Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【The Second World War】「TSWW : Singapore !」The Gates of India : Imphal and Kohima 1944 Solo-Play AAR Part.3

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第2(1944年3月後半)ターン。天候は、引き続き「悪天」「酷暑」。

先手、日本軍プレイヤーターン。インパールを目指す第15軍第15師団は、歩兵連隊3、砲兵大隊2、工兵大隊1をもって、第100インド(軽歩兵)旅団を攻撃。このインパールへの正面攻撃こそ、最も戦力が集中された箇所なので、一式戦・隼(Ki-43)✕2ユニット、九七式重爆(Ki-21)✕1ユニットで近接航空支援(CAS)も付けることに。これに対してイギリス軍も、ハリケーンIIC✕2(オレンジ色の数値ユニットはオーストラリア空軍機)で迎撃。空戦により、双方とも戦闘機を1ステップずつ失い、九七式重爆も帰還させられた。さらにイギリス軍は、ハリケーンIIC✕0.5ユニット、ヴェンジェンス急降下爆撃機✕1.5ユニットをもって、戦場航空阻止(BAI)任務を敢行。この戦闘地域に21✕0.9(悪天)=18.9作戦爆撃力を投下し、日本軍の戦闘効率補正(CEV)を15%低下させた。それでも第15師団は、戦闘比3:1で第100インド旅団を1ヘクス後退。第100インド旅団にダメージが与えられなかったのは残念だが、じりじりとインパールへ迫っている。

一方、南から攻める第33師団の2個連隊は、第48、第63インド(山岳)旅団が籠もるトンザンを攻撃。これがEX(双方損失)となり、第48インド旅団を除去したものの、スタックポイント的により少ない日本軍2個連隊がステップロス。この2個連隊は、ユニット裏面が「狂信面(Fanatic)」であり、万歳突撃によって、自分の除去を前提とした自殺攻撃が可能となっている。

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一方、北から攻める日本軍第31師団は、すでに全ユニットE2(補給負荷2、攻撃力1/4、移動力と防御力は1/2)ながらも、ウクルルの第49インド旅団を攻撃。これが戦闘比1:2だったにも関わらずDR(防御側後退)となり、ウクルルを確保した。ううむ、補給負荷のまま押し進むとは、第31師団恐るべし。TSWWの戦闘も、意外と低戦闘比でなんとかなるものだな。いや、実はこれ、インパール作戦部隊がみな「山岳部隊(面倒な地形でも有利なダイス修整が付く)」扱いなのが大きいと思う。

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続いて後手、連合軍プレイヤーターン。増援として地図盤西端にイギリス軍第4、第5、第6半自動車化歩兵旅団(各スタックポイント2規模)が到着。半自動車化ユニットを鉄道輸送する際は、スタックポイントが2倍となるので、各ユニットはスタックポイント4と見なされる。インド国内で連合軍が利用できる鉄道輸送量は、10スタックポイント分のみ。つまり1ターンに2個旅団までは輸送できる。移動力12のユニットは、1移動力を消費すると33鉄道ヘクスを移動できる。これにより、まず第4、第5旅団が、1移動力を消費して、鉄道でダッカの西のバイラブ・バザール(PBF2233)まで移動。そこから大河川を渡河して(6移動力消費)対岸の平地ヘクス(1移動力消費)へ渡り、再び別の鉄道網に乗り替え、また1移動力を消費して14ヘクス先のディマプールに到着。ここまで9移動力を消費し、残り3移動力を使って舗装道路を移動し、第4旅団はインパールの2ヘクス北に到着、第5旅団はコヒマに配置された。

残った第6旅団は、次ターンに移送する予定だが、ダッカからこれを空輸する手もある。ダッカの航空補給部隊には、2.5スタックポイントを輸送できるだけの輸送機が配属されているが、その航続距離は40ヘクス(ダコタ機)。そしてダッカからディマプールまでは20ヘクスなので、ちょうど航続距離の1/2=短距離輸送となり、1移動フェイズ中に2往復して、倍の5スタックポイントまで空輸できる。さらに1944年の連合軍の空輸効率(TEV)が1.5なので、最終的には5✕1.5=7.5スタックポイントが輸送可能となる。2スタックポイントのイギリス軍旅団も余裕で運べる計算だ。

しかしこの航空補給部隊は、あくまで(各ユニットや空軍基地を補給下に置くための)兵站ポイントの輸送用である。1兵站ポイント=6スタックポイントなので、ダッカの空輸能力(7.5)で空輸できるのは1兵站ポイントのみ。これが切れると、ディマプール、レドの連合軍が干上がってしまうので、部隊輸送には回せない。日本軍からすると、この航空輸送ルートは一応、一式戦で迎撃できる範囲にある。ただし、そのルートの護衛には、この地域最強の戦闘機スピットファイアVIII(空戦攻撃力13、防御力9)がついているので、返り討ちに遭うのは必至…… 

