Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

GMT/VG「Pacific War」

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Compassから「The Third World War」という再販大作が届いたばかりなのに、GMTからも再販大作「Pacific War」が到着。本作は、1985年にVictory Gamesから発売された同タイトルの再販で、アジア太平洋戦争の陸海空の戦闘を統合的にシミュレートした作品。自分も昨年、予習的にVG版を入手したが、たいして予習もしないうちにGMT版が来てしまった。それにしてもこの分厚いボックスに(しかも上げ底無し)、びっちり内容物が詰まっていて、物理的に恐ろしく重い。こんなに重たいボード・ウォーゲームもそうそう無いのでは……

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地図盤はA1サイズが2枚、ハードボード製。そりゃあ重くなるわ。ヘクス径はVG版より若干大きく(広く)なっている。VG版では、2枚重ねて南太平洋側だけにする仕掛けが施されていたが、GMT版ではそのようなギミックは無い。色味も、やや暗めだったVG版に比べると、かなり明るい。

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さらにハーフサイズでソフト仕様の、南太平洋マップも付いている。この地域だけでプレイできるシナリオもいくつかあるので、わざわざ2枚全部広げる必要もない。

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カウンターシートは全10枚。カウンター総数2624個。まずシートNo.1から3は、両軍の航空機ユニット。あまりの内容物の重さに、シートの一部が折れ曲がっていたが、ユニット自体にダメージは無く、ぎりぎりセーフ。そして旧VG版の航空機ユニットはシルエットだったが、新GMT版は美しい線画になっている。各ユニットに固有部隊名(台南Tainanだとか)が入るようになったものの、数値の並びはほぼVG版と同じ。と言うか、今回の再版は、細かく改訂されてもいるが、おおむねVG版を踏襲した形になっている。

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シートNo.4と5は、両軍の地上ユニットが占めている。VG版では就役ポイントコストが表面に記載されていたが、GMT版では裏面に変更。そしてVG版では、アメリカ軍は陸軍も海兵隊も全部真っ青なユニットだったが、GMT版では、もっともらしく見える色に変更されている。日本軍も海軍陸戦隊が色分けされ、全体的に判別しやすくなったと思う。

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シートNo6と7は、艦船ユニット。VG版の日本軍は真っ黄色だったが『そういう人種差別的な表現はけしからん』と言われるのを避けるためか、紅白を基調としたユニットになっている。艦船ユニットも、表面の数値の並びはVG版と同じだが、裏面の砲撃力、魚雷力はVG版より見やすくなっている。

しかしあらためて眺めてみると、カウンター数が多い割には、艦船ユニットが占める割合はそれほど多くない。艦船の数値の付け方にしても、さほど細かく差異を出しているわけでもなく、よくある「時期によって改修型ユニットに差し替える」なんてことも無い。もしかしたら軍艦マニアにとっては(いや軍用機マニアと陸軍マニアにとっても)物足りなく感じるかもしれないが、そこが主眼のゲームではなく、あくまで陸海空の統合作戦シミュレーションに重きを置いているのだろう。このスケールで、1日刻みで作戦進行を細かく進めていく場面もあるのだから、むしろ作戦マニア向けのゲームなんだと思う。

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シートNo8から10は、マーカー類。

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そしてルールブックは、使うルール量に応じて3パターン用意されている。最も簡単な戦闘(Engargement)シナリオ用のルールブックは最もルールが省略されており、次が短期戦(Battle)シナリオ用のルールブック、そしてルールがすべて掲載されたコアルールマニュアルという形になっている。またシナリオブックの他に、珊瑚海海戦シナリオのリプレイも別冊化された。

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そして図表類が多いのも本作の特徴。こちらは日米両軍のディスプレイシートとプレイヤースクリーン。もし旧VG版から変更が無ければ、ホビージャパン版の日本語版チャートをそのまま流用できるかもしれない。

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さらに作戦ディスプレイ、両軍の部隊ディスプレイと、これ全部広げるにはかなりのスペースが必要で、地図盤2枚分だけ空間を確保すればそれで済むわけではない。

そしてあいにく、早くもGMTサイトでは本作のエラッタと明確化が公開されている。大半はシナリオ部分の間違いだが、すでに二段組み3ページ……まあ、校正の詰めが甘かったようだ。

このように、おおむねVG版を踏襲した再版だが、新版のデザイナーズノートを読むと、いくつか主要な変更点もあるとのこと。23.1.2「地上ユニットの移動制限」、25.1「潜水艦のパトロール」、2.3.1「港湾と飛行場の統合」あたりが目立った変更点だが、自分がまだVG版で経験していない領域なので、実際どう機能するのかはこれから確認と。

自分の場合、軍艦マニアではないので、あまり詳細過ぎる海戦ゲームよりかは、こういった作戦級ゲームの方が合っているような気がする。本作の場合、作戦そのものを設計し、期間や投入戦力を自分で決められるあたりは、とても魅力的に感じる。とりあえず、また小規模シナリオから少しずつ試していきたい。