Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】「戦国武将列伝2 関東編(上)」「図説 享徳の乱」

戎光祥(えびすこうしょう)出版から、新しく発売されたシリーズ「戦国武将列伝」の2巻「関東編(上)」を購入。最新の研究成果を取り入れながら、全13巻で日本全国の武将を紹介していくそうで、自分の戦国知識をアップデートするには良いかなと。特にこの「関東編(上)」は、近年、戦国時代が始まったとされる享徳の乱あたりに登場した武将を51名も、それぞれそれなりのボリュームで収録しており、自分もまだまだ知らない範囲なので、各武将の最新イメージをつかむには良いような気がする。

なにしろ1980年代の学生時代、当時の小説や大河ドラマで、武田信玄上杉謙信織田信長羽柴秀吉徳川家康伊達政宗真田幸村……ぐらいのイメージや歴史的な流れは掴めたけれど、それ以前の関東武将となると、うっすら太田道灌が浮かぶ程度だった。北条早雲北大路欣也氏主演のドラマを見たはずだが、さっぱり覚えていない……まあ、むしろ今から、知識をイチから覚え直した方が良いのだろう。

しかし自分も一応、関東在住なのに、現在と当時の地名が違っていたりして、意外とどこがどこやら分かりにくかったりする。武将名も、足利なんちゃらだ、長尾なんちゃらだ、扇谷上杉だ山内上杉だと、似たような名前が多く、まして離合集散、あっちと同盟したり、こっちを裏切ったりと展開もめまぐるしく、「戦国武将列伝」だけではなかなか頭に入りにくかったので「図説 享徳の乱」も購入。こちらは図版も多いので、全体的な流れを掴みつつ、個々の武将については「戦国武将列伝」を頼ろうかなと。

こういった場合、享徳の乱全体を扱ったウォーゲームでもあれば良いのだろうが、あいにくそんなもの見たことがない。2018年で刊行が止まった「ウォーゲーム日本史」も、応仁・文明の乱は取り上げてたけどなあ……

同人誌では「武士らいふ 第弐號」に結城合戦のウォーゲームが付いていた。自分は持っていないが、まだi-OGMさんには在庫がある模様(2022年12月12日現在)。

また「戦国武将列伝」は、すでに7巻「畿内編(上)」も発売され、10巻「四国編」も近々出るようだ。このあたりも自分の知識的に薄いところなので、おいおい入手していこうと思う。

【Triumph & Glory】GMT「Borodino:1812」+「C3i #17」

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2004年に発売された「Triumph & Glory」シリーズの第2作(と言ってもこれしか出なかった)GMT「Borodino:1812」を再購入。これも2004年当時に買って、それなりにプレイしたものの、2017年に処分してしまったが、また手元に置いておこうと。いや、駿河屋の中古コーナーを見たら、カウンター未切り離しが2000円で売っていて、ああ、そんなに安いんだったら買ってあげようかなと……

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お題はタイトル通り、1812年のボロジノ会戦。これが精密戦術級のバタイユ・シリーズだとフルマップ4枚にもなる大会戦だが、「T&G」スケールではフルマップ1枚弱に収まっている。逆に、もっとおおざっぱなTLNB(The Library of Napoleonc Battles)シリーズだと、もうちょっとちまちました感じになる。このように同じ戦いでも、複数スケールのゲームを揃えておくと、さまざまな解像度でその戦闘を眺められるのがいいところ(複数買ってしまうイイワケとも言える)

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この「Borodino」から、潰走したユニットはいったん盤外の退却ボックスに置かれ、回復ボックスに移された後、士気判定を行い、成功すれば盤上に復帰し、失敗すれば永久的に除去される……という仕組みになった。このメカニズムは非常にわかりやすかったので、この部分だけコピーして「Triumph & Glory」のシナリオでも使っていた。

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また「C3i」誌17号には、訂正カウンターが付いている。こちらは昨年、GMT「Downtown」を買い直した時に一緒に再購入済み。

一応、このBlogを振り返っても、2005年、2006年、2012年と対戦記録が残っているが、最も新しい記録でも10年前であり、当時の古いスマホで撮った写真しか残っていないため、またソロプレイでもして、今のiPhone 13Pro Maxのカメラで撮り直したい気もする(^_^)

