OSGの30%引きセールで、TLNB(The Library of Napoleonic Battles)シリーズ第12作「Bonaparte in the Quadrilateral」(今年2022年発売)を購入。「Quadrilateral」とは辞書にも載っておらず「4側面」みたいな意味なのだろうが、このナポレオン戦争、1796~97年の北イタリア戦役という文脈で言うと「Quadrilateral Fortresses」=「四大要塞群」=オーストリア帝国が北イタリア防衛のために設けた要塞防衛システム……ヴェロナ(Verona)、ペスキエーラ(Peschiera del Galda)、マントヴァ(Mantova)、レニャーゴ(Legnago)の4要塞都市を指す。本作のテーマも、この四大要塞地域での戦役となる。
時系列的に最初は、ロディ会戦(1796年5月10日)。フランス軍が、対岸に位置する(疲れ切った)オーストリア軍後衛部隊を渡河して攻撃、これを敗走させたという展開。伝説としては、ナポレオンが軍旗を引っつかんでロディの橋を渡った……と言われているが、あいにく一次的資料としての裏付けは無いという。デザイナーのZacker氏も、本シナリオの説明として、特にそのことには触れていない。地図盤としてはハーフマップ。シナリオは10ターンと小振りである。
続くカスティリオーネ(Castiglione)会戦(1796年8月5日)はフルマップを用い、この東に、マントヴァ要塞が描かれた地図盤が連結される。フランス軍は、四大要塞群のうち三つを占領し、残るマントヴァを包囲。しかしそこへ救援のオーストリア軍(四つの縦隊)が駆けつけ、ナポレオンは包囲部隊から戦力を引き抜き、オーストリア軍が集結する前に各個撃破するという手に出た。シナリオ単体では12ターンで終わるが、ロナト(Lonato)の戦いと組み合わせたミニ・キャンペーンは、3日間=42ターンを要する。この時のナポレオンの作戦機動を知る意味でも、ミニ・キャンペーンの方が面白そうだ。
続くアルコレ(Arcole)会戦(1796年11月15~17日)も、向こう岸に位置するオーストリア軍に対する渡河攻撃だが、ここでも、ナポレオンが軍旗をつかんで突撃したという伝説がある。Zacker氏も、ナポレオンが落馬して運河に落ちた、という逸話は記しているが、これも3日間の戦闘としては43ターンかかるが、11月16~17日だけをプレイする短縮バージョンも用意されている。
次がリヴォリ(Rivoli)会戦(1797年1月14~15日)。オーストリア軍は再度、包囲されたマントヴァを救うべく攻撃を仕掛けたが、狭隘な地形にも阻まれ、敗走している。たしかに地図盤を見ても、面倒くさそうな地形だ。
さらに12ターンのみの、(抽象化された)マントヴァ要塞包囲シナリオもあり。
さらに1796年12月12~17日のミニ・キャンペーン(アルコレとリヴォリの間)と、地図盤間の移動も行うグランド・キャンペーンもあり。
こちらがフランス軍カウンター。皇帝陛下の肖像画もまだ若い印象。軍団長としては、まだダヴーもランヌもスールトもミュラもいない時期なので、ちと頼りないが、戦闘ユニットのイニシアチブ値(練度、士気)は平均以上になっている。
対するオーストリア軍は、ユニット数も多いし、イニシアチブ値も平均以上となかなか手強い相手に感じる。しかしナポレオンのように、複数軍団を活性化できる司令官はいないため、個別の軍団毎に戦うしかない(協調できない)。また、ロディの戦いを指揮したボーリュー元帥は、総指揮官なのに司令能力(ダイス判定無しで軍団を活性化できる)が無く、ダイスを振って2以下を出さないと活性化しないというダメっぷり。まあ、退却中だったからか……。
この北イタリア戦役は、オーストリアの大軍に対して、フランス軍がいかに立ち回るかが興味深いので、ロナト、カスティリオーネのミニ・キャンペーンあたり、まずはプレイしてみたい。
Bonaparte in the Quadrilateral – Operational Studies Group
※ページの一番下にユニット配置表などのPDFデータあり。