Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【The Second World War】「TSWW : Hakkaa Päälle」Timoshenko's Offensive '40 Solo-Play AAR Part.2

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それでは「TSWW : Hakkaa Päälle」の冬戦争・ティモシェンコ攻勢シナリオ、ソロプレイ開始。最初は1940年2月Iターン、先手ソ連軍、開始フェイズから。ソ連軍は、レニングラードに置かれた補給所(機能面:OP)から、2/3兵站ポイントを消費して、カレリア地峡の第7軍・第13軍司令部(とその麾下軍団司令部)に攻勢補給(OS:Offensive Supply)を供給した。これによりカレリア地峡のソ連軍はすべて、このターンに戦力・移動力を100%発揮できることとなった(一般補給だけの場合は戦闘効率補正✕0.75、騎兵と自動車部隊は移動力1/2、それ以外の部隊は移動力1/4となる)。

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ソ連軍移動フェイズ。カレリア地峡東部にいた予備歩兵師団が前線ヘクスへ移動。ソ連軍は、これに続く戦闘フェイズで、4スタックを用いて2箇所で攻撃に出ることにした。

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ソ連軍戦闘フェイズ。解決に先立ち、2箇所での攻撃を支援するべく、近接航空支援(CAS)任務の航空部隊が出撃。それぞれDB-3MとSB-2bis爆撃機3スコードロン(120機相当)に、I-16タイプ17など護衛戦闘機も付けている。これに対してフィンランド軍のフォッカーD21(40機相当)、ブルドック戦闘機(20機相当)が迎撃発進した。

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戦線中央に迎撃発進したフィンランド軍ブルドック戦闘機は、ソ連軍の護衛I-16戦闘機に追い返され、基地へ帰還。地峡東部上空に向かったフォッカーD21戦闘機は、ソ連軍のI-16戦闘機をステップロス(20機撃墜相当)させたものの、こちらも基地に追い返され、爆撃機本隊へは近づけなかった。

また2つの爆撃隊とも、対空射撃を生き残り(と言ってもたいした対空射撃は無かった)、予定通り近接航空支援を行った。図左側の爆撃機隊は、作戦爆撃力5。右側は、作戦爆撃力7。作戦爆撃力4毎に地上戦力1となるため、左側は地上戦力1.25、右側は1.75となるが、あいにく天候が過酷なため、効果は半減。0.625と0.875となる。うーん、分かってはいたが、地上戦力1にもならんのか……

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では地上戦闘解決。まずカレリア地峡東部タイパレ(Taipale)への攻撃。ソ連軍は……

・歩兵72戦力(6個師団+スキー旅団)✕0.75(過酷・大規模陣地)=54戦力

・戦車16戦力(2個旅団)✕0.5(過酷・大規模陣地)✕0.5(過酷・森)=4戦力

・重砲兵26戦力(5個連隊+列車砲大隊)✕4(大規模陣地)✕0.75(過酷)=78戦力

・近接航空支援0.875 合計136.875戦力

戦車部隊は、スタックポイント(部隊規模)に等しい装甲値を持つ。この場合、ソ連軍は2個旅団=4スタックポイント分の戦車を持つため、装甲値も4。ただし大規模陣地ヘクスサイドを超えて攻撃する場合、その装甲値を活かした戦車ショック効果(ASE)は無効とされるため、今回は考慮しない。

対するフィンランド軍は、6戦力✕2.4(マンネルハイム将軍と戦闘効率補正)=14.4戦力。戦闘比9.50:1。d100を振って10が出たので、戦闘比10:1に繰り上げるが、地上戦闘結果表には9:1までしかないので振り切り。ただしダイス修整は-4(過酷・大規模陣地)。ソ連軍の攻撃ダイス、出目は1(最悪!)、修整して-3、結果はHQ。攻撃側ソ連軍は、防御側フィンランド軍=5スタックポイントの1/2=2.5スタックポイント以上を除去しなければならず、第72歩兵師団をステップロスさせ(2スタックポイント損失)、スキー旅団を除去(2スタックポイント損失)した。フィンランド軍は、5スタックポイントのうち1/4を失って後退するか、1/2を失って留まるか。当然、後者を選び、第7(軽)歩兵師団をステップロスさせ(2スタックポイント損失)、タイパレを死守した。マンネルハイム線、堅し! 実際、史実でもタイパレ地区での戦闘は、ソ連側にとって虚しいものだったとあるから、そのまんまか……

