Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】David Stahel「Operation Barbarossa and Germany's Defeat in the East」

Operation Barbarossa and Germany's Defeat in the East (Cambridge Military Histories)

Operation Barbarossa and Germany's Defeat in the East (Cambridge Military Histories)

  • 作者:Stahel, David
  • 発売日: 2011/04/21
  • メディア: ペーパーバック
 

4月ぐらいから「TSWW:Barbarossa」の参考資料にと、いろいろ独ソ戦関係の書籍も集めていたり。まずは、近年の研究書の中でも評価の高い「Operation Barbarossa and Germany's Defeat in the East」(2009年初版、2010年第3版)。本書は、バルバロッサ作戦の計画段階~開戦~スモレンスク戦に焦点を当てた作戦史。特にドイツ軍がスモレンスクを奪った後の、ソ連軍の反撃によってイエルニャを奪回されたあたり、面白く読んだ。そのすぐ後に、またドイツ軍がイエルニャを奪っているのだけれど、西方戦役では経験しなかった反撃を喰らったドイツ軍の動揺など、興味深い。まあ、ソ連軍側からすると、その反撃も不十分だったのだろうが、それまで常勝だったドイツ軍に、一定の精神的衝撃を与えたという意味では、意義深いのかなと。

この、ドイツ軍がスモレンスクを奪った後の戦闘を、手元にあるウォーゲームで確かめるなら、「OCS:Smolensk」のキャンペーン後半が適しているかと思う。ただ、あいにく自分も「OCS:Smolensk」前半しかプレイしていないので、そこはいまだ未知の領域。せっかく本書も買ったので、いずれ触れてみたいと思っている。

またスモレンスク戦と言えば、高名なDavid.M.Glantzが「Barbarossa Derailed」というシリーズを出しているが、同著者のスターリングラード3部作は買ったものの、こちらには手を出していない。もちろん良書だとは思うが、自分も軍事史学者じゃないし、一介の趣味ウォーゲーマーに過ぎないんだから、なんでもかんでも読むワケにもいかず、しばらくはこの「Operation Barbarossa and Germany's Defeat in the East」で十分かなと。

【Operational Combat Series】「Hungarian Rhapsody」The Battle of Debrecen Solo-Play AAR Part.2

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「OCS:Hungarian Rhapsody」のシナリオ1「The Battle of Debrecen」を、お試しソロプレイ開始。こちらは主戦場デブレツェン周辺の第3ターン表の戦況。第1ターン、ソ連親衛騎兵集団は、薄いハンガリー軍戦線を蹂躙して西進し、第7・第9親衛機械化軍団は、ドイツ第23装甲師団に襲いかかった。第23装甲師団は、ナギヴァーラド(Nagyvarad)前面で包囲され、第2ターンには後退しきれず全滅。後方に控えていたドイツ第1装甲師団も、突破してきたソ連軍騎兵を次々に撃砕したが、戦線の綻びを埋めようとして分散した結果、各個撃破に遭い、半壊している。

一応、第2ターンには、枢軸軍増援として、フェルトヘルンハレ装甲擲弾兵師団がデブレツェン前面に展開し、第13装甲師団がさらに南に駆けつけたものの、ソ連軍先鋒はすでにデブレツェンに迫っており、戦線を埋めるだけの部隊がいない状況。 

上空ではエーリッヒ・ハルトマン麾下のBf109G戦闘機隊が、押し寄せるソ連軍機を迎撃しているが、ソ連軍戦闘機も互角に戦い、ハルトマン以外の戦闘機隊がみるみる消耗していく。また、戦車殺しルーデル麾下のJu87Gタンクバスター隊も、護衛機無しでソ連軍を襲っているが、ソ連軍もキラースタックを作らず分散しているため、致命的な効果は上げられていない……とまあ、こちらの主戦場は非常に動きが多く、面白い。平地での殴り合いなので、混沌としていると言えばそうなのだが。

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こちらは、東のシビウ(Sibiu)戦区。すでに、枢軸軍防御の要であった第22SS義勇騎兵師団マリア・テレジアが、ソ連軍砲兵90火力の連射をくらい、全滅している。その開いた穴から、ソ連第23戦車軍団が突破し、枢軸軍戦線を分断している。また第2ターンは、枢軸軍が後手を取ったため、増援として登場するはずのソ連第40軍は、第3ターン表になって登場。さらにその後方では、ルーマニアパルチザンが深林を浸透しつつ、枢軸軍補給線を脅かしている。こちらも「総統命令」が解除された第2ターン以降は一気に動きが出るため、面白いと思う。 

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まったく動きが無かったのは、北方のカルパチア戦区。一応ソ連軍としても、何カ所か攻めてみたものの、補給ポイントとステップを消耗したあげく、1ヘクスも前進できないという状況。これ「OCS:Beyond the Rhine」の西方防壁突破にも似て、なかなか進まない奴。正直、あまり面白くないし、北方戦区は省略してプレイしても良いと思う。 

という形で、2.5ターン動かしてみたが、北方戦区以外は面白かったので、いずれまた取り組んでみたい。ただ、主戦場のデブレツェン方面は、殴り殴られの展開になりそうなので、OCSのヒドさ(混沌さ)に慣れていないプレイヤーは、もっと穏便な戦場から入った方が良いかもしれない。まあ個人的には、さらっと1回プレイした程度で良しとして、次の「TSWW:Barbarossa」に移ろうと思う。個人的なプレイ熱は、もうOCSよりTSWWなのよ。

【Operational Combat Series】「Hungarian Rhapsody」The Battle of Debrecen Solo-Play AAR Part.1

