Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Battalion Combat Series】「Panzers Last Stand」Operation Spring Awakening Solo-Play AAR Part.1 (Tribute to Dean Essig)

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先日亡くなられたウォーゲーム・デザイナー、Dean Essig氏の作品を何かプレイしようと、あれこれ考えた末、氏のシリーズで一番好きなBCS(Battalion Combat Series)から、「Panzers Last Stand」(1945年ハンガリー戦)の中でもまだ未プレイだった「春の目覚め作戦」シナリオを選択。第二次大戦におけるドイツ軍最後の大攻勢という意味でも、追悼プレイにふさわしいかなと。

「春の目覚め」作戦は、1945年3月6日に開始され、3月15日に終了している。本シナリオも、その全期間を扱っている(1ターン=1日)。史実でのドイツ軍の最終進出線はこんな感じ。「Panzers Last Stand」全体としては、さらにこの北(上)にマップ2枚が存在し、盤外右上に包囲されたブダペスト市がある。

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攻める枢軸軍は、バラトン湖とヴァレンツァ湖の間から出撃する。10個装甲師団(ドイツ第1SS、第2SS、第3SS、第5SS、第9SS、第12SS、第1、第3、第23装甲師団ハンガリー第2戦車師団)を擁しているが、その大半は前年末のバルジの戦いで損耗し、補充を受けたばかりの師団で、武装親衛隊と言えど、歩兵大隊の練度(アクションレーティング)は平均以下に落ちている。また第3SS、第5SS、ハンガリー第1は、戦線の穴埋めに使われ、すでに疲労度2(4が最悪)で作戦開始。そしてこれだけ装甲戦力があるのに、それ以外は歩兵師団が3個、騎兵旅団が2個のみという頼りなさ。つまり突破しても側面を支える戦力が少ないという有様。

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守るソ連軍は、ブダペストに近い北部では四重にわたる分厚い防御線を構築しているが、南部では戦線がスカスカになっている。一応、ソ連軍は、枢軸軍が攻勢をかけてくるとの事前情報を得ていたため、前線の各師団は準備防御(Prepared Defence)に入り、砲兵ポイントも増派されているが、機動予備としては、第5親衛騎兵軍団、第1親衛機械化軍団がある程度で、しかもすでに戦車戦力は損耗している状態なので、こちらもまた頼りない。

ちなみに両軍とも損耗している部隊が非常に多く、初期配置だけで、普段用意しているステップロスマーカーを使い切ってしまい、追加で準備しなければならなかった。

また、いつもならフォーメーションカードを使って各部隊の状況(疲労度、砲兵、準備防御、支援)を表すが、今回は部隊も多く(枢軸軍15、ソ連軍22)、盤面をいっぱいに使うようだったので使用を諦めた。

しかし部隊が多いとは言っても、「Panzers Last Stand」では各ターンにすべてのフォーメーションを活性化させるわけではない。本シナリオでは、各ターン毎に、ドイツ軍が第一種(Primary)活性化割当が6フォーメーション、第二種(Secondary)が3フォーメーション、ソ連軍は第一種が3、第二種も3フォーメーションずつとなっている。第一種に指定されたフォーメーションは、部隊練度判定(SNAFU)に成功すれば第2活性化まで行える。第二種に指定されたフォーメーションは、第2活性化は不可である。なので盤面には結構な数のユニットが並んでいるが、北部で睨み合っている部隊はほとんど活性化させないと思う。

また、この時期のハンガリー戦では天候も気になるが、天候表を見ると、好天(視界4ヘクス)はまったく無く、ほとんどが悪天(視界1ヘクス)か、たまに通常(視界2ヘクス)という程度。これでは長射程を誇るドイツ軍戦車も、至近距離でソ連軍戦車と撃ち合わなければならない。地表状態は常に悪く、自動車化(Truck)移動力は半減される。これも、戦術(Tactical)移動力を持つ戦車ユニットは前進できても、自動車化歩兵が追随できないという事態になりそうだ。

