Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Advanced Squad Leader】「Ozerekya Breakout」

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Lone Canuck Publishingから、もうひとつASL(Advanced Squad Leader)のヒストリカル・モジュールを購入。こちらは、2011年発売の「Ozerekya Breakout」。お題は、1943年2月4日、黒海沿岸のオセレイカに上陸したソ連海軍歩兵部隊と、守備隊のルーマニア軍(後にドイツ軍も応援に)との戦闘。そう、昨年Compass Gamesから発売された「CSS:The Little Land:The Battle of Novorossiysk」と同じ戦闘である。

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マップは1枚。キャンペーンゲーム1本とシナリオ4本入り。ソ連海軍歩兵は、この地に第一波だけが上陸し、第二波以降は上陸せず帰ってしまうという、前代未聞の状況に置かれながら、枢軸軍部隊と交戦し、結局壊滅。ASLシナリオとしても、ソ連海軍歩兵とルーマニア軍という組み合わせも珍しいし、「CSS:The Little Land」ともリンクする内容だし、ついつい買ってしまった。まあ、実プレイはしないだろうが、参考資料ということで…… 

【Advanced Squad Leader】「Bloody Buron : The First Step to Caen」

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新作 「The Bear's Revenge:The Battle of Königsberg 」を買うついでに、2013年発売のASL(Advanced Squad Leader)ヒストリカル・モジュール「Bloody Buron:The First Step to Caen」も購入。

こちらのお題は、1944年7月8日、ノルマンディのカーン市を奪うべく発動された、連合軍のチャーンウッド作戦の一環として、その前面にあるブロン(ビュロン)村に立て籠もったドイツ第12SS装甲師団第25装甲擲弾兵連隊第3大隊に対し、カナダ軍ハイランド軽歩兵連隊が攻めかかるというもの。このブロン(ビュロン)村は、連合軍のノルマンディ上陸以後から争奪戦が繰り広げられていたが、本作で扱うのは、その最終戦。カナダ軍は、シャーマン・クラブ対地雷戦車や、AVRE工兵戦車なども投入し、この村を解放した。

http://www.lonecanuckpublishing.ca/BB.htm

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マップは1枚。すでに砲爆撃で穴だらけになったフランスの田園地帯という感じ。ただしボカージュは無く、むしろ開けた部分が多い。それだけ射線(LOS)も通りやすいと。 

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「GOSS:Atlantic Wall」でBuron村を見てみると、この通り。そういや「GOSS:Atlantic Wall」のルール翻訳も止まっているが、そろそろ「GOSS:Lucky Forward」も発売されるので、その最新ルール待ち。

ちなみに同名タイトルの戦記が2冊ヒットしたので、カナダでは有名な戦闘なのかもしれない。まあ、第12SS装甲師団を撃退して、カーンへの門をこじ開けたという意味では華々しいのか。
ドイツ軍側を指揮していたクルト・マイヤーの自伝「擲弾兵」でも、このブロン(ビュロン)の戦闘で、麾下の兵たちが火炎放射戦車に焼かれる様が記されていたり、師団参謀フーベアト・マイヤーの「SS第12戦車師団史(上)」では、カナダ軍側の損害の多さも紹介されている(p548)。そういった第12SS装甲師団の断末魔的状況を見たいとか、連合軍工兵戦車がプレイしたいなら、持っていても良いかなと。

【Advanced Squad Leader】「The Bear's Revenge : The Battle of Königsberg 」

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カナダのサード・パーティ、Lone Canuck Publishingの新作ASL(Advanced Squad Leader)ヒストリカル・モジュール 「The Bear's Revenge:The Battle of Königsberg 」が到着。お題は、1945年4月、東プロイセンの古都ケーニヒスベルク(現カリーニングラード)での末期市街戦。ドイツ軍は、この都市を守るため、四重にも及ぶ防衛線を築き、兵士10万名をもって死守する構えだったが、対するソ連軍は、入念な攻略準備の後、圧倒的な砲爆撃と兵力によって、たった4日間でこれを陥落したという。ASLの市街戦としては、すでに公式モジュールで、スターリングラードブダペストが発売されているが、そういった長丁場の市街戦ではないあたりが興味深い。