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7月に到着したOCS(Operational Combat Series)の新作「Hungarian Rhapsody」のシナリオ1「The Battle of Debrecen」を配置してみた。このシナリオは、東側の地図盤1枚だけを使い、キャンペーン開始時の1944年10月5日ターンから、10月26日ターンまでの7ターンだけを扱っている。まずはこのシナリオで、キャンペーン序盤の動きを学ぼうと。 

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史実的には、ソ連軍が北のカルパチア山脈の峠道に迫り、南からはルーマニアを味方につけた親衛機械化部隊がハンガリー領内に侵入している。さらに10月8日ターンには、東からソ連第40軍が迫り、三方からこの地域に攻め寄せるという状況になっている。中でも、この時期の(そして本シナリオの)主戦場は、シナリオタイトルにもあるデブレツェン(Debrecen)周辺である。この作戦を担当したソ連の機械化・騎兵集団は、10月6日に作戦を開始し、3日間で100km(OCSでは12~13ヘクス)を突破し、いったんは機械化部隊でデブレツェンを攻めたものの失敗。さらに騎兵部隊を注ぎ込んで10月20日デブレツェンを占領し、10月22日には北のニーレギハーザ(Nyiregyhaza)も制圧した。しかし枢軸軍側にも、第13装甲師団とフェルトヘルンハレ(将軍廟)装甲擲弾兵師団が増援に駆けつけ、これを奪回。ソ連軍は南へ退却した……という展開になっている。結局、ここでの攻勢の頓挫により、ソ連軍は、西側地図盤にあたるブダペスト南部からの攻勢に切り替え、直接ハンガリーの首都を狙いに行ったと。そういったキャンペーン序盤の流れを知るうえでも、一度は通過しておきたいシナリオである。 

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主戦場をクローズアップしてみて見よう。まずB3901から流れる河川より南側の地域は、シナリオ範囲外(配置されているユニットは例外)。攻めるソ連軍は、ハイスタックの親衛軍団が並んでいるし、その背後には144火力のカチューシャ砲師団も控えているが、その突破口を支える歩兵部隊がいない。この後方にもう1個、親衛騎兵軍団があるが、どこかの軍団をバラして戦線を埋めないとまずいかも。もちろん守る枢軸軍としても、頼りないハンガリー歩兵師団(アクションレーティング2)ばかり。一応、第1装甲師団、第23装甲師団があるが、第23の方は、すでに前線の穴埋めに使われている始末。戦線の端っこを支える第22SS義勇騎兵師団マリア・テレジアの連隊も、カチューシャ砲で吹き飛ばされそうだ。

またソ連軍には正面軍(Front)マーカーがあり、補給能力は無いものの、補給源として機能し、司令部がスタックしていれば、その能力を使って、補給を支給できる。たしかにデブレツェンを攻める第2ウクライナ正面軍と第6親衛戦車軍司令部はスタックしており、最初から12SP(補給ポイント)が積まれているが、そこにはワゴンもトラックも無いので、その司令部の支給範囲(12)でしか隷下のユニットは作戦が行えない。まあ一応、ソ連軍にも輸送機があるから空中投下もできるが、デブレツェンを狙うなら、その手前のナギヴァーラド(Nagyvarad)を落とした方が、行動しやすいのだろう。なにしろソ連軍は、ゲーム全体を通じて、鉄道線を使用できないというのも辛い……

他にも、写真右下に見えるのは、ルーマニアの山岳パルチザン部隊で、常に補給下にあり、荒地か深林ヘクスでしか存在できない(離れたら除去)。またソ連軍は、このパルチザン4個ユニットを、8-2-2ルーマニア山岳師団ユニットに置き換えても良いと。しかしこの部隊、むしろバラまいて、東から撤収してくる枢軸軍の補給線を断たせた方が良さそう。

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東に目を向けると、シビウ(Sibiu)北方では、ソ連ルーマニア軍と、ドイツ・ハンガリー軍部隊が睨み合っている。また地図盤東端に配置された枢軸軍は、特別ルール「総統命令」によって、10月8日ターンになるまで行動は不可。10月8日ターンから撤退が始まり、それを追う形で、東からソ連第40軍が入ってくると。それに伴って、シビウ北方の部隊も下がらんとしょうがないんだろうなあ。この戦区は、デブレツェン方面とは隔絶しているので、対戦するのであれば、複数プレイヤーで分担したいところ。 

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同じく北のカルパチア峠戦区も、他の戦区とは隔絶している。この戦区のユニットは、両軍とも白枠で区別され、この戦区から離れられない。この戦区も担当プレイヤーが欲しいところだが、両軍とも地味な戦いに終始しそう……

この北方戦区を守るドイツ第11軍団と第49山岳軍団は、第1装甲軍司令ハインリーチ上級大将の防御手腕を反映して、毎月15陣地レベル分、各ターン毎に5陣地レベル分まで無償で配置できる(しかも自軍ユニットがいないヘクスにも可)という特別ルールあり。一応、配置できるのは1レベル、改良できるのは2レベルまでという制限はあるものの、攻めるソ連軍としては厄介。ただ、長期的なキャンペーンとして考えれば、南部のソ連軍部隊が進撃してくれて、この峠の背後の補給線を断ち切ってくれれば、いずれ守備隊は飢え死にするだろうし、わざわざ力押しするんだろうか? まあ、攻めるにしても、補給ポイントを節約する意味で、どこか1~2箇所かなあ。

