Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Wargaming Column】My World War II X'mas Tree 2019

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※War-Gamers Advent Calendar 2019 参加企画

今年の夏、猿遊会主催のたかさわさんの音頭で、N村さん、vk-satoさんと江古田で飲んだ時、ウォーゲームのスケール(戦略級~作戦級~戦術級)の話題が出た。ウォーゲームのスケールというのも、かなり曖昧で、時代やテーマによって異なるし、人によって定義も異なるよねという話になったのだが、今回は、自分なりのウォーゲーム・スケールという奴を、我が家で所有されているWWII(第二次世界大戦)陸戦ウォーゲームをお題に、季節柄、クリスマスツリーに見立てて分析しようと思う。

【Wargaming Column】江古田4人会・2019夏 - Wargaming Esoterica

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まずクリスマスツリーの一番上に、お星様の如く輝くのは「政戦略級」とも言うべき、GMT「Gathering Storm」。リデルハートなら大戦略級」と呼ぶかもしれない。11月に買ったばかりでまだ未プレイだが、一応、我が家のWWIIゲームの中では、一番スケールが大きい。ここでは、実際の戦争の帰趨よりも、いかに戦争に備えるかという国家戦略がテーマとなり、当然、政治、外交、経済という要素が含まれる。むしろ戦争そのものは指揮しなくてもウォーゲームとして成立するあたりが、次の「戦略級」との違いであり、特徴かなと。まあ、このスケールは出版点数も少ないし、今のところ「Gathering Storm」と、そのアジア版「Storm over Asia」(未発売)だけあれば良いかなと思っている。ちなみに1ターン=3ヶ月。

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その一段下に置かれるのは、オーソドックスな「戦略級」であるGMT「A World at War」。単純に言えば、戦争全体を指揮するスケール。もちろん、政治、外交、経済も含まれるものの、「政戦略級」とは違ってそこだけで留まらず、実際の戦争の遂行がメインテーマとなる。このスケールも今現在、我が家では「A World at War」しかない。以前は「第三帝国」「World in Flames」にも手を出したが、すでに断捨離済み。しかし「A World at War」は、1ユニット=軍団級、1ターン=3ヶ月だが、たとえばGMT「Unconditional Surrender !」は、1ユニット=軍級、1ターン=1ヶ月と、このスケールでも表現する部隊規模、時間はいろいろだし、その違いも楽しめる。

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我が家のツリーで、その下に位置するのが、アドバンスド・エウロパ・シリーズことTSWW(The Second World War)シリーズ。こちらは、政治、外交要素は無く、1ユニット=師団級、1ターン=半月なので、作戦級と呼んでもおかしくない。ところがTSWWの場合、戦略爆撃や潜水艦戦争など戦略戦闘も扱うため、単純に作戦級とも言い難い。ここはいっそ、戦略級っぽい作戦級=「戦略作戦級」と名付けるのはどうだろうか。また東部戦線全体や、日中戦争、冬戦争、スペイン内戦といった、単なる作戦レベルを超越したスケールという意味で「戦域級」と呼んでもいいかもしれない。 なにしろTSWWの場合、昔の陸戦メイン・海空戦は付け足しというエウロパシリーズとは違って、空戦マシマシ、海戦マシマシ、補給要素全部載せみたいなメニューになっているので、だいぶ違ってくるぞと。

この「戦略級」と「作戦級」の狭間のゾーンもなかなか面白く、以前所有していたSPI「第二次欧州大戦」も、1ユニット=師団級、1ターン=1週間の戦域レベルの作戦級でありながら、生産を含めた戦略級でもあった。また1ユニット=軍団級、1ターン=2ヶ月の「ロシアン・キャンペーン」は、時空間的には戦略級なんだけど、あくまでデッカい作戦級だと思っている。

そう、おおざっぱに「作戦級」とは言え、1ユニット=師団級~連隊級~大隊級、1ターン=1週間~1日~半日では、出来ること、やらされることも違ってくる。「戦略と戦術の間にあるのが作戦」という概念は良しとしても、第二次大戦の東部戦線のように、アホのように広大な作戦域や、長期間の作戦もあり、単純にひとくくりにするのもどうかなと。また局地的・短期的な作戦が軸となれば、より細かいディティールが彫り込まれて、戦術級寄りになってくる。言ってみれば「作戦級」は、このクリスマスツリーの幹であり、もっとも枝葉が伸びている部分なので、このスケールはもう少し細分化して見てみよう。