ちなみに本作をプレイするには「Beyond Valor」「Red Barricades(Red Factories)」「Valor of the Guards」「Festung Budapest」が必要と、なかなか敷居が高い(一応、全部手元にあるけど)。

http://www.lonecanuckpublishing.ca/KBR.htm 

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マップは2枚(LCPモジュールでは初)。ケーニヒスベルクの中心部、四重の防御線の最も内側が描かれている。この都市は、すでに前年1944年の段階で連合軍の爆撃を受け、かなりの損害を被っていたとのこと。この地図盤でも、大半の建物が瓦礫と化している。 

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LCP製品としては珍しくカウンターシート(1.5枚)も付いている。こちらはドイツ軍。SS憲兵(4-4-7)、国民突撃隊(3-3-6)、ヒトラーユーゲント(4-3-7)、ナチ党指導者など、末期戦らしいカウンターが揃っている。また独ソ両軍に砲兵観測チーム(2-2-8)も登場。 

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こちらがソ連軍。この時期、すでにソ連軍は大量の鹵獲兵器を使用しているため、歩兵カウンターの左上にはパンツァーファウストが描かれている。しかもパンツァーファウストの使用回数は、シナリオに登場する分隊数の2倍(10個分隊がいるなら、そのゲーム中に20回使用可能)と、ドイツ軍より潤沢だったりする(通常、ドイツ軍は分隊数の1.5倍)。ソ連軍が、大量のパンツァーファウストを使用していたという話は聞いたことがあるが、ブダペスト戦を扱った「Festung Budapest」でもそういった処理はされておらず、ASLでその史実が適用されたのは初めて見た。 

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キャンペーンゲームの他、シナリオは6本収録。瓦礫の山と化したケーニヒスベルク市街地で、待ち受けるはIV号突撃砲や75mm対戦車砲搭載のハーフトラックに支援され、ブンカーに籠もる国民突撃隊。それに対してソ連軍は、砲爆撃はもちろん、ISU-152やT34/85火炎放射戦車のスチームローラーで潰しにかかるという、まさにWWII末期戦なシナリオばかり。

と言っても、実はケーニヒスベルクの市街戦については、あまり詳しくない。一応、独ソ戦車戦シリーズの「死闘ケーニヒスベルク」も読んだが、市の防衛線と、それを攻略する準備過程は書かれているものの、4日間の市街戦そのものについては、あまり詳しく記されていない。アントニー・ビーヴァーの「ベルリン陥落」でも、2ページほど触れられている程度(p292~293)。ヴォルフガング・パウルの「最終戦」では、このケーニヒスベルク戦に一章を割いているが、あれは戦史というより読み物だしなあ……

【Advanced Squad Leader】DaE2「The Bend in the Road」AAR

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昨日は、Karter氏と久しぶりにASL(Advanced Squad Leader)を対戦。と言っても、2人でプレイするのは2014年末以来、約5年ぶりだったので、お互いルールを忘れており、いきなり本式ASLは厳しく、ASLスターターキットのヒストリカル・モジュール「Decision at Elst」のシナリオ2「The Bend in the Road」を選んでみた。お題は、1944年9月、マーケットガーデン作戦でアルンヘムに降下したイギリス第1空挺師団の救出に向かったイギリス第43歩兵師団が、その手前のエルスト村でドイツ第10SS装甲師団クナウスト戦闘団と戦うというもの。ちなみに登場するSS部隊は、やはり黒地に白でないと雰囲気が出ないので、Heat of Battle社のSSカウンターセットを使用している。