また連合軍は、いったん除去された第48、第123インド旅団を補充ポイントを使って復活。それぞれインパール正面とトンザンに送り、防備を固めた。インド部隊に関しては、毎月2歩兵スタックポイント(1個旅団相当)の補充が得られるので、多少の損害なら、どうにかなるかと思う。

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そのトンザンでは、狂信面となった第31師団の2個連隊に対し、第63、第123インド旅団が反撃に出た。狂信面ユニットは、戦闘比に関係無く、万歳突撃によって相手ユニットを除去できる可能性があるため、攻め込まれる前に潰そうという判断である。この戦闘にもハリケーンIIC✕2、ヴェンジェンスII✕1が近接航空支援(CAS)に就いたが、もちろん日本軍も一式戦✕1で迎撃に出た。結果、ハリケーンIICをステップロスさせたものの、一式戦は2ステップロス除去となり、ヴェンジェンスの8作戦爆撃力が投下され、地上戦力2が追加。戦闘比6:1でDE(防御側全滅)となり、第31師団は全滅と相成った。そして日本軍第15軍司令部へ通じる道を守るユニットも皆無となったが、悪天では、インパールにいるイギリス第IV軍団司令部からの主要補給ルートもそこまでは届かず、イギリス軍はあえて前進はしなかった。

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一方、アキャブ方面では、完全に制空権を握った連合軍が、今のうちに地歩を固めておこうと、第36、71インド旅団+重砲兵大隊で、日本軍第51師団の偵察大隊を攻撃。イギリス軍は、ヴェンジェンスIII急降下爆撃機などを近接航空支援(CAS)に投入し、戦闘比9:1(上限)で、日本軍2ユニットを除去した。

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さらにレド、フーコン渓谷方面では、スティルウェル将軍麾下の米中軍2個師団と、アメリカ第5307臨時混成連隊「メリルズ・マローダーズ」が、日本軍第18師団の2個連隊が守るカマイン(PCF1937)へ向けて前進中。ただし米中軍の陸上補給ルートはそこまで届かず、空中補給に頼るしかない。

米中軍の後方、テズ(PCF1948)の航空補給部隊には、4ユニット合計8空輸能力の輸送機が配属されている。いずれも航続距離40~60ヘクスなので、10ヘクス先のフーコン渓谷までは短距離輸送となるが、これは飛行場に下ろす空中輸送(Airlift)ではなく、飛行場ではない土地に落とす空中投下(Airdrop)なので、輸送量は通常通りとなる(通常の航続距離内では1/2となる)。さらに1944年の連合軍の空輸効率(TEV)1.5を掛けて、16スタックポイントまで空中投下可能。ただし投下した補給物資が確実に受け取れるとは限らず、空挺部隊の降下同様、混乱チェックを行う。

ユニットを一般補給下とするには、1スタックポイント毎に1一般補給ポイント(GSP)が必要で、攻勢補給下とするなら、同じく2一般補給ポイントが必要となる。1スタックポイント空輸能力で、投下できるのは1/3兵站ポイント=6一般補給ポイント。ここ、ややこしいとこ。1スタックポイント空輸能力で運べるのは、6一般補給ポイントだが、1スタックポイント規模のユニットが必要とするのは、1か2一般補給ポイント。ユニットを荷物として運んだ時の重さと、そのユニットが必要とするメシの量は違うと。

ということで、手元に補給物資さえあれば、16空輸能力✕6一般補給ポイント✕0.9(悪天)=86一般補給ポイント(4+1/3兵站ポイント)まで投下できる。もしそれが100%地上部隊に行き渡れば、86個連隊相当を一般補給下とするか、42個連隊相当を攻勢補給下に置ける。しかし、さすがにそんな大量の兵站ポイント/一般補給ポイントは手元に無い。

とりあえず毎ターン、2/3兵站ポイント=12一般補給ポイントなら供給できそうなので、メリルズ・マローダーズ(1スタックポイント規模)に加えて、米中軍2個師団(合計8スタックポイント規模)を送り込んでみた。投下の混乱チェックは、3一般補給ポイント毎に判定されるので、12ポイントを投下するなら、判定は4回。どれか1回失敗しても、部隊は一般補給下になれるだろうという目算。そして第1、第2ターンとも空中投下に成功し、フーコン渓谷部隊は一般補給を維持して、カマインへと向かった。

ちなみにこの空中投下ルートは、シュウェボ(0921)にいる一式戦部隊の航続距離(17ヘクス)外である。ただし、延長距離飛行(航続距離✕1.5)を行えば、このルートを妨害できるが、その場合は空戦攻撃・防御力が25%減少するため、一式戦の場合、空戦攻撃力7から5、防御力6から4へ低下したうえで、護衛のP51やP47D5を戦うことになるのでまず止めた方が…… 

