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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Company Scale System】「The Little Land : The Battle of Novorossiysk」Operation Gory Solo-Play AAR

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引き続き「The Little Land : The Battle of Novorossiysk」シナリオ3「Operation Gory」をソロプレイ。このシナリオは、Novorossiysk近郊に上陸した部隊と連結するため、東の戦線からソ連軍が攻撃を開始するもの。ところが史実では、攻めるソ連軍の稚拙さと、守るドイツ軍の巧みさが噛み合ったのか、7ヶ月後の1943年9月まで上陸堡=The Little Landと連結できなかったという展開。上の写真を見ても分かるように、シナリオ2の上陸地点・The Little Landまで10ヘクス程度だが、それが突破できなかったと。

それもそのはず、今回このシナリオで攻勢を担当するソ連第318狙撃兵師団と、第3歩兵軍団は、いずれもこの時点で疲労の極みにあり、すぐに攻撃に移れる状態ではなかった。さらに守るドイツ第73歩兵師団も、森林地帯に堅固なトーチカを構築しており、なまなかな攻撃では太刀打ちできない態勢にある。 

ちなみにドイツ軍の配置説明にミスがあり、10月10日付のエラッタにも記載されていなかったので、BGG(Board Game Geek)で質問したところ、デザイナーから回答が得られた。46/617工兵中隊はヘクス17.16ではなく21.10へ、III/615の歩兵中隊3個はヘクス14.10ではなく21.15へ配置とのこと。 

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こちらが海岸沿いに展開している、ソ連第318狙撃兵師団。シナリオ開始時点で、疲労度6、部隊練度3(最高で5)という状態にある。CSSでは、各ターン毎に、疲労度5以上のソ連軍部隊は、部隊練度が1下がることになっている。そのターンに師団チットをカップに入れなければ、疲労度は1回復する。疲労度が4以下になれば、部隊練度も1上昇する。これを時系列で考えてみると……

第1ターン:0700時:回復手順無し

第2ターン:0900時:部隊練度2に低下。師団チット入れず。疲労度4に回復。

第3ターン:1100時:部隊練度3に上昇。師団チット入れず。疲労度3に回復。

第4ターン:1300時:部隊練度4に上昇。師団チット入れず。疲労度2に回復。

第5ターン:1500時:部隊練度5に上昇。師団チット入れず。疲労度1に回復。

第6ターン:1700時:師団チット入れず。疲労度0に回復……となる。

つまり攻勢初日は、夕方まで師団全体の行動は行えず、連隊フォーメーションチットだけでどうにかするしかない。そして連隊を動かしたとしても、部隊練度は低いため、敵からの攻撃を受けた場合、あっさり潰走してしまう可能性が高い。第318師団から言わせれば、正直、なんでこんなタイミングで上陸作戦なんかしやがった?という感じだろうか。 

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ソ連第3歩兵軍団はもっと酷く、疲労度7、部隊練度3(最高で4)という状態から始まる。

第1ターン:0700時:回復手順無し

第2ターン:0900時:部隊練度2に低下。師団チット入れず。疲労度6に回復。

第3ターン:1100時:部隊練度1に低下。師団チット入れず。疲労度5に回復。

第4ターン:1300時:部隊練度0に低下。師団チット入れず。疲労度4に回復。

第5ターン:1500時:部隊練度1に上昇。師団チット入れず。疲労度3に回復。

第6ターン:1700時:部隊練度2に上昇。師団チット入れず。疲労度2に回復。

第7ターン:1900時:部隊練度3に上昇。師団チット入れず。疲労度1に回復。

第8ターン:2100時:部隊練度4に上昇。師団チット入れず。疲労度0に回復。

……とまあ、師団の全回復には作戦初日いっぱいかかる予定だ。

しかしそこはソ連軍。当時の作戦指導まで再現するものとして、完全回復などせず、疲れていてもケツを上げて戦えという乱暴な戦い方をしてみよう。とりあえず夕方までは、両部隊とも師団チットの投入を控え、疲労の回復を進めつつ、連隊フォーメーションチットのみでドイツ軍を牽制しようかと。 

