場から。地図盤は、全部で20枚。うち2枚は、海上移動用の戦略地図盤。残る18枚を連結して、西はワルシャワブダペスト、東はウラル山脈、北はバレンツ海、南はイランのテヘランまでと、大半の東部線戦ゲームなら省略するような範囲まで含まれている。果たしてそんなところまで入れる必要があるのかと思うが、一応、工場の疎開ルールもあるので、たとえ戦場にならなくても、後方地域として入れる必要があるのだろう。もちろん、我が家の六畳間で収まるはずもなく、現実的に言えば、地図盤2~4枚のシナリオしか置けないだろう。しかしもっと問題なのは、配置するユニット量である。 

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すでにVASSALの、バルバロッサ作戦シナリオの配置データも受け取っているので、画像として切り出してみよう。まずこちらが、ソ連フィンランド国境付近。まあ、まだかわいいものよ。 

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こちらがドイツ北方軍集団。新宿副都心どころか、ドバイの高層ビル群を彷彿とさせるハイスタックが密集している。これを現実のカウンターとして管理するのは、相当無理がある。 

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もちろん中央軍集団も、ドバイタワー並のハイスタックが屹立している。あのさ、ジェンガじゃないんだから。というわけで、ここはVASSALを頼るしか。 

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こちらは南方軍集団。枢軸側の青地に黄文字のユニットは、ルーマニア軍。ちなみに国籍で言うと、ドイツ軍、ソ連軍はもちろん、フィンランド軍、ルーマニア軍、ブルガリア軍、ハンガリー軍、スロバキア軍や、さらにイギリス海軍アメリカ海軍カウンターもたっぷり入っている。そう、レンドリース物資を運ぶ輸送船団や護衛艦も必要なのだ。

先日、日本語訳が公開されたTSWW1.6ルールブックは、全176ページ。シナリオブック(At the Starts)が126ページ、ドイツ軍の戦闘序列が108ページ、枢軸中小国の戦闘序列が41ページ、ソ連軍の戦闘序列が85ページ、西側連合軍の戦闘序列が50ページと、それ以外のデータもてんこ盛りである。

シナリオは、練習用として「ソ連軍によるベルリン爆撃」「バレンツ海海戦」から始まり、小規模の「クリミア半島戦」シナリオ、中規模の「火星作戦」「天王星作戦」「フィンランド北部」、さらに「バルバロッサ」「青作戦」キャンペーンや、仮想「ロンメル、東部線戦へ」シナリオもあり。まあ、グランドキャンペーンは無理としても、なんとかVASSALプレイには漕ぎ着けたいと思う。 

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カウンターシートは、先にも述べたように全28枚。カウンター総数7840個。これ史上最大のカウンター数じゃないかと思ったが、Decision Games版の「War in the Pacific」が、シート32枚、カウンター約9000というから、上には上がいるものだ(他にもっと多いゲームもあるかも)。

そしてエウロパシリーズの流れを汲んだTSWWも、やたら細かく、部隊や艦船や機種が網羅されているが、それはもう今回だけでは紹介しきれないので「Part.2 枢軸軍カウンター編」「Part.3 ソ連・連合軍カウンター編」として、後ほど触れたいと思う。

しかし、そういったモンスターゲーム的な側面だけでなく、本作ではドイツとソ連、双方が行った戦争の残酷面も、数多く取り入れられているところが興味深い。

たとえばドイツは、本国で人種政策が行われているせいで毎月、人口ポイントが減っていくとか、占領国の人口ポイントを本国に移送して奴隷労働に就かせたり、ソ連軍捕虜を対独協力者(ヒヴィ)として使用するなど、ナチスの人種政策が反映されている。またパルチザンルールも詳細になり、特別行動隊(アインザッツグルッペン)ユニットも含まれている。また作戦面では、ヒトラーの介入があるため、前線部隊が後退する際には、後退許可が出たかどうかを、いちいち判定する仕組み。

対するソ連も、強制労働人口ポイントを建設工兵として使用したり、ドイツ軍がコーカサス地方に侵入すると、スターリンが信頼していないコーカサス地方の人々が強制収容所に送られてしまう。そしてスターリンも作戦に介入してくるため、ドイツ軍と同様に、ソ連軍も後退許可チェックが必要になってくる。またソ連が、穀倉地帯であるウクライナやヴォルガ河西岸を失った場合、飢餓が発生し、食糧が輸入されない限り、人口ポイントが減っていく。そのため枢軸軍としては、ソ連人民を文字通り絶滅させるために、ウクライナやヴォルガ西岸を取りに行く、という作戦も採りうるわけだ。

他にも、無償で補充できる懲罰部隊ユニットも登場するなど、ここまで独ソ戦の暗部を取り入れたウォーゲームも珍しいが、もしかするとそれは、個人事業のTKC Gamesだからできる荒技であって、大手のGMTやMMPでは、ここまで踏み込めないかもしれない。まあ、TSWWには、日本軍の化学兵器や、奴隷労働(泰緬鉄道)ルールもあるので、基本的にそういったシビアな部分にも目をつぶらないスタンスなのだけれど、とにかく、さまざまな意味で恐るべき独ソ戦ウォーゲームが出たのは間違いない。

ちなみに、すでに欠品カウンターが存在することも発見されており、追加カウンターシートも出すんじゃないかと噂されている。おいおい、5万円とか6万円も出して完璧な製品じゃないなんて……と憤慨する方は買わない方がいい。TSWWは、タガの外れたウォーゲームであり、文句があるなら買うな、ついて来たい奴だけついて来いのゲームなんだと思う。そういうゲームがあってもいいじゃないの。