その後方では、レド公路が途切れたままだが、ここに道路を通すには、レドから騰越(Tengchong)まで、2ヘクス置きに1スタックポイント(連隊)規模の工兵ユニットを配置する必要があり、それが為されていない場合、いったん道路を啓開しても、またジャングルの草木がわらわら生えてきて、道路が無い状態に戻るという恐ろしいルールが。そしてそんな多量の工兵ユニットもこのシナリオでは存在しないので、そこを啓開せずにどうにかしろと。史実でも、レド公路が開通したのは、1944年9月に拉孟・騰越が陥落した後の、1945年1月になってからだし、シナリオ範囲外ということで無視。

とまあ、連合軍は、部隊や物資の移送計算ばかりが忙しいが、もし多人数プレイをするなら、他の補給が細かいビッグゲーム同様、補給専従プレイヤーが欲しいかもしれない。なにしろ戦域レベルの兵站を管理するため、単なる作戦級レベルのゲーム(OCS:Burmaとか)なら自動的にやってくる増援部隊や補給物資についても『そもそも、何をどれだけ運べるのか』『それをどのように運ぶのか』『どれから優先して運ぶのか』『その輸送線をどう守るのか』『その輸送線を妨害できないのか』というあたりまで考える必要がある。もちろんこの兵站構造は、ガダルカナル島や、北アフリカでのシナリオでも同様だろうし、TSWWに触れるなら、一度がっつり学んでおいた方が良いと思う。

そんな感じで、ずっとルールとチャートと首っ引きながらも、第3ターンへ…… 

【The Second World War】「TSWW : Singapore !」The Gates of India : Imphal and Kohima 1944 Solo-Play AAR Part.2

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ではソロプレイ開始。第1(1944年3月前半)ターン。まず開始フェイズの最初に天候を決定。天候と気温は、いずれの天候ゾーンでも「悪天(Poor)」「炎暑(Hot)」。地上への航空攻撃は-10%となり、主要補給ルートをたどるコストも増加する。そのため、イェウに配置された日本軍補給部隊は、砂礫道(Gravel Roads)沿いに進む第33師団には予定通り補給を送れるものの、それより北では、チンドウィン河を渡るか、その手前までしか部隊補給ルート(QMSR)が届かず、第31師団の2スタックは「E1(補給負荷1=攻撃力・移動力1/2に減少)」となった。

ユニットが額面戦闘力を100%発揮するには、マンダレーにある補給所(ST)が1/3兵站ポイントを消費し、イェウの部隊補給ルート範囲にあるユニットを攻勢補給下とする必要がある。イェウにある補給部隊は、10スタックポイント(10個連隊相当)分のユニットだけを攻勢補給下に置けるが、インパール作戦部隊は約3個師団なので、たとえ部隊補給ルート範囲に全ユニットがいたとしても、ほぼ攻勢補給下に置ける。しかし、それが日本軍の補給能力の限界。つまりTSWWでは、いくら補給物資があっても、それを扱う補給部隊の処理能力を超えるような攻勢作戦は行えないわけだ。たとえば、たくさん水が入っているタンクがあっても、蛇口の太さによって、出せる水の量は制限されるようなもの。ちなみに米英軍の補給部隊は、スタックポイント制限が無く(範囲内にあるユニットはすべて攻勢・一般補給下に置ける)、日本軍補給部隊とは格段の差である。

またイェウの補給部隊から、第15軍司令部(ゲーム上は軍団司令部)を経由して、さらにその先に主要補給ルートを延長することもできる。ただし1944年の日本軍の主要補給ルートの長さは3ヘクスなので、あまり延びるものでもない。ちなみに1944年の米英軍の主要補給ルートの長さは10ヘクス。しかし、これは異常な長さ。1941年のドイツ軍で6ヘクス、1941年のソ連軍で4ヘクスだから、そういう点でも日本軍の補給能力の低さが表現されている。  

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続いて移動フェイズ。まず日本軍は、面倒なチンディット隊の航空補給線を切るべく、ブロードウェイ、アバディーン飛行場へのルートに一式戦・隼✕2ユニット(40機)を投入した。直ちに、この航空補給線を護衛するP47D5、P51B、P40D20等4ユニット(80機)との間に空戦が発生。しかし物量差、機体差があるうえ、日本軍は技量でも負けており(連合軍は空戦ダイス修整+2、日本軍は+1)、連合軍は損害無し、一式戦は2ユニットが全滅となり、早くも一式戦隊はその40%を喪失する羽目となった。まあ、これは愚策と分かっていたが、一応、やってみたらどうなるかということで。

また日本軍は、チンディット隊に対処するため、後方のラングーンから予備の第53師団の3ユニットを鉄道移動で呼び寄せ、ラシオ等に配置した。

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さらに地上ユニットの移動から戦闘フェイズへ。移動中のオーバーランは無し。

