Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退したウォーゲーマーの日記

【Wargaming Column】江古田4人会・2019夏

f:id:crystal0207:20190812082507j:image

昨日は、猿遊会主催のたかさわさんの音頭で、N村さん、vk-satoさんとウォーゲーマー4人が集まり、江古田にて飲み食べ会。イスラエル料理店シャマイムにて、17:00から20:30頃まで約3.5時間。そこから喫茶店に場所を移して、さらに1時間という、なかなか長丁場ながらも、面白い集まりだった。

Lacey: Teaching operational maneuver | PAXsims

元々今回の飲み会は、たかさわさんが、アメリ海兵隊大学の教授による「作戦機動を教える」という記事に触発されて、招集されたもの。この記事の内容を要約してみると……

アメリカ軍は、ここ十数年、対テロ戦争に対応するため、野戦士官の教育プログラムを不正規戦寄りに変更してきた。しかしそれによって旧来的な正規戦の作戦機動……つまり十数個の旅団を動かすような、作戦立案・運営能力が低下しているのではないかという懸念。

・その証左として、野戦士官たちと民間ウォーゲーマーたちを、ウォーゲームで競わせてみると、実戦経験はおろか専門的な軍事教育も受けていない民間ウォーゲーマーの方が、はるかに優っている。

・だからと言って民間ウォーゲーマーに、実際に部隊を指揮する能力があるわけではないが、民間ウォーゲーマーには、地図盤をぱっと見て、咄嗟に戦況を理解できる「瞬間的パターン認識」能力がある。彼らの多くは戦史書を読み、「歩く百科事典」のように豊富な戦史知識を持ち、ウォーゲームの地図盤を見た瞬間、その膨大な知識から、ある種のパターンを当てはめ、作戦を立案・遂行する能力を持っている。そういった能力と読書量は、簡単に修得できるものでもない。

・さらに民間ウォーゲーマーは、そのひとつ上のレベルの判断……『そもそもアルンヘムを目標とすべきなのか?』『むしろアントワープを第一目標とすべきではないのか?』という、作戦目標そのものに対して疑問を抱く能力も有している。このような教育を、是非我が軍の士官にも……という内容である。

……まあ、昨日の参加者は4人とも薄々感づいてはいたが、この教授は、軍に対し『不正規戦ばかりに傾倒していると、対ロシア、対中国との正規戦に対応できなくなるぞ。だから私の作戦機動的な教育プログラムを導入して(買って)くれよ』と売り込んでいるのだろう。そしてその売り込みのために『今じゃアメリカ軍の士官は、民間ウォーゲーマーに作戦能力で負けているんだからさ』と、ウォーゲーマーを引き合いに出しているので、褒められてもあまり嬉しくはない。実際、ウォーゲームがヘタなゲーマー(自分です)もいるし、歴史に詳しくないゲーマー(自分も百科事典ではない)だっているぞと。

ただ、たかさわさん的には、ウォーゲーマーが持っている資質や、実際との軍隊の関係など、ちょいちょい引っかかる部分があったそうなので、それを語りませんかという会だった。

N村さんは、ウォーゲーム博物学的なアプローチから、アバロンヒル社の創設者にして現代ウォーゲームの祖とされる、チャールズ・S・ロバーツへとその源流をたどり、ロバーツが世に送り出した「ヘクス・ZOC・相対戦力による隣接戦闘」という、おおまかな汎用システムが、さまざまな時代や規模のウォーゲームに適用されたことが、民間ウォーゲーマーたちの、ぱっと見て戦況を把握できる「瞬間的パターン認識」の獲得に大きく寄与したのではないかと。もちろんその後、ウォーゲーム進化の系統樹から、エリア式やポイント・トゥ・ポイント式の作戦級ゲームも出現しているけれども、たしかに作戦級ウォーゲームの根幹は、いまだに「ヘクス・ZOC・相対戦力による隣接戦闘」として、太く長く伸び続けている。 

f:id:crystal0207:20190812082517j:image

そこから話題の中心になったのは『作戦級ゲームとはなんぞや?』『戦略級・作戦級・戦術級ゲームの区分とは?』というお題。これを話し合う前に、まず全員『そのあたりの境界線に、自分は、特に強いコダワリはありませんよ』と確認したうえで、輪講会、続行。

たかさわさん的には『主力ユニットに射程があるゲームが戦術級で、射程の無いゲームが作戦級』だと感じていたとのこと。しかしvk-satoさんは、ナポレオン戦争時代のゲームを例に出され、「NAW(Napoleon at Waterloo/War)」シリーズも「ヘクス・ZOC・相対戦力による隣接戦闘」という形なので、見た目としては作戦級ゲームに見えてしまうけれど、実際にゲーム上で行うのは、会戦中での戦術行動なので、やはり「NAW」も戦術級ゲームだと思ってますよと。 