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では主攻勢軸、戦線中央、キヴェンナパ(Kivennapa)に対する攻撃。ソ連軍は……

・歩兵104戦力(8個師団+2個空挺連隊)✕0.75(過酷・大規模陣地)✕0.5(森・湖)=39戦力

・重砲兵40戦力(6個連隊)✕4(大規模陣地)✕0.75(過酷)=120戦力

・近接航空支援0.625 合計159.625戦力

対するフィンランド軍は、10戦力(歩兵師団+高射砲連隊+砲兵連隊)✕2.4=24戦力。戦闘比6.65:1。d100振って36が出たので、戦闘比7:1に繰り上げ。ただし、こちらもダイス修整は-4(過酷・大規模陣地)。ソ連軍の攻撃ダイス、出目は8。修整して4。結果はDQ。防御側フィンランド軍は、6スタックポイントのうち1/4を失い(第5軽歩兵師団をステップロスして2スタックポイント喪失)、後退しなければならない。ソ連軍は見事、マンネルハイム線を突破し、陣地線の向こうに第1軍団司令部+4個歩兵師団+1個空挺連隊を前進させた。

この後は、非手番側・フィンランド軍の反応移動フェイズとなるが、あいにく反応移動(移動力1/2で移動)が許されるのは、敵ユニットから3ヘクス以上離れているユニットなので、今回は無し。

続いてソ連軍の突破フェイズ。攻勢補給下の騎兵・自動車化ユニットは、さらに全移動力を使って移動でき、それ以外のユニットは移動力の1/2まで移動できる。ソ連軍の全ユニットは、攻勢補給下にあるため、いずれも移動可能。そしてこの移動中にオーバーランを行ってもよいが、電撃戦を諦めたティモシェンコ大将同様、ここは次ターンの攻勢準備に留めておこう。

手番代わって、フィンランド軍の開始フェイズ。ヴィープリに2個砲兵連隊が登場したものの、前線は手薄。移動フェイズにスキー部隊が位置を変えた程度。というあたりで、次の1940年2月IIターンへ……

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TSWWでは、旧エウロパ・シリーズより補給面も厳しく(そして細かく)なったが、基本的な地上部隊の補給システムは、なかなか良い感じだ。要するに、1/3兵站ポイント払えば、1個軍司令部と、その麾下の4個軍団司令部につながるユニットはすべて補給下に置かれるわけで、その処理は、案外と楽である。その麾下に何個師団いるのかという、従量制的な計算は無い(司令部から隔絶していたら、それをやる)。

また、攻勢補給下にしなければ、どの種類の部隊であろうと、戦闘力も移動力も100%発揮できないという処理は、補給に厳しいOCS(Operational Combat Series)より厳しくなっている。

OCSも補給に焦点を当てたゲームであり、自動車化部隊の移動には燃料が必要だが、歩兵・騎兵部隊はノーコストで動き回れてしまうので、そこがまだユルいかなと。歩兵にしろ騎兵にしろ、メシを食わねば動きも鈍るはずだし、その食糧供給まで再現しても良かったように思うのだが、デザイナーのDean Essigが、とりあえず自動車化部隊の燃料消費に焦点を絞ったから、ああいう形になったのだろう。

なんとなく、2010年代生まれのTSWWが、1990年代生まれのOCSを見て『いや補給にこだわるなら、歩兵や騎兵にも補給ポイントを食わせようぜ』と、先輩格OCSへのアンサーシステムになったような気もする。そういった、次世代・21世紀のウォーゲームの主張を見るのも面白い。

【The Second World War】「TSWW : Hakkaa Päälle」Timoshenko's Offensive '40 Solo-Play AAR Part.1

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引き続き「TSWW : Hakkaa Päälle」の冬戦争シナリオをソロプレイ。今回は、1940年2月から始まったソ連軍の攻勢シナリオ「Timoshenko's Offensive '40」を試すことに(ちなみに、ちょうど80周年)。冬戦争序盤で、大きな損害を被りながらもカレリア地峡のフィンランド軍防衛線=マンネルハイム線を突破できなかったソ連軍は、この地を攻める北西方面軍司令官にティモシェンコ大将を任命。ティモシェンコ大将は、膨大な兵力と砲兵を結集し、正面からマンネルハイム線の突破を画策。結果、この突破戦闘でも、ソ連軍は多大な失血を強いられたものの、フィンランド第2の都市ヴィープリ(Viipuri)に迫ったところで冬戦争は停戦と相成った。