GMT「Triumph & Glory」+「C3i #13」「C3i #14 Lonato」

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またしても買い直し案件。2000年に発売されたナポレオンの会戦級ゲーム「Triumph & Glory」(未切り離し)を再入手してしまった。2001年にいったん購入し、仲間内で結構ヘビロテ的に対戦したが、2017年に処分。しかし今年は、バタイユ、Campaign of Napoleon(CoN)、The Library of Napoleonic Battles(TLNB)と、ナポレオン戦争のシリーズ・ゲームを買い直してきたので、だったらこれもいっとくかと。一応、以前購入した時のBlog記事も残っているが、あらためて記録しておこう。

本作は、故Richard H.Berg氏デザインの会戦級ゲーム。ゲームスケールは、1ヘクス=297メートル(325ヤード)、1ターン=75分、1戦力=歩兵200人/騎兵150人/砲4門(ほぼ連隊単位)と、TLNBより細かく、バタイユよりは大ざっぱという中間的な立ち位置だ。ナポレオン戦争の会戦の場合、徐々に参加兵力が増え、戦場も広くなるため、統一システムで表現すると、どうしてもスケールに合わない会戦が出てきてしまう。そのため、TLNBとバタイユを持っていても、このT&Gスケールがちょうどいい、という会戦もあるはず。

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こちらはハーフマップ規模の、カスティリオーネ会戦(1796年8月5日)と、ラーブ会戦(1809年6月14日)。こういった小規模の会戦でも、このT&Gスケールだとそれなりに遊び応えのあるゲームになっている。

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そして三帝会戦ことアウステルリッツ会戦(1805年12月2日)。ちょうどフルマップに収まっており、個人的にはアウステルリッツ会戦最良のスケールだなと。これがTLNBだとおおざっぱになるし(まだプレイしてないけど)、バタイユだとフルマップ数枚分になってしまうので(持ってないけど)、現実的に言うなら、お昼頃から対戦し始めて、夕方にはちゃんと終わるという意味でも良いシナリオだったなと。

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しかしフルマップ2枚を連結したワグラム会戦(1809年7月5~6日)となると、さすがナポレオン戦争最大級の会戦だけあって、このスケールで表現すると結構大変だった気がする。アスペルン=エスリング会戦(1809年5月21~22日)は、この左側の地図盤だけを使用。

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カウンターシートは4枚、カウンター総数1160個。システムとしては、各軍団毎にチットが2枚ずつ用意され、カップからランダムに引かれた順に活性化する。ただし各ターン毎に、両軍司令官の能力によって指揮下に置かれた軍団は制限無く行動できるが、命令を受領していない軍団は行動が制限される。また命令を受領していなくても、軍団長の采配(ダイス判定)で、制限無く行動できる可能性もあり。そのため1ターンのプレイ時間は長くなるが、ままならないチットに一喜一憂するのは楽しかった。

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ユニットが攻撃する際には、まずいったん接敵(士気)チェックを行う必要がある。複数スタックで攻撃を宣言したら、一方のスタックが接敵に失敗し、残ったスタックが単独で攻撃しなければならず敗退……という場面がよくあった。このあたり防御側の防御射撃を表しているのだろうが、こういった面でも、TLNBよりちょっと細かく、バタイユ寄りなスケールだなと思った。

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そして今回、訂正カウンターが付いているC3i誌13号も入手。これも2000年発売。

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さらに追加シナリオ、ロナト会戦(1796年7月31日~8月4日)が付いているC3i誌14号も入手。こうしてどんどんC3i誌で追加シナリオを出してくれれば良かったのに、このT&Gシリーズは、この後「Borodino」が出ただけで終わってしまった。一応、シリーズ第3作としてライプツィヒ会戦も出すと予告されていたが、デザイナーのBerg氏も2019年に亡くなってしまい、その夢も潰えた。自分の中で、この「Triumph & Glory」は、2000年代の傑作ゲームだったんだけどなあ……惜しい……

