Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Battles of Napoleon】Sound of Drums「Eylau 1807」

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小さなウォーゲーム屋さんから、スイスの新興ウォーゲーム・メーカー、Sound of Drums GmbH(GmbH有限責任会社という意味)の「Eylau 1807」を購入。本作は「Battles of Napolen」なる、ナポレオン戦争時代の会戦級シリーズ第1弾のアイラウ会戦だそうで、メーカー・サイトを見ると、この後、カトルブラとリニー、ワーテルロー、ボロディノ、アウステルリッツドレスデンと後続作が企画されているようだ。まあ、ナポレオンの会戦級シリーズもバタイユを筆頭にいろいろあるが、どこまで続くのか、またゲームシステムとしてどうなのか、気になったので、まずは入手と。

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地図盤はフルマップ2枚。ゲームスケールは、1ヘクス=150メートル、1ターン=60分。バタイユ・シリーズが1ヘクス=100メートル、1ターン=20分、「Wellington's Victory」が1ヘクス=91.44メートル、1ターン=15分なので、そういった既存のシリーズよりは、少し大まかになっている。しかしデザイナーズノートを読むと、このスケールにはもちろん理由があって、特にこの時代の歩兵大隊は、どこの国もだいたい150メートル前後に展開していたと。また騎兵、砲兵についても150メートルという展開幅が適しているので、より詳細なバタイユのように、2~3ヘクスに横隊で展開するようなルールは無いし、その方が簡便にプレイできるだろうと。またこのスケールなら、この時代の大概の会戦はフルマップ2枚に収まるとも書かれている。

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こちらがフランス軍ユニット。1ユニット=歩兵大隊/砲兵中隊/騎兵連隊(1戦力=歩兵100名/砲3~4門/騎兵50騎)。ユニットの表面が横隊、裏面が縦隊になっていて、面倒な複数ヘクス展開ルールを省いたうえで、その双方を表現している。各ユニットには、戦力・兵科マーク・移動力が記されているが、この手のゲームでよく見かける士気や練度といった数値はない。一応、射撃戦の死守判定や、白兵戦で後退するかどうか等、そのユニットの士気を試すような場面もあり、エリート部隊には有利なダイス修正があるが、個人的には士気/練度大好きマンなので、個々のユニットにその数値が無いのはかなり寂しい。まるでGTS(Grand Tactical Series/個々のユニットに練度が記されている)に触れた後で、CSS(Company Scale Syatem/個々のユニット練度廃止)を見た時のような気分だ(分かる人だけ分かれ)

軍司令官には、各ターンに変更できる命令数を表す「指揮値」が記されている。ナポレオンが6、ベニングセンが4なので、フランス軍の方が柔軟に命令を変更できる。また1ターンに使える活性化の数を決める「リーダーシップ値」もあり、これもナポレオンが4、ベニングセンが2と、フランス軍が優勢。

さらに軍団長には、2d6を振ってその数値以下なら自力で命令を変更できる「主導権値」が記されている。最良なのはダヴー、ミュラの10、それ以外のフランス軍団長もほとんどが9か8で、ロシア軍も8か7と、ほぼほぼ互角だなと。

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こちらは、各師団に与えられる命令マーカー。命令には「移動」「戦略移動」「攻撃」「防御」「再編成」「保持」「後退」がある。それぞれの命令には、得られる主導権点があり、それを両軍が合計して、主導権値が高い方が先に活性化できる。最も主導権点が高い命令は「攻撃」なので、「攻撃」命令を下された師団が多ければ多いほど、そのターンで先手を取りやすくなる。

しかしそれぞれの命令には、軍全体の疲弊点を失う命令もある。当然「攻撃」命令は、失う疲弊点も高く、それが軍全体の疲労や士気も表している。勝利目標ヘクスを奪われたり、ユニットや指揮官が除去されると、疲弊点も失われ、完全にゼロになると軍全体が崩壊する。

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こちらは戦力喪失マーカー。

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こちらは、指揮官と戦力喪失マーカーの第2バージョン。

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そして、みんな大好き編成表。

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こちらは両軍の管理ボード。軍全体の疲弊点キューブがどれだけ残っているのか、各師団が今どの命令を受けているか、何回目の活性化をしているのかをキューブを使って記録する。ちなみに各師団は、1回の活性化中に最大3回まで活性化できるが、2回目、3回目と進むごとに移動力は低下する。

活性化ルールは、まずターン序盤に、1d6+ターン修正+軍司令官のリーダーシップ値によって、そのターンに使える活性化キューブの数を決める。その数と同じ個数のキューブを、両軍とも同じ袋かカップに入れ、さらに射撃戦キューブ(赤)を2個入れてランダムに引いていく。ただし主導権点の高い方は、あらかじめ自軍の活性化キューブを1個袋に入れずにとっておいて、それから活性化させることも可能。そして両軍どちらかのキューブが引かれたら自軍の好きな師団を活性化させ、射撃戦キューブが引かれたら否応なくそのタイミングで両軍とも射撃戦をすると。

この、射撃戦のタイミングまで無作為に決められてしまうという「Across 5 Aprils」的なシステムを最初に聞いた時は、うーん、それじゃ俺の趣味じゃないなあ、それって自分の意志が反映されなさすぎるんじゃないかなあ、と思ったが、自軍のキューブを引けば、好きな師団を活性化できるという自由さもあるので、だったら自分でもイケそうだなと。

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本作のシステムも、射撃戦、白兵戦に分かれているが、デザイナーズノートにも「激しい白兵戦はゲーマーの夢に過ぎず」とあるように、大概は射撃戦でカタがついたというデザイン思想に基づいている。白兵戦では双方どちらかが1戦力を失って後退するが、射撃戦では最大5戦力を失うこともあり、あくまでも射撃戦メインのようだ。このあたりは、実際にプレイしてみないと何とも言えない。

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こちらは、ダイス修正などを記録するためのスティック。

 

とまあ、全体的に見ると、バタイユのような詳細なルールを省きつつ、命令と運用に重きを置いた会戦級シリーズなのかなと。規模的にも、たしかにフルマップ4枚の会戦級ビッグゲームよりは現実的にプレイできるかと思う。

しかし先日、同じアイラウ会戦を扱った「Winter's Victory」を買ったばかりなのに、これも買ってしまうなんてどうかしてるが、まあ、同じ題材を、異なるデザイン思想で味わえるのもウォーゲームの楽しみのひとつなので……