このシナリオは、1940年2月Iターンに始まり、3月IIターンまでに(計4ターン)、ソ連軍がフィンランド軍に10スタックポイント(10個連隊相当)の損失を与えたうえで、ヴィープリを占領していれば勝利となる。

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ソ連軍は、マンネルハイム線の前に5スタック……歩兵師団✕13、戦車旅団✕3、空挺連隊✕3、砲兵連隊✕14、攻城用の列車砲大隊✕1を配置。特に中央の2スタックは、総計70戦力以上。さらに後方にも予備として、戦車師団✕1、歩兵師団✕4、二線級の歩兵師団✕4が控えており、ゴリ押しする気満々。こういうハイスタックが並ぶと、いよいよエウロパシリーズの本格シナリオという感じがする。

一応、エウロパシリーズとは違って、TSWWでは補給ルールも厳しくなったが、後方のレニングラードには、ソ連軍の補給所(ST)があり、2兵站ポイント(LP:Logistic Point)が準備されている。1兵站ポイントで、3個軍司令部とその麾下にある12個軍団司令部を攻勢補給下(騎兵と自動車化部隊も額面移動力100%を使用可能、かつ全ユニットの戦闘効率補正100%を使用可能)に置ける。今回、ソ連軍は、カレリア地峡の東西に第7軍、第13軍の2個軍司令部を有し、その麾下に6個軍団司令部+1個砲兵司令部がある。この場合、2/3兵站ポイントを使用すれば、前線部隊はすべて攻勢補給下となれる。2兵站ポイントがあれば3ターンずっと攻勢補給が継続でき、ソ連軍は1ヶ月毎に1兵站ポイントが送られてくるので、最終ターンまで攻勢補給が途絶える心配は無い。

スオムッサルミ戦シナリオで見られた、ソ連軍に不利な制約もほとんど解除されているため、通常運行で作戦が行える状態となっている。

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対するフィンランド軍も、首都ヘルシンキの補給所(ST)に2兵站ポイントがあり、カレリア地峡軍を補給下に置けるだけの物資はある。ただしマンネルハイム線守備隊はお寒い限りで、前線6ヘクスに各1個師団+砲兵連隊がいる程度。予備兵力も無く、いったん突破されたら、前線を塞ぐ部隊は無い。

一応、フィンランド軍の戦闘効率補正(CEV)はいまだ1.4、後方に陣取るマンネルハイム将軍の防御補正1.0もあるため、フィンランド軍地上部隊の防御力は✕ 2.4となる。質的な有利さは健在だが、さすがにここまで量的に劣勢になるとどうなるか。

また今回、ソ連軍は航空兵力も結集させており、近接航空支援(CAS)を行ってくるはず。しかしフィンランド空軍で頼りになる迎撃機は、フォッカーD21隊1ユニットのみ(北欧空戦記!)。

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ソ連軍としては、とにかく勝利条件都市であるヴィープリを目指して正面攻撃をかけるしかない。カレリア地峡西部沿岸には、フィンランド軍の沿岸陣地も連なっているため、攻めるのが面倒臭いし。

ソ連軍の戦闘効率補正(CEV)は1.0。つまり額面そのまま。しかし過酷な天候下で、マンネルハイム線(大規模陣地線)ヘクスサイドを超えて(戦闘力✕0.75、ダイス修整-4)、森林+湖ヘクスを攻撃する(戦闘力✕0.5)場合、たとえ70戦力あったとしても、70✕0.75✕0.5=26.25となる。フィンランド軍10戦力スタックが✕2.4=24となるのだから、額面70:10でも戦闘比は1:1となるわけだ。キビシィー! いやソ連軍の重砲兵や攻城砲兵は、大規模陣地に対して戦闘力4倍となるから、その活用も大事か。

とは言え、基本的にフィンランド軍1スタックに対して、最低でも2スタックで攻めなければダメ。助攻として、カレリア地峡東部でも攻撃をかけるとしても、2スタック対1スタックの原則は守るべき。

とにかくマンネルハイム線さえ突破すれば、戦闘力✕0.75とダイス修整-4というペナルティは消えるのだから、ソ連軍としては損害に怯まず、攻めるしかない。少しずつでも、マンネルハイム線守備隊の戦力を削っていけば、そのうち戦闘比も有利になってくるはず。しかし「すれば」とか「はず」という見込みでやる作戦ってロクなことにならないのが世の常……まあ、そういった事情も見えてきたところで、いよいよソロプレイ開始。