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自分は、先攻イギリス軍を担当。4-5-7分隊✕13、シャーマンV✕3輌、ファイアフライ✕1輌をもって、エルスト村に入り、シナリオ範囲奥のQ15ヘクスから6ヘクス以内に16火力のLOSを通していれば勝利。この地域には、細かい水路を擁した干拓地ヘクスが多々あり、戦車の機動にはあまり向いていない。とりあえず中央の道路へシャーマンV1輌+ファイアフライ1輌を進め、両翼にもシャーマンVを1輌ずつ配して前進。歩兵部隊も、急速歩移動で村内に入り、ドイツ軍が立て籠もる石造建築物と相対した。

Karter氏率いる後攻ドイツ軍は、6-5-8親衛隊分隊✕5.5で薄い防衛線を敷き、中央から、唯一の戦車、V号パンターGを進入させた。パンターGは、早速シャーマンVを正面から撃破。後続のファイアフライも、その残骸に隠れつつパンターVGに撃ち返し、早くも至近距離で戦車戦が始まった。 

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しかし結局ファイアフライも、パンターGに撃破されてしまった。一方、イギリス軍歩兵部隊は、なぜか回復DRで2を連発し、8-1指揮官✕1、8-0指揮官✕3が誕生することに。その指揮官を用いた射撃グループ攻勢と、戦車との共同攻撃で、SSの重機関銃スタックをいったん後退させたものの、すぐに回復して元いた建物に取って返し、迫り来るイギリス兵を次から次へと追い返した。イギリス軍は、対戦車火器PIATを抱えた兵を、果樹園伝いに浸透させ、パンターGの側面に送り込もうとしたが、やはり親衛隊歩兵の射撃に遭って、あえなく後退。両翼のシャーマンVも、干拓地に阻まれつつ、敵歩兵に榴弾を撃ち込むが決定打は出ない。対するドイツ軍歩兵も、パンツァーファウストを撃てそうなチャンスは何度かあったが、イギリス軍歩兵に阻まれ、シャーマンに接近できずにいた。また匍匐後退する武装親衛隊に対し、追い打ちのように射撃を行ったイギリス軍に対し『なんという非人道的行為!』『いや、そっちも(本式ASLでは)捕虜は取らないルールでしょ』というやり取りも……

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ようやく5ターン目。PIATを持ったイギリス兵が、パンターGを側面から撃破したものの、ここで時間切れとなりゲームを終えた。目標のQ15ヘクスには、12火力までLOSを通したが、そこまでと。まあ、久しぶりの対戦だったので、かなりルールを忘れていたが、ASL的な諸兵科連合効果(コンバインド・アームズ)が楽しめたし、なかなか手頃なシナリオだなと。

スターターASLの場合、本式ASLでは必須の「隠蔽」ルールが無いため、お互いの状況を見ながら、ああだこうだ輪講プレイできるのが楽しい。もちろん、ルールが頭に入っているガチASLer同士なら、情報を隠匿してプレイする方が面白いだろうが、ルールを思い出す練習程度なら、やはりスターターだなと。 まずは「隠匿」無しのスターターキットで、ASLの基本メカニズムに慣れ、もう少し手応えが欲しくなったら本式ASLへ、そこまで行くつもりが無ければスターター止まりで良いと思う。Karter氏とも、しばらくはASLスターター対戦を続けようかという話に(とか言ってまた5年後になったり)。

ちなみに、このエルスト戦は「GTS:Devil's Cauldron」でも扱われているので、スケールを変えて、そちらも味わってみるのも面白い。 

【Advanced Squad Leader】「Deluxe ASL」

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プレオーダーしていたASL(Advanced Squad Leader)の新作、というか復刻版「Deluxe ASL」が到着。