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こちらが両軍航空部隊。ソ連軍はこの他に、すでにシビウや盤外ボックスに配置された航空ユニットもあり、この写真にあるのは自由配置分。また枢軸軍には、撃墜王ハルトマンのBf109G、戦車殺しルーデルのJu87Gもあり。しかし枢軸軍の飛行場は、前線に近いところが多く、ソ連軍に攻め込まれない位置に置くとなると、選択肢が限られるかも。また航空作戦にも特別ルールがいくつかあり、爆撃に対しては対空射撃+1、施設に対する爆撃は禁止など、対空能力の向上が反映されている。 

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枢軸軍には10月8日ターンに、フェルトヘルンハレ装甲擲弾兵師団、第13装甲師団、第109装甲旅団が登場。さらに19日ターンには、ハンガリー第2戦車師団も。それにしても、この新しいデザインの増援管理ボックス、良いですな。

他にも特別ルールとして、枢軸軍は小都市(Minor City)に2RE(連隊規模)以上の戦闘ユニットは配置できない。まあ、いろいろと制約が多いところは面倒かな。

ソ連軍の決定的勝利は、①枢軸軍カルパチア峠守備隊背後の鉄道線を切断し、②デブレツェンとニーレギハーザを補給下で占領し、③枢軸軍戦闘ユニット20個以上の補給線を断つ、という3条件を達成すること。さすがにそれは厳しいので、狙うのであれば局地的勝利、デブレツェンかニーレギハーザかチョプ(Csap)のうち2つを補給下で占領する、だろうか。それも史実ではしくじっているし、どうなんだか。

と、特別ルールにも目を通したので、とりあえず試しに動かしてみようか……

【Company Scale System】「The Fulda Gap : The Battle for the Center」Exercise Summer Rain Solo-Play AAR

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昨日に引き続き「CSS:The Fulda Gap」の練習用シナリオ「Exercise Summer Rain」をソロプレイ。対装甲射撃ルールを間違えていたり、一度プレイしたことで、ああしたら?こうしたら?という案も出てきたので、あらためて再確認ということで。

第1ターン(0700時)、前回と同じく、先手ソ連軍の1番手・第68親衛自動車化連隊が北寄りに進撃。これに対するアメリカ第11機甲騎兵連隊の臨機射撃もやはり当たらず。またソ連軍師団偵察大隊のBRDM2は、快速を活かして南下し、東西国境線を突破して、一気に突破ヘクス最南端の2768へ向かった。 

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そして前回と同じく、ソ連軍は、連隊フォーメーションチットに続き、師団チットを引いて連続活性化。BMP中隊が、Mansbach手前の平地(3339)に陣取っていた米軍騎兵中隊にスパイラル対戦車ミサイルを撃ち込んだところ、あっけなく潰走(いったん盤外へ退場)してしまい、前線にぽっかり穴が。ここから一気に第68親衛連隊がなだれ込み、またしても突破ヘクス2768へ達してしまった。この後、さらにソ連軍直接指揮チットも続き、早くも第1ターンだけで、10個以上のユニットが突破に成功。また師団偵察隊のBMP2の対戦車ミサイルもバカ当たりし、米第68戦車大隊のM60A3中隊2個を除去してしまった。そう、前回より対戦車ミサイルを活かしてみたが、なるほど射線さえ通れば、かなり使える。 

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怒濤の連続チットで圧倒されたアメリカ軍だが、そこから先は逆に、アメリカ軍の連続活性化となった。まず突破しきれなかったソ連軍ユニットを取り囲み、こちらもミサイルと砲射撃を加えていく。また、ソ連軍が目標とする突破ヘクスに重弾幕(移動不可)を撃ち込むという、個人的にはあまりやりたくはなかったゲーム的な嫌がらせもしてみた。 

第2ターン(0900時)。ソ連軍は、派兵ポイント(DP)が増えず、新着の第243親衛自動車化連隊しか活性化できなかった。そのため、動きの止まった第68親衛連隊には、さらなるアメリカ軍の攻撃が加えられ、徐々にユニットが除去されていく。結局、後続の第243親衛連隊は、大きく迂回する形で、南の突破ヘクスへ向かった。 

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第3ターン(1100時)。やはりソ連軍は派兵ポイントが増えず、このターンに来るはずの第28親衛戦車連隊チットも買えず、引き続き第243親衛連隊チットのみを投入。その第243親衛連隊は、アメリカ軍の臨機射撃をかいくぐり、一気に突破ヘクス2768へ到達。しかし工兵や砲兵中隊はこの突破に追いつけなかったので、この後のターンで、先の連隊と同様、アメリカ軍に掃討されていくのだろう……という展開が見えたところで、今回も3ターンで味見終了とした。一応、ここまでの勝利点的には、ソ連軍ユニットが24個突破✕0.5=勝利点12、アメリカ軍が除去したユニット8個✕2=勝利点16なので、アメリカ軍がシナリオ的には勝っていることになる。お、おう、そうなのか……まあ、ソ連軍は突破したけれど、突破口を塞いだのでアメリカ軍の勝利と思えばいいか。 