【The Second World War】「TSWW : Hakkaa Päälle」The Battle of Suomussalmi Solo-Play AAR

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「TSWW : Hakkaa Päälle」の特別ルールを翻訳したので、これで冬戦争(ソ・フィン戦争)もプレイ可能に。しかし史実に寄せるための仕掛け(陰謀ルールとも言う)が結構キツく、実際に確かめることにした。

まずは冬戦争中、フィンランド軍が最も輝かしい勝利を収めた「スオムッサルミの戦い」をソロプレイしてみることに。この戦闘は、フィンランド領内に侵攻したソ連第9軍の先鋒・第163歩兵師団が、スオムッサルミの街を奪ったものの、シーラスヴォ大佐率いる寡兵のフィンランド軍に各個撃破に遭ったうえ、後続の第144歩兵師団まで撃滅されてしまったというソ連軍の大敗。まあ、数個師団程度の戦闘なので、もっと細かいゲームスケールの方が楽しそうだけども。

シナリオ開始時点で、ソ連第163歩兵師団は3個連隊に分割され、それぞれ1一般補給ポイント(GSP)は持っているものの、第9軍司令部と補給所スタック(画像右下)からは、かなり離れている。1939年のソ連軍の主要補給ルート許容量は4と定められ、簡単に言うと、補給所から平地4ヘクス先まで補給下にできる。しかしシナリオ開始時=1939年12月Iターンの天候は、過酷(Severe)かつ凍結(Frozen)であり、主要補給ルートが各ヘクスを通過する消費コストが増し、第163歩兵師団の3個連隊も、この範囲外にあるため、最初から補給切れとされている。

TSWWでは、補給切れと判定された場合、補給源や補給所からの無制限の陸路=補給線(LOS)が断たれた「孤立」なのか、それとも補給所からの主要補給ルート(MSR)から外れた「補給負荷」なのかを判別する。今回の場合、ソ連第163歩兵師団の3個連隊は、補給所からの陸路=補給線(LOS)は通っているものの、主要補給ルート(MSR)範囲内にはいないので「補給負荷」となっている。「補給負荷」には2段階あり、「補給負荷1」では、攻撃力1/2、移動力1/2、影響ゾーン(ZOI、他のゲームで言うZOC)は減少状態、戦車ショック効果(ASE)-1、反応移動無しとなる。現状のまま、もう1ターン経過すると「補給負荷2」となり、攻撃力1/4、防御力、移動力、対空力1/2、影響ゾーン、戦車ショック効果、対戦車効果、装甲防御値無し、反応移動と突破移動も不可となる。

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さてソロプレイ開始。1939年12月Iターン。先手フィンランド軍の移動フェイズから。最初のターンの増援として到着した、第27軽歩兵連隊(2-6)は、スオムッサルミに陣取るソ連第613歩兵師団第759歩兵連隊(4-6)へ接敵。同じく第25連隊(1-6)も、スキー部隊は移動時に敵ZOIを無視できるというフィンランド軍特別ルールを活かし、ラーテ(Laate)道ヘクスへ進出。これとシーラスヴォ大佐直率のRasanan軽歩兵旅団(1-6)と併せて攻撃をかける。最初のターンには、一般補給ポイント4も届いているので、これを3消費して、3個ユニット(3スタックポイント)を攻勢補給下とし、額面100%の攻撃力を発揮させる(攻勢補給にしなかった場合、額面戦闘力✕0.75のみ)。一応、フィンランド軍には、対地支援にも使えるブレンハイムI型爆撃機0.5ステップ(作戦爆撃力1のみ)も控えているが、天候が過酷なので爆撃力50%となるため、今回は使わず。

続いて戦闘フェイズ。額面戦闘力だけなら、フィンランド軍の攻撃力4:ソ連軍の防御力4(補給負荷1でも防御力は変化しない)=戦闘比1:1だが、もちろん修整が加わる。

1939年のフィンランド軍の戦闘効率補正(CEV)は1.4。シーラスヴォ大佐の攻撃補正は0.2。フィンランド軍の攻撃力は、4✕1.6=6.4となる。また3ヘクスサイドからの集中攻撃でダイス修整+1、過酷な天候時の攻撃でダイス修整-1、1/2スタックポイント(=大隊)以上の軽歩兵スタックが森林を攻撃する場合はダイス修整+2、併せて+2となる。フィンランド軍の場合、スキー部隊も軽歩兵として扱えるのが便利。