というあたりまで確認したところで、追悼ソロプレイ開始……

【参考文献】「月間 世界の艦船 2024年5月号 海上自衛隊vs中国海軍」

世界の艦船」今月号を購入。特集は「海上自衛隊vs中国海軍」ということで、最近よく耳にする台湾有事における海上自衛隊の役割や、中国海軍との戦力比較が述べられている。とは言え、単純に艦船スペックがどうのこうのと言うより、実際に各国軍がどう動くのかが知りたいところ。恐らくアメリカ海軍は、開戦序盤では空母打撃群を遠方に留めておくのだろうが、海上自衛隊は中国海軍と間近に接する位置に留まらなければならず、と言って高価値目標である「いずも」型をいきなりやられては困るから、まずは西太平洋に配置して……という説明は、とてもウォーゲーム的だなあと思った。

今号の記事でも、大型艦のレーダー反射面積(RCS)の高さ=探知されやすさが言及されていたが、「全域戦場」でもRCSの高い艦から優先的にミサイル攻撃目標とされるし、空母のようなバカデカい船をどう運用したらいいか、ウォーゲーム的にも考えさせられる。

先日も「全域戦場」で、米中空母打撃群同士の戦闘をシミュレートしてみたが、当然、手持ちのミサイルが多い方が相手を凌駕してダメージを与えられるわけで『戦いは数だよ兄貴』の世界となる。ただ、この数的優勢というやつも、昨今のウクライナ戦争を見てもわかるように、無人機も含めての話だし、将来的にどうなるんだか。なにしろ面倒なことに、これは地元日本も含めての話なので、何ごとも起きないことを祈る……

【Wagaming Column】Dean Essig氏、逝去

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The Gamersブランドから各種ウォーゲーム・シリーズを発表してきたDean Essig氏が昨日亡くなられたとのこと。以前から健康状態の悪化が伝えられていたが、享年63歳、現代ではまだまだ若い年齢なので、惜しいというしかない。

自分の場合、作戦級のOCS(Operational Combat Series)、戦術級のTCS(Tactical Combat Series)、大隊戦術作戦級のBCS(Battalion Combat Series)で氏の作品には触れてきたが、しばらく疎遠だったウォーゲームに出戻ったキッカケのひとつが「OCS:Burma」だった。2000年当時、『今時のウォーゲームはこんなにカラフルなコンポーネントなんだ!』とビックリしたのを覚えている。いやもちろん、システムも面白かったけれど、象とか牛までキレイに印刷されているカウンターを見た衝撃はいまだに忘れられない。

システム的には、最晩年のシリーズとなったBCSが一番好き。いや、そう考えると、OCSという人気シリーズがあったにも関わらず、まだ新しいシリーズ・システムを出してくるのが凄いなと。

いったんは全部手放してしまったTCSも、結局また買い直しているので、やはり氏のシリーズには独特な魅力があるのだろう。

年内のどこかで、追悼ソロプレイでもしたいと思う……R.I.P...

【Battles of Napoleon】Sound of Drums「Eylau 1807」

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小さなウォーゲーム屋さんから、スイスの新興ウォーゲーム・メーカー、Sound of Drums GmbH(GmbH有限責任会社という意味)の「Eylau 1807」を購入。本作は「Battles of Napolen」なる、ナポレオン戦争時代の会戦級シリーズ第1弾のアイラウ会戦だそうで、メーカー・サイトを見ると、この後、カトルブラとリニー、ワーテルロー、ボロディノ、アウステルリッツドレスデンと後続作が企画されているようだ。まあ、ナポレオンの会戦級シリーズもバタイユを筆頭にいろいろあるが、どこまで続くのか、またゲームシステムとしてどうなのか、気になったので、まずは入手と。

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地図盤はフルマップ2枚。ゲームスケールは、1ヘクス=150メートル、1ターン=60分。バタイユ・シリーズが1ヘクス=100メートル、1ターン=20分、「Wellington's Victory」が1ヘクス=91.44メートル、1ターン=15分なので、そういった既存のシリーズよりは、少し大まかになっている。しかしデザイナーズノートを読むと、このスケールにはもちろん理由があって、特にこの時代の歩兵大隊は、どこの国もだいたい150メートル前後に展開していたと。また騎兵、砲兵についても150メートルという展開幅が適しているので、より詳細なバタイユのように、2~3ヘクスに横隊で展開するようなルールは無いし、その方が簡便にプレイできるだろうと。またこのスケールなら、この時代の大概の会戦はフルマップ2枚に収まるとも書かれている。

