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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【The Second World War】「TSWW : Hakkaa Päälle」The Battle of Suomussalmi Solo-Play AAR

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「TSWW : Hakkaa Päälle」の特別ルールを翻訳したので、これで冬戦争(ソ・フィン戦争)もプレイ可能に。しかし史実に寄せるための仕掛け(陰謀ルールとも言う)が結構キツく、実際に確かめることにした。

まずは冬戦争中、フィンランド軍が最も輝かしい勝利を収めた「スオムッサルミの戦い」をソロプレイしてみることに。この戦闘は、フィンランド領内に侵攻したソ連第9軍の先鋒・第163歩兵師団が、スオムッサルミの街を奪ったものの、シーラスヴォ大佐率いる寡兵のフィンランド軍に各個撃破に遭ったうえ、後続の第144歩兵師団まで撃滅されてしまったというソ連軍の大敗。まあ、数個師団程度の戦闘なので、もっと細かいゲームスケールの方が楽しそうだけども。

シナリオ開始時点で、ソ連第163歩兵師団は3個連隊に分割され、それぞれ1一般補給ポイント(GSP)は持っているものの、第9軍司令部と補給所スタック(画像右下)からは、かなり離れている。1939年のソ連軍の主要補給ルート許容量は4と定められ、簡単に言うと、補給所から平地4ヘクス先まで補給下にできる。しかしシナリオ開始時=1939年12月Iターンの天候は、過酷(Severe)かつ凍結(Frozen)であり、主要補給ルートが各ヘクスを通過する消費コストが増し、第163歩兵師団の3個連隊も、この範囲外にあるため、最初から補給切れとされている。

TSWWでは、補給切れと判定された場合、補給源や補給所からの無制限の陸路=補給線(LOS)が断たれた「孤立」なのか、それとも補給所からの主要補給ルート(MSR)から外れた「補給負荷」なのかを判別する。今回の場合、ソ連第163歩兵師団の3個連隊は、補給所からの陸路=補給線(LOS)は通っているものの、主要補給ルート(MSR)範囲内にはいないので「補給負荷」となっている。「補給負荷」には2段階あり、「補給負荷1」では、攻撃力1/2、移動力1/2、影響ゾーン(ZOI、他のゲームで言うZOC)は減少状態、戦車ショック効果(ASE)-1、反応移動無しとなる。現状のまま、もう1ターン経過すると「補給負荷2」となり、攻撃力1/4、防御力、移動力、対空力1/2、影響ゾーン、戦車ショック効果、対戦車効果、装甲防御値無し、反応移動と突破移動も不可となる。

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さてソロプレイ開始。1939年12月Iターン。先手フィンランド軍の移動フェイズから。最初のターンの増援として到着した、第27軽歩兵連隊(2-6)は、スオムッサルミに陣取るソ連第613歩兵師団第759歩兵連隊(4-6)へ接敵。同じく第25連隊(1-6)も、スキー部隊は移動時に敵ZOIを無視できるというフィンランド軍特別ルールを活かし、ラーテ(Laate)道ヘクスへ進出。これとシーラスヴォ大佐直率のRasanan軽歩兵旅団(1-6)と併せて攻撃をかける。最初のターンには、一般補給ポイント4も届いているので、これを3消費して、3個ユニット(3スタックポイント)を攻勢補給下とし、額面100%の攻撃力を発揮させる(攻勢補給にしなかった場合、額面戦闘力✕0.75のみ)。一応、フィンランド軍には、対地支援にも使えるブレンハイムI型爆撃機0.5ステップ(作戦爆撃力1のみ)も控えているが、天候が過酷なので爆撃力50%となるため、今回は使わず。

続いて戦闘フェイズ。額面戦闘力だけなら、フィンランド軍の攻撃力4:ソ連軍の防御力4(補給負荷1でも防御力は変化しない)=戦闘比1:1だが、もちろん修整が加わる。

1939年のフィンランド軍の戦闘効率補正(CEV)は1.4。シーラスヴォ大佐の攻撃補正は0.2。フィンランド軍の攻撃力は、4✕1.6=6.4となる。また3ヘクスサイドからの集中攻撃でダイス修整+1、過酷な天候時の攻撃でダイス修整-1、1/2スタックポイント(=大隊)以上の軽歩兵スタックが森林を攻撃する場合はダイス修整+2、併せて+2となる。フィンランド軍の場合、スキー部隊も軽歩兵として扱えるのが便利。