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対するソ連軍は、戦闘効率補正0。防御力は変わらず4となり、攻撃力6.4:防御力4=戦闘比1.6:1となる。ここでd100を振って出目は19。60以下が出たので、最終戦闘比は2:1、ダイス修整+2で判定する。出目は4。足して6。結果は「QH(Quater/Half)」。まず攻撃側フィンランド軍は、防御側ソ連軍のスタックポイント(1)の1/4を失う。防御側ソ連軍は、スタックポイント(1)の1/2を失って後退する。フィンランド軍は第25スキー連隊を除去し、ソ連軍第759歩兵連隊も除去された。フィンランド軍第27軽歩兵連隊は、空いたスオムッサルミヘクスに前進し、これを奪回。遺棄されたソ連軍の一般補給ポイント1に対しても1d10を振り、出目8=1x0.8=整数にして1ポイント捕獲となった。ここでフィンランド軍Rasanan軽歩兵旅団も前進出来るが、あえてしないのが重要(後述)。

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続いてソ連軍の反応移動フェイズ。特別ルールによって、ソ連軍は毎ターン、西に進まなければならないが、道路沿いに西進するということで、いったんスオムッサルミに接近。

さらに手番代わって、ソ連軍の移動フェイズ。しかしこの1939年12月Iターンはソ連軍の師団分割ユニットはスタックできないという特別ルールがあり、過酷な天候によって移動も阻まれ、2個連隊がかりでは攻撃できない。先行した第163歩兵師団第662歩兵連隊は、一般補給ポイントを消費して補給負荷1を維持してOltavaに入ったが、ソ連軍には、額面戦闘比3:1以上なら必ずフィンランド軍を攻撃しなければならない、という特別ルールもある。第163歩兵師団第662歩兵連隊の額面戦闘力は4、隣接するRasanan軽歩兵旅団は額面戦闘力1なので、ここはマストアタック。と言うより、フィンランド軍は、わざとソ連軍に攻撃を強制させるため、あえてスタックを集めなかった(フィンランド軍がスタックすると合計3戦闘力になり、強制攻撃の3:1にならない)。

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そしてソ連軍の戦闘フェイズ。本来ならソ連軍は、近接航空支援(CAS)任務として爆撃機の支援を送りたいところだが、手元にあるDB-3MとSB-2bis爆撃機は、どちらも作戦爆撃力(カウンター左下の左の数値)は1で、合計しても2。近接航空支援は、作戦爆撃力4ごとに、地上ユニット1戦力分を加算するので、0.5戦力にしかならない。さらに天候が過酷なため、さらにその爆撃力が半減されて0.25……まあ、それを足すことに意味があるかもしれないが、今回は割愛。フィンランド軍も、グラディエーターI型戦闘機を迎撃に上げるだろうし、フィンランド空軍の空戦補正はダイス修整+2(強い)だし、2個の爆撃機ユニットが無事に爆弾を投下できる可能性も少ない。そこからさらに対空砲火も受けるし。

というわけで、航空支援無しで地上戦闘を解決しよう。第662歩兵連隊の額面戦闘力は4だが、補給負荷1によって攻撃力は1/2に。また司令部の攻勢補給下にないので、攻撃力✕0.75。よって4✕0.5✕0.75=攻撃力1.5となる。河川は凍結しているため無問題だが、過酷な天候時の攻撃なのでダイス修整-1。

対する防御側フィンランド軍Rasanan軽歩兵連隊は、額面防御力1なれど、戦闘効率補正1.4、シナリオ地域外にいるマンネルハイム将軍の防御補正1.0があるため、1✕2.4=最終防御力2.4となる。

攻撃力1.5:防御力2.4=1:1.6となり、ソ連軍はd100を振り、出目は49。最終戦闘比1:2、ダイス修整-1となる。ソ連軍の出目は5。引いて4。結果はHR(Half & Retreat)。ソ連第662歩兵連隊は攻撃にしくじり除去された。