まず南からインパールへ向かう第33師団の3ユニット(攻勢補給下、額面戦闘力✕100%)が、第48インド旅団を攻撃。攻撃側日本軍は額面8戦力、防御側イギリス軍は額面5戦力。悪天のジャングルに対する攻撃は✕0.75となるが、日本軍はすべて山岳部隊扱いなので+0.25となり、結局そのままの戦闘力となる。また悪天のジャングルに対する攻撃は、ダイス修整-2だが、これも山岳部隊による+2修整で帳消し。戦闘力8:5=1.6:1となり、d100を振って34が出たので戦闘比2:1に繰り上げ。そして戦闘決定ダイスは3だったのでQR(攻撃側1/4・後退)。攻撃側の第33師団は、防御側(1スタックポイント)の1/4=偵察大隊を失ったものの、防御側をトンザンへ後退させた。

北では、第15師団+第33師団の4ユニット(攻勢補給下)が、第1インド半自動車化旅団を攻撃。額面では、攻撃側13戦力、防御側4戦力。しかしイギリス軍は、ここへ近接航空支援(CAS)としてハリケーンIIC戦闘機とヴェンジェンスII急降下爆撃機を投入。この2ユニットが、作戦爆撃力3+8=11✕0.9(悪天)=9.9を投下。投下4爆撃力ごとに、戦力1が追加されるため、追加地上戦力2.5となり、1d10を振って2が出たため3に切り上げ。防御側は7戦力となった。戦闘力13:7=戦闘比1.85:1となり、d100を振って22が出たので戦闘比2:1に繰り上げ。戦闘決定ダイスは4、HQ(攻撃側1/2、防御側1/4)。攻撃側は、やはり偵察大隊を失ったものの、第1インド旅団を除去し(0.5スタックポイントだけ失えば良いのだが、減少戦力面が無いため、まるまる1スタックポイントを失う)、前進した。

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さらに北では、第31師団の3ユニット(補給負荷1、額面戦闘力✕0.5)が、インド軍守備隊を攻撃。日本軍は、額面攻撃力8✕0.5=4、戦闘比4:1で、戦闘決定ダイスはDH(防御側1/2除去)。インド軍守備隊にも減少戦力面は無いため、そのまま除去となり、第31師団も前進した。うむ、なんやかんや言いつつ、日本軍は順当に前進しつつある。

この後、反応移動フェイズで、日本軍から3ヘクス以上離れ、7ヘクス以内にある連合軍ユニットが移動力1/2で移動可能となる。イギリス軍は、ディマプールとインパールにいたグルカ兵大隊2個をコヒマに送り、第31師団の来襲に備えた。

最後に追撃フェイズで、日本軍がわずかな移動を行い、日本軍プレイヤーターンは終了。

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手番代わって、第1ターンの連合軍プレイヤーターン。まず両軍の補給状態を確認し、日本軍第31師団は依然、補給下になかったため「E2(補給負荷2=攻撃力1/4、防御力と移動力1/2)」に悪化した。

連合軍の移動フェイズ。まず空軍基地爆撃任務、いわゆる航空撃滅戦から。イギリス軍は、遥かカルカッタから長駆、ベンガル湾を横断して、夜間爆撃隊(ボーファイターVIF夜間重戦闘機1ユニット=40機、ウェリントンX夜間爆撃機1.5ユニット=60機、ウェリントンIII夜間爆撃機0.5ユニット=20機)を、アキャブに送り込んだ。アキャブにも、一式戦1ユニット=40機があるが、あいにく夜戦機能は無いので迎撃は不可。イギリス軍夜間爆撃隊は、日本軍の重対空砲をかいくぐり、爆撃を開始した。イギリス軍4個航空ユニットの合計作戦爆撃力は9✕0.9(悪天)=8.1。1944年のイギリス軍の夜間爆撃精度は50%なので、作戦爆撃力4.05が投下されたことになる。3作戦爆撃力が投下されるごとに、敵空軍基地にヒットが与えられるので、1ヒット。駐機していた敵航空ユニットもランダムにその補充ポイントを失うため、今回はダイス目によって九九式双軽爆撃機(Ki-48-Ib)の補充ポイントが失われた。

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さらにイギリス軍は、チッタゴンからも、アキャブに対して基地攻撃隊を発進させた。ハリケーンIIC戦闘機1ユニット=40機、モホークIV戦闘機1ユニット=40機、スピットファイアVIII戦闘機0.5ユニット=20機、ヴェンジェンスIII急降下爆撃機による昼間爆撃。これにはアキャブの一式戦も迎撃に上がり、スピットファイアVIII隊を撃滅したものの、多勢に無勢、あえなく除去された。残った攻撃隊は、アキャブの空軍基地に2ヒットを与え、先の夜間爆撃と併せて合計3ヒット。アキャブの空軍基地は、収容力3なので、ほぼ壊滅。着陸はできるが、離陸はできない状態となった。これによりアキャブ方面は、連合軍側が完全に制空権を握った。日本軍が空軍基地を修理するには、建設能力を有した工兵ユニットが必要だが、あいにくアキャブ戦線には工兵がいないため、次ターン以降、どこからか連れてくるしか。 