今回感じたのは、CSSの基本部分である「潰走した戦車ユニットがあっけなく消失する」「非活性側ユニットは、基本的に臨機射撃を1回しか行えない」というあたりが、遅滞戦闘を表現するのに向いていないのでは?ということ。なにしろアメリカ軍の前線は、戦車ユニットばかりのうえ、薄いため、1ユニットが潰走すると、大穴が空いてしまう。まあ、指揮官ユニットを単独で配置して(それもルール的には可能)、前線ユニットを増やすという手もあるけど、他のユニットとスタックさせて士気を上げ、潰走する可能性を低くした方が良いような気も。ソ連軍ユニットの移動力も高いため、その大穴からなだれ込めば、二線陣地も無いので、一気に後方まで行けてしまう。守る側としても、臨機射撃は1回しか行えないので、すでに臨機射撃済みのユニットはそれ以上どうすることもできない。地形的にも、射線が通りにくい箇所が多々あり、意外と臨機射撃を受けずに通れたりもする。と言って、アメリカ軍が射線が通りやすい位置に陣取ると、ソ連軍の対戦車ミサイルで撃たれるという痛し痒し(そこは面白いと思う)。

これが兄貴分システムのGTS(Grand Tactical Series)であれば、戦車ユニットでもダメージを受けつつ盤上に留まったり、敵が射撃ゾーンに入るたび、練度チェックに成功すれば何度でも臨機射撃が行えるため、しぶとく遅滞行動が行えるのだが、CSSでは、そういった部分を省略してしまったため、この題材とはマッチしていないような。あるいは中隊ではなく、小隊ユニットにして数を増やすとか……違うか。

またこのシナリオでは「もしNATO軍ユニットが、ワルシャワ軍進入ヘクス(地図盤東端の5236か5237ヘクス)から4ヘクス以内に進入したら、直ちにNATO軍の勝利とする」というサドンデス条件があるけれど、今回のゲーム中『あ、行けるじゃん』と思う瞬間が何度かあった。ソ連軍とて全域をカバーできる部隊は無く、アメリカ軍ユニットの移動力も高いのだから、突っ走ろうと思えば行けるはず。また西ドイツ側には、国境警備隊ヘクス(ソ連軍が侵入するには縦隊で全移動力を消費)が存在するが、東ドイツ側にそんなヘクスは無いし、東西国境間の移動を制限するルールは他に無い。

とまあ、練習シナリオとは言え、状況設定としてそれどうなのよ?と思う部分もあり、どうも自分が思う第三次大戦の姿とはだいぶ違うなあと。このシリーズ、将来「Hof gap」「North German Plains」も出すと言うけれど、基本的な部分が本作と変わらないなら、もう購入しないかも。自分が思う第三次大戦に近いのは、やはり「Less Than 60 Miles」なので、そちらに戻った方が良いんだろうな……

【Company Scale System】「The Fulda Gap : The Battle for the Center」Exercise Summer Rain Solo-Play AAR

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今年4月に購入したCSS(Company Scale System)シリーズの仮想第三次大戦「The Fulda Gap」をようやくソロプレイしてみた。しかし海外では早々に「開発(デヴェロップ)不足ではないか」「小川を戦車が渡れないのはおかしい」「対戦車ミサイルを小川越しに撃てないのは意味不明」という意見が続出しており、正直、評判はよろしくない。デザイナー側も、すでにそのあたりを反映したエラッタを公開しており、車輌も小川を渡れるし、対戦車ミサイルも小川を超えられるようになっている。今回は、そのエラッタを適用した形でプレイすることに。※最新エラッタは下記リンクに。

http://talk.consimworld.com/WebX?233@@.1ddcadd9!enclosure=.1de1f305

また、個人的に気になっているのが『CSSの戦車戦は面白いのか?』という問題。CSSは、先輩システムであるGTS(Grand Tactical Series)から派生したシリーズだが、歩兵戦はともかく、戦車戦が非常に簡略化されている。GTSでは、歩兵も戦車もちままちとダメージを与え合う形だが、CSSでの戦車戦は、ノーダメージか一発退場か、0か100か、みたいな判定に変わっている。これまでのCSSは、主に歩兵戦中心だったので、その変化もあまり感じなかったが、「CSS:Montelimar」で初めてマトモな戦車戦を行った際『うーん……』という印象を感じてしまった。そしてこの「CSS:Fulda」が、CSSでは初めて戦車戦主体の作品になっているので、果たしてそれ面白いんだろうか?と発売前から疑問に感じていた。そのあたりも是非、確かめてみたい。

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まず最初に選んだのは、シナリオ1「Exercise Summer Rain」。想定としては、1985年8月1日、ワルシャワ条約軍が西側へ攻撃を仕掛けたものの、すでにNATO軍も開戦24時間前から警戒態勢に入っており、戦術的な奇襲には失敗。それでも、とにかく開戦初日の朝、ソ連第27親衛自動車化狙撃師団が、フルダ峡谷に陣取る、米第11機甲騎兵連隊めがけて正面攻撃を仕掛ける、という筋書き。疲労ルール無し、航空支援やヘリコプター無しなので、まずは「CSS:Fulda」の基本部分に慣れるためのシナリオなのだろう。地図盤も1枚のみで、ソ連軍は地図盤西端から突破すれば勝利点が得られ、アメリカ軍はソ連軍ユニットの除去により勝利点が得られる。

ソ連軍は各ターン毎に、五月雨式に1個連隊ずつ、3個自動車化狙撃連隊と1個戦車連隊が登場する。ソ連軍師団の行軍方法を見ると、各連隊毎に進撃ルートを1本ずつ定め、だいたい幅20kmぐらいの範囲を攻める想定らしい。CSSの地図盤は、1ヘクス=500m、縦幅35ヘクスなので、だいたい地図盤1枚の縦幅=17.5kmが師団担当地域になるだろうか。このシナリオでは、ソ連軍が突破すべき地点は3カ所定められており、そこに向かって、4本の進撃路をイメージして始めてみよう。 