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ではソロプレイ開始。第1(1943年2月4日0700時)ターンには、第318狙撃兵師団チットが自動的にカップに入っているので、とりあえずドイツ軍に隣接してみた。しかし海外沿いは、遮蔽物の無い平地であり、複数のドイツ軍トーチカから撃たれる、まさにキルゾーンになっている。もちろん内陸のソ連第3歩兵軍団は、まったく動かず、指揮・派兵ポイントの蓄積を行っている。 

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第2(0900時)から第6(1700時)ターンまでは、接敵した両軍による砲撃の応酬が続いた。やはり海外沿いの平野部に進出したソ連軍は、次々に潰走(師団ディスプレイへ撤退)し、第318狙撃兵師団第1331歩兵連隊に至っては、全9個歩兵中隊のうち7個中隊が潰走する有様。しかし守るドイツ軍にしても、この対応によって指揮ポイントを消費し、来たるべき翌日の攻勢に余力を残せるほどではない。そういった指揮リソースの消耗戦という意味では、ソ連軍の接敵も決してムダではなかったと思う。 

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第7(1900時)ターン、ようやく回復したソ連軍の両部隊は、日没前に師団チットを投入。第3歩兵軍団も、明日の攻勢準備のため、接敵を開始した。また師団チットを投入しないと、潰走したユニットを盤上へ戻せないし、配属された航空攻撃マーカーも使わないままになってしまうので、対地支援はここですべて使用。対地支援には、守る側の防御修正などは一切適用されないので、堅いトーチカに籠もったドイツ軍部隊にも、かなりの損害が出た。

しかしドイツ軍も、このターンに師団チットを投入し、やはり対地支援を使用。He110の爆撃が、前線で混乱しきっていたソ連軍大隊スタック(中隊ユニット✕3個)に運良く命中し、一撃でこの一個大隊を除去する活躍を見せた。しかし酷い戦いだ…… 

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日没直前の第8(2100時)ターン。全戦線にわたって、弾幕マーカーが並ぶ凄まじい砲撃戦。あまりの激しさに、中砲煙マーカーが足りなくなっている。よくよく考えてみれば、ここまで部隊密度の高い戦闘は、CSSはもちろん、GTSでも経験していないかもしれない。良くも悪くも、いかにも東部戦線らしいが…… 

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そして日没。夜間第1・第2ターンは、両軍とも回復にいそしみ、夜が明けてから、また戦闘が始まるのを待つ……というあたりで、今回のソロプレイは時間切れ。しかし、ゲーム内で一日戦った割には、ソ連軍は1ヘクスもドイツ軍の防衛線を抜けていないというていたらく。ドイツ軍も、予備陣地は無いわ、機動予備部隊も無いわで、どこかで突破されたら全戦線を下げることにも成りかねないが、今のところ防御線を堅持している。ただ、回復したソ連軍両部隊が攻めてきた場合、指揮リソースで劣勢になるかなと。

これで「The Little Land:The Battle of Novorossiysk」のシナリオ1~3に触れてみたが、この3つの戦場(主上陸と陽動上陸、それと連結する前線)を統合するとキャンペーンゲームとなる。まあ、ソ連軍の作戦全体を見てみると、その未調整さに唖然とする。もし本作のソ連軍を複数プレイヤーで分担プレイしたら『(上陸部隊)早く来てくれ!』『(前線)いやこっちも疲れてるし』という、酷い会話になりそう。多分、この作戦に参加したソ連軍指揮官たちも『なにが作戦術だバーカ! 現場のことも知らないで、勝手な作戦立てやがって!』と憤慨していたのかもしれない。

しかしその作戦の酷さも含めて、非常に東部戦線らしいシナリオなのも事実。特にCSSでは、中隊ユニットをスタックさせて火力を上げ、スタックとして1回しか射撃できないという方式が採られており、これがソ連軍の大隊がかりの攻撃とマッチしているように感じた。兄貴分のGTS(Grand Tactical Series)だと、スタックしても火力は上がらず、ユニット別に複数回射撃できるのだが、CSSの方が戦力集中の相乗効果を良く表していると思う。もしまた本作に触れるとしたら、上陸シナリオではなく、もう一度このシナリオに再挑戦して、2日目以降まで進めてみたい。