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ターン代わって、1939年12月IIターン。スオムッサルミには、フィンランド軍増援のスキー守備連隊((1)-6)✕4個が到着。それに留守番を任せ、Rasanan軽歩兵旅団と第27軽歩兵連隊は、ソ連第163歩兵師団第529歩兵連隊を追撃。東西から挟み撃つ形で攻撃をかけた。もちろんフィンランド軍は、攻勢補給も消費し、額面戦闘力100%。

フィンランド軍の攻撃力は、合計3✕1.6=4.8。ソ連軍の防御力は3。戦闘比1.6:1。d100で48が出たため、戦闘比は2:1へ。ダイス修整+2。出目は7。足して9。結果は「DQ(Defender Quartered)」。ソ連第529歩兵連隊も除去され、第163歩兵師団は全滅した。 

とまあ、ソ連軍はロボット的にしか動けなかったが、史実に忠実に、スオムッサルミの戦いっぽくなっているなあと感じた。フィンランド軍の戦力ばらまき+攻撃強制テクニックも面白いと思う。こういった史実的な縛りについては、好き嫌いもあるだろうが、TSWWは全体的に史実に寄せたシステムなので、自分としては、そりゃあ状況設定も縛るだろうと割り切っている。展開の自由さや、競技バランスは低いが、図上演習ツール、史実再現キットとしては最高。ソ連軍に不利な陰謀ルールも、時期が進むにつれて次第に解除されていくので、次は冬戦争後期のシナリオも試してみよう。

【参考文献】喬良・王湘穂 「超限戦 21世紀の新しい戦争」

超限戦 21世紀の「新しい戦争」 (角川新書)

超限戦 21世紀の「新しい戦争」 (角川新書)

 

2001年に日本語版が発売され、品切れていた「超限戦」が新書化されたので購入。中国で原書が発行されたのは1999年だそうで、2001年の「9.11テロ」前にハイブリッド戦争に言及していたことで話題になったそうだが、自分が触れるのは初めて。マーチン・ファン・クレフェルトも、1991年の「戦争の変遷」で、すでに非正規戦に触れていたが、本書はより具体的にハイブリッド戦争に触れている。

もはや21世紀の戦争は、通常戦争やゲリラ戦争は優に及ばず、金融、メディア、心理戦争など、あらゆる境界や制限を超越して複合されているという意味で「超限戦」なのだろう。まあ、さすがに生態戦争(天候や気象を利用する)となると「?」と思ったりもするが、ちょうど今オーストラリアで起きている大規模な山火事のような災害なら人為的に起こせるだろうし、それも将来戦の一手段なのかもしれない。

ただ、自分の手元には、あいにくハイブリッド戦争をテーマとしたウォーゲームは無い。たぶん「ModernWar」誌あたりで発表されているゲームの中に、ハイブリッド戦的な作品はあるだろうが、まだまだ作品数は少ないと思う。なにしろハイブリッド戦自体、実例も少なく、現在進行形でもあることから、制作側としてもモデル化・ゲーム化しにくいのだろう。またハイブリッド戦争という言葉自体が、すでに中国・ロシアの戦争形態を表しているという話もあり、テーマ的にも絞られるのかもしれない。

一方、プレイする側としても、(自分も含めて)まだこの新時代の戦争観に追いつけていなかったり、むしろなじみ深い、旧来のクラウゼヴィッツ的な通常戦争ゲームを好む人も多いのではないだろうか。いずれ新時代の戦争が、普遍的な形でモデル化されたら触れてみたい気もするが、さまざまな分野での変化スピードが上がっている現代では、なかなかそれも難しいかもしれない。それよりは個々の、今現在の戦争を、その時の状況だけ切り取ったり、仮想設定を組み立てて、個別に表現していくという「取って出し」な形で対応するしかないのかも……などと思いつつ、自分も、もはや失われつつある、通常戦争ウォーゲームと、ノスタルジックにつき合っていくのだろうな。

GMT「Stalingrad'42」Fall Brau AAR

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今日は、2013年2月以来、7年ぶりにYossyさん宅で対戦。Yossyさんも、この7年間はウォーゲームと縁遠かったそうで、だったらオーソドックスな作戦級をということで「Stalingrad'42」を選択。シナリオ1「Fall Brau」を、Yossyさんがドイツ軍、自分がソ連軍を担当した。 

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序盤、快活に進撃するドイツ第4装甲軍。 

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ドイツ軍は、一番手前の勝利ポイント地点Staryy Oskolを占領し、先鋒部隊は早くもVoronezh(勝利ポイント2)に達した。しかしドイツ装甲師団は、各地でステップロスをくらい、早くも消耗しつつある。そして南部では、まだ攻勢に出られず。