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まず、我が家のオーソドックスな「作戦級」ゾーンを占めるのは、OCS(Operation Combat Series)。1ユニット=師団級、1ターンは、基本的には1/2週間。TSWWが扱うような戦略次元は省き、あくまで作戦次元だけを扱い、キャンペーンシナリオともなれば、自分で数ヶ月単位の作戦も立案できる。その一方で、装備戦車によってユニットの戦力が異なったり、航空機に機種の違いがあるなど、ちょっとした戦術的ディティールも盛り込まれているのも特徴。

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我が家で言うと、Simonitch御大の「Stalingrad'42」「Ukraine'43」あたりも、OCSと同じく戦略次元は扱わない、1ターン=師団級、1ターン=1週間未満の「作戦級」。ただしOCSより、戦術的ディティールは省かれているため、よりシンプルかつ純粋な「作戦級」と言えるかもしれない。実際、このあたりが一般的には人気もあるだろうし、出版点数も多いように思う。『うちのクリスマスツリーは、その部分が一番枝葉が伸びてますよ』と仰るウォーゲーマーも多いだろう。しかし我が家のツリーでは、この「純粋な作戦級」という奴が一番少ないのだ。以前はあれこれ買い集めたけれど、どうも物足りず、断捨離によって剪定され、今残っているのは、むしろ上層の戦略次元を採り入れていたり、下層の戦術次元まで再現するようなものばかり。この一番ポピュラーなあたりに、物足りなさを感じるというのもどうかと思うが、欲張りなウォーゲーマーなので仕方ない。

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さらにツリーを下がって、1ユニット=連隊級、1ターン=半日の局地的・短期的な「作戦級」ゲーム……「Ardennes'44」「Holland'44」あたりになると、OCS等より、もっと戦術的ディティールが彫り込まれ、その駒さばき(戦車と歩兵をスタックさせて諸兵科連合効果を得よう等々)は、作戦というより戦術行動になってくる。また作戦もかなり規定され、その枠内での自由度も低くなる。乱暴に言うなら、作戦をやらされる作戦級。当然『俺は自分なりの作戦を立てたいのにそれができない!』と文句が出てもおかしくない。しかしこれがつまらないかと言われるとそんなこともない。世の中には『自由に作戦を考えていいよ』と言われても困る人たちもいるし、中間管理職よろしく、下された作戦命令をどこまで効率的に遂行できるかを楽しめるのが、この手のゲームだと思う。

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さらにツリーを下りていくと、1ユニット=大隊級、1ターン=8時間(午前・午後・夜間)の「作戦級」ゾーンに入る。ここを占めるのは、まずGOSS(Grand Operational Simulation Series)。軍団単位の管理システムもある一方、さらに戦術的ディティールも細かくなり、戦術級っぽい作戦級=「戦術作戦級」とも言える。「Atlantic Wall」に関して言えば、大枠としてはノルマンディ上陸・半島突破作戦という長期的な作戦を扱いながらも、キャンペーンゲームの中で、グッドウッド作戦のような2~3日程度の局地的な作戦を、いつ、どこで、どの部隊で行うかという作戦立案もできるという欲張りさん。

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そしてGOSSと同じく、1ユニット=大隊級ながらも、1ターン=1日という「作戦級」としては、BCS(Battalion Combat Series)がある。BCSは、GOSSと同じ大隊級とは言え、戦車ユニットに射程があって撃ち合うため、さらに「戦術作戦級」寄りだと思う。戦術戦闘面ではBCSの方が細かく再現されているが、タイムスケールとしてはGOSSの方が1日の動きをより細分化している。

こうして見てみると、「戦略と戦術の間にあるのが作戦」という概念は正しいものの、第二次大戦で言うなら、大は数ヶ月規模の東部戦線から、小は数日規模の局地戦まで、「作戦」というスケールはかなり幅がある。そしてここまで作戦域の幅が広い戦争というのも、第二次世界大戦以外に例が無いし、だからこそ多くの作戦級ゲームが生まれているのだろう。