デラックスASL(DASL)とは、ヘクス径55mmという巨大ヘクス地図盤でASLをプレイし、1/285スケールのミニチュアでも遊べるように設計されたもの。1985年のASL誕生とほぼ同時に第1弾DASLモジュール「Streets of Fire」が発売され、続いて1987年に第2弾DASLモジュール「Hedgerow Hell」が発売されたものの、あまり人気が無かったのか、それ以降、DASLモジュールが発売されることは無かった。かく言う自分も、今までずっと購入しておらず『まあDASLはいいや……』とスルーしていた。

しかし今回発売された「Deluxe ASL」は、旧「Streets of Fire」「Hedgerow Hell」の地図盤、オーバーレイ、シナリオに加え、後にASL Annual や ASL Journal等で発表された追加シナリオもまとめて収録されている。あいにく旧作に収録されていたAFV(車輌)データカードは割愛されているが、これひとつあればDASL関係はまとめて揃うので、ついつい購入してしまった。

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こちらが旧「Streets of Fire」から復刻された、新DASL地図盤a、b、c、d。スターリングラード的な大型建造物や市街戦向けの戦場。旧版の地図盤はハードボードだったが、この復刻版では現行のASL標準地図盤と同じく、薄手のものになっている。 

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こちらが「Hedgerow Hell」から復刻された、新DASL地図盤e、f、g、h。ボカージュを含む、西部戦線フランスの田園という感じ。

まあ、これだけヘクスが大きい方が、老眼に苦しむASLer諸氏には良いのかもしれない。またASLの場合、さまざまな状況や状態を表すマーカーがごちゃごちゃと入り乱れる場合もあり、そういった混乱も、これだけスペースがあれば、多少は整理できるかも。

また発売当時は、あまり出来の良くないメタルミニチュア程度しか存在しなかったが、21世紀の今では「食玩」という安価かつ出来の良いWWII戦車ミニチュアも手に入るので、それを使ってプレイするのも良さそうだ。自分も、この「Deluxe ASL」購入を機会に、いくつか手に入れようかなと思ったり…… 

ワールドタンクミュージアムキット4 10個入 食玩・ガム(コレクション)

ワールドタンクミュージアムキット4 10個入 食玩・ガム(コレクション)

  • 発売日: 2017/07/26
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 
ワールドタンクミュージアムキット5 10個入 食玩・ガム(コレクション)

ワールドタンクミュージアムキット5 10個入 食玩・ガム(コレクション)

  • 発売日: 2019/07/10
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

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こちらはオーバーレイ。もちろん、こちらもデカい。 

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シナリオは「Streets of Fire」収録の10本、「Hedgerow Hell」収録の8本に加え、雑誌収録の20本を加えて合計38本収録。舞台も、フランス、クレタ島マレー半島ビルマスターリングラード、クルスク、シシリー島、ノルマンディ(ヴィレル・ボーカジュ)、モンテ・カッシーノ、アルデンヌ、ブダペスト、マニラ、ベルリンと、第二次世界大戦の著名な戦場がひととおり揃っている感じ。ただし本作には、カウンター類がまったく入っていないので、各国軍の基本モジュール(つまり駒)を持っていないと話にならない。逆に言えば、基本モジュールを持っているなら、買っても損は無いと。

また「Winter Offensive Bonus Pack #9」では、さらにDASL地図盤i、j、k、lとDASLシナリオ5本(中国、アーヘン、朝鮮戦争)が追加されているため、本作と併せれば地図盤12枚、シナリオ33本と、なかなかのボリュームになっている。

難点を言うなら、どのシナリオも、ユニット数がそこそこ多く、戦場密度の高いシナリオばかりだなあと。地図盤1枚だけを使って、ASLの基礎メカニズムを練習するようなシナリオがあっても良さそうだが、あいにく見当たらない。また、もし戦車戦をやるとしたら、至近距離での撃ち合いになるので、そのあたりもどうなんだか。まあ、それが気になるなら、本式ASL/ASL-SKをやりなさいということか。あと、AFVカードは新しく出さないのだろうか。もちろん、出せばキリが無いので、今のところは非公式のAFVカードを使うしか。

