Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退したウォーゲーマーの日記

SPI 「CITY-FIGHT」

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こちらは買い直しではなく、初めての購入。1979年にSPIが出版した「City-Fight」(当時の邦題「市街戦」)を入手した。サブタイトル「都市環境における現代戦」の名の通り、市街地における戦術レベルの戦闘を模した作品。デザイナーは、後にGCACWやフリート・シリーズを立ち上げたJoseph Balkoskiと、ゲームデザインよりも政治活動家として知られるStephan Donaldson。

中学生当時の自分も、やはり他のSPI現代戦ゲーム同様、この「City-Fight」にも惹かれていたが、結局手を出さずにここまで来てしまった。恐らく、先に「Squad Leader」を買ってしまい、歩兵戦ゲームはそれでいいやと思ったり、Balkoski作の「Taskforce」(1980年代想定の仮想WWIII海戦ゲーム)を入手したものの、本作と同じくダブル・ブラインド方式による索敵ゲームだったのでプレイするのが難儀で、だったら「City-Fight」も止めておくか……と判断したと思う。

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そう、本作には、ハーフマップサイズのまったく同じ地図盤が2枚収録されており、両プレイヤーがそれぞれ1枚ずつを持って自軍のユニットを配置し、お互いの配置状況を隠したまま索敵や戦闘を行うというダブル・ブラインド方式になっている。

地図盤に描かれているのは、架空の西ドイツの小都市Gerlafingenだが、SPIが1976年に発売した仮想WWIII戦術級ゲーム「FireFight(邦題:米ソ現代機甲戦)」の(やはり架空の)地図盤には、その街が記されているらしい。また、あくまで汎用的な都市環境を表しているだけなので、この地図盤を使って、世界各地での市街戦を表現する仕様になっている。ゲームスケールは、1ヘクス=16.67メートル、1メガヘクス=50メートル、1高度レベル=1.5メートル、1階レベル=3メートルと、なかなか細かい。樹木も4高度レベルに分かれ、建物も最大7レベルまであるが一応、高度を使うのは上級ルールから。しかしBGG(Board Game Geek)の書き込みを見ると『高度計算が最大の問題』とあり、まあそうなんだろうなと。

各メガヘクスには「索敵値」が記されており、6面体ダイスを2個振ってd66として判定し、その数値以上が出れば索敵成功となり、敵がいるかどうか確認できる。たとえば噴水しかないメガヘクス5Gは隠れようがないので索敵値14であり、まあまず見つかるだろうと。しかし出入口ヘクスサイドの少ない金物工場メガヘクス3Kの索敵値は64と、かなり見つかりにくくなっている。そう、各建物には、出入口も指定されているため、一定の方向からしか進入できない。ただ、戦車などの直接砲撃によって壁面に穴を穿ったり、工兵の爆破作業によって突破口を開く手段もルール化されている。

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こちらはソ連軍ユニット。1ユニット=車両1台、歩兵は1個分隊か、半個分隊(射撃チーム)、狙撃兵や指揮官1名などを表している。各歩兵ユニットは、機関銃があるか無いかも記されている。車両ユニットには、T62、BMPなどの名称が書かれているが、データを変えることで別の車両を表すことも可能。なのでデータさえ自作してしまえば、2020年代現在の車両としてゲーム上で動かすこともできる。車両データについては、主砲の上限角度が決まっていて、T62戦車の主砲は17°しか上がらないからそれより上の射線(LOS)は通らない……と判定するようだ。ああ、そりゃ面倒だね。

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こちらがNATO軍ユニット。こちらもM60だ、M150だと書いてはあるが、ルールブックの最後には、それ以外の、イギリス軍や西ドイツ軍の車両の簡単な説明も載っていて、それを使うようになっている。一応そちらでは、M2/3ブラッドレーだの、レオパルド2戦車といった、当時最新鋭の車両も紹介されている。

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偵察兵、工兵、観測兵カウンターは2人のみ。狙撃兵カウンターは1人のみ。その他、M728戦闘工兵車カウンターも用意されている。

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こちらが両軍の指揮官カウンター。このゲームは、各ターン毎に運動ポイントを持ち、麾下のユニットに3種類の命令(移動、視認、射撃)を与えて部隊を動かしていく。その際、各小隊毎に、指揮統制が混乱していないどうかを指揮官値から判定する。有能な指揮官であれば小隊を混乱させずに行動できるが、判定に失敗すると、運動ポイントを失っていくという流れ。

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そして本作も、戦闘ユニットよりマーカーが多い。戦闘ユニットの制圧状態、弾薬欠乏、建物の損壊/半壊、照明弾、地雷、障害物、弾痕、火災、煙幕……と「Squad Leader」等でも見られる、戦術歩兵戦闘を表現するマーカーが収録されている。まあ「Squad Leader」の発売が1977年だから、本作の方が後発だし、「Squad Leader」の登場によって一時、本作の開発も断念されかかったという話もある。

ただし「Squad Leader」はあくまで第二次世界大戦に限定されているが、本作はデータを融通することによって、より広い時代の、より広い範囲の戦場を扱えるようになっている。収録されたシナリオを見ても、東西ドイツ国境での米ソ軍の戦闘から、キプロス島でのトルコ軍とギリシャ軍の戦闘、インド・パキスタン紛争、ハンガリー暴動、イラン革命レバノン紛争、中越戦争、中ソ紛争、ニカラグア内戦、さらには都市ゲリラ戦、銀行強盗vs警察、ロックコンサートでの暴動シナリオもある。言うなれば、汎用市街戦ウォーゲームであり、近年の作品で言うなら「Urban Operation」のご先祖様という立ち位置か。しかし本作の場合、どのシナリオをやっても地図盤は一緒(1種類しかない)というのは、ちょっと飽きてしまいそうだ。

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まあ、本作も、同じ1979年の同級生「MECH WAR 2」や「NATO Division Commander」と同様、SPIゲームデザイン進化の究極というか、袋小路的な作品なのだろう。ただでさえ細かいルールに、ダブル・ブラインド方式という敷居の高さもあり、使いこなすのはなかなか大変そうだ。

ちなみにBGGでは、やはりEric Lee Smith氏が本作に10点満点中4点を付けていて『実際にはゲームではなかった深刻すぎるゲーム』『NATO Division Commanderは最悪なゲームだったが、これは2番目に最悪だ』『誰もこのゲームをテストしたくなかった』と評している。

また本作をプレイした感想を見ていく中で『索敵ルールが強すぎて、目の前にいる敵が見つけられない』『敵が見つからず、いつまで経っても戦闘が始まらない』という意見も目に入ってきた。まあ、1ターン=20秒という、非常に刹那的な瞬間を扱うゲームなので、とても周囲のすべてには気を配れないだろうし、敵同士が至近距離ですれ違ってもおかしくない、だから索敵を徹底する、という前提でプレイした方が良いのかもしれない。システムを確かめるために、二重人格的なソロプレイでもやってみようかな……