※訂正:前線に工兵大隊が埋もれていた。

連合軍は、それ以外、あまり目立った動きは無く、インパール方面では戦線の整理に終始した。たとえばインパール方面でも、日本軍の補給部隊を狙って航空攻撃を仕掛けたいところだが、そちらにはまだ日本軍の一式戦部隊が2個残っており、ハリケーンIICで攻め込むほどの余裕は無い。また、スピットファイアVIII等の新鋭機も、航空補給路の護衛にあり、対地攻撃の護衛には回せない。今のところインパール方面のイギリス空軍は、日本軍の攻撃に対する近接(防御)航空支援に徹するしかないなと。

こうなると、海軍保存主義(フリート・ビーイング)じゃないが、一式戦部隊は、ムダに消耗せず、あくまでニラミを効かせるために温存しておくのが吉。わざわざ連合軍の新鋭機が護衛している航空補給路に討って出るのは愚策。連合軍からすれば、むしろ飛んで火に入る夏の虫だなと。そしてアキャブの一式戦部隊が潰されたことにより、チッタゴン、クミッラからイギリス軍が爆撃隊をインパール方面に飛ばしても迎撃されない状態になっている。クミッラには、ボーファイター戦闘機(航続距離26ヘクス)、リベレーターVI重爆撃機(航続距離40ヘクス)という、長距離侵攻部隊も控えているため、それも次ターン以降、インパール作戦部隊の妨害に表れるだろう。

とまあ、お互いパンチをくり出した形で、第1ターン終了と。

【The Second World War】「TSWW : Singapore !」The Gates of India : Imphal and Kohima 1944 Solo-Play AAR Part.1

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ようやく「TSWW:Barbarossa」のルール翻訳も終わり、すでに現物もイギリスから発送されている。それが到着する前に、TSWWの最新ルールv1.6に慣れるため「TSWW:Singapore !」のインパール作戦シナリオ「The Gates of India : Imphal and Kohima 1944」をソロプレイすることに。このシナリオは、陸空のみだが、今までソロプレイしてきた小規模シナリオとは違って、より広大な戦域規模であり、補給についてもよく考える必要があるので、TSWW中級者へのステップアップとしては良いかなと。今回は、実際にユニットを地図盤に配置しつつ、VASSAL上でも配置を行っている。

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まず戦略的な状況から見てみよう。連合軍は、地図盤外のインド西部から、鉄道によってカルカッタに物資を運び、そこからさらに東のダッカへその物資を移送している。しかし大輸送量(High Volume)の鉄道線があるのはここまで。そこからさらに東の都市、ディマプール、レドへは、各都市に航空補給部隊(Air Quatermaster)を配置し、その航空補給部隊に輸送機ユニットを配属することで、リレー的に物資を供給することになる。レドからは、さらに東の(地図盤外の)蒋介石率いる中国国民党軍に物資が運ばれ、これがいわゆる「援蒋ルート」という戦略的補給線になるわけだ。今までWWIIビルマ戦のゲームは「OCS:Burma」しかプレイしたことがないが、それより規模の大きいTSWWで見てみると、なるほどディマプールの重要性がよく分かる。

これに対して日本軍は1944年3月、この「援蒋ルート」の切断と、インドへの進入を目論んで、ルートの中間に位置するディマプールを狙い、その手前のインパール、コヒマに攻撃を開始する、というのがインパール作戦(ウ号作戦)である。敵の戦略的な補給線を切断するという意味では、決して狙いは悪くない。問題は、1944年3月の日本軍に、それを実行する能力があったかどうか、である。

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シナリオは、インパール攻略のため、日本軍3個師団がチンドウィン川を渡って展開したところから始まる。だがこれと時期を同じくして、日本軍の後方には、イギリス軍空挺部隊「チンディット隊」が進入。その後方連絡線を脅かすという初期配置になっている。 

さてインパール作戦と言えば、日本軍の無謀な補給計画によって頓挫した、というのが一般的な見方だが、このシナリオでの補給状況はどうだろうか。

まずTSWWは、OCSよりおおざっぱなスケールなのに、OCSより補給ルールが細かくなっている。まず補給体系には、自国から地続きで補給を送る大陸(Continental)補給システムと、自国から海外に派兵した場合の渡洋(Overseas)補給システムがあり、微妙に補給線の引き方が異なっている。

日本軍は、自国から離れているため渡洋補給システムを使いそうなものだが、隣国タイ(親枢軸国)を本国として、ビルマまで鉄道を通して大陸補給システムを運用としているものとみなす。ちなみにそのタイ=ビルマ間の鉄道が、映画「戦場にかける橋」でも有名なクワイ河鉄道なのだが、イギリス製のTSWWとしては、ビルマ鉄道の建設ルールはもちろん、捕虜の奴隷労働ルールも準備されている。

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日本軍には、補給所(ST)カウンターが2個、自動車化補給部隊(QM)が3個、河川補給部隊(RM)が1個用意され、それによって補給網を形成し、インパール作戦部隊はもちろん、東は拉孟・騰越、西はアキャブまでを補給下に置く必要がある。

