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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

「1868 戊辰戦争」

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今日は、3年ぶりにゲームマーケット会場に行き「1868 戊辰戦争」なるゲームを購入。昨年ぐらいからX(Twitter)でテストプレイの様子がアップされ、なかなか面白そうなゲームだなあと思っていたので入手してみた。会場では、開始2時間で完売したという、結構な人気作だったようだ。

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地図盤は見ての通り、東海から関東甲信越、東北に至る全域をポイント・トゥ・ポイント方式で網羅している。自分も関東生まれ、関東育ちなので、自分の地元はもちろん、見慣れた地名が並んでいて親近感を覚える。ゲームとしては、1ターン=半月で、慶応四年(1868年)四月から九月までの戊辰戦役を扱う。史実で言うと、三月十五日に予定されていた新政府軍の江戸城総攻撃が、西郷隆盛勝海舟の会談により中止され、江戸城無血開城された後から始まり、九月二十二日の会津藩の降伏あたりまでの時期となる。

ゲームは、双方が1枚ずつ交互かつランダムに「行動チット」を引き、旧幕軍、会津藩、白河口、東征大総督、奥羽鎮撫といった各方面部隊を活性化させていく。

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まあ、地元出身としては、D62「国府台」とD68「市川」が直接つながっておらず、D62「国府台」から直接D67「船橋」に行けるのがちょっと違和感。今でも国道14 号線や京成線の駅を見ればわかる通り、西から「国府台」⇔「市川」⇔「船橋」と成田街道として連なっているのだが、これ何かしらゲーム的な意図があるのだろうか? 

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各ポイント=地点は、軍隊の拠点や要地、平地、山地、港あり等に分けられ、ユニット数の配置制限がある。各地点を結ぶ交通路も、主街道、脇街道、山道に分類され、それぞれ消費移動力が異なり、もちろん主街道は移動しやすく、山道は移動しにくい。

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戦闘に負けた場合、ひとつ手前の地点に後退しなければならず、もしその後退地点にすでに味方ユニットがいてスタック制限を超過する場合、さらにひとつ手前の地点に連鎖後退しなければならない。

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カウンターは、しっかりした厚手で、一般ゲームメーカー製と比べても遜色が無い。各戦闘ユニットには表面のみに情報が記され、戦力・火力・練度が数値化されている。1戦力=100人であり、そのユニットの人数の多さを表す。火力は、射撃戦術の発達段階を示しており、1なら火縄銃などの旧式射撃戦術、2なら先込銃(エンフィールド銃等)の導入段階、3なら後装銃(スナイドル銃等)の熟練段階を表す。

こちらは旧幕府・同盟軍ユニットだが、最も頼れそうなのは西洋式訓練を受けた幕府歩兵、伝習隊(土方歳三大鳥圭介が指揮)の兵力5・火力3・練度4。他にも、7連発のスペンサー銃を装備していたとされる庄内藩ユニット、ガトリング砲を装備していた長岡藩ユニット、赤黒のイギリス的な軍服を着ていたとされる仙台藩の額兵隊あたりが頼もしく見える。

戦闘=会戦は、別途、戦闘ボードを使って解決する。まず防御側→攻撃側の順で砲撃を行い、さらに火力の高い歩兵ユニットから、前線にいる目標ユニットに対して射撃を行う。双方ダイスを1個ずつ振って攻撃側は火力、防御側は練度を足して数値が低ければ前線から後退する。そのような射撃戦闘を最大5ラウンド繰り返した後、前線に残っている戦力値を比べ、少ない方が退却する。

そう、つまりこのゲームの会戦では、白兵戦闘は無い。鳥羽伏見の戦いの後、敗退した新撰組土方歳三が『もう刀槍の時代は終わった』と呟いたと言われるが、まさにその通り、すべての戦いは射撃火力で決することになる。なので一応、白兵戦闘が強そうなイメージの新撰組ユニットもあるが、本作ではひたすら射撃戦を行うことになる。戦いは火力だよ兄貴。

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こちらは新政府軍ユニット。もちろん主力の薩摩、長州ユニットは射撃火力に長けているが、全ユニットが火力3というわけでもなく、まだ射撃戦術能力にはバラつきが見られる。佐賀藩の強力な砲隊ユニットはアームストロング砲だろうか。

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戊辰戦争に登場したさまざまな歴史上の人物は、各ターンに1枚ずつ引ける「作戦カード」としてキャラクター化されている。こちらは新政府軍側の作戦カード。「西郷隆盛」なら追加チットを獲得、「板垣退助」は会戦に勝利したら追加行動が可能、「山県狂介」は増援の繰り上げ、といったイベントとして処理される。

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こちらは同盟軍の作戦カード。「大鳥圭介」はユニットを失わずに強行軍が可能、「松平容保」は会津藩ユニットの練度+1、「河井継之助」は長岡藩ユニットの火力と練度+1などがある。

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このように江戸開城以降の戊辰戦争を包括した戦役級ウォーゲームとなると、旧ゲームジャーナル時代の「戊辰戦争」ぐらいしかないはずで、それもすでに入手困難なので、今回早々に売り切れたというのもわかる気がする。また、本作はディティールも細かいし、射撃戦術の発達段階をテーマとした会戦ルールも面白そうなので、戊辰戦争にご興味のあるウォーゲーマーの方は、もし通販がされるようなら、是非入手して、プレイしてみてほしい。自分も近いうちに触れてみよう。