またフランスのウォーゲーム雑誌Vae Victisにも、本作とほぼ同じルールのJours de Gloireシリーズが付録化されているが、ちょっと違うなあ、という印象。もうそちらまで手は出さないが、一応「T&G」の血脈は生き残っていると。

 

【The Library of Napoleonic Battles】OSG「Four Lost Battles」(2nd Edition)

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OSGの30%引きセールで、TLNB(The Library of Napoleonic Battles)シリーズ第13作「Four Lost Battles」第2版を購入。これにて、すでに発売されているTLNBシリーズはすべて入手したけれど、こんな一気買いをするつもりはなかったんだホントに。ただ、個人的に来年は緊縮財政というか、あまりお金が自由に使えなさそうだったので、今年のうちに使っておこうと。

本作のテーマは、いわゆる解放戦争、1813年8月~9月のドイツ、オーストリアでの4つの会戦を扱っている。タイトルに「Lost Battles(忘れられた戦い)」とあるように、同時期に行われたドレスデン会戦の前後というか、裏舞台での戦いばかりであり、たしかにマイナーではある。

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しかしそもそも2005年には、いきなりこの「Four Lost Battles」初版から発売されたわけで、自分も当時のことは覚えているが「ふーん、なんかマイナーな戦いのゲームが出たなあ」程度にしか思わなかった。まさかそれが17年後の今、こうしてシリーズとして確立されるとはね。いやだってこれ、ASL(Advanced Squad Leader)で言うなら、いきなり「Armies of Oblivion」(枢軸中小国モジュール)から発売するようなもので、Zacker先生、もうちょっと商売っ気を出して有名な戦いから出せばいいのに、とも思うのだが、その商売っ気の無さがOSGの良いところかもしれない(^_^)

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このあたりの会戦名を見て「はいはい、クルムの戦いね」と、すらすらその経緯をしゃべれるなら相当なナポレオニッカーかもしれない(^_^;)

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収録された4会戦は、いずれもハーフマップ規模。時系列的に最初は、グロスベーレン(Grossbeeren)会戦(1813年8月23日)。ベルリンの再占領を狙ったフランス+ザクセン軍(7万5千)が、プロイセン+ロシア+スウェーデン軍(10万)と激突。結果、フランス+ザクセン軍は撃退される。忘れられた戦いという割には、かなり大規模だなと。決戦日(Day of Battle)シナリオは10ターンで終わるが、カードプレイによって2日目以降にも会戦が延長されることもある。

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次がカッツバッハ(Katzbach)会戦(1813年8月26日)。この日はドレスデン会戦が行われており、そのB面的な戦いとも言える。大雨の中、ナポレオン本隊の側面を守るよう命じられていたマクドナルドは攻勢に出たものの、プロイセン騎兵の反撃に遭い敗退(雨のためマスケット銃が使えず)。これも決戦日シナリオは10ターンだが、仮想戦として、8月17日にもほぼ同じ部隊で戦うシナリオが用意されている。史実では、すでに部隊の多くが消耗していたが、17日の時点では消耗する前だったと。

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次がクルム(Kulm)会戦(1813年8月29~30日)。ドレスデン会戦で勝利したフランス軍による、後退するロシア軍への追撃戦。シナリオとしては2日間、18ターンにも及ぶ。

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最後がデネヴィッツ(Dennewitz)会戦(1813年9月6日)。ネイ率いるフランス軍が、再びベルリン占領を目指したものの、待ち構えていた対仏連合軍に撃退されるという展開。シナリオとしては11ターン。

そしていつものように、連続プレイによるキャンペーンゲームもあり。

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こちらはフランス軍。さすが大兵力を注ぎ込んだ解放戦争期だけあって、ユニットが多い。その割にイニシアチブ値(練度、士気)が低いユニットも多く、いかにもかき集めました的な陣容で頼りない。

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対仏連合軍も、ロシア、オーストリアスウェーデンは同様に頼りない印象。ただプロイセンに関しては、軍制改革が行われたおかげか、ブリュッヒャーの司令官能力はナポレオンと互角の3(3個軍団を自力で活性化できる)、麾下の軍団長たちも全員活性化値が高くなっている。本作の前の時期にあたる「Napoleon's Resurgence」(リュッツェン、バウツェン会戦)や、後の時期にあたる「Napoleon at Leipzig」では、ブリュッヒャーの司令官能力は2なので、本作の時期ではプロイセン軍が華々しかったのか、それとも首都ベルリンを守るために本気出したのか(^_^)

まだTLNBシリーズとしてはドレスデン会戦は発売されていないが、いずれそちらも出揃ったら、まとめてプレイしてみたい気はする。そうすると1813年夏の戦役が俯瞰できるかなと。

Four Lost Battles – Operational Studies Group

※ページの一番下にユニット配置表などのPDFデータあり。

【The Library of Napoleonic Battles】OSG「Bonaparte in the Quadrilateral」

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OSGの30%引きセールで、TLNB(The Library of Napoleonic Battles)シリーズ第12作「Bonaparte in the Quadrilateral」(今年2022年発売)を購入。「Quadrilateral」とは辞書にも載っておらず「4側面」みたいな意味なのだろうが、このナポレオン戦争、1796~97年の北イタリア戦役という文脈で言うと「Quadrilateral Fortresses」=「四大要塞群」=オーストリア帝国が北イタリア防衛のために設けた要塞防衛システム……ヴェロナ(Verona)、ペスキエーラ(Peschiera del Galda)、マントヴァ(Mantova)、レニャーゴ(Legnago)の4要塞都市を指す。本作のテーマも、この四大要塞地域での戦役となる。

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時系列的に最初は、ロディ会戦(1796年5月10日)。フランス軍が、対岸に位置する(疲れ切った)オーストリア軍後衛部隊を渡河して攻撃、これを敗走させたという展開。伝説としては、ナポレオンが軍旗を引っつかんでロディの橋を渡った……と言われているが、あいにく一次的資料としての裏付けは無いという。デザイナーのZacker氏も、本シナリオの説明として、特にそのことには触れていない。地図盤としてはハーフマップ。シナリオは10ターンと小振りである。

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続くカスティリオーネ(Castiglione)会戦(1796年8月5日)はフルマップを用い、この東に、マントヴァ要塞が描かれた地図盤が連結される。フランス軍は、四大要塞群のうち三つを占領し、残るマントヴァを包囲。しかしそこへ救援のオーストリア軍(四つの縦隊)が駆けつけ、ナポレオンは包囲部隊から戦力を引き抜き、オーストリア軍が集結する前に各個撃破するという手に出た。シナリオ単体では12ターンで終わるが、ロナト(Lonato)の戦いと組み合わせたミニ・キャンペーンは、3日間=42ターンを要する。この時のナポレオンの作戦機動を知る意味でも、ミニ・キャンペーンの方が面白そうだ。

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続くアルコレ(Arcole)会戦(1796年11月15~17日)も、向こう岸に位置するオーストリア軍に対する渡河攻撃だが、ここでも、ナポレオンが軍旗をつかんで突撃したという伝説がある。Zacker氏も、ナポレオンが落馬して運河に落ちた、という逸話は記しているが、これも3日間の戦闘としては43ターンかかるが、11月16~17日だけをプレイする短縮バージョンも用意されている。

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次がリヴォリ(Rivoli)会戦(1797年1月14~15日)。オーストリア軍は再度、包囲されたマントヴァを救うべく攻撃を仕掛けたが、狭隘な地形にも阻まれ、敗走している。たしかに地図盤を見ても、面倒くさそうな地形だ。

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さらに12ターンのみの、(抽象化された)マントヴァ要塞包囲シナリオもあり。

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さらに1796年12月12~17日のミニ・キャンペーン(アルコレとリヴォリの間)と、地図盤間の移動も行うグランド・キャンペーンもあり。

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こちらがフランス軍カウンター。皇帝陛下の肖像画もまだ若い印象。軍団長としては、まだダヴーランヌもスールトもミュラもいない時期なので、ちと頼りないが、戦闘ユニットのイニシアチブ値(練度、士気)は平均以上になっている。