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こちらがフランス軍ユニット。1ユニット=歩兵大隊/砲兵中隊/騎兵連隊(1戦力=歩兵100名/砲3~4門/騎兵50騎)。ユニットの表面が横隊、裏面が縦隊になっていて、面倒な複数ヘクス展開ルールを省いたうえで、その双方を表現している。各ユニットには、戦力・兵科マーク・移動力が記されているが、この手のゲームでよく見かける士気や練度といった数値はない。一応、射撃戦の死守判定や、白兵戦で後退するかどうか等、そのユニットの士気を試すような場面もあり、エリート部隊には有利なダイス修正があるが、個人的には士気/練度大好きマンなので、個々のユニットにその数値が無いのはかなり寂しい。まるでGTS(Grand Tactical Series/個々のユニットに練度が記されている)に触れた後で、CSS(Company Scale Syatem/個々のユニット練度廃止)を見た時のような気分だ(分かる人だけ分かれ)

軍司令官には、各ターンに変更できる命令数を表す「指揮値」が記されている。ナポレオンが6、ベニングセンが4なので、フランス軍の方が柔軟に命令を変更できる。また1ターンに使える活性化の数を決める「リーダーシップ値」もあり、これもナポレオンが4、ベニングセンが2と、フランス軍が優勢。

さらに軍団長には、2d6を振ってその数値以下なら自力で命令を変更できる「主導権値」が記されている。最良なのはダヴー、ミュラの10、それ以外のフランス軍団長もほとんどが9か8で、ロシア軍も8か7と、ほぼほぼ互角だなと。

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こちらは、各師団に与えられる命令マーカー。命令には「移動」「戦略移動」「攻撃」「防御」「再編成」「保持」「後退」がある。それぞれの命令には、得られる主導権点があり、それを両軍が合計して、主導権値が高い方が先に活性化できる。最も主導権点が高い命令は「攻撃」なので、「攻撃」命令を下された師団が多ければ多いほど、そのターンで先手を取りやすくなる。

しかしそれぞれの命令には、軍全体の疲弊点を失う命令もある。当然「攻撃」命令は、失う疲弊点も高く、それが軍全体の疲労や士気も表している。勝利目標ヘクスを奪われたり、ユニットや指揮官が除去されると、疲弊点も失われ、完全にゼロになると軍全体が崩壊する。

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こちらは戦力喪失マーカー。

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こちらは、指揮官と戦力喪失マーカーの第2バージョン。

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そして、みんな大好き編成表。

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こちらは両軍の管理ボード。軍全体の疲弊点キューブがどれだけ残っているのか、各師団が今どの命令を受けているか、何回目の活性化をしているのかをキューブを使って記録する。ちなみに各師団は、1回の活性化中に最大3回まで活性化できるが、2回目、3回目と進むごとに移動力は低下する。

活性化ルールは、まずターン序盤に、1d6+ターン修正+軍司令官のリーダーシップ値によって、そのターンに使える活性化キューブの数を決める。その数と同じ個数のキューブを、両軍とも同じ袋かカップに入れ、さらに射撃戦キューブ(赤)を2個入れてランダムに引いていく。ただし主導権点の高い方は、あらかじめ自軍の活性化キューブを1個袋に入れずにとっておいて、それから活性化させることも可能。そして両軍どちらかのキューブが引かれたら自軍の好きな師団を活性化させ、射撃戦キューブが引かれたら否応なくそのタイミングで両軍とも射撃戦をすると。

この、射撃戦のタイミングまで無作為に決められてしまうという「Across 5 Aprils」的なシステムを最初に聞いた時は、うーん、それじゃ俺の趣味じゃないなあ、それって自分の意志が反映されなさすぎるんじゃないかなあ、と思ったが、自軍のキューブを引けば、好きな師団を活性化できるという自由さもあるので、だったら自分でもイケそうだなと。

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本作のシステムも、射撃戦、白兵戦に分かれているが、デザイナーズノートにも「激しい白兵戦はゲーマーの夢に過ぎず」とあるように、大概は射撃戦でカタがついたというデザイン思想に基づいている。白兵戦では双方どちらかが1戦力を失って後退するが、射撃戦では最大5戦力を失うこともあり、あくまでも射撃戦メインのようだ。このあたりは、実際にプレイしてみないと何とも言えない。

