Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【The Library of Napoleonic Battles】OSG「Napoleon Retreats」

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OSGの30%引きセールで、TLNB(The Library of Napoleonic Battles)シリーズ第9作「Napoleon Retreats(ナポレオン、後退)」(2019年発売)を購入。本作は、シリーズ第4作「La Patrie en Danger(祖国の危機)」に続く、1814年フランス国内戦役を扱ったゲームで、3月6日~13日の会戦を扱っている。「La Patrie en Danger」の戦場はパリ東方だったが、本作の戦場はそれよりやや北側。もちろん国内戦役全般をカバーしている「Napoleon at Bay」には、どちらの戦場も含まれている。とは言え、この時期の細かい経緯はあまり良く分かっていないので、あらためていろいろ調べ直してしまった。

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ボックス裏の戦況図を見ても、なかなか戦況がつかみにくいが、ナポレオンが忙しそうに駆けずり回っていることだけは分かる。おおまかに書くと、ナポレオンはクラオンヌ(Craonne)で、ブリュッヒャー率いる対仏同盟シレジア方面軍の前衛を攻撃、さらにラン(Laon)にてその本隊と戦うも、多勢に無勢(ナポレオン軍3万9千、ブリュッヒャー軍7万)、破れたフランス軍はソアソン(Soissons)に後退する。しかしナポレオンは、ランス(Reims)を占領したロシア軍に対して反撃し、この街を奪回。ロシア軍司令官サン・プリーストに致命傷を負わせた……という展開。さすが皇帝陛下、この期に及んでなかなかしぶとい。

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フルマップ3枚+ハーフマップ1枚を連結して、このクラオンヌ、ラン、ランスといった地域をカバーしている。

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クラオンヌ、ラン会戦は、決戦日(Day of Battle)シナリオなら10ターン程度で終わるが、前日から始める25ターン、30ターンシナリオもあり。

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ランス会戦は午後から始まり、夜戦にもなるが6ターンのみ。

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さらにフィム(Fismes)会戦……渡河中のブリッヒャー軍をナポレオンが攻撃する仮想シナリオも収録。そしていつものように、一連の期間を連続してプレイするキャンペーン・シナリオもあり。

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戦場が広い割に、戦闘ユニットはシート1枚に収まっていて、さほど多くはない。フランス軍ユニットは数も少なく、戦力も少なく、親衛隊以外は士気(イニシアチブ値)も低い。司令官能力があるのもナポレオン陛下(3)とネイ(1)のみ。

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一方のロシア軍、プロイセン軍も、ここまでの戦役と連戦で疲れ切っているのか、低戦力ユニットばかり。「La Patrie en Danger」もそうだったが、すでに何ラウンドも殴り合ったボクシングの試合のように、両軍ともにフラフラである。

ちなみに本作から、共用カードデッキが封入され、一部のカードを読み替えて使用する。

まあ、題材としては「La Patrie en Danger」同様、地味ではあるが、本作以外にこの時期の戦闘を単体で表したゲームも見たことがないので、価値はあるかなと。ラン会戦は本作中、最も大規模な戦いなので、それぐらいはプレイしておきたいと思う。

Napoleon Retreats – Operational Studies Group

※ページの一番下にユニット配置表などのPDFデータあり。

【The Library of Napoleonic Battles】OSG「Napoleon's Resurgence」

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OSGの30%引きセールで、TLNB(The Library of Napoleonic Battles)シリーズ第8作「Napoleon's Resurgence(ナポレオンの再起)」を購入。お題は1813年、フランスに従属していたプロイセンが反旗を翻し、ロシアと対仏大同盟を組んだ、いわゆる「解放戦争」の序盤戦。対するフランス軍も、ロシアで敗退した大陸軍を立て直しこれを迎え撃つという、まさにナポレオンの再起戦。

ちなみに2018年に発売された本作から、現行のボックスアートに統一されている。

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まず時系列的には、1813年5月2日のリュッツェン会戦から。こちらはフルマップだが、同シリーズの「Napoleon at Leipzig」の南側の地図盤と60°角度で連結できるようになっている。一応、フランス軍は勝利したものの、損失も多く、対仏連合軍も追撃しきれず……という結末。できれば、このTLNB版でおおざっぱにプレイしてから、バタイユ・シリーズでより細かくプレイしてみたい。「La Bataille de Lutzen」もバタイユにしては地図盤2枚とさほど大きくないので。

