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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退したウォーゲーマーの日記

【Next War Series】GMT「Next War:India-Pakistan」

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2015年に発売された、現代仮想戦シリーズ第3弾「Next War:India-Pakistan」を神保町の書泉グランデにて購入。そう、本作はもうすでに品切れなのだが、ぶらっと書泉に行ってみたら、まだ店頭在庫が残っていたのだ。特にプレミア価格でもなかったので、じゃあ、確保しておくかと。

本作は、インド=パキスタン間の係争地である、カシミール地方、パンジャブ地方を巡って両国が武力衝突をしたら?という想定。Next Warシリーズ第1弾の第二次朝鮮戦争、第2弾の中国の台湾侵攻というテーマは、我々日本人にも馴染みがあるが、インド=パキスタン間の戦争となると、ちょっと縁遠いかもしれない。両国の建国のいきさつや、ヒンドゥー教徒イスラム教徒の宗教的対立も複雑だ。

ちょうど本作発売直後に発売された「新しい戦争」では、一章を割いて、このイン・パ戦争の可能性を分析しているが、純軍事的に見ると、たしかに興味深い事例ではある。なにしