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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【The Library of Napoleonic Battles】OSG「Napoleon's Wheel」

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OSGの30%引きセールで、TLNB(The Library of Napoleonic Battles)シリーズ第10作「Napoleon's Wheel(ナポレオンの運命の変転)」(2020年発売)を購入。本作のテーマは、1805年のオーストリア戦役であり、終局的には有名な三帝会戦アウステルリッツの戦いに至る。本シリーズ中でも、メジャータイトルだと言える。

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時系列的に最初は、フルマップ規模のウルム(Ulm)の地図盤を用いる、ハスラッハ会戦(1805年10月11日)。オーストリア軍司令官マックが、圧倒的な戦力をもってフランス軍の連絡線を断とうと攻撃を仕掛けたものの、デュポンの第1師団が僅かな戦力をもってこれを撃退した。これは6ターンのみのミニシナリオ。

続くエルチンゲン会戦(10月13~14日)は、ネイの攻撃によってオーストリア軍がウルムを放棄し、後にウルムも降伏。この功績により、ネイはエルチンゲン公の称号を授かった。これは決戦日(Day of Battle)シナリオなら11ターン、前日からの機動も含めるなら22ターンのシナリオとしてもプレイできる。

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続くデュルンシュタイン(Durnstein)会戦(1805年11月11日)は、1/4マップのみ。「クトゥーゾフの罠」と題されたこのシナリオでは、フランス軍側面を守っていたモルティエの第8軍団と臨時の従属部隊が、ロシア軍に挟撃され、ここでもデュポン師団の来援に救われたものの、相当な損害を被った。12ターン。

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続くシェーングラーバーン(Schoengrabern)会戦(1805年11月15~16日)は、ハーフマップサイズ。ロシア軍は、オーストリア軍と合流するため、バグラチオン率いる後衛部隊をこの地に配置していた。そこへ追撃してきたフランス軍のミュラに対し、バグラチオンは偽りの休戦交渉を行い、ミュラもこの地にロシア軍全軍がいると思い込み、休戦を受諾した。しかしこれを知ったナポレオンは「そりゃ嘘だろ」と大激怒。ミュラも攻撃を開始したが、バグラチオンは組織的に後退。時間を稼いだロシア軍も、無事オーストリア軍と合流した。これは夕方から夜間までの5ターンのみのミニシナリオ。

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そして本作のメインイベント、アウステルリッツ会戦(1805年12月1日~2日)はフルマップ。史実では、フランス軍の欺瞞作戦……わざと右翼の戦力を薄くしたり、皇帝本人が弱気だと見せたり、主力部隊を死角に隠したり……が行われたが、このTLNBシステムでどうなるかは未知数。一応、決戦日シナリオ(14ターン)は史実的な配置になっているし、前日から始めるシナリオ(23ターン)にしても、すでにフランス軍がプラッツェン高地を放棄するところから始めるし、戦力隠匿ルールもあるとは言え、所詮、史実を知っているプレイヤー同士が部隊を動かすのだから、史実通りになるんだか、ならないんだか。特別、史実に寄せるような陰謀ルールも見当たらないが、選択ルールのカードプレイを導入すると、連合軍司令官に偽情報をつかませ、以後の3ターン、指揮値をゼロにするとか、逆にミュラが3ターン、指揮値がゼロになる等のイベントも発動する。

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こちらがフランス軍カウンター。さすが大陸軍が最も輝かしい時期だけあって、皇帝陛下はもちろん、ダヴーランヌ、モルティエも司令官能力あり、それ以外の軍団長もみな活性化値4(ダイス1個振って4以下なら活性化、平均以上)と素晴らしい……いや待て、優等生クラスに紛れ込んだ普通の生徒のようなベルナドットだけが活性化値3だった。いや3も決して無能ではないんだけどね……。もちろん各部隊の戦力、イニシアチブ値も頼もしく、これを見てから、1814年国内戦役のユニットを見ると、大陸軍の栄枯盛衰っぷりがよくわかる。

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対するオーストリア軍、ロシア軍は、数こそ多いが、やはりイニシアチブ値(練度、士気)が低く、殴り負けしそうな予感。しかしキャンペーンとしてプレイした場合、ウルムでオーストリア軍が降伏しなかったり、後退するなどしてその戦力を温存し、史実以上の戦力をもってロシア軍と合流し、フランス軍を迎え撃つ……という展開もあり得るので、むしろキャンペーンとしてプレイした方が面白いかもしれない。

Napoleon's Wheel – Operational Studies Group

※ページの一番下にユニット配置表などのPDFデータあり。

とまあ、ナポレオン戦争でも、ワーテルロー会戦と並んで最も著名な戦いなので、これは是非プレイしておきたい。GMT「Triumph & Glory」以来、このテーマもご無沙汰だしなあ……