【参考文献】Bair Irincheev「War of the White Death」

War of the White Death: Finland Against the Soviet Union 1939-40 (The Stackpole Military History Series)

War of the White Death: Finland Against the Soviet Union 1939-40 (The Stackpole Military History Series)

 

半年以上前に、Amazonにて1939-40年の冬戦争(ソ・フィン戦争)を扱った「War of the White Death」(Stackpole Military History Series)を購入。もちろん 「TSWW : Hakkaa Päälle」の参考書にと思い、ちまちま読み進めてきた。原書は、2011年発行と比較的新しい。

本書の特徴は、1991年のソ連崩壊後に世に出てきた資料を基に、冬戦争を分析している点。1941年以降の独ソ戦史も、ソ連側の新資料を加味して書き換えられつつあるが、日本で出版されている冬戦争の本も「冬戦争の戦車戦」以外は、ほとんどがフィンランド側視点中心なので、非常に興味深く読んだ。内容は、基本的に陸戦中心で、戦闘描写も結構細かい。そういう意味では、作戦レベルのTSWWよりも、戦術レベルの冬戦争ウォーゲーム「Red Winter」「TCS:A Frozen Hell」あたりの参考書になりそうだ。

本書でまず興味深かったのは、冬戦争に従軍したソ連軍兵士たちが、故郷に送った手紙を検閲した記録。ソ連側は、その手紙の内容がポジティヴかネガティヴかまで記録しているが、序盤の苦戦にも関わらず、肯定的な内容が多い。しかしそれは、そもそも検閲があると知って否定的な内容を書かなかったのか、それとも故郷の家族や恋人を心配させまいとして肯定的な手紙を書いたのか、想像するのも面白い。

また、スオムッサルミの戦闘で大敗を喫した、ソ連第9軍の前線指揮官や政治将校たちは数多く処刑されているが、肝心の第9軍司令官チュイコフは、責任を問われていない。しかしチュイコフは、冬戦争後、中華民国に軍事顧問として派遣されているが、これは一種の懲罰的左遷だったのだろうか。そういや「独ソ開戦の真実」には、対フィンランド戦争戦訓検討会議で、スターリンに詰問されるチュイコフの発言が載っていたなあ。

チュイコフが、1941年6月にドイツ軍がソ連に攻め込んで来ても、ずっと呼び戻されなかったのは、ソ連の中央指導部から捨て忘れられていたからだろうか。そう考えると、1942年9月に、チュイコフがスターリングラードを守る第62軍司令官に抜擢された際、フルシチョフ政治委員から『貴官の任務をどう見るかね?』と問われ『スターリングラードを守り抜くか、それで死ぬかでしょうね』と答えたのも、自分は一度スオムッサルミで失敗していて、それでも処刑されなかったのだから、スターリングラードでその責任を取る、という意味だったのだろうか。本書ではチュイコフが、自伝の中で一言もスオムッサルミの戦いに言及していないことも挙げているが、そう考えると、スターリングラード着任時のセリフも印象が変わってくるなあと。

まあ、そういった細かい兵士・指揮官の心理含めて、冬戦争のソ連軍を学ぶには良い一冊かと。

【The Second World War】「TSWW : Hakkaa Päälle」Timoshenko's Offensive '40 Solo-Play AAR Part.3

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1940年2月IIターン。天候は、過酷(Severe)から一段階良くなって悪天候(Poor)に。このターンも、ソ連軍は全軍を攻勢補給下に置き、2スタックずつ3箇所で攻撃を行うことに。もちろん、さっさと勝利条件都市ヴィープリ(Viipri)へ攻め込みたいのは山々だが、まだマンネルハイム線も1ヘクスしか突破できておらず、このターンは突破口の拡大に努めることに。その後の作戦的な選択肢も広がるだろうし。

