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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Company Scale System】「The Fulda Gap : The Battle for the Center」Exercise Summer Rain Solo-Play AAR

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今年4月に購入したCSS(Company Scale System)シリーズの仮想第三次大戦「The Fulda Gap」をようやくソロプレイしてみた。しかし海外では早々に「開発(デヴェロップ)不足ではないか」「小川を戦車が渡れないのはおかしい」「対戦車ミサイルを小川越しに撃てないのは意味不明」という意見が続出しており、正直、評判はよろしくない。デザイナー側も、すでにそのあたりを反映したエラッタを公開しており、車輌も小川を渡れるし、対戦車ミサイルも小川を超えられるようになっている。今回は、そのエラッタを適用した形でプレイすることに。※最新エラッタは下記リンクに。

http://talk.consimworld.com/WebX?233@@.1ddcadd9!enclosure=.1de1f305

また、個人的に気になっているのが『CSSの戦車戦は面白いのか?』という問題。CSSは、先輩システムであるGTS(Grand Tactical Series)から派生したシリーズだが、歩兵戦はともかく、戦車戦が非常に簡略化されている。GTSでは、歩兵も戦車もちままちとダメージを与え合う形だが、CSSでの戦車戦は、ノーダメージか一発退場か、0か100か、みたいな判定に変わっている。これまでのCSSは、主に歩兵戦中心だったので、その変化もあまり感じなかったが、「CSS:Montelimar」で初めてマトモな戦車戦を行った際『うーん……』という印象を感じてしまった。そしてこの「CSS:Fulda」が、CSSでは初めて戦車戦主体の作品になっているので、果たしてそれ面白いんだろうか?と発売前から疑問に感じていた。そのあたりも是非、確かめてみたい。

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まず最初に選んだのは、シナリオ1「Exercise Summer Rain」。想定としては、1985年8月1日、ワルシャワ条約軍が西側へ攻撃を仕掛けたものの、すでにNATO軍も開戦24時間前から警戒態勢に入っており、戦術的な奇襲には失敗。それでも、とにかく開戦初日の朝、ソ連第27親衛自動車化狙撃師団が、フルダ峡谷に陣取る、米第11機甲騎兵連隊めがけて正面攻撃を仕掛ける、という筋書き。疲労ルール無し、航空支援やヘリコプター無しなので、まずは「CSS:Fulda」の基本部分に慣れるためのシナリオなのだろう。地図盤も1枚のみで、ソ連軍は地図盤西端から突破すれば勝利点が得られ、アメリカ軍はソ連軍ユニットの除去により勝利点が得られる。

ソ連軍は各ターン毎に、五月雨式に1個連隊ずつ、3個自動車化狙撃連隊と1個戦車連隊が登場する。ソ連軍師団の行軍方法を見ると、各連隊毎に進撃ルートを1本ずつ定め、だいたい幅20kmぐらいの範囲を攻める想定らしい。CSSの地図盤は、1ヘクス=500m、縦幅35ヘクスなので、だいたい地図盤1枚の縦幅=17.5kmが師団担当地域になるだろうか。このシナリオでは、ソ連軍が突破すべき地点は3カ所定められており、そこに向かって、4本の進撃路をイメージして始めてみよう。 

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では第1ターン(8月1日0700時)開始。先手ソ連軍は、まず師団の偵察大隊を3方向に派遣。斬り込み役の第68自動車化狙撃連隊は、地図盤北寄りのMansbach(3238)目指して、東西国境線を越えた。各スタックは、3個中隊+大隊指揮官によって構成し、もし射撃する場合は、大隊火力をまとめて撃ち込めるようにしてある。いや、そうでもしないとM1戦車には対抗できないのだ。しかし後から考えたら、どうせマトモに撃ち合う必要もないんだから、スタックはバラして動かした方が良いかも。なにしろアメリカ軍の重弾幕をくらうと、スタックごと動けなくなるし。

これに対する、アメリカ第11機甲騎兵連隊の射撃は、いずれもハズレ。たとえ新鋭のM1戦車でも火力7、T80戦車の防御値-4、(ルール間違い)2ヘクス以上離れると火力-3となれば、差し引きゼロで、10面体ダイスを振ってゼロを出さないと命中しないなので、3以下でないと命中しない。このためソ連軍は、臨機射撃なんぞ知ったことかとばかりに、アメリカ軍に接敵し(隣接ヘクスに入られたユニットは、射撃ゾーンが1ヘクスに減じられる)、そのまま後方へと進撃した。そう、ソ連軍は、アメリカ軍ユニットを除去しても勝利点はもらえないので、わざわざ敵ユニットを潰そうとするより、無視して前進した方が良い。 