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それに続く5月20日~21日にかけて行われたバウツェン会戦は、マップ1.5枚。これもまた、フランス軍が勝利したものの、あくまでも戦術的勝利、みたいな結末になっている。こちらのバタイユ版も所有しているが、地図盤6枚も使うのでVASSALでないとプレイできないかな。

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さらにバウツェンの地図盤と連結できるケーニヒスヴァルタ(Konigswartha)の戦い(6月4日)もあり。

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さらに6月6日のルッカウ(Luckau)会戦は、ハーフマップ。

リュッツェン、バウツェン会戦は、決戦日(Day of Battle)シナリオだけでなく、前日から行うミニ・キャンペーン・シナリオもあり、自分で決戦場の配置を決められるという意味では、そちらの方が面白そうだ(時間はかかるが)。

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さすが著名な大規模会戦2つを含むセットだけあって、ユニット数も多い。こちらはフランス軍。ロシア戦役敗退後のためか、練度(イニシアチブ値)の低いユニットも多いが、戦力はそれなりに揃っていて、いかにも急ごしらえの、かき集められた軍隊という感じ。たしかに戦えはするけれど、これでは勝ちきれないだろうなと。

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しかし数は多いが質はイマイチなのは対仏連合軍もご同様。それがこの時期の両軍の特徴なのだろう。

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イベントカードは、まだ共用カードではなく、専用カードを使用する。また、本作には天候表と再編成ディスプレイを一緒にした管理シートが付いていて、これなかなか便利そうに見えるが、後発の作品に付いていないのは何故なのか。これ自前で日本語化して使おうかな。

シリーズ全体で見ると、リュッツェン、バウツェンという著名な会戦を2つ収録しているため、ナポレオン戦争ファンなら購買意欲をそそられる内容かなと。自分としても、リュッツェン、バウツェンはそれぞれ一回はプレイしておきたい。まだ未発売だが時系列的にこの後のドレスデン会戦から、さらに「Napoleon at Leipzig」とプレイすると、1813年の解放戦争が俯瞰できるかなと。まあ、本当に1813年戦役を俯瞰する「ナポレオンの黄昏/The Struggle of Nations」もあるけれど、アレはアレで、別の意味で敷居が高いので……

Napoleon's Resurgence – Operational Studies Group

※ページの一番下にユニット配置表などのPDFデータあり。

 

【The Library of Napoleonic Battles】OSG「Napoleon's Quagmire」(New Box)

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OSGの30%引きセールで、TLNB(The Library of Napoleonic Battles)シリーズ第7作「Napoleon's Quagmire (ナポレオンの苦境/泥沼)」を購入。今回も、2017年に発売された当時とは異なる、シリーズとして統一された新ボックスアート版を入手した。

本作には1809年3月~11月における 、スペイン中部エストレマドゥーラ(Extremadura)州での戦役……つまり、スールト元帥率いるフランス軍と、それを迎え撃つウェルズリー(ウェリントン)率いるイギリス軍=ポルトガル軍、スペイン軍との4会戦が収録されている。皇帝ナポレオン不在の半島戦争という感じ。

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時系列的に最初のメデリン会戦(1809年3月28日)はハーフマップ。こちらはクエスタ率いるスペイン軍が、ヴィクトール率いるフランス第1軍団を攻撃したものの敗退。

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続くタラヴェラ会戦(1809年7月28日)もハーフマップ。イギリス=スペイン連合軍が、フランス軍を破り、この功によってウェルズリーはウェリントン侯爵に任ぜられたと。ちなみにだいぶ昔、バタイユ・シリーズのタラヴェラ会戦も対戦したが、TLNBだとハーフマップに収まるんだなあと。

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さらにアランフェス(Aranjuez)会戦(1809年8月5日)、オカーニャ(Ocana)会戦(1809年11月19日)が行われた一帯はフルマップでカバーされている。アランフェス会戦は、マドリードへ接近するスペイン軍を、セバスティアーニ率いるフランス第4軍団が撃退。オカーニャ会戦でも、スペイン軍がさらに壊滅的な惨敗を喫している。