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対するオーストリア軍は、ユニット数も多いし、イニシアチブ値も平均以上となかなか手強い相手に感じる。しかしナポレオンのように、複数軍団を活性化できる司令官はいないため、個別の軍団毎に戦うしかない(協調できない)。また、ロディの戦いを指揮したボーリュー元帥は、総指揮官なのに司令能力(ダイス判定無しで軍団を活性化できる)が無く、ダイスを振って2以下を出さないと活性化しないというダメっぷり。まあ、退却中だったからか……。

この北イタリア戦役は、オーストリアの大軍に対して、フランス軍がいかに立ち回るかが興味深いので、ロナト、カスティリオーネのミニ・キャンペーンあたり、まずはプレイしてみたい。

Bonaparte in the Quadrilateral – Operational Studies Group

※ページの一番下にユニット配置表などのPDFデータあり。

【The Library of Napoleonic Battles】OSG「Napoleon Invades Spain」

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OSGの30%引きセールで、TLNB(The Library of Napoleonic Battles)シリーズ第11作「Napoleon Invades Spain(ナポレオン、スペインに侵攻す)」を購入。本作のテーマは、1808年8月~1809年1月にかけてのスペイン半島戦役であり、イギリスのウェルズリー少将(後のウェリントン公)がポルトガルに上陸して以降の戦いを扱っている。またこれに対応して、皇帝ナポレオンもスペインに直接入っており、時系列としては、TLNBシリーズ第7作「Napoleon's Quagmire」の前段階にあたる。

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時系列的に最初は、ポルトガル領内のヴィメイロ会戦(1808年8月21日)。ジュノー率いるフランス第8軍団が、イギリス軍を攻撃したものの、撃退された戦い。1/4マップ、9ターンのみというミニシナリオ。

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続くエスピノサ(Espinosa de los Monteros)会戦(1808年11月10~11日)は、フルマップ規模。ヴィクトール率いるフランス第1軍団が、ブレイク率いるスペイン軍を2日にわたって攻撃し、後退させた戦い。決戦日(Day of Battle)シナリオは8ターン、前日から始めるなら20ターン。

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次のトゥデラ(Tudera)会戦(1808年11月22~23日)もフルマップ。侵攻してきたナポレオン本軍をスペイン軍が迎え撃つが、あえなく後退。

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そして最後のラ・コルーニャ(La Coruna)会戦(1809年1月16日)は、また1/4マップ。イギリス軍がこの港から撤収するところを、フランス軍が攻撃し、イギリス軍司令官であったムーア将軍はここで戦死。この戦いはバタイユ・シリーズでも発売されていたが、あいにく未所有。

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両軍カウンターはシート1枚に収まっている。フランス軍は、司令官であるナポレオン、ランヌはもちろん、ヴィクトール、スールト、モンセー、ジュノーといった軍団長たちにも司令官能力(ダイスを振らずに自力で活性化できる)が付されていて頼もしい。

イギリス軍のウェルズリーは、まだ少将のせいか、司令官能力は1のみ(ワーテルロー時には4に成長している)。スペイン軍は、兵力こそ多いものの、イニシアチブ値(練度、士気)が低く、フランス軍相手にはやはり頼りない。

まあ、本作もTLNBシリーズの中では地味な作品だが、まだフランス軍が輝かしい時期なので、スペイン軍を蹴散らすようなプレイがしたいなら、やってみてもいいかも。

Napoleon Invades Spain – Operational Studies Group

※ページの一番下にユニット配置表などのPDFデータあり。

 

【The Library of Napoleonic Battles】OSG「Napoleon's Wheel」

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OSGの30%引きセールで、TLNB(The Library of Napoleonic Battles)シリーズ第10作「Napoleon's Wheel(ナポレオンの運命の変転)」(2020年発売)を購入。本作のテーマは、1805年のオーストリア戦役であり、終局的には有名な三帝会戦アウステルリッツの戦いに至る。本シリーズ中でも、メジャータイトルだと言える。

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時系列的に最初は、フルマップ規模のウルム(Ulm)の地図盤を用いる、ハスラッハ会戦(1805年10月11日)。オーストリア軍司令官マックが、圧倒的な戦力をもってフランス軍の連絡線を断とうと攻撃を仕掛けたものの、デュポンの第1師団が僅かな戦力をもってこれを撃退した。これは6ターンのみのミニシナリオ。