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こちらは、ダイス修正などを記録するためのスティック。

 

とまあ、全体的に見ると、バタイユのような詳細なルールを省きつつ、命令と運用に重きを置いた会戦級シリーズなのかなと。規模的にも、たしかにフルマップ4枚の会戦級ビッグゲームよりは現実的にプレイできるかと思う。

しかし先日、同じアイラウ会戦を扱った「Winter's Victory」を買ったばかりなのに、これも買ってしまうなんてどうかしてるが、まあ、同じ題材を、異なるデザイン思想で味わえるのもウォーゲームの楽しみのひとつなので……

【全域戦場 Joint All Domain Operation】「東南2X-乙」台湾本島上陸演習 Assault Landing Exercise Solo-Play AAR

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今回は「全域戦場 01-B(台湾編・陸戦)」から、中国軍による台湾本島上陸作戦、コードネーム「東南2X」のうち、台中方面だけを切り取った「東南2X-乙」シナリオをソロプレイしてみた。陸戦用の地図盤は、海空戦用の地図盤とリンクさせるために、ネストヘクスと呼ばれる複数ヘクスの集合体的な地域に分割されている(上写真で言うと、黄色いヘクス境界線で示されている)。「東南2X-乙」シナリオでは、ネストヘクスTC-1、TC-2地域だけを使用し、台湾軍は第4戦区部隊(部隊番号4)、第4苗栗戦区(部隊番号4-ML)がこれを守備し、中国軍は第72集団軍(部隊番号72GA)が上陸する。

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こちらが、陸戦用の地図盤端に描かれている、台湾本島のネストヘクス分割図。海空戦と連結した場合は、たとえば、海空戦の地図盤上で台湾本島のTC-1ヘクスに地上支援の航空機を送り込んだ場合、この陸戦用の地図盤上のネストヘクス図に移行される。上写真のように、すでにネストヘクスTC-1には、中国軍のJ-15戦闘爆撃機と、BZK-005無人偵察機1が配置されている(いずれも中国本土から飛来)。J-15戦闘爆撃機は、ネストヘクスTC-1内での地上戦闘を1回支援したら、中国本土の基地へ帰還する。BZK-005無人偵察機は、バッテリーが続き、そのヘクス内に存在している限り、そのヘクスでのすべての地上戦闘(攻撃、反撃、準備砲撃、特殊攻撃)に有利なダイス+1修正を与え、またネストヘクス内の全ヘクスに位置特定が行える。

上陸する中国第72集団軍は、合成旅団6個から編成されている。そのうち上陸第一波は、中型自動車化合成旅団(M-CCG)2個と、軽型合成旅団(L-CCG)1個である。この3個旅団は、軽装ユニット(移動力の数値が中抜き)である。各上陸海岸は、敵ユニットがいなければ2兵力値(ステップ)まで上陸でき、敵ユニットが存在すれば1兵力値までしか上陸できない。しかし重装ユニット(移動力の数値が実数字)の、中型機械化合成旅団(M-CCG)は重装備を抱えているため上陸時に1兵力値を2倍にし、まったく敵のいないヘクスにしか上陸できない。さらに重型機甲合成旅団(H-CCG)は1兵力値を3倍に換算するので、荷卸能力の高い港湾ヘクスにしか陸揚げできない。

となると、まず第一波として軽装ユニットを上陸させ、安全に重装ユニットを上陸させられる海岸や港湾ヘクスを確保する必要がある。上陸する軽装ユニットにしても、旅団全体としては4ステップもあるため、1ステップに分割した小型ユニットとして上陸し、後に再集結すると。

また中国本土の航空基地には、ヘリコプター部隊も待機し、特殊作戦群ユニットが搭乗している。すでに台湾本島内にも潜伏中の特戦群マーカーがあり、呼応して台湾軍の防衛を阻害する予定である。

さて第1ターン。中国第72集団軍の第一波は、台中市の南部6ヘクスに上陸。今回は特別ルール2.14のソロプレイ・ルールを採用し、中国軍が上陸したヘクス毎に10面体ダイスを1個振り、5以下が出たら海岸堡マーカーが出現することにした。結果、3ヘクスに海岸堡が現れ、2ヘクスは無血上陸。そしてすでに海岸ヘクスで待ち構えていた台湾軍機甲歩兵大隊ユニットに対しては、唯一の航空支援としてJ-15戦闘爆撃機を投入し、これを制圧(火力半減、移動を阻害)。さらに上陸部隊による準備攻撃(火力1.5倍)によって、台湾軍ユニットを除去した。また中国軍は、1海岸堡も除去し、残る2つにも1ステップロスを与えている。

