Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

SPI/IED 「オペレーション・タイフーン Operation Typhoon」

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1978年にSPIから発売され、日本でも1988年末あたりにホビージャパンから日本語版が発売された「オペレーション・タイフーン Operation Typhoon」が、このほどIED/国際通信社から再販されたので、自分も購入してみた。お題はもちろん、1941年11月の、ドイツ軍によるモスクワ攻略作戦である。

実は、SPI版もHJ版も未所有、未プレイだったタイトルで、実を言うと昔からそんなに惹かれていたタイトルでもない。新品中古のHJ版も安く購入する機会があったのに、なぜか買わなかったのは、本作の戦力チットシステム(後述)がそれほど好きではなかったせいかもしれない。とは言え今回、400個限定再版ということで、手元にまったく戦力チットシステムゲームが無いのもなあと思い、さほどモチベーションも高くないまま入手してみた(その程度の気持ちで19800円払うとは……)。

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地図盤は3枚。1ヘクス=4km。今回の再版のウリのひとつは、本来のA1サイズの地図盤(いわゆる通常のフルマップ)をA0サイズに拡大した点。もちろんユニットも大きくなっているし、それはそれで老齢化するウォーゲーマーの老眼問題への解決策なのだろう。老眼については、自分も他人事では無いし、最近ではカウンターの細かい数値が読み取れなくて困ることもままある。とは言え、本来よりもっと広いプレイスペースが必要にもなるわけで、痛し痒しにもなっている。一応、我が家のちゃぶ台は150cm×90cmなので、本作の地図盤1枚ならきちんと広げられるし、地図盤1枚だけを用いるシナリオもあるので、その点については問題無いが……

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もちろん3枚連結すると、我が家のちゃぶ台には乗りきらない。まあ、それは他のビッグゲームも同様なんだけどね。

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カウンターシートは4枚、カウンター総数800個。元版の12.5mmから15mmサイズに拡大されている。カンウターは艶有りで、シナリオ別に兵科カラーも区別されているが、元々のSPIの、シブい艶無しマットな仕上がりが好きな人は、たとえ機能的には便利になっていても、ああ旧版の方が良かったなあと思うかもしれない。うん、まあ、気持ちはわかる。当時のSPIのゲームって、あの時代のアメリカの印刷物特有のインクの匂いやらなんやら込みで価値があるしね。

それはともかく、カウンターの大半は戦力チットマーカーで、実際の戦闘ユニットもその半数以下に抑えられている。本作は昔から『プレイアブルなビッグゲーム』『キャンペーンプレイが1日で終わる』と言われていたが、このように実際に動かすユニットがさほど多くないという意味でも、たしかに取り回しやすいのだろう。

こちらはドイツ軍ユニット(1ユニット=連隊)だが、A3とかB2などといった戦闘等級と士気程度が記されており、どのユニットがどれだけの戦力を有しているか(発揮できるか)は、最初の戦闘の際に戦力チットを引くまでわからない仕組みになっている。まあ、いったん戦力が分かってしまえば、後はもう驚きは無いので、ある意味、出オチ的なウォーゲーム・システムとも言える。

自分の場合、以前「The Killing Ground」でこの戦力チットシステムに触れたが、当時、あらかじめすべての戦力チットの数値を計算して、その平均値や、上限・下限を分析したうえでプレイしていた。それはもしかしたら「戦場の霧」や「戦力の不確定さ」を楽しむ本システムが目指すところでない、邪道なプレイだったかもしれないが、もしまた本作をプレイするなら、やはり戦力チット分析をするんだろうなと。

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こちらはソ連軍ユニット(師団~旅団)。ソ連軍の方が、ドイツ軍より戦力チットの振れ幅が大きく、戦力の不確定さも増している。

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ルールブックは、今風にフルカラーで。ゲームシステムとしては、戦力チット以外、特異なルールは少ない。ターンの流れとしても、おおざっぱに言えば、補給判定、移動、戦闘という感じでオーソドックスなものだ。一応、ドイツ軍は各ターン、補給支援下に置ける軍団数がランダムに決定され、その行動力は制限される。対するソ連軍も各ターン、戦略予備に置かれたユニットをいくつ投入できるか、決定する。

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こちらは、元版には無かったセットアップシート。3枚の地図盤それぞれ1枚ずつを使用するシナリオが3本と、地図盤3枚を使用するキャンペーンゲーム1本が用意されているが、その情報がこの1枚にまとめられている。地図盤1枚シナリオだけ見れば、両軍ともユニット40~60個程度しか使わないので、一般的な規模に収まっている。シナリオもキャンペーンゲームも、16ターン(1ターン=1日、1941年11月15日~11月30日)で終わるが、さらに15ターン延長することも可能。慣れているプレイヤーなら、終日プレイして、16ターンまで進められるのだろう。

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ということで最初に書いたように、あまりモチベーションが高くないまま入手してしまったが、せっかくちゃぶ台に地図盤も乗るので、せめて地図盤1枚シナリオぐらいはプレイしておこうかなと。

ユニットと地図盤の拡大については、たしかに老眼対策はありがたいものの、プレイ空間と引き換えにして見合うかどうか。実験的な試みとしてはアリだと思うけど、空間的なプレイアブルさが削られているのが、うーん、どうなんだろうと。ハーフマップのゲームをフルマップに拡大する程度ならわかるけど……まあ、リアル老眼ウォーゲーマーとしては、いろいろと考えさせられた(^_^;)