まず補給所は、都市にしか配置できないため、1つは後方のラングーン、1つは前線近くのマンダレーに配置。さらにマンダレーの補給所には、20スタックポイント(連隊相当)を補給下に置ける補給部隊をスタックさせ、これを補給拠点とした。補給所と補給部隊がスタックした場合、その補給部隊の移動力に等しいヘクス数の部隊補給ルート(QMSR)範囲内にあるユニットと、そのルートから6ヘクス以内にあるユニットが一般補給下に置かれる。今回の場合、補給部隊の移動力は20なので、だいたい20ヘクス+6ヘクスまでが一般補給下に置かれる。

その部隊補給ルート上の、イェウにさらに補給部隊を配置し、そこからまた20ヘクス+6ヘクス先までの、インパール作戦部隊を一般補給下にした。またバーモにも補給部隊を置き、ミートキーナに置かれた第33軍司令部を介して、さらに先の拉孟・騰越までを一般補給下としている。

もちろんこれは、あくまで晴天時の補給範囲であり、悪天(Poor)、荒天(Severe)ともなれば、1ヘクスを通過するコストが増加し、たちまち補給が届かなくなってしまう。それでなくても、日本軍の補給範囲はインパールが狙えるぎりぎり程度であり、晴天時にどこまで攻められるかが作戦の成否を握っている……

……というところまでをルール上、解読するのに2日ほどかかってしまった。自分で翻訳したルールなのに頭に入っていないのもオカシな話だが、訳している間は『ああそうか』と納得しても、いざ実践するとなると『???』となるものだ。 

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ちなみに、こちらが西のアキャブ方面。一般港湾があるアキャブには、河川補給部隊を配置した。本来なら河川補給部隊は、巨大/大型港湾にしか設置できないが、10スタックポイントという限定された能力の河川補給部隊なら一般港湾にも配置できるという選択ルールを採用した(ルール16.L.3.d)。 

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こちらが東のレド公路、雲南戦線。雲南からは、1944年5月後半ターン以降、中国国民党軍が現れ、拉孟・騰越を攻める予定。チンディット部隊が降下・開拓したアバディーン、ブロードウェイ飛行場には、レドから空中補給が行われる。

そういった連合軍の空中補給システムを、日本軍の航空戦力でどうにかすれば良かったという考えもあるだろうが、両軍の航空戦力差を見て頂こう。

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数的には、連合軍圧勝。質的にも、イギリス軍にはスピットファイアVIII(空戦攻撃力13・防御力9)、アメリカ軍にもP47D5(空戦攻撃力11・防御力9)、P51B(空戦攻撃力9・防御力8)という新鋭戦闘機が投入されているが、日本軍は一式戦・隼(Ki43-IIb Oscar)(空戦攻撃力7・防御力6)があるだけで、これで制空権を取れだの、空中補給を切れと言われても……

『いやしかし、ビルマ戦線の一式戦部隊は、P51とも互角に戦ったのだ』という事実もあるにはある。実際、日本軍には5ユニット・10ステップ=200機相当の一式戦・隼があるが、これ史実の機数よりだいぶ多いと思う。1943年12月、ビルマに展開していた第5航空師団がカルカッタを全力攻撃した際、戦闘機94機を投入したとあるが、さすがにこの時期、200機は無かったのではないか。まあ、それもビルマ戦線で健闘した一式戦部隊を讃えてこのような評価になったのかもしれない(実際の機数より多めの戦力として認められているということ)。とは言え、互角=同数の損害を与え合ったとしても、そもそもの母数(保有数)が違うのだから、割合からいったら負けているのよ。

ウォーゲームでは、史実でそのような善戦があったとしても、割合と無慈悲に『でも結果、負けたから』といってバッサリ切る場合があるし、TSWWもその例外ではない。零戦神話があるように、一式戦神話もあるかもしれないが、そこはもう消耗戦的な視点で、ビルマ航空戦も見てみたいと思う。ではソロプレイ開始 ……(前振りが長すぎる)

【Wargaming Column】「PLUS 透明デスクマット 反射抑制機能付き」

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20年前に買った透明デスクマットが、さすがに経年劣化で黄ばんできた。いつも自宅テーブルでウォーゲームをする際、地図盤の上に敷いていたが、リプレイ写真を撮ると、その黄ばんだ色味まで映ってくるので、これはもう寿命だなと、新しいものを購入した。今まで使っていたのも、PLUSというメーカーの透明デスクマットだったが、Amazonで調べたら「反射抑制」機能付きがあったので、そちらを選択。サイズは、我が家のテーブルが150cm✕90cmなので、それに一番近い、1390mm✕690mmを購入。もう少し幅があると良かったけど、まあいいか。とりあえず上の写真のように、フルマップ1枚の左右にA4の図表類を置いても、十分カバーできる大きさ。※撮影モデル:「Normandy'44」さん。 