対する台湾軍も、上陸部隊の両翼に準備攻撃を仕掛け、中国側の中型合成ユニット1ずつを除去。しかし攻撃/反撃を行ったユニットは消耗状態(移動戦闘不可)となり、回復までに最短でも2ターンかかるため、果たしてここで攻撃するのが良いことなのかマズいことなのか。

第2ターン。中国軍は第二波として、補給大隊1(第一波ユニットの回復用)、特戦群3ユニットを上陸。残った海岸堡を攻撃した。特戦群はわずか火力2だが、情報化値(このゲームで超大事な数値)が8と非常に高く、それに対して海岸堡のような施設マーカーは情報化値0と見なすため、その差分+8を戦闘ダイスに加えられる。これによって残る2カ所の海岸堡も除去。しかし、そうか、こんなに簡単に上陸できるなら第一波を特戦群にして海岸堡を掃討してもらい、その後で主力の合成大隊を送り込めば良かったなあ。いやでも、非力な特戦群だけでは、台湾軍が攻め込んできた場合、上陸海岸が維持しにくい。あるいはもっと広範囲に上陸して、一気にユニットという名の手数を増やすべきだったか……

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第3ターン。中国軍は、占領した麦寮港(港湾規模値4)に、第三波として中型機械化合成旅団(重装ユニット)を1兵力値だけ上陸させた。この港湾ヘクスか隣接ヘクスに、中国軍の指揮センターユニットがあれば、規模値と等しい兵力値(この場合は4)を荷卸できるが、まだ指揮センターは到着していないので、現時点ではその半分の2兵力値しか下ろせない。そして重装機械化ユニットは、荷卸の場合2倍として計算するので、さらに半分の1兵力値しか下ろせないと。

しかしこれでは上陸部隊の蛇口が細すぎる。やはりこれは台中港(規模値6)を占領して、重装ユニットを続々と送り込むべきか。もちろん台湾軍も、このような大型港湾を重点的に守った方が良いのだろう。あと、上陸部隊の消耗・回復ローテーションも考えないと……

……というあたりが見えてきたところで、今回の練習ソロプレイはおしまい。まあ、いろいろなメカニズムが絡み合っているので、少しずつ理解していこう。

 

【全域戦場 Joint All Domain Operation】空母戦闘群・接近阻止/領域拒否(A2/AD)対抗演習 Carrier Battle Group A2/AD Exercise Solo-Play

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久しぶりに「全域戦場 01-A (台湾編・海空戦)」をソロプレイ。今回は想定シナリオ4「空母戦」に挑戦。攻撃側アメリカ軍の空母戦闘群(CBG)が、台湾本島に艦載機の攻撃フォーメーションを送り込めれば勝利。防御側中国海軍がそれを阻止できれば勝利という、いわゆる接近阻止/領域拒否(A2/AD)的なシナリオになっている。シナリオ開始時点では、アメリカ海軍は、中国軍の超水平線レーダーの範囲外にあり、中国海軍はすでに台湾本島を越えて外洋に進出している。まあ、完全規模のシナリオなら、海上自衛隊まで出撃してきそうな位置だが、あくまで空母部隊の運用を学ぶための練習シナリオなので。

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攻撃側アメリカ海軍は、空母ロナルド・レーガン(CVN70)を中心として、タイコンデロガ級巡洋艦(CG71)、アーレイ・バーク駆逐艦(DDG76、DDG77、DDG78)が随伴している。空母レーガンには、FA-18EFスーパー・ホーネット戦闘攻撃機4ユニット、EA-18Gグラウラー電子戦機3ユニット、E-2Dアドバンスド・ホークアイ早期警戒機2ユニット、MH-60Rシーホーク・ヘリコプター4ユニットが搭載。各巡洋艦駆逐艦にもシーホークが搭載されている。またロサンゼルス級攻撃型原潜(SSN71)も、空母群とは別に活動。また各艦には、アウトレンジ攻撃を想定して、RGM-109Eトマホーク巡航ミサイル(射程22ヘクス)を多めに積載してみた。