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では第1ターン(8月1日0700時)開始。先手ソ連軍は、まず師団の偵察大隊を3方向に派遣。斬り込み役の第68自動車化狙撃連隊は、地図盤北寄りのMansbach(3238)目指して、東西国境線を越えた。各スタックは、3個中隊+大隊指揮官によって構成し、もし射撃する場合は、大隊火力をまとめて撃ち込めるようにしてある。いや、そうでもしないとM1戦車には対抗できないのだ。しかし後から考えたら、どうせマトモに撃ち合う必要もないんだから、スタックはバラして動かした方が良いかも。なにしろアメリカ軍の重弾幕をくらうと、スタックごと動けなくなるし。

これに対する、アメリカ第11機甲騎兵連隊の射撃は、いずれもハズレ。たとえ新鋭のM1戦車でも火力7、T80戦車の防御値-4、(ルール間違い)2ヘクス以上離れると火力-3となれば、差し引きゼロで、10面体ダイスを振ってゼロを出さないと命中しないなので、3以下でないと命中しない。このためソ連軍は、臨機射撃なんぞ知ったことかとばかりに、アメリカ軍に接敵し(隣接ヘクスに入られたユニットは、射撃ゾーンが1ヘクスに減じられる)、そのまま後方へと進撃した。そう、ソ連軍は、アメリカ軍ユニットを除去しても勝利点はもらえないので、わざわざ敵ユニットを潰そうとするより、無視して前進した方が良い。 

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アメリカ軍も、後方に控えるM109自走砲中隊(砲撃力5)の支援によって、ソ連軍スタックに重弾幕(移動不可となる)を張り、その進撃を食い止めた。しかし前線のM1/M3騎兵中隊・M1戦車中隊は、集中射撃によって火力を1上げたうえで、隣接ヘクスのソ連軍を2チット連続で射撃しても、ようやくBMP中隊を1個潰走させたのみ。これが当初に危惧していた「0か100か」の戦車戦。

そして弾幕を受けなかったソ連軍大隊スタックは、そのままアメリカ軍前線部隊を無視して後方へ突進。師団の戦車大隊は、初期ルールで禁止されていた小川を渡って、アメリカ軍自走砲中隊に肉薄した。さらに連隊の偵察中隊(BRDM2装備)は、一気に地図盤端まで達した。

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続く第2ターン(0900時)。先手を取ったソ連軍は、先行した戦車大隊の射撃によって、アメリカ軍自走砲中隊を潰走(盤外へ退場)させ、さらに自動車化狙撃大隊1個スタックともども、合計6ユニットで突破ヘクス(2746)から退出した。実際の突破ヘクスは、写真の範囲に収まっていないが、都合上、突破ユニットを少しずらして撮影している。またこのターン、師団の2番手として第243自動車化狙撃連隊(水色のカラーバー付きユニット)が登場。こちらは、先の連隊と並走する形で、やや南のSetzelbach(3246)へ。 

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アメリカ軍も、この2番手・第243連隊に対して射撃を行い、偵察中隊と狙撃兵中隊(BTR60装備)を1個除去したが、あいにくそこまで。ソ連軍は、無数の射撃を浴びつつも、果敢に士気チェックに耐え、戦車大隊1、自動車化狙撃大隊2個スタック、合計9ユニットを突破ヘクスから退出させた。アメリカ軍としては、BMP(防御-1)ならともかく、装甲ペラペラのBTR60(装甲0)だったら討ち取れるかと思ったが、まったくそんなことはなかった。いや、ここはソ連軍の士気チェックのダイス目も良かった。もともとGTS/CSSは、チット引きと10面体ダイスによって、振れ幅が大きい部分もあるが、今回のソロプレイに関して言えば、全体的な運は、ソ連軍寄りだったと思う。 

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さらに第3ターン(1100時)。ソ連軍は、3番手・第28親衛戦車連隊が登場。先に登場している2個連隊は、その大半が突破に成功したため、もうチットは購入せず、代わりに第28親衛戦車連隊チットを投入した。この連隊は、さらに南のKnottenhof(4149)へ向かわせ、M60A3戦車装備のアメリカ第68戦車大隊(本来は第8機械化歩兵師団所属だが、本シナリオでは第11機甲騎兵連隊麾下)に攻めかかった。

これに対してアメリカ軍は、第11機甲騎兵連隊のM109自走砲中隊3個すべてを投じて、ソ連軍の3個戦車大隊スタックをすべて重弾幕下に置き、その動きを封じた。しかしその直後、風チットが引かれて弾幕は消え去り、さらに続けてソ連第28親衛戦車連隊フォーメーションチットが…… 

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ソ連軍は、まず1個戦車大隊スタックを散開隊形に変えて、第2アクションで、進撃路を塞ぐM60A3戦車中隊を射撃。このT80戦車3個中隊がかりによる集中射撃が当たり、M60A3中隊も士気チェックにしくじって、いったん盤外へ退場。この空いた穴から、他の戦車連隊スタックも一気に後方へなだれ込み、突破ヘクス27.62へ迫った。この場合も、M60A3中隊が潰走しなければこんな前進は許さなかったのだが、ソ連軍の運が良かったと言うべきか、アメリカ軍に運が無かったと言うべきか。

とにかく3ターン連続でソ連軍に突破を許してしまったので、ここで味見ソロプレイは中止。場合によっては、一気に突破できるシナリオだと分かったので、それ前提で、考え直さないと。しかしこれも「車輌も縦隊なら小川を渡れる」というエラッタが適用されたからこそ出来た突破であって、それを禁じた初期ルールでは、ここまで前進できないだろう。対戦車ミサイルに関しては、今回は隣接ヘクス戦闘が多かったため、使う機会があまりなかった(対戦車ミサイルは最低2ヘクス射程)。

