Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Advanced Squad Leader】「Sword & Fire : Manila」

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プレオーダーしていたASL(Advanced Squad Leader)の新作ヒストリカル・モジュール「Sword & Fire:Manila」が到着。テーマは、1945年2月、フィリピンの首都マニラで行われた市街戦。当時フィリピンを防衛していた日本陸軍第14方面軍の山下泰文大将は、アメリカ軍がルソン島に上陸してきた暁には、マニラを無防備都市宣言し、陸軍部隊は山中へ撤退するつもりであった。しかし大本営や現地海軍部隊がマニラの放棄に反対。結局、山下の陸軍部隊の大半はマニラから撤収したものの、海軍陸戦隊やレイテ沖海戦で沈没した艦船の乗員などからマニラ防衛隊が編成され、攻め寄せるアメリカ第1騎兵師団、第37歩兵師団との間に激烈な市街戦が展開されたと。

守る日本海軍部隊も、勝つ見込みが無いまま、可能な限りアメリカ兵を道連れにしようと自滅的に戦い、こういった絶望的な戦いではありがちなことに、多くの市民を虐殺、暴行し、フィリピン市民10万人が命を落としたという。しかし攻めるアメリカ軍も、スペイン統治時代の城塞イントラムロス等、堅固な市街地に立て籠もる日本軍を圧殺するため、無差別砲撃によって多くのフィリピン市民を巻き込み、今日の調査では亡くなった10万人のうち、日本軍の虐殺による被害が6万人、アメリカ軍の砲撃による被害が4万人と言われている。

結局、この虐殺での責任等を問われて山下泰文大将が後に処刑されることになるが、一応、後世の日本人の一人としては「東洋のスターリングラード戦」と呼ばれるような惨状と虐殺があったことは覚えておかなければなと。

さて、そんな本作は、マニラ湾とパシッグ川に挟まれた、イントラムロスを含むマニラ市街をマップ6枚で表している。こちらは6枚をすべて繋げた縮小地図盤。

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こちらがイントラムロス。右上の、城壁で囲まれているのがサンチャゴ要塞。こういった城壁や城門も特殊地形としてルール化されている。

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カウンターシートは4枚。建物や城壁をぶち抜く(Breach)ためか、両軍とも戦闘工兵ユニットが多数用意されている。日本軍部隊は、海軍陸戦隊や水兵が中心だったはずだが、特に新しいレーティングのユニットが登場しているわけではない。ちなみにASLに関わって三十数年、初めて自分と同じ名字の指揮官ユニットを発見。まあ、8-0の伍長だったので、やや頼りないが、+1指揮官よりはマシか。

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シナリオは25本、キャンペーンゲームは5本収録。アジア太平洋戦争中、こういった市街地で日米軍が大規模な戦闘を行ったのは恐らくマニラだけだろうし、ガダルカナルや沖縄のようなジャングル戦とはまた違った戦闘状況が再現できるかと思う。しかしテーマ的には、やはり日本人として気が重いというか、申し訳ないというか、いろいろ複雑に感じる戦場ではある……