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トレド西方のアルモナシッド(Almonacid)会戦(1809年8月11日)もフルマップだが、こちらもスペイン軍が撃退されている。タイトルには「苦境/泥沼」とあるが、いやなかなかどうして、タラヴェラ会戦以外はフランス軍も頑張っている(ただし相手はスペイン軍に限る)。

さらにアランフェス会戦、アルモナシッド会戦と続けてプレイするミニキャンペーンシナリオと、4会戦を連続プレイするキャンペーンシナリオも付いている。

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こちらがフランス軍カウンター。ナポレオン陛下は不在で、総司令官スールトは統率力2、第1軍団長ヴィクトールと、スペイン王ホセ(ナポレオンの兄ジョセフ)も統率力1となっている。ナポレオン帝国も翳りが見えてきたとは言え、ユニット的には、戦力、練度ともに十分頼もしく見える。

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こちらはスペイン軍。指揮官はずらずらと頭数だけは多いが、司令官は統率力1ばかり、軍団長も自力で活性化できるイニシアチブ値は低い(2や3)人ばかり。もちろんユニットの練度(イニシアチブ値)も2ばかりと頼りない。

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イギリス軍は、さすがのウェルズレー(ウェリントン)が統率力3と、スールトを上回っている。イギリス軍の練度も申し分ないが、あいにくユニット数と戦力は少なめ。

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そして本作にも、各軍団毎の戦力損失を記録する士気マーカーが入っているが、シリーズ第4作「La Patrie en Danger」に付いていたマーカーとは違って、裏面が「D(士気崩壊)」となっている。まあ、この方がわかりやすいか。

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封入されているカードは、本作専用で、まだ共用カードデッキを使う形ではない。一応、特別ルールとして、スペイン軍はカードによって「ゲリラ」も使用できる。ゲリラ・マーカーには、フランス軍スタックを偵察する、橋を壊す、街や林に火を点ける、道路障害を置く/除去する、といった能力がある。

まあ、シリーズの中でも、ちょっと地味な題材のセットだが、この時期はまだまだ大陸軍も頼もしいし、スペイン軍相手に派手に立ち回れるだろう。対するイギリス軍としても、ウェルズレー率いる少数精鋭のイギリス=ポルトガル軍と、そうでもないスペイン軍とのままならない共闘を楽しめるかなと。

Napoleon's Quagmire – Operational Studies Group

※ページの一番下にユニット配置表などのPDFデータあり。

 

【The Campaign of Napoleon】OSG「Highway to the Kremlin II」

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OSGの秋のセールが始まったので、まとめてドカンと注文。基本的には全品20%引きだったが、欲しい商品をカートに入れた後、普段から実施されている「箱入りゲーム10%引き」クーポンも適用できたので、結果30%引きに……OSGから何も言われなかったけどバグじゃないのかそれは。とは言え最近の円安のせいか、値段は全然お得に感じていない。それでも、これで30%引きが無かったらと考えたらゾッとしたので、そのうち考えるのを止めた……

それはともかく今回の買い物紹介。2021年に発売された「Highway to the Kremlin II」。ナポレオン戦争の戦役級シリーズ、The Campaign of Napoleonの一作として1812年のロシア戦役全体を扱うゲームだが、さすがに戦場規模が大きいため「The Campaign of Napoleon 5X」として、基本的な「Napoleon at Bay」よりも5倍増しの、1戦力=5000名、1ターン=5日、1ヘクス=16kmになっている。

一応、初版の「Highway to the Kremlin」も2002年に購入したが、当時は翻訳ルールも出なかったし、カウンターの印刷ズレも酷かったので、まったくプレイしないまま手放してしまった。しかしあれから20年。最近のOSGはカウンターの印刷クオリティも上がってきたので、だったらまた手元に置いておくかと。デザイナーのKevin Zacker御大も、今はまだTLNB(The Libraly of Napoleonic Battles)シリーズに傾注しているが、それが完結したら、次はThe Campaign of Napoleonシリーズの再生・刷新に取りかかってくれるんじゃないかと期待したい(なお御大の年齢が心配……)