僕自身は、1ユニット大隊級なのに、主力ユニットにも射程がある「BCS(Battalion Combat Series)」を例に挙げた。実際、BCSでプレイヤーが行うのも『あのヘクスに射程3ヘクスのパンター戦車大隊がいるな。射程2ヘクスのM4シャーマン戦車大隊が、平地を通って近づくと、一方的にアウトレンジ射撃を喰らうから、森を通って、一方的に撃たれない距離まで接近しよう』という戦術行動である。このように、見かけは作戦級ゲームでも、実際にやることは戦術レベルというゲームもあるのでは?と。

さらに自分が気になったのは、「Ukraine'43」と「Normandy'44」「Holland'44」「Ardennes'44」の違いである。「Ukraine'43」は、ソ連軍視点からすれば「ウクライナ戦線で攻勢に出る」という大目標の下に、どこに攻勢の重点を置くか、いつ重点を切り替えるか、そのために、いつ、どこに、どの程度の戦力を送り込むか、どこは切り捨てるか、という作戦立案が行えるゲームであり、参加しているソ連軍の規模からしても、作戦術のゲームだと感じている。実際、ロバーツの「ヘクス・ZOC・相対戦力による隣接戦闘」の流れにもあるゲームだ。

一方、「Normandy'44」「Holland'44」「Ardennes'44」は、同じ「ヘクス・ZOC・相対戦力による隣接戦闘」という形にはなっているものの、すでに作戦として、上陸する海岸はノルマンディと決まっているし、目標はアルンヘムと決まっているし、攻勢に出る場所もアルデンヌと決まっている。そこに作戦立案の余地は無い。ゲーム内で行われるのは、あくまで作戦を運営・遂行するダンドリであり、もはや戦術行動の域である。そのため、この手のゲームは、ぱっと見は典型的な作戦級ゲームなのに、やることと言えば『88ミリ砲をボカージュヘクスに入れて守りを固めよう』とか『装甲擲弾兵連隊とパンター戦車大隊をスタックさせて諸兵科連合効果を生み出そう』となり、それは作戦ではなく戦術行動だし、だったら実質的には戦術級ゲームじゃないかなと。

ここに至ると「作戦立案が行える作戦級ゲーム(まさしく作戦主体のゲーム)」と、「作戦立案は行えず、作戦運用を行う作戦級ゲーム(もしかすると実質的には戦術主体のゲーム)」という区分も成立するし、戦術級ゲームという概念を、大きく広げて解釈することもできる。「ASL(Advanced Squad Leader)」のような、1ユニット分隊規模のゲームだけでなく、1ユニット旅団/連隊~大隊規模の戦術級ゲームもあると。このあたり、旅団/連隊規模でも詳細なデイティールを表現するナポレオン時代のゲームの方が分かりやすいかもしれない。

いわゆるミニチュア、ジオラマ的な、小部隊や会戦の戦術級ゲームは、兵棋演習に端を発するため、ロバーツの作戦級ゲームよりも歴史は長いのだが、もしかすると「Normandy'44」「Holland'44」「Ardennes'44」あたりのゲーム群は、ロバーツからの流れと、ミニチュアからの流れのクロスオーバー的な位置にいるのかもしれない。

 

……とまあ、そういった話に花が咲いたのだが、なにもこれ、我々が、世の中のウォーゲーム区分を定義してやるぜ!という集まりではない。こういった区分も、あくまで個人個人の中での話なので、それを誰かに強制するつもりもない。『へー、そういう考え方・感じ方もあるのね』程度で読み飛ばしていただければと。ただ、昔からウォーゲームの宣伝文句として使われてきた「戦略級・作戦級・戦術級」という言葉を、自分たちも無自覚に、あまりにその語義を吟味することもなく使ってきたので、そのあたり、今日集まった皆さんはどうお考えですか?と。

また、この他にも「時代や国によって、戦略・作戦・戦術という言葉の範囲も異なる」「政治・経済要素の無い戦略級ゲームもあり得る(政略と戦略のレベル差)」「史実を再現するための制約や縛りが、一般ボードゲーマーから疎まれる場合」「歴史は、単なるお飾りなのか、主体なのか(中世ヨーロッパを意匠とした「ドミニオン」を遊んでも、中世ヨーロッパの領主的感覚は味わえない)」「ヘタなウォーゲーマーは、失敗することで、実際の奇襲効果を味わえるから、ある意味で幸せ」「史実を知りすぎているがゆえに、その知識に思考が制約され、ゲームに負ける場合」「史実を知らないからこそ、純粋にゲームの勝利を目指せる場合」「昔のSPIやAHのゲームを郷愁感(ノスタルジー)で遊んでいるわけではないが、昔のゲームに対して郷愁を覚えることはある」などという話題もあり、とても書き切れないので、あくまで抜粋ということで……