個人的な、CSSの戦車戦を疑問視した点に関しては、まあ予想通りと。今回のプレイでも、両軍とも結構撃ち合った割に、ユニットが除去される場面は少なかった。ある意味、お互いに無傷なまま突破し、後退する感じ。自分としては、両軍とも失血しつつ前進したり遅滞行動を行う第三次大戦が見たいのだが、デザイナーが思う第三次大戦は違うのかもしれない。ソ連軍の登場も五月雨式だったが、同時多発的に攻撃してくるんじゃないの?と思ったり。とは言え、これはまだ初見なので、同じシナリオをもう一度ソロプレイしてどうなるか、確かめようと思う。 

【The Second World War】「TSWW:Barbarossa」Part.4 Soviet & Allied Units

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「TSWW:Barbarossa」カウンター紹介シリーズ・その4。最終回は、ソ連軍と連合軍カウンター。

まずソ連軍の戦車軍団、機械化軍団から見てみよう。額面戦闘力が最も高いのは、第1と第2戦車軍団(40-38-16)。この第2戦車軍団カウンターは1943年3月後半ターンに、第1戦車軍団カウンターは1943年5月前半ターンに登場する。つまりクルスク戦の前であり、本ゲームで扱う期間のぎりぎり最後となる。

ソ連軍の戦闘効率補正(CEV)は、1941年も1942年も、モスクワ近辺で最初に雪が降るターンまでは✕0.75、2度目の雪が降ったターンから✕1.0となる。んで1943年になると、ようやく雪の有無に関係無く、一律✕1.0、つまり額面戦闘力そのままとなる。なので最強カウンターである第1、第2戦車軍団は額面戦闘力40そのままだが、ドイツ軍側の最強カウンター、グロスドイッチュラント師団(戦闘力31✕CEV1.3=40.3戦闘力)より、微妙に下と。

しかし軍団ユニットはともかく、ソ連の戦車・機械化師団ユニットは、戦車ショック効果(ASE)は✕0.75、対戦車効果(ATE)は✕0.5と装備的に劣っているため、額面戦力でドイツ軍に優っていても、見えない部分で負けている。また戦争初期の半自動車化師団(12-10、14-8)は、移動は自動車化として扱うけれど、戦闘は非自動車化として扱われる。このあたり、ソ連軍戦車/機械化部隊の変遷も追えるのではないだろうか。

さらに第6親衛騎兵軍団(21-9)のように、戦車と騎兵が混在している妙なユニットもあり、この場合、自動車化として移動してもいいけれど、騎兵として移動する場合には移動力が半減される(それでも騎兵移動の方が効率が良い場合もあるだろう)。

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もちろん細かな戦車旅団(5-4-16)、独立戦車大隊(4-3-18)などもあり。重戦車大隊(3-16)は、独立戦車大隊の中でも、T34やKV-1の装備率が高い部隊なのだろうか。突撃砲大隊(2-3-16)は、一番早いものが1943年1月に登場するので、まだSU-76装備なのかなあ。部隊名とその装備車輌をつき合わせるには、我が家の資料(主にコロミーエツの独ソ戦車戦シリーズ)では全然足りない……

また、わざわざ「ドヴァトール将軍の騎兵コマンド部隊」なる特別ルールがあり、Dovator 5-9ユニットは、敵影響ゾーン(EZOI)を無視し、戦闘前後退可能、枢軸軍の非自動車化ユニットのいるヘクスを通過可能なうえ、常に攻勢補給下にあるという。ずいぶん豪勢な扱いだが、その元ネタはどこに載っているだろうと思ったら、白水社から出ている「モスクワ攻防1941」(ロドリク・ブレースウェート)にその記述があったので、そちらもいずれ読書記事として紹介する予定。

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歩兵師団の戦力もバラエティに富んでいて、頼もしい15戦力から、頼りない5戦力までバラバラ。というか7戦力や6戦力の歩兵「旅団」があるのに、それより弱い「師団」っていったい……。また親衛歩兵師団も多々あるが、その大半は9-10-6で、最強でも12-6なので、一般歩兵師団より強いというワケでもない。ただし親衛歩兵師団は、1942年11月前半ターンから、2対戦車ポイントが付与される。一般歩兵師団は、1944年1月前半ターンになって、ようやく1対戦車ポイントが付与されるので、対戦車装備が優先して回された分、額面値以外の部分で、親衛歩兵師団の方が頼もしくなっている。

他にも山岳師団、空挺師団・旅団、グライダー旅団、スキー旅団等々もあり。

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ソ連軍と言えば、の砲兵部隊もふんだんに。10戦力以上の砲兵旅団となると、その破壊力(防御弾幕)は、平均的な1個歩兵師団に匹敵する。さらに親衛ロケット砲(カチューシャ)旅団ともなれば、最強24攻撃力なので、攻勢支援部隊としてはかなり頼もしい。その代わり防御力は3なので、防御弾幕には使えないと。こういう暴力的な数値を見てしまうと、ドイツ軍の列車砲(戦力1)がとても頼りないことが分かる。