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「反射抑制」機能付きとは言え、完全に反射しないわけではない。あくまでも「抑制」。とは言え、以前のモノよりはかなりマシ。 

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これが今まで使っていた透明デスクマット。蛍光灯の形まで分かるほど、ガッツリと反射。この問題に悩まされてきたウォーゲームBloggerは多いはず。 

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これも今までのデスクマット。本来の地図盤の色彩とは異なる、黄ばんだレイヤーが乗っかっている。いやそれも味になるよね、と言うほどでもない。 

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こちらが、新しく買った透明デスクマット。本来の色味が素直に出ている。 

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フルマップ2枚はカバーできないが、以前のモノより長さ25cm、幅10cmほど広くなり、地図盤を押さえる安定性は増したはず。※撮影モデル:「OCS:Baltic Gap」さん。 

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複数のマップを押さえるにも、やはり広い安定性が大切。※撮影モデル:「TSWW:Singapore !」さん。

実はこの「TSWW:Singapore !」のインパール作戦シナリオを実プレイしようとして、今までのデスクマットでは足らんなと思ったのも購入のキッカケ。あとOCS(Operational Combat Series)の新作「Hungarian Rhapsody」も発売が決定したので、それが届く前に、同じ末期東部戦線でOCSを復習するために「Baltic Gap」にまた触れておこうかなと。

とは言え、最近のコロナウイルス騒ぎでリモートワークも増え、このテーブルでオンライン仕事をすることも多く、なかなかウォーゲームを広げっぱなしにもできないが、一応準備だけは整えておこうと。

【参考文献】「ヒトラーの特殊部隊 ブランデンブルク隊」

ヒトラーの特殊部隊 ブランデンブルク隊
 

昨年刊行された「ヒトラーの特殊部隊 ブランデンブルク隊」を購入。ブランデンブルク隊は、特殊部隊だっただけに、その内実は不明な部分も多いが、それにしてもかなり詳細な内容だったため、出た時から気になっていた一冊。現在ルール翻訳中の「TSWW:Barbarossa」では、ブランデンブルク隊のユニット毎に特殊能力が異なるという仕様になっており、元ネタを確かめる意味でも入手してみた。

ちなみに「TSWW:Barbarossa」のブランデンブルク隊は、まず共通能力として、敵が保持している橋梁の奪取や破壊、石油精製施設の捕獲が行え、パルチザンに対する降伏ダイスロールに有利な修整が得られる。さらにウクライナ人で組織されたナハティガル(ナイチンゲール)大隊、ローラント大隊(本書を読むと実際にはブランデンブルク隊の指揮下ではなかったらしい)は、ソ連軍の降伏ダイスロールに有利な修整が得られ、元ソ連軍捕虜や脱走兵で構成されたベルクマン特務隊は、ソ連軍ユニットを操って、枢軸軍から2ヘクス遠ざけることができる。また鉱油技術旅団は石油施設の修理が行え、第804部隊は常に戦闘前後退が行え、1年に3回奇襲に自動成功し、1ゲームに1回だけソ連軍の非師団ユニットを操れる。まあ、そこまで特別ルールが多いなら、単なる歩兵ユニットとは区別して、使用するかなと。

「OCS:DAK」でも、選択ルールとして「第287特殊任務連隊によるエジプト軍ユニットの懐柔」や「ヘッカー水陸両用大隊による海岸上陸」がある。使ったことないけど。フォン・ケーネン隊ユニットも用意されているが、練度の高い歩兵ユニットとして消耗されるのがオチかなと。

同じく「OCS:Case Blue」のグロズヌイ戦シナリオには第288特殊任務連隊が登場するし、「OCS:Tunisia II」にもフォン・ケーネン隊ユニットが登場するが、どちらも特別ルールは無く、練度の高い歩兵ユニットとして表現されている。またビル・ハケイム戦を扱った「GTS:No Question of Surrender」にも第287特殊任務連隊ユニットが出てくるが、こちらも単なる歩兵ユニット扱い。これもある意味、特殊部隊として訓練されたのに、単なる歩兵として消耗されてしまったという、ブランデンブルク隊の史実的な運用とその悲劇を表しているわけだ。

もう手放してしまったが、レロス島の戦いを扱った「TCS:Leros」は、ブランデンブルク隊をかなりフィーチャーした作品だったと思う。結局まともにプレイすることなく処分してしまったが、もしブランデンブルク隊にご興味があるなら、それをがっつりと堪能できるゲームは「TCS:Leros」かもしれない。

【参考文献】Aleksei Isaev「Dubno 1941」

Dubno 1941: The Greatest Tank Battle of the Second World War (English Edition)

Dubno 1941: The Greatest Tank Battle of the Second World War (English Edition)

 