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地図盤はフルマップ2枚。旧版より薄い色調に変更されている。旧版はもっと、ミンスクだのスモレンスクだのの境界線がくっきり濃く描かれていた気がする。また旧版は2枚を連結できるように地図盤の縁がカットされていたが、新版ではセパレート状態に。

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通常の5倍スケールとは言え、フルマップ2枚の最東端にモスクワが霞んで見えるので、いかにも「遠いな~」という印象。

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カウンターシートも一新され、「Napoleon at Bay Expansion Kit」と同様の体裁になっている。やはり見やすくなっているし、指揮官の肖像画が付いていると嬉しい派。

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ルールブックは、The Campaign of Napoleon 5Xの基本ルールと、「Highway to the Kremlin II」の特別ルールの二本立て。これも改訂されているはずだが、もう旧版も手元に無いので、詳しい差異はよくわからない。一応、気がついたところで言うと、旧版では1ターン=5日~10日だったのが、1ターン=5日に固定されている。まあ、結局これもまだ翻訳ルールが無いので後回しになるだろうが、改訂された「Napoleon at Bay」含めて、いずれ再挑戦したい。

【参考文献】アルド・A・セッティア「戦場の中世史」

今日は仕事で土浦まで行き、つちうら古書倶楽部にも寄ったけれど買い物は無し。だったら新刊本でも買うかと、前々から読もうと思っていた「戦場の中世史」を購入。章立てが「略奪」「攻囲」「会戦」「季節と時刻」「身体(食料と傷病)」と、まさにLevy & Campaignシリーズの参考書に良いなあと思って。

以前購入した「戦闘技術の歴史 中世編」は戦術級寄りの内容だったが、本書はまさに戦役級の資料。当時の、略奪ありき、攻囲が中心で、会戦は少なめという一般論や、戦争に伴う暴虐性も知っておくと、Levy & Campaignシリーズで抽象化されている現象についてもリアルに想像できるかと思う。

本書では、豊富な歴史的事例も引き合いに出されているが、当時の軍事指揮官たちは結構場当たり的な決断も多く、Levy & Campaignシリーズもあまり計算せずにプレイしても良いのかもなあと思ったり。なにしろあのシリーズ、軍事・兵站システムとしては論理的かつパズルチックなので、きちんと軍隊を運用しないといけないようにも感じるのだが、それをやろうとすると頭がこんがらがるので、もう少しテキトーに動かしてみて、軍事行動が破綻したら破綻したで、その悲喜こもごもを味わうのも良いかもしれない。

まあ、まだシリーズ第一作の「Nevsky」もマトモに動かせていないので、年末年始に再チャレンジしてみたいと思う。

【参考文献】「鉄十字の翼 ドイツ空軍1914-1945」「夜間戦闘機 戦闘日誌1941-1945」

夜間戦闘機―戦闘日誌1941~1945 (1977年) (ハヤカワ・ノンフィクション) | ジェレミイ・ハワード-ウィリアムズ, 渡部 辰雄, 宇田 道夫 |本 | 通販 | Amazon

仙台から山形市まで足を伸ばし、古書店を三軒ほどチェックして、古い早川書房の翻訳本「鉄十字の翼」と「夜間戦闘機」をそれぞれ400円で購入。「鉄十字の翼」は、大戦中のドイツ空軍全般について語られているものの、著者がイギリス人のせいか、やや英独寄りの視点に感じた。「夜間戦闘機」は、イギリス空軍の夜間戦闘機部隊の日記形式になっている。ドイツや日本の夜間戦闘機本は読んだことがあったが、イギリス軍モノは初めて。しかし夜間戦闘機を扱ったウォーゲームもいろいろあるが、あいにく手元にはひとつも無い。以前GMTから出版された「NightFighter」あたりは気になるが……

 

【参考文献】ロン・ノルディーン「現代の航空戦」

仙台の大型古書店にて「現代の航空戦」も購入。これ1988年に邦訳が出ていた「現代航空戦史事典」に、1990年代の湾岸戦争、バルカン紛争を追補したモノ。旧版も昔持っていたけれど手放してしまったのであらためて買い直しと。一応、簡単にベトナム戦争中東戦争の航空戦が俯瞰できるので「Downtown」「Elusive Victory」の参考書には良さそう……と言いつつ、なかなかそのシリーズに再挑戦できていない。反省。