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さらにその下には、1ユニット=中隊級ゾーンがあるが、あまりこのスケールのゲームは多く発売されていない。我が家ではGTS(Grand Tactical Series)とCSS(Company Scale System)という兄弟シリーズが占めているが、どちらも1ターン=2時間で、実際のプレイは戦術級的なのに師団管理もある。このあたりは、作戦級っぽい戦術級ということで「作戦戦術級」と呼んでいいだろう。個人的には、この1ユニット=大隊~中隊という「戦術作戦級」「作戦戦術級」(ややこしいな)が大好物。

ちなみにこの呼び方、音楽評論家のピーター・バラカン氏による『ジャズっぽいロックがジャズロックで、ロックっぽいジャズがロックジャズ』という、非常に単純かつ深遠な呼び方に倣っている。つまり軸足が後ろに来る。「戦術作戦級」は、あくまで作戦級という立ち位置ながら戦術級テイストを備えている。「作戦戦術級」は、あくまで戦術級に軸足を置きながら作戦級テイストを備えているということ。いやもちろん、その立ち位置なり軸足という判断にしても、あくまで俺の中での話よ。

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そしてWWIIクリスマスツリーの一番下の土台には「戦術級」が控えている。我が家でこの土台を支えているのは、1ユニット=分隊級、1ターン=2分の「Advanced Squad Leader(ASL)」シリーズ。まあ、なかなかプレイできていないし、コレクター的にもなっているが、集めるのもASLの楽しみよね。

そして「戦術級」には、他にも1ユニット=小隊級があるが、あいにく我が家では今現在、そこが空いている。そもそも自分は、まさにその1ユニット=小隊級である「Panzer Leader」からこの趣味に入ったのに、今ではそこが無いというのも不思議な話。

第二次大戦の「戦術級」には、架空の地図盤を用いて擬似的な戦場でプレイするものと、史実の地図盤を用いてプレイするものがある。自分の場合、擬似的な「Panzer Leader」「Squad Leader」から入ったものの、「The Devil's Cauldron」で史実の地形を用いる戦術級に触れてから、俄然、史実派に傾いてしまった。恐らく今現在、自分が夢中になれる、史実に沿った地図盤を用いてプレイする小隊級ゲームと出会えていないのが問題なのだろう。以前はTCS(Tactical Combat Series)がそこを埋めていたが、ちょっと趣味が合わず(Not for Me)、すでに断捨離してしまったし。

そういう意味では、ASLも、架空地形を用いるシナリオよりは、史実に沿ったヒストリカル・モジュールに触れたいと思っている。そのキャンペーンゲームになると、手持ちの部隊をいつ盤面に投入するかという、師団規模ぐらいの管理も楽しめるし。まあ、そこもなかなか手が出せていないので、とりあえずはモジュールをいろいろ集めている段階。

さらに「戦術級」には、1ユニット=個人級、あるいは1ユニット=1機、1艦を表す個体級もあるが、もうそこには手を出さないと思う。ASLも、車両だけは1ユニット=1輌=個体級だし、そもそもASLだけでお金がかかるので、他の「戦術級」に手を出す余裕が無いというのも真実。このゾーンはもう、ASL一筋で行くしか……

とまあ、2019年の我が家のWWIIクリスマスツリーはこのような構成に。そしてこの構造も、来年、3年後、5年後にはどうなっているか分からないので、いずれまたツリー構造が変わってきたら、あらためて記事にしてみたい。そしてこのツリーの空戦版、海戦版、戦国時代版、ナポレオン戦争版等のバリエーションも作れるし、自分が所有しているウォーゲーム・コレクションをすべてツリー構造化しても面白いかと。普段、自分が触れているウォーゲームを構造的に分析してみると、どこが多くて、どこが少ないか、どう偏っているかが分かるのも面白い。まあ、分かったからといって、その偏りをどうにかする必要もなく、その偏りこそが、その人の個性であり好みなのだけれど。