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ドイツ第4装甲軍が消耗したうえ、Don川にぶつかったあたりで、今度は南部での攻勢が開始。ドイツ軍は、Valuyki、Voroshilovgradも占領。しかし各司令部を戦闘支援に使った代わりに、それを回復させる補給ポイントが不足してきた。 

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対するソ連軍は、反撃する余裕も無く、ZOCボンド戦線を繋ぐのみ。 

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そのソ連軍戦線も、広い範囲でドイツ軍の攻撃をくらい、一斉に後退、そして混乱。それでも何とか勝利ポイントの達成は防いでいる。  

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南部でのドイツ軍の進撃は、Voroshilovgradで停止。その先にあるMillerovoまでは奪えなかった。

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最終第8ターン。ドイツ軍のSvobodaに対する攻撃は、EX(相互損失)止まり。しかしVoronezhに対する攻撃はようやく成功し、ソ連軍も「断固たる守備」にしくじって後退。あえなくVoronezhは陥落した。しかしその勝利ポイント2点を加えても、合計5点。勝利基準の8点には足りず、ドイツ軍敗北と相成った。

まあ、7年ぶりのリハビリ的対戦とはいえ、8ターン進めるのに4時間ほどだったので、さくさくと進められた感じ。ドイツ軍は、後退するソ連軍を追って、ついついDon川方面に装甲師団を送ってしまったが、そちらは渡河攻撃をするのだし、歩兵師団を送れば良く、装甲師団はDon川とDonetz川の間の平野部を突進させれば良かった……というのは後知恵。まあ一度プレイすれば、そのあたりの戦力配分もすぐ見えてくるかなと。今回は、その戦力配分に手間取り、Voronezh陥落も遅れたが、次回はもう少しスムーズにできるはず。とは言え、Svobodaまでは取れるとしても、勝利ポイント7点目、8点目を取るのは、まだ難しそうに見える。たぶんプレイ回数を重ねれば、また違って見えるのだろうが。

ソ連軍としては今回、ほとんど反撃をしなかったが、枢軸軍も徐々に消耗し、戦線が薄くなっていたので、一発殴れそうなチャンスも何度かあった。一応、予備選力も保持していたが、その時、その近くに反撃できる戦力が無かったのが残念。予備を配置する場所がまずかったのだろうか。あるいは、枢軸軍戦線が綻ぶ場所をあらかじめ予想して、反撃用の予備を準備しておくか……などと対戦後、あれこれ話し合ったので、いずれまた再戦するかもしれない。とにもかくにも、安心安定のSimonitch路線は健在だった。

GMT「Stalingrad'42」Fall Brau Self Study

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2020年新年早々「Stalingrad'42」の対戦予定が入ったので、シナリオ1「Fall Brau(青作戦)」を並べ、プレイブックに載っている例そのままに2ターンほど動かしてみた。 

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基本的なシステムは、近年のSimonitch作と共通ながらも、航空支援(ドイツ軍の場合、戦闘フェイズに攻撃スタックに載せると、突破戦闘にも残り、さらにはソ連軍ターンにも残って防御支援もするという便利さ)、補給ポイント(自前で砲兵支援をするか、砲兵支援をした司令部を回復させる)が特徴的に感じた。

しかしドイツ空軍マーカーは2個しかない(ルーマニア軍用に1個追加される)ので、全戦線にわたって派手に暴れられるワケでもなさそう。実際、史実でも(そしてプレイブックでも)、まずは北部からの攻撃に限定されているし。対するソ連軍としては、戦闘比が多少低くても反撃する気概が必要だなと。

まあ、事前にゲームが見えすぎてしまうとつまらないので、今日はルール確認のみ。

【Wargaming Column】ゆく年くる年2019、そして2010年代総括

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【2019年の購入ウォーゲーム】

今年購入したのは、ウォーゲーム12個+ASL5個+ASL小物4点。購入が10個を超えたのは、2012年以来7年ぶり。その大半が、昨年末の時点で『来年は買う』と想定したモノなので、それは良しとしよう。問題は、昨年末の時点でまったく買うつもりが無かった「TSWW(The Second World War)」シリーズと「A World at War」「Gathering Storm」に手を出してしまったこと。いったん断捨離もしたので、もうWWII作戦級~戦術級だけあれば良いじゃないかと言っていたのに、戦略級方面にも手を出してしまった。まあ、先日のWWIIクリスマスツリー記事でも書いたが、これによって第二次世界大戦を複数のレイヤーでプレイできることになったので、それもまた良し。