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3箇所での攻撃に先立ち、今回はソ連海軍航空隊も含めて、近接航空支援(CAS)に発進。前ターンは天候が過酷だったため、爆撃力も50%減となったが、このターンは悪天候で済んだため、爆撃力は10%減のみ。 これに対してフィンランド軍は、再び迎撃機を上げたが、ブルドック戦闘機はI-16護衛戦闘機に撃ち落とされ除去。フォッカーD21は、またもI-16戦闘機をステップロスさせたが、爆撃編隊までは達せず、基地に帰還。ソ連軍の近接航空支援は、西から、地上戦力+0.675、+1.575、+1.575となった。

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前ターンに続く、地峡東部のタイパレ(Taipale)への攻撃で、ソ連軍は……

・歩兵69戦力(5個師団+2個旅団)✕0.75(悪天候・大規模陣地)=51.75戦力

・戦車16戦力(2個旅団)✕0.5(悪天候・大規模陣地)=8戦力

・重砲兵31戦力(6個連隊)✕4(大規模陣地)✕0.75(悪天候)=93戦力

・近接航空支援1.575 合計戦力154.325

対するフィンランド軍は、4戦力✕2.4(マンネルハイム将軍と戦闘効率補正)=9.6。戦闘比16:1なので、振り切り9:1で判定。ダイス修整は、悪天候・大規模陣地の-3。ソ連軍の出目は8。修整して5。結果はDE。防御側は全滅し、ソ連第19軍団がタイパレへ前進した。

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続いて、戦線中央ポラッカラ(Pölläkkälä)への攻撃。ソ連軍は……

・第1軍団スタック(マンネルハイム線を越えている)

・歩兵57戦力(4個師団+空挺連隊+スキー旅団)

・第3軍団スタック(マンネルハイム線を越えていない)

・歩兵37戦力(4個師団)✕0.75(悪天候・大規模陣地)=27.75戦力

・重砲兵20戦力(3個連隊)✕4(大規模陣地)✕0.75(悪天候)=60戦力

・近接航空支援1.575 合計戦力146.325

対するフィンランド軍は、9戦力✕2.4=21.6。戦闘比は、6.77:1。d100を振って51が出たので、戦闘比7:1に切り上げ。ダイス修整は、陣地線を越える-3。ソ連軍の出目は7。修整4。結果DQ。防御側フィンランド軍は、6スタックポイントのうち1/4を失い(第3軽歩兵師団がステップロス)後退。ソ連軍は、ポラッカラも占領した。

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さらに地峡西部ウーシキルコ(Uusikirkko)への攻撃。ソ連軍は……

・歩兵80戦力(6個師団+2個空挺連隊)✕0.75(悪天候・大規模陣地)✕0.75(悪天候・森湖)=45戦力

・重砲兵38戦力(6個連隊)✕4(大規模陣地)✕0.75(悪天候)=114戦力

・近接航空支援0.675 合計戦力159.625

対するフィンランド軍は、6戦力✕2.4=14.4。戦闘比は振り切り9:1。ダイス修整-3。ソ連軍の出目は3。修整して0。結果EX。防御側フィンランド軍は全滅し、ソ連軍はそれに等しいスタックポイント5以上の損失を被り(2個歩兵師団をステップロスし、1個空挺連隊を除去)、ウーシキルコへ前進した。また、この戦闘により、フィンランド軍は10スタックポイント以上を損失したため、ソ連軍の勝利条件が1つ満たされた(残るはヴィープリの占領)。

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さらに突破フェイズでも前進してきたソ連軍に対して、フィンランド軍はマンネルハイム線の放棄を決定。勝利条件都市ヴィープリを守るため、薄い戦線を敷いた。

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続いて1940年3月Iターン。天候は、引き続き不良(Poor)。次がいよいよ最終ターンなので、ソ連軍としてはこのターン中にヴィープリに接しておかないと敗北。そのため、ここまで2スタック対1スタックの原則を守って攻めてきたが、このターンでは、1スタック攻撃も致し方無し。