また各種工兵部隊もあるうえ、ソ連の場合、人口ポイントを強制徴用して建設工兵にするという酷い荒技もある。モスクワを守るためなら、女子供老人でも使うぞと。

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そのソ連のヒドさの代名詞、NKVDこと内務人民委員ユニット(赤地・兵科は黒・数値はは白)もあるが、ルール上、それほど酷いことをするわけではない。せいぜい、隣接ヘクスにいるスキー部隊がオーバーランされそうになっても、戦闘前後退を許さない程度だ(やっぱり酷い)。またスターリンが信頼していない民族地域の都市には、必ず4スタックポイント(師団規模)のユニットを配置しなければならないが、NKVDユニットなら、その要件に関してスタックポイント3倍として換算される。つまり一般歩兵師団(SP4)を配置する代わりに、NKVD連隊(SP1x3)で大半が賄えると。

そのNKVD所属部隊として、OMSBON(Otdel'naya Motostelkovaya Brigada Osobogo Nannachenia=特殊作戦用独立自動車化旅団)というコマンド部隊があり、奇襲判定、戦闘前後退判定にボーナスがあるうえ、パルチザンが対パルチザン影響ゾーンを無視できるようにするなどの特別ルールが付いている。これもどこに元ネタが載っているんだよ?と思ったら、先述の「モスクワ攻防1941」に載っていた。

また赤地に白字は、大都市で集められた民兵ユニットであり、その都市から3ヘクス以内でしか活動できない。もし3ヘクス以上離れたら? その際は、問答無用に除去され、補充することもできない…… 

そして民族(Ethnic)部隊も、それぞれ民族名がカウンターに記されている。Uzはウズベキスタン、Kzはカザフスタン、Trkはトルクメニスタン、Tadはタジキスタン、Azarはアゼルバイジャン。もしも枢軸軍がコーカサス地方に侵入した場合、こういった民族の皆さんはスターリンに信頼されていないため『あいつらドイツ軍に味方するかもしれないから、その前に粛清しておこう』とばかりに、自動的に半減されたり除去され、いったん補充プールに送られ、そのユニットを構成している戦車や砲兵などの装備は残したまま、歩兵(人員)要素だけが粛清されて失われ、また新たな歩兵補充ポイントを入れないと復活できないという、恐ろしい仕組みになっている。

さらに……これはかなり確率が低いが、もしソ連が、モスクワ、レニングラードスターリングラード、バクー、ウラル東方の都市のうち、3つを枢軸側に奪われた場合、西側連合軍(アメリカやイギリス)が、ソ連領内に入ってソ連軍を助けてもいいというルールがある。まあ、北のムルマンスクに海上輸送されてくるか、南のイランから入ってくるかは知らんが、そのように米英ソが共同戦線を張ってもいいのだが、米英ユニットとソ連ユニットはスタックしてはいけないと。しかし、もし戦闘後後退などで、ソ連軍ユニットが米英ユニットを踏み越えて一時的にスタックしてしまった場合、そのソ連軍ユニットは、西側の悪しき風習に染まったと見なされ、いったん強制収容所に送られ、やはり装備だけを残して人的要素だけを引っこ抜かれ、また新たな人員を入れ直して前線に戻されるという、恐ろしいルールになっている。ちなみにこのルール原文で、誤植を見つけたのでメーカー側に知らせたところ『ああ、ありがとう。でもそのルール、使わないよね』という返事が来て、おい、使わないルール入れるなよ!と言いたくなった……

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さらにパルチザン部隊も多々あるが、さすがにこれは名称も無く、そのほとんどが攻撃不可の(1)戦力ユニットばかり。しかし少数ながらも、攻撃可能な1戦力ユニットもある。パルチザンのルールは、今回の「TSWW:Barbarossa」で大幅に改訂されたので、それに対抗する保安部隊のルールともども、じっくり検証していきたい。実際、もし複数プレイヤーで枢軸軍を担当するなら、保安部隊専従プレイヤーが欲しいが、その逆に、ソ連側にはパルチザン専従プレイヤーが欲しいかもしれない。

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航空ユニットも、鬼のような数が収録されているが、ドイツ空軍と比べてしまうと、数値的にはかなり頼りない。ルール上、ソ連の航空部隊は、通常の赤軍航空隊(VVS)の他に、親衛軍(赤地に黄文字)、防空軍(PVO カウンター下段が白文字)、長距離戦略爆撃隊(ADD カウンター上段が白文字)、海軍航空隊(VMF 白地)に分類される。このうち、親衛軍と防空軍は1941年中から、空戦などで有利なダイス修整+1(ACEV 航空戦闘効率補正)が得られるが、それ以外の所属ユニットは1941年中は-1、1942年~1943年は補正0となっている。対するドイツ空軍は、1941年~1942年が+2、1943年が+1なので、序盤の劣勢はいかんともしがたい。

また珍しいところでは、ズヴェノ親子航空機という、親爆撃機(QB)と子戦闘機(QFD)を分離・合体させる計画機もある。これ空中で発進させるのは問題無いのだが、合体させるにはダイス判定が必要で、失敗すると空中衝突し、親子機ともども失われてしまう。いや待て、これ1ターン半月のゲームだぜ……

さらに航空機工場のルールも「TSWW:Barbarossa」で細分化され、工場カウンターも、イリューシン、ミグ、ヤコブレフ等、航空機メーカー毎に分かれている。つまり枢軸軍が、ミグの工場を破壊したり占領したからといって、イリューシンの工場で生産されているIl-2の生産に影響するわけではないと。