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対するソ連軍は、戦闘効率補正0。防御力は変わらず4となり、攻撃力6.4:防御力4=戦闘比1.6:1となる。ここでd100を振って出目は19。60以下が出たので、最終戦闘比は2:1、ダイス修整+2で判定する。出目は4。足して6。結果は「QH(Quater/Half)」。まず攻撃側フィンランド軍は、防御側ソ連軍のスタックポイント(1)の1/4を失う。防御側ソ連軍は、スタックポイント(1)の1/2を失って後退する。フィンランド軍は第25スキー連隊を除去し、ソ連軍第759歩兵連隊も除去された。フィンランド軍第27軽歩兵連隊は、空いたスオムッサルミヘクスに前進し、これを奪回。遺棄されたソ連軍の一般補給ポイント1に対しても1d10を振り、出目8=1x0.8=整数にして1ポイント捕獲となった。ここでフィンランド軍Rasanan軽歩兵旅団も前進出来るが、あえてしないのが重要(後述)。

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続いてソ連軍の反応移動フェイズ。特別ルールによって、ソ連軍は毎ターン、西に進まなければならないが、道路沿いに西進するということで、いったんスオムッサルミに接近。

さらに手番代わって、ソ連軍の移動フェイズ。しかしこの1939年12月Iターンはソ連軍の師団分割ユニットはスタックできないという特別ルールがあり、過酷な天候によって移動も阻まれ、2個連隊がかりでは攻撃できない。先行した第163歩兵師団第662歩兵連隊は、一般補給ポイントを消費して補給負荷1を維持してOltavaに入ったが、ソ連軍には、額面戦闘比3:1以上なら必ずフィンランド軍を攻撃しなければならない、という特別ルールもある。第163歩兵師団第662歩兵連隊の額面戦闘力は4、隣接するRasanan軽歩兵旅団は額面戦闘力1なので、ここはマストアタック。と言うより、フィンランド軍は、わざとソ連軍に攻撃を強制させるため、あえてスタックを集めなかった(フィンランド軍がスタックすると合計3戦闘力になり、強制攻撃の3:1にならない)。

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そしてソ連軍の戦闘フェイズ。本来ならソ連軍は、近接航空支援(CAS)任務として爆撃機の支援を送りたいところだが、手元にあるDB-3MとSB-2bis爆撃機は、どちらも作戦爆撃力(カウンター左下の左の数値)は1で、合計しても2。近接航空支援は、作戦爆撃力4ごとに、地上ユニット1戦力分を加算するので、0.5戦力にしかならない。さらに天候が過酷なため、さらにその爆撃力が半減されて0.25……まあ、それを足すことに意味があるかもしれないが、今回は割愛。フィンランド軍も、グラディエーターI型戦闘機を迎撃に上げるだろうし、フィンランド空軍の空戦補正はダイス修整+2(強い)だし、2個の爆撃機ユニットが無事に爆弾を投下できる可能性も少ない。そこからさらに対空砲火も受けるし。

というわけで、航空支援無しで地上戦闘を解決しよう。第662歩兵連隊の額面戦闘力は4だが、補給負荷1によって攻撃力は1/2に。また司令部の攻勢補給下にないので、攻撃力✕0.75。よって4✕0.5✕0.75=攻撃力1.5となる。河川は凍結しているため無問題だが、過酷な天候時の攻撃なのでダイス修整-1。

対する防御側フィンランド軍Rasanan軽歩兵連隊は、額面防御力1なれど、戦闘効率補正1.4、シナリオ地域外にいるマンネルハイム将軍の防御補正1.0があるため、1✕2.4=最終防御力2.4となる。

攻撃力1.5:防御力2.4=1:1.6となり、ソ連軍はd100を振り、出目は49。最終戦闘比1:2、ダイス修整-1となる。ソ連軍の出目は5。引いて4。結果はHR(Half & Retreat)。ソ連第662歩兵連隊は攻撃にしくじり除去された。

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ターン代わって、1939年12月IIターン。スオムッサルミには、フィンランド軍増援のスキー守備連隊((1)-6)✕4個が到着。それに留守番を任せ、Rasanan軽歩兵旅団と第27軽歩兵連隊は、ソ連第163歩兵師団第529歩兵連隊を追撃。東西から挟み撃つ形で攻撃をかけた。もちろんフィンランド軍は、攻勢補給も消費し、額面戦闘力100%。

フィンランド軍の攻撃力は、合計3✕1.6=4.8。ソ連軍の防御力は3。戦闘比1.6:1。d100で48が出たため、戦闘比は2:1へ。ダイス修整+2。出目は7。足して9。結果は「DQ(Defender Quartered)」。ソ連第529歩兵連隊も除去され、第163歩兵師団は全滅した。 

とまあ、ソ連軍はロボット的にしか動けなかったが、史実に忠実に、スオムッサルミの戦いっぽくなっているなあと感じた。フィンランド軍の戦力ばらまき+攻撃強制テクニックも面白いと思う。こういった史実的な縛りについては、好き嫌いもあるだろうが、TSWWは全体的に史実に寄せたシステムなので、自分としては、そりゃあ状況設定も縛るだろうと割り切っている。展開の自由さや、競技バランスは低いが、図上演習ツール、史実再現キットとしては最高。ソ連軍に不利な陰謀ルールも、時期が進むにつれて次第に解除されていくので、次は冬戦争後期のシナリオも試してみよう。