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ソ連軍は、この1スタック攻撃にも近接航空支援(CAS)を投入。当然、フィンランド軍のフォッカーD21戦闘機(本当に孤軍奮闘)が迎撃に当たるも、I-16護衛戦闘機と追い返し合う形で空戦は終了。作戦爆撃力13=地上戦力4.25✕0.9(悪天候)=3.825が投下された。

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ヴィープリの西ヘクスを攻める、ソ連第3軍団スタックは…… 

・歩兵54戦力(4個師団+スキー旅団)

・重砲兵15戦力(3個連隊)✕0.75(悪天候)=11.25戦力

・近接航空支援3.825 合計戦力69.075

守るフィンランド軍は、5戦力✕2.4=12。戦闘比5.75:1。d100振って35が出たので戦闘比6:1に切り上げ。ダイス修整は-1(悪天候・森)。ソ連軍の出目は3。修整して2。結果はQH。フィンランド軍は、高射砲・砲兵連隊を失い、第5軽歩兵師団はヴィープリ市内に後退。ソ連軍は、スキー旅団を犠牲にして、ヴィープリに隣接した。

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ではヴィープリの南東ヘクス、ハインヨキ(Heinjoki)への攻撃。ソ連軍は……

・歩兵111戦力(8個師団+2個空挺連隊)✕0.75(悪天候・森湖)=83.25戦力

・重砲兵40戦力(6個連隊)✕0.75(悪天候)=30戦力 合計戦力113.25

対するフィンランド軍は、5戦力✕2.4=12。振り切り戦闘比9:1。ダイス修整は-2(悪天候・森湖)。ソ連軍の出目は6。修整して4。結果はDE。防御側は全滅して、ソ連軍はハインヨキからもヴィープリに迫る形となった。フィンランド軍も、ヴィープリに第3軽歩兵師団の残余を入れ、最後の市街戦を待った。

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最終1940年3月IIターン。天候は、引き続き不良。ソ連軍は、ヴィープリに接する第1・第3軍団スタックにありったけの戦力を集めて攻撃開始。ソ連軍が結集したのは…… 

・歩兵135戦力(10個師団)

・重砲兵60戦力(10個連隊)✕3(都市)✕0.75(悪天候)=135戦力 合計戦力270

対するヴィープリ守備隊は、14戦力✕2.4=33.6。戦闘比8.03:1。d100振って37だったので、戦闘比は8:1止まり。ダイス修整-1(小都市)。ソ連軍の出目は8。修整して7。結果DE。防御側フィンランド軍は全滅し、ソ連軍はヴィープリを占領し、勝利した。

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というわけで、ソ連軍が、史実では占領できなかったヴィープリを陥落させたが、マンネルハイム線の突破は結構厳しかった。今回は、ソ連軍が最初のターンに突破できていたから最終的に勝利できたが、突破が1ターン遅れたら、ヴィープリ占領はならなかっただろうし、やはり戦力の集中は大事と。

まあ、このシナリオもあくまで練習規模で、詰め将棋的に、4ターン先までにヴィープリを占領できるかという問題を論理的に解く感じ。作戦的余地は少なかったものの、まずは、こういった歩兵と砲兵を中心とした戦闘計算から体得した方が良いと思う。今回も、あれこれ細かい計算手順を記録したが、もしこれに戦車、対戦車要素が加わると、さらに計算は面倒になる。そういった複雑な戦闘をする前に、機甲戦要素の少ない戦場を選んだ方が無難だろう。そろそろ機甲戦要素満載のはずの「TSWW:Barbarossa」も発売されるようだが、個人的には、まだ歩兵・砲兵戦をしっかり学びたい。次のTSWWソロプレイ予定は「Singapore !」の1941年マレー戦か、1944年インパール戦あたり……