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対する中国海軍は、空母遼寧(CV01)を中心として、南昌(055)型大型駆逐艦1、昆明(052D)型駆逐艦2、徐州(054A)型フリゲート2が随伴し、さらに漢(091)型攻撃型原潜1も、やはり別働隊として活動する。空母遼寧には、J-15B(Su-27SK フランカーBの中国バージョン)戦闘機2ユニット、Z-18F対潜ヘリコプター3ユニット、Z-18Y早期警戒ヘリコプター3ユニットを搭載。各駆逐艦フリゲートにも、Z-9C、Z-20対潜ヘリコプターが搭載。こちらは逆に、迎撃戦闘を想定してHHQ-9対空ミサイルを多めに積載。

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まず第1ターン、第1航空作戦フェイズ。先攻アメリカ海軍は、空母レーガンからFA-18EF+E-2D各1ユニットを上空戦闘哨戒(CAP)に高空で配置。さらにもうワンペア、FA-18EF+E2Dのコンビを、レーガン戦闘群から4ヘクス先に先行させた。E2D早期警戒機は、航続距離は17ヘクスだが、大型目標探知距離13ヘクスと同じ分の航続距離を消費すれば、大型哨戒区域を設定できるので、4ヘクス移動して13航続距離を消費したと。E2Dの探知能力は「W(自動的に敵を発見)」なので、これで13ヘクス先の大型目標まで自動探知できる。この高度が中空や低空の場合、探知距離が制限される(高高度ほど遠くまで見れる)。

後手の中国海軍も、J-15B+Z-18Y各1ユニットを上空戦闘哨戒(CAP)に配置。Z-18Y早期警戒ヘリの大型探知距離は6だが、飛行高度は中空域までに制限されている。遼寧戦闘群の中で最も探知距離が長いのは、南昌(055)型大型駆逐艦の小型目標6/大型目標7ヘクスなので、レーガン戦闘群を探知するなら、超水平線レーダーに期待するか、7ヘクス以内に近づくか、J-15B戦闘機(探知距離3/4ヘクス)が1ユニット余っているので、それを接近させて探知させる手もある。しかし当然、E2D早期警戒機に自動探知され、FA-18EFが迎撃してくるので、手が出しにくい。

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続く第1海上作戦フェイズ。先手アメリカ海軍は、レーガン戦闘群を前進させ、中国軍の超水平線レーダーの探知範囲に入ったものの、中国側は探知失敗。逆にレーガン戦闘群に先行するE2Dは、探知範囲に入った遼寧戦闘群の座標位置を特定した。ここでアメリカ海軍の戦闘艦4隻が、それぞれトマホーク巡航ミサイルを2ヒットずつ合計8ヒット発射。これに対して遼寧戦闘群もHHQ-9対空ミサイル10ヒットで迎撃し、全弾撃墜した。

続く第2航空作戦フェイズ。アメリカ海軍は、すでに遼寧戦闘群の位置を特定したものの、彼我の距離は14ヘクス。FA-18EFスーパー・ホーネットの航続距離は11ヘクスなので、まだ攻撃範囲内ではない。一応、航続距離を+50%増加できる「長距離搭載」ルールもあるが、その場合は空戦力、兵装の搭載数が-50%となるため断念した。また攻撃隊にEA18Gグラウラーも随伴させるなら、その航続距離は9ヘクスとさらに短いので、もっと接近する必要がある。

さらに第2海上作戦フェイズでも、レーガン戦闘群は再びトマホーク巡航ミサイル8ヒットを放ったが、これまたHHQ-9H対空ミサイルに全弾撃墜、完封された。

第3海上作戦フェイズ。中国側の超水平線レーダーは、いまだにレーガン戦闘群を捕捉できていない。そのレーガン戦闘群は三度トマホーク巡航ミサイル攻撃を継続。ここで遂に中国側の弾数が減り、かろうじて迎撃をかいくぐった1発が空母遼寧に向かったが、これは電子防御判定で回避され、結局これもまた完封。しかしこれで双方、巡航ミサイルと、区域防空ミサイルをほぼ使い切ったことになる。