引き続き「TSWW:Barbarossa」発売に向けて、WWII東部戦線本を収集中。こちらは、ロシアの戦史研究家Alexey(Aleksei) Isaev氏による作戦史「Dubno 1941」。1941年6月、バルバロッサ作戦開始直後、進撃するドイツ南方軍集団に対して、ドゥブノ周辺で行われたソ連南西正面軍の反撃を扱っている。サブタイトルにも「第二次世界大戦最大の戦車戦」とあるが、ソ連軍3000輌、ドイツ軍800輌が参戦しており、後のプロホロフカ(クルスク)戦車戦より、実は大規模だったという。本書が最初に発行されたのも2017年なので、まさに最新の知見というところだろうか。 

このドゥブノ戦を扱ったウォーゲームでは、World ar War誌31号「Drive on Dubno」(2013年)と、コマンドマガジン120号「ドゥブノ大戦車戦」(2014年)があるが、あいにくどちらも持っていないし、プレイもしていない。どちらも本書発行前に発売されたゲームなので、本書での知見は反映されていないかな。一応、どちらも1ユニット=大隊(ドイツ軍)/連隊(ソ連軍)という作戦級スケールになっている。

ただ、この「Dubno 1941」を読むと、むしろもっと細かい、GTS(Grand Tactical Series)のような作戦戦術級ゲームとしてプレイしたいと感じた。と言うのも著者曰く、この戦いは、戦車戦(Tank Battle)というより機甲戦(Armored Battle)であったと。ソ連軍は、大量の戦車を有していたが、それに伴う歩兵・砲兵・航空支援は無く、逆にドイツ軍は、ソ連軍戦車に対して、戦車で対抗するのではなく、歩兵・砲兵・航空支援による複合兵科効果(コンバインド・アームズ)で対抗したと。そのような機甲戦闘は、兵科の違いが如実に反映された1ユニット=中隊単位ぐらいで表現されていると、その様相がよく分かると思う。

ただ、ネックになるのは、その作戦範囲の広さだ。やはり東部戦線だけあって、この戦闘全体を1ヘクス=500mで表現しようとするのは、かなり無理。一応、本書には、6月26日に行われたソ連第8機械化軍団による反撃の戦況図も載っていたが、そこだけ切り取るならアリかなと。

本書では、バルバロッサ作戦開始当初の、ソ連軍の戦車師団や自動車化師団についても詳しく分析しているが、たしかに編制上、装備車輌は多いものの、その構成員の60~70%は軍隊勤務2年以下という、新米部隊ばかりだったようだ。

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「OCS:Smolensk」にも、戦力は高く、人員(ステップ数)も多いのに、質(アクションレーティング)が低いソ連戦車師団が登場していたが、まさにアレ。現在ルールを翻訳している「TSWW:Barbarossa」にも、この当時のソ連戦車師団/自動車化師団に特別なペナルティが課されているし、中には「半自動車化機甲(Half Mortorized Armored)」ユニットなどという、ワケの分からない部隊も登場するが、それもこの当時の、独特な部隊構成を表現したものだろう。

本書ではドゥブノ戦だけが扱われているが、恐らく他の戦線でも、ソ連軍戦車/自動車化部隊は同様の問題を抱えていたと思うので、ドゥブノ戦の戦いぶりを見ることで、当時のソ連軍全体の問題も見えてくるのではないだろうか。

【参考文献】アントニー・ビーヴァー「赤軍記者グロースマン」

赤軍記者グロースマン―独ソ戦取材ノート1941‐45

赤軍記者グロースマン―独ソ戦取材ノート1941‐45

 

2007年に発売された「赤軍記者グロースマン」を、墨田区古書店にて適価にて購入。これもたいして古くない本だけれど、いつの間にか品切れていて高値になっていた。そろそろ史上最大の独ソ戦ゲーム「TSWW:Barbarossa」も発売なので、その雰囲気作りに良いかなと思って。たしかにWWII東部戦線の生々しさや、ドイツ側から伝えられるのとはまた違ったソ連側の実情が感じられる。

しかし個人的には、こういった「下からの歴史(History from below)」=庶民レベルから掘り起こされた民衆史は、あまり興味が無かったりする。いや、もちろん歴史研究では、そういったミクロレベルの情報を丹念に拾い起こすことも重要なのは重々承知なんだけれど、単純にあまり民衆史に興味がないんだと思う。日本の戦争モノでも「海軍飯炊き物語」みたいな本は全然読まないし。だから本書も「イワンの戦争」(これも白水社で品切れだ)も発売当時はスルーしたし、最近コミック化された「戦争は女の顔をしていない」も「ボタン穴から見た戦争」も、書店でぱらぱらとページをめくってみたものの、いまだに買う気がしないし、読んでもいない。

むしろ戦史好きとして自分が興味があるのは「上からの歴史(History from above)」=政治家、軍事指導者、少なくとも作戦指揮官レベルから見た戦争の歴史だったり、戦略家による戦略・作戦分析だったり、作戦経過や部隊史なんだけれど、これはもう好みの問題なので。歴史研究者だったら、その双方を追うかもしれないけど、自分、あくまで一読者なので。 

イワンの戦争 赤軍兵士の記録1939-45

イワンの戦争 赤軍兵士の記録1939-45