続くエルチンゲン会戦(10月13~14日)は、ネイの攻撃によってオーストリア軍がウルムを放棄し、後にウルムも降伏。この功績により、ネイはエルチンゲン公の称号を授かった。これは決戦日(Day of Battle)シナリオなら11ターン、前日からの機動も含めるなら22ターンのシナリオとしてもプレイできる。

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続くデュルンシュタイン(Durnstein)会戦(1805年11月11日)は、1/4マップのみ。「クトゥーゾフの罠」と題されたこのシナリオでは、フランス軍側面を守っていたモルティエの第8軍団と臨時の従属部隊が、ロシア軍に挟撃され、ここでもデュポン師団の来援に救われたものの、相当な損害を被った。12ターン。

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続くシェーングラーバーン(Schoengrabern)会戦(1805年11月15~16日)は、ハーフマップサイズ。ロシア軍は、オーストリア軍と合流するため、バグラチオン率いる後衛部隊をこの地に配置していた。そこへ追撃してきたフランス軍のミュラに対し、バグラチオンは偽りの休戦交渉を行い、ミュラもこの地にロシア軍全軍がいると思い込み、休戦を受諾した。しかしこれを知ったナポレオンは「そりゃ嘘だろ」と大激怒。ミュラも攻撃を開始したが、バグラチオンは組織的に後退。時間を稼いだロシア軍も、無事オーストリア軍と合流した。これは夕方から夜間までの5ターンのみのミニシナリオ。

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そして本作のメインイベント、アウステルリッツ会戦(1805年12月1日~2日)はフルマップ。史実では、フランス軍の欺瞞作戦……わざと右翼の戦力を薄くしたり、皇帝本人が弱気だと見せたり、主力部隊を死角に隠したり……が行われたが、このTLNBシステムでどうなるかは未知数。一応、決戦日シナリオ(14ターン)は史実的な配置になっているし、前日から始めるシナリオ(23ターン)にしても、すでにフランス軍がプラッツェン高地を放棄するところから始めるし、戦力隠匿ルールもあるとは言え、所詮、史実を知っているプレイヤー同士が部隊を動かすのだから、史実通りになるんだか、ならないんだか。特別、史実に寄せるような陰謀ルールも見当たらないが、選択ルールのカードプレイを導入すると、連合軍司令官に偽情報をつかませ、以後の3ターン、指揮値をゼロにするとか、逆にミュラが3ターン、指揮値がゼロになる等のイベントも発動する。

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こちらがフランス軍カウンター。さすが大陸軍が最も輝かしい時期だけあって、皇帝陛下はもちろん、ダヴーランヌ、モルティエも司令官能力あり、それ以外の軍団長もみな活性化値4(ダイス1個振って4以下なら活性化、平均以上)と素晴らしい……いや待て、優等生クラスに紛れ込んだ普通の生徒のようなベルナドットだけが活性化値3だった。いや3も決して無能ではないんだけどね……。もちろん各部隊の戦力、イニシアチブ値も頼もしく、これを見てから、1814年国内戦役のユニットを見ると、大陸軍の栄枯盛衰っぷりがよくわかる。

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対するオーストリア軍、ロシア軍は、数こそ多いが、やはりイニシアチブ値(練度、士気)が低く、殴り負けしそうな予感。しかしキャンペーンとしてプレイした場合、ウルムでオーストリア軍が降伏しなかったり、後退するなどしてその戦力を温存し、史実以上の戦力をもってロシア軍と合流し、フランス軍を迎え撃つ……という展開もあり得るので、むしろキャンペーンとしてプレイした方が面白いかもしれない。

Napoleon's Wheel – Operational Studies Group

※ページの一番下にユニット配置表などのPDFデータあり。

とまあ、ナポレオン戦争でも、ワーテルロー会戦と並んで最も著名な戦いなので、これは是非プレイしておきたい。GMT「Triumph & Glory」以来、このテーマもご無沙汰だしなあ……