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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退したウォーゲーマーの日記

【The Second World War】「TSWW : Singapore !」The Gates of India : Imphal and Kohima 1944 Solo-Play AAR Part.1

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ようやく「TSWW:Barbarossa」のルール翻訳も終わり、すでに現物もイギリスから発送されている。それが到着する前に、TSWWの最新ルールv1.6に慣れるため「TSWW:Singapore !」のインパール作戦シナリオ「The Gates of India : Imphal and Kohima 1944」をソロプレイすることに。このシナリオは、陸空のみだが、今までソロプレイしてきた小規模シナリオとは違って、より広大な戦域規模であり、補給についてもよく考える必要があるので、TSWW中級者へのステップアップとしては良いかなと。今回は、実際にユニットを地図盤に配置しつつ、VASSAL上でも配置を行っている。

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まず戦略的な状況から見てみよう。連合軍は、地図盤外のインド西部から、鉄道によってカルカッタに物資を運び、そこからさらに東のダッカへその物資を移送している。しかし大輸送量(High Volume)の鉄道線があるのはここまで。そこからさらに東の都市、ディマプール、レドへは、各都市に航空補給部隊(Air Quatermaster)を配置し、その航空補給部隊に輸送機ユニットを配属することで、リレー的に物資を供給することになる。レドからは、さらに東の(地図盤外の)蒋介石率いる中国国民党軍に物資が運ばれ、これがいわゆる「援蒋ルート」という戦略的補給線になるわけだ。今までWWIIビルマ戦のゲームは「OCS:Burma」しかプレイしたことがないが、それより規模の大きいTSWWで見てみると、なるほどディマプールの重要性がよく分かる。

これに対して日本軍は1944年3月、この「援蒋ルート」の切断と、インドへの進入を目論んで、ルートの中間に位置するディマプールを狙い、その手前のインパール、コヒマに攻撃を開始する、というのがインパール作戦(ウ号作戦)である。敵の戦略的な補給線を切断するという意味では、決して狙いは悪くない。問題は、1944年3月の日本軍に、それを実行する能力があったかどうか、である。

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シナリオは、インパール攻略のため、日本軍3個師団がチンドウィン川を渡って展開したところから始まる。だがこれと時期を同じくして、日本軍の後方には、イギリス軍空挺部隊「チンディット隊」が進入。その後方連絡線を脅かすという初期配置になっている。 

さてインパール作戦と言えば、日本軍の無謀な補給計画によって頓挫した、というのが一般的な見方だが、このシナリオでの補給状況はどうだろうか。

まずTSWWは、OCSよりおおざっぱなスケールなのに、OCSより補給ルールが細かくなっている。まず補給体系には、自国から地続きで補給を送る大陸(Continental)補給システムと、自国から海外に派兵した場合の渡洋(Overseas)補給システムがあり、微妙に補給線の引き方が異なっている。

日本軍は、自国から離れているため渡洋補給システムを使いそうなものだが、隣国タイ(親枢軸国)を本国として、ビルマまで鉄道を通して大陸補給システムを運用としているものとみなす。ちなみにそのタイ=ビルマ間の鉄道が、映画「戦場にかける橋」でも有名なクワイ河鉄道なのだが、イギリス製のTSWWとしては、ビルマ鉄道の建設ルールはもちろん、捕虜の奴隷労働ルールも準備されている。

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日本軍には、補給所(ST)カウンターが2個、自動車化補給部隊(QM)が3個、河川補給部隊(RM)が1個用意され、それによって補給網を形成し、インパール作戦部隊はもちろん、東は拉孟・騰越、西はアキャブまでを補給下に置く必要がある。

まず補給所は、都市にしか配置できないため、1つは後方のラングーン、1つは前線近くのマンダレーに配置。さらにマンダレーの補給所には、20スタックポイント(連隊相当)を補給下に置ける補給部隊をスタックさせ、これを補給拠点とした。補給所と補給部隊がスタックした場合、その補給部隊の移動力に等しいヘクス数の部隊補給ルート(QMSR)範囲内にあるユニットと、そのルートから6ヘクス以内にあるユニットが一般補給下に置かれる。今回の場合、補給部隊の移動力は20なので、だいたい20ヘクス+6ヘクスまでが一般補給下に置かれる。

その部隊補給ルート上の、イェウにさらに補給部隊を配置し、そこからまた20ヘクス+6ヘクス先までの、インパール作戦部隊を一般補給下にした。またバーモにも補給部隊を置き、ミートキーナに置かれた第33軍司令部を介して、さらに先の拉孟・騰越までを一般補給下としている。

もちろんこれは、あくまで晴天時の補給範囲であり、悪天(Poor)、荒天(Severe)ともなれば、1ヘクスを通過するコストが増加し、たちまち補給が届かなくなってしまう。それでなくても、日本軍の補給範囲はインパールが狙えるぎりぎり程度であり、晴天時にどこまで攻められるかが作戦の成否を握っている……

……というところまでをルール上、解読するのに2日ほどかかってしまった。自分で翻訳したルールなのに頭に入っていないのもオカシな話だが、訳している間は『ああそうか』と納得しても、いざ実践するとなると『???』となるものだ。 

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ちなみに、こちらが西のアキャブ方面。一般港湾があるアキャブには、河川補給部隊を配置した。本来なら河川補給部隊は、巨大/大型港湾にしか設置できないが、10スタックポイントという限定された能力の河川補給部隊なら一般港湾にも配置できるという選択ルールを採用した(ルール16.L.3.d)。 

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こちらが東のレド公路、雲南戦線。雲南からは、1944年5月後半ターン以降、中国国民党軍が現れ、拉孟・騰越を攻める予定。チンディット部隊が降下・開拓したアバディーン、ブロードウェイ飛行場には、レドから空中補給が行われる。

そういった連合軍の空中補給システムを、日本軍の航空戦力でどうにかすれば良かったという考えもあるだろうが、両軍の航空戦力差を見て頂こう。

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数的には、連合軍圧勝。質的にも、イギリス軍にはスピットファイアVIII(空戦攻撃力13・防御力9)、アメリカ軍にもP47D5(空戦攻撃力11・防御力9)、P51B(空戦攻撃力9・防御力8)という新鋭戦闘機が投入されているが、日本軍は一式戦・隼(Ki43-IIb Oscar)(空戦攻撃力7・防御力6)があるだけで、これで制空権を取れだの、空中補給を切れと言われても……

『いやしかし、ビルマ戦線の一式戦部隊は、P51とも互角に戦ったのだ』という事実もあるにはある。実際、日本軍には5ユニット・10ステップ=200機相当の一式戦・隼があるが、これ史実の機数よりだいぶ多いと思う。1943年12月、ビルマに展開していた第5航空師団がカルカッタを全力攻撃した際、戦闘機94機を投入したとあるが、さすがにこの時期、200機は無かったのではないか。まあ、それもビルマ戦線で健闘した一式戦部隊を讃えてこのような評価になったのかもしれない(実際の機数より多めの戦力として認められているということ)。とは言え、互角=同数の損害を与え合ったとしても、そもそもの母数(保有数)が違うのだから、割合からいったら負けているのよ。

ウォーゲームでは、史実でそのような善戦があったとしても、割合と無慈悲に『でも結果、負けたから』といってバッサリ切る場合があるし、TSWWもその例外ではない。零戦神話があるように、一式戦神話もあるかもしれないが、そこはもう消耗戦的な視点で、ビルマ航空戦も見てみたいと思う。ではソロプレイ開始 ……(前振りが長すぎる)