【2019年のウォーゲーム活動】

引き続き、ほぼ引退状態のソロプレイ専門。しかし今年は仕事が忙しくなったので、ソロプレイに割く時間も限られてしまった。それでも今年購入したゲームの大半は、一度はソロプレイして、とりあえず稼働状態とした。今年こそ回数を増やそうと思っていたASLも、相変わらずのコレクター状態。「A World at War」も手が出なかったけれど、先に「Gathering Storm」のルールを訳している。

そして、分厚いTSWWのルールを訳し、ミニシナリオながらも、実際のソロプレイまで漕ぎ着けただけでも、自分で自分を褒めても良いんじゃないだろうか。実際、今年プレイした中では「TSWW:Day of Infamy」がマイベスト・ウォーゲーム2019。

また今年は、このBlogに読書記事を追加した。やはりウォーゲームと戦史書は切っても切り離せないということで、戦史書の記事でもウォーゲーム・タイトルに言及するようにしてみた。このあたり、うまくリンクさせていきたいところ。

【2020年の購入ウォーゲーム予想】

とりあえず新年早々、ASLフランス軍モジュール「Croix de Guerre 第2版」、デラックスASL総集編「Delux ASL Redux」、ASLヒストリカル・モジュール「Onslaught to Orsha」と、またASL部隊が続々到着しそう。「TSWW:Barbarossa」も、そろそろのはず。「CSS:Fulda」「GOSS:Lucky Forward」は3月という話だが、それもどうなるんだか。他にも「OCS:Hungarian Rhapsody」「GTS:Race for Bastogne」も注文済みだが、どちらもいまだにP500に達していないので、来年以降かもしれない。

【2020年のウォーゲーム活動予想】

今年は、TSWWのルールを訳したが、来年「TSWW:Barbarossa」の発売に伴ってルールもアップデートされるはず。そのルールも訳す予定だし、すでに「TSWW:Hakkaa Päälle」の特別ルールは翻訳済み。「Singapore !」の特別ルールの翻訳も始めているし、プレイ環境は少しずつ整えつつある。TSWWに関しては、まだまだ練習段階なので、来年は本格的なシナリオ……冬戦争、マレー半島戦、インパール作戦、ミッドウェー作戦あたりに触れてみたい。もちろん「TSWW:Barbarossa」が届けばそれも……

さらに平行して「Gathering Storm」の翻訳も進めている。こちらは、本体ルールを45%ぐらい訳したところで止め、TSWWの翻訳を優先している。「Gathering Storm」も、カードの訳まで含めると結構な分量なので、あまり焦らず進めようかと。そして出来ればその後には「A World at War」にも着手したい。一応、2003年版の翻訳データはあるが、最新ルールの翻訳も作っておきたいなと。

そして「Lucky Forward」の発売に伴い、GOSS(Grand Operational Simulation Series)のルールもアップデートされるはずなので、それも訳しておきたい。また「GOSS:Atlantic Wall」の訳も途中で止まっているので、GOSS最新ルールが出たらそちらも……とまあ、面倒なシステムのルール修整ばかり抱えているが、そのうちのどれかひとつぐらいは、来年中に達成したいなと。

また、友人からは『ASLをプレイしたい』というリクエストも来ており、できればヒストリカルASLのシナリオを中心に再開しようかと思っている。しかしASLは、毎年毎年『今年こそは』と言って尻つぼみに終わっているから、期待は薄……

【2010年代の総括】

このBlogの年別記事数を見ても分かるように、2010年は、一番ウォーゲーム活動が活気づいていた年だった。それがゲームの断捨離をした2014年には記事が最低数になり、ほぼ引退状態に。それでもボードゲームTRPGTCGを手放したのに、ウォーゲームだけは残ったというのも面白い。結局、2014年を底として、再びV字回復し、今年の記事数は、その2010年に次ぐ、第2位の年となった。と言っても、積極的にプレイ回数を増やしたわけでもなく、対戦をするわけでもなく、ただ時間が空いた時にソロプレイをする程度。まあ、そのプレイスタイルは、来年以降も続くかなと。

というわけで、2020年も引き続きほぼ引退状態でしょうが、何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m