Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

SPI 「MECH WAR 2 」「Red Star/White Star」「Suez to Golan」

f:id:crystal0207:20211113200352j:image

先月、GDWの仮想第三次世界大戦・戦術級シリーズ「現代機甲戦 Assault」を買い直したせいか、今月はSPI「MECH WAR 2」(1979年発売)を買ってしまった。こちらは、SPIが活動末期に出版した戦術級ゲームだが、ヨーロッパでの仮想第三次世界大戦を扱う「Red Star/White Star」と、同システムで現実の中東戦争を模した「Suez to Golan」の2in1になっている。「Red Star/White Star」は「米ソ戦争」という邦題でホビージャパンの日本語訳付で販売されていたため、自分も中学生の頃に購入したが、あいにくその後処分してしまった。そのため本作も、自分の中では買い直しということに。

ちなみに本作のデザイナーは、現在でも「Empire of the Sun」や「Churchill」等、精力的に新作ウォーゲームを発表し続けている、鬼才Mark Herman氏である。

f:id:crystal0207:20211113123321j:image

こちらが「Red Star/White Star」の架空のヨーロッパ地図盤2枚。1ヘクス=200m、1高度段階=20m。見ての通り、非常に美しい風合いの上、上下左右に連結可能という機能面としても素晴らしい。ホビージャパンから出版された「ウォーゲーム・ハンドブック」の表紙になったゲームとしてもお馴染みだが、タクテクス誌で「米ソ戦争」が単独記事として採り上げられたことは無かったねえ。

f:id:crystal0207:20211113123333j:image

こちらはソ連軍ユニット。1ユニットはやはり1個小隊。あいにく1979年出版のため、登場する戦車はT72、T62止まり。それ以外の車両は、BMP、BMD、BRDM-1/2、BTR60等が収録され、航空戦力としてMi24ハインド、Mig23、Su19等も登場する。

戦闘ユニット表面に記されているのは「被目標度・装甲等級・移動力」。被目標度は、車体の大きさや、装甲の滑らかさ等、攻撃の当たりやすさを示している。装甲等級は、重装甲(Hard)、中装甲(Protected)、軽装甲(Light)、チョバム装甲という区別。各ユニットの攻撃能力は、別途、車両データチャートに記されている。戦車の主砲は、大口径・中口径に分かれている程度だが、照準機能(肉眼照準かレーザー照準か等)や、夜戦では赤外線装備かどうかも加味される。GDW「Assault」ほど細かくは無いけれど、当時のSPI戦術級ゲームとしては細かい部類だろうか。

f:id:crystal0207:20211113123347j:image

こちらはNATO軍ユニット。そう、中学生当時、邦題は「米ソ戦争」だったのに、買ってみたらイギリス軍と西ドイツ軍ユニットも入っていて、とても驚いた記憶があるし、妙にお得感もあった。それに比べて「NATO Division Commander」は、タイトルがNATOなのにアメリカ軍しか出てこなくて、子供ながらに『SPIのタイトルっていい加減だなあ』と思った(苦笑)。こちらも1979年モノということで、アメリカ軍戦車はM60A1/A2、イギリス軍戦車はチーフテン、西ドイツ軍戦車はレオパルドI止まり。そしてボックス写真は、まだ試作段階だったXM1戦車なのに、XM1のユニットは入っていないという。ホントにSPIっていい加減な(以下同)

f:id:crystal0207:20211113123403j:image

そしてこちらが、自分としても初見の「Suez to Golan」の中東地図盤2枚。こちらはスエズ運河用、ゴラン高原用に分かれているので接続は不可。

f:id:crystal0207:20211113123415j:image

こちらがイスラエル軍ユニット。センチュリオン戦車が目を引く。

f:id:crystal0207:20211113123425j:image

こちらがエジプト、シリア軍ユニット。同じく一昔前の世代としてT55戦車が登場と。

f:id:crystal0207:20211113123434j:image

ゲームターンは、前ターンに各中隊毎に命令(運動、運動+待機、退却、回復、再編成)を記録しておき、それに則って、先攻の間接射撃、後攻の命令、先攻の移動、射撃、同一ヘクス戦闘と続く。各小隊ユニット毎に弾薬も記録しなければならないし、中隊/大隊の士気も管理する必要があるし、かなり面倒なシステムなのだが、それは後発のGDW「Assault」も同様だし、むしろこの「MECH WAR 2」直系の後継者が「Assault」なのかもしれない。

一応「Red Star/White Star」には、多人数ゲームによる司令部間の連絡ルール(制限された文字数内の文章でやりとりする!)や、11本のシナリオに加えて、トランプを使ったシナリオ改編ルールもあったり、いろいろと遊び心もある。ただ、自分も中学生の頃にちょっとプレイしたものの、結局すぐ「Assault」に乗り換えてしまったような……。まあ「Assault」のご先祖様的なゲームだとは思うので、また手元に置いておきたくなったと。

f:id:crystal0207:20211113171054p:plain

しかし「Red Star/White Star」のVASSALモジュールには、アメリカ軍M1エイブラムズ戦車、M2ブラッドレー歩兵戦闘車、M901自走対戦車ミサイルM109自走砲、AH64アパッチ攻撃ヘリ、UH60ブラックホーク汎用ヘリ、F16戦闘機、ソ連軍T80戦車、Su24、Su25攻撃機ユニットも用意されている。まあ、詳しい車両データは無いようだが、さして細かいゲームではないので、適当に設定すれば遊べるようにも思う。またBGG(Board Game Geek)には、M1戦車、M2歩兵戦闘車、M3騎兵戦闘車、M551シェリダン空挺戦車のデータがアップされているが、これ何かの雑誌に載っていたのだろうか?

f:id:crystal0207:20211113171107p:plain

一方「Suez to Golan」のVASSALモジュールは、なぜか今風のグラフィックに改変されている。これはこれで良いし、今回、カウンター未切離しを買ってしまったので、このまま現物は取って置いて、画面上でプレイする方が良いのかも。「Assault」はダミー・カウンターを使うためソロプレイはしにくいが、まだ「MECH WAR 2」の方が何とかなりそうな気もしている。