第2ターン。すでに両戦闘群の距離は10ヘクス。第1航空作戦フェイズ、先手アメリカ海軍は、まだ攻撃隊を発艦させない。後手の中国海軍は、空母部隊より手前に哨戒区域を設定しようと、J-15Bを出撃させた。当然これはアメリカ側の哨戒範囲に探知され、遊弋していたFA-18E/Fが迎撃に向かい、空戦となった。第1空戦ラウンド、E2Dの探知支援を受けたFA-18E/Fが先手を取ったものの、攻撃はハズレ。後手のJ-15Bは、ヒットを与えたものの、FA-18E/Fに回避されノーダメージ。第2空戦ラウンドも同様にお互いダメージを与えられぬまま、双方とも母艦に帰還。これでお互い1艦載戦闘機ユニットをこのターン中は使えなくなった。

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第1海上作戦フェイズの後、第2航空作戦フェイズ。遂に空母レーガンから攻撃隊が発艦する。まず露払いのFA-18E/Fに対して、空母遼寧上空で哨戒中だったJ-15Bが迎撃にあたり、またもお互いノーダメージのまま、双方とも母艦に帰還。しかしこれで空母遼寧上空には、まったく直掩機がいなくなった。ここで攻撃隊のFA-18E/Fが、LRASM(長距離対艦ミサイル)を4ヒット発射。これに対して遼寧戦闘群は、すでに区域対空ミサイルを使い切っていたため、近接対空ミサイルHHQ-10の12ヒットで迎撃。1ヒットが再び空母遼寧に向かったものの、やはりこれも撃墜された。しかしこれで中国軍は、近接対空ミサイルもほぼ使い切ったことになる。

ここで空母レーガンの哨戒機以外、両軍の艦載機はすべて帰還し、非活性化された。ターン終了時の維持フェイズで再び整備されるが、それまでこのターン中は活動できない。第3ターンになれば、再び両軍とも艦載機を使用できるが、そうなると遼寧戦闘群は再び、空母レーガンの航空戦力に押されて、対空ミサイルがほとんど無い状態でまた対艦攻撃を受けなければならない。それはさすがに分が悪いということで、ここで撤収することに。一応、あと1ヘクス前進すれば、中国側も巡航ミサイルYJ-18(射程8ヘクス)で攻撃できるが、アメリカ側は迎撃ミサイルを残しているので、結局は完封されるだろうと。

まあ、お互い、どのように相手の手数を減らしていくか、封じていくかが問題で、今回の戦闘手順にしても、こういう御作法で良かったのか、もっと良い手があるのか、よくわからない。そして潜水艦も配置してみたけれど、とてもそこまで動かす余裕が無かった。まだまだ練習プレイを続けてみよう……

【参考文献】「後期日中戦争 華北戦線 太平洋戦争下の中国戦線2」

新刊「後期日中戦争 華北戦線 太平洋戦争下の中国戦線2」を購入。2年前に出版された前巻では華中戦線がテーマだったが、今回は華北戦線。引き続き、あまり知られていない日中戦争の軍事的経緯をまとめた一冊になっている。とは言っても、単なる正規部隊の戦闘だけではなく、中国民間人を含めた焦土戦や治安戦、さらに軍閥の調略など、複数次元にまたがって展開されるので、これはなかなか単純化して理解しにくいなと思ったり。

また、中国戦線を扱ったボード・ウォーゲームも、太平洋戦線に比べると圧倒的に少なく、堀場亙氏の「日本の戦歴 太平洋戦争編」を眺めてもそれは明らか。自分も今現在は、中国戦線のウォーゲームをまったく所有していないし、以前にもプレイしたことがない。以前、MMPから「War of the Suns」という日中戦争全般を扱うビッグゲームが出版されたが、それも触れていないしなあ。

いや待て、政戦略レベルの「A World at War」+「Storm over Asia」が手元にあるけど、いまだに翻訳作業が途中だからなあ。そしてこれだと解像度が低すぎる。

いずれTSWWの日中戦争モジュール「The China Incident」が出たら取り組んでみたいが、いつ出るのやら。一応、TSWWの中の人から以前『台湾に駐留していた日本軍の戦闘序列が知りたいけど戦史叢書の文章が読めないから訳してくれ』というリクエストがあったので、作業はしているようなんだけど……