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アメリカ軍も、後方に控えるM109自走砲中隊(砲撃力5)の支援によって、ソ連軍スタックに重弾幕(移動不可となる)を張り、その進撃を食い止めた。しかし前線のM1/M3騎兵中隊・M1戦車中隊は、集中射撃によって火力を1上げたうえで、隣接ヘクスのソ連軍を2チット連続で射撃しても、ようやくBMP中隊を1個潰走させたのみ。これが当初に危惧していた「0か100か」の戦車戦。

そして弾幕を受けなかったソ連軍大隊スタックは、そのままアメリカ軍前線部隊を無視して後方へ突進。師団の戦車大隊は、初期ルールで禁止されていた小川を渡って、アメリカ軍自走砲中隊に肉薄した。さらに連隊の偵察中隊(BRDM2装備)は、一気に地図盤端まで達した。

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続く第2ターン(0900時)。先手を取ったソ連軍は、先行した戦車大隊の射撃によって、アメリカ軍自走砲中隊を潰走(盤外へ退場)させ、さらに自動車化狙撃大隊1個スタックともども、合計6ユニットで突破ヘクス(2746)から退出した。実際の突破ヘクスは、写真の範囲に収まっていないが、都合上、突破ユニットを少しずらして撮影している。またこのターン、師団の2番手として第243自動車化狙撃連隊(水色のカラーバー付きユニット)が登場。こちらは、先の連隊と並走する形で、やや南のSetzelbach(3246)へ。 

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アメリカ軍も、この2番手・第243連隊に対して射撃を行い、偵察中隊と狙撃兵中隊(BTR60装備)を1個除去したが、あいにくそこまで。ソ連軍は、無数の射撃を浴びつつも、果敢に士気チェックに耐え、戦車大隊1、自動車化狙撃大隊2個スタック、合計9ユニットを突破ヘクスから退出させた。アメリカ軍としては、BMP(防御-1)ならともかく、装甲ペラペラのBTR60(装甲0)だったら討ち取れるかと思ったが、まったくそんなことはなかった。いや、ここはソ連軍の士気チェックのダイス目も良かった。もともとGTS/CSSは、チット引きと10面体ダイスによって、振れ幅が大きい部分もあるが、今回のソロプレイに関して言えば、全体的な運は、ソ連軍寄りだったと思う。 

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さらに第3ターン(1100時)。ソ連軍は、3番手・第28親衛戦車連隊が登場。先に登場している2個連隊は、その大半が突破に成功したため、もうチットは購入せず、代わりに第28親衛戦車連隊チットを投入した。この連隊は、さらに南のKnottenhof(4149)へ向かわせ、M60A3戦車装備のアメリカ第68戦車大隊(本来は第8機械化歩兵師団所属だが、本シナリオでは第11機甲騎兵連隊麾下)に攻めかかった。

これに対してアメリカ軍は、第11機甲騎兵連隊のM109自走砲中隊3個すべてを投じて、ソ連軍の3個戦車大隊スタックをすべて重弾幕下に置き、その動きを封じた。しかしその直後、風チットが引かれて弾幕は消え去り、さらに続けてソ連第28親衛戦車連隊フォーメーションチットが…… 

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ソ連軍は、まず1個戦車大隊スタックを散開隊形に変えて、第2アクションで、進撃路を塞ぐM60A3戦車中隊を射撃。このT80戦車3個中隊がかりによる集中射撃が当たり、M60A3中隊も士気チェックにしくじって、いったん盤外へ退場。この空いた穴から、他の戦車連隊スタックも一気に後方へなだれ込み、突破ヘクス27.62へ迫った。この場合も、M60A3中隊が潰走しなければこんな前進は許さなかったのだが、ソ連軍の運が良かったと言うべきか、アメリカ軍に運が無かったと言うべきか。

とにかく3ターン連続でソ連軍に突破を許してしまったので、ここで味見ソロプレイは中止。場合によっては、一気に突破できるシナリオだと分かったので、それ前提で、考え直さないと。しかしこれも「車輌も縦隊なら小川を渡れる」というエラッタが適用されたからこそ出来た突破であって、それを禁じた初期ルールでは、ここまで前進できないだろう。対戦車ミサイルに関しては、今回は隣接ヘクス戦闘が多かったため、使う機会があまりなかった(対戦車ミサイルは最低2ヘクス射程)。

個人的な、CSSの戦車戦を疑問視した点に関しては、まあ予想通りと。今回のプレイでも、両軍とも結構撃ち合った割に、ユニットが除去される場面は少なかった。ある意味、お互いに無傷なまま突破し、後退する感じ。自分としては、両軍とも失血しつつ前進したり遅滞行動を行う第三次大戦が見たいのだが、デザイナーが思う第三次大戦は違うのかもしれない。ソ連軍の登場も五月雨式だったが、同時多発的に攻撃してくるんじゃないの?と思ったり。とは言え、これはまだ初見なので、同じシナリオをもう一度ソロプレイしてどうなるか、確かめようと思う。