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ソ連海軍カウンターも200個以上収録され、結構あるんだなあという印象。中には、未成艦となったソビエツキー・ソユーズ級戦艦もあり、独ソ開戦時にはすでに建造も始まっているが、1943年夏までのソ連軍戦闘序列では、まだどれも完成していないし、東部戦線後編「TSWW:Vengeance」でも登場するとは限らない。しかしそのソビエツキー級、防御力10とは、戦艦ティルピッツ(防御力9)を上回り、戦艦大和(防御力10)と並ぶ最強の頑丈さ。そういやソビエツキーと大和が撃ち合う仮想戦記小説があったが、TSWWならそれも可能ということだ。またラドガ湖やペイプス湖水系の河川小艦隊も登場と。また選択ルールとして「7号計画駆逐艦」と呼ばれる艦船は、船体の耐久力が低く、航海に出るたびにダイスを振って損害判定をしろと。どんな駆逐艦なんだ……

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さらにレンドリース輸送船団を守るイギリス海軍も登場。実際にはその護衛に就かなかった艦船も多く含まれている。イギリス海軍のI級空母(インドミタブル、フォーミタブル等)は、装甲甲板があるため、Ju88以外の爆撃や神風攻撃は被害1/2となる。また機雷軽巡洋艦(CLM)という艦船タイプが登場したが、これは機雷を敷設できるうえに、機雷を収容していたスペースを積荷用に改修して、武装した輸送船としても使用できると。これ、具体的な戦例がどこかにあるのだろうか。マルタ島か、ムルマンスクへの海上輸送でそうしたのか。また補助対空巡洋艦(AMCA)なる船も登場しているが、言うほど対空力は高くない。これも輸送船団の護衛用? このあたり、我ながら疎いわー。

紺地に黄文字のカウンターはオーストラリア海軍、紺地に赤文字はカナダ海軍。

そしてカウンター下段が赤文字は、アメリカ海軍。こちらにも水上機駆逐艦(DAV)という、港湾や環礁、沿岸ヘクスに停泊している場合、水上機の運用を支援する、変わり種の艦船が登場している。また特別ルールとして、司令長官兼海軍作戦部長のキング大将が、1941年イギリス海軍空母イラストリアスがJu87に爆撃されたのをキッカケに、それ以来、アメリカ軍空母が枢軸軍陸上機の航続距離内に入ることを禁じた、とあるけれど、手元の資料では見当たらなかったので、このネタもいずれ探しておこう。

とまあ、ソ連軍、西側連合軍カウンターも、1つずつ見ていくとキリが無いし、一見しただけでは容易に分からないほど無数のネタが潜んでいると思うので、各種マニアの方は是非入手して、眺めていただきたい。とまあ、ひととおり「TSWW:Barbarossa」の内容物紹介も終わったので、いよいよ実プレイに取りかかろう。また本作購入と前後して、独ソ戦資料もいろいろ買ったので、その読書日記もいずれ。

【The Second World War】「TSWW:Barbarossa」Part.3 Axis Minor Units

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さて「TSWW:Barbarossa」の紹介シリーズ・その3は、枢軸中小国編。

まずフィンランド軍カウンターは、約200個弱。1939年の冬戦争セット「TSWW:Hakkaa Päälle」に続いて、マンネルハイム、シーラスヴォ指揮官も健在。ルール的には、新たにスキーコマンド部隊(影響ゾーンを有しているが、敵影響ゾーンは無視し、戦闘前後退も可能)が追加され、スキー騎兵部隊(天候に応じて騎兵かスキーか選択可能)も登場。また継続戦争におけるフィンランドの立場も定義され、あくまで奪われた国境線の回復が戦争目的とされている。ただし、もしドイツ軍がレニングラードを占領した際には、その戦争目的は修整されると。

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緑地に白文字はハンガリー軍、約300個。特殊ユニットとして、第1軽装甲師団(6-5-12)とFJJK(Ferenc-Józseph-Jász-Kun)騎兵大隊((1)-9)は、移動の際は自動車化でも騎兵扱いでも良く、戦闘の際は騎兵か軽戦車の、どちらか有利な方を選べる。また河川小艦隊(RF)、河川機雷敷設船/掃川艇(RMSL)も登場。

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濃紺に黄文字という目立つカウンターは、ルーマニア軍。400個以上と結構あり、特に第1ルーマニア戦車師団は、5種類もカウンターが用意されている。これ「8-16」から始まり、1942年7月前半ターンに「11-10-18」へ、1942年10月後半ターンに「13-18」へ、1942年11月前半ターンに「14-20」へと改編される。この師団、いったいどんな変遷をたどったのか……ちなみに「12-18」は、オプションユニットで、もしルーマニアがもっと機械化装備を進めていたらこのユニットでバルバロッサ作戦を開始してもいいよと。もちろん政治的には、ハンガリーと憎み合っているため、同一攻撃やスタックは不可と。

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色味としてもパッとしないこちらはブルガリア軍ユニット。30個ほど。陸上ユニットは海岸砲台しかないが、一応、Me109E3/E7とか持ってるのね。

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こちらはスロバキア軍、約30個。第1半自動車化歩兵師団(6-12)だけ特別ルールがあって、1943年2月前半ターン以降に、西に12ヘクス以上後退するよう強制された場合、いったん解体されるという。これも元ネタが知りたいところ。そのうち調べてみよう。

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こちらはイタリア軍。約70個。なんとなく恐ろしげな黒シャツ保安部隊ユニットもあるが、ドイツ軍保安部隊のように『最終解決うんぬん』という注釈は無い。イタリア軍ファン、ひと安心?

他にもスペイン軍カウンターが数個あり、枢軸中小国だけでも1000個近くのカウンターになっている。特に東欧諸国軍マニア?の方が見れば、いろいろと発見があるかもしれない。というワケで、part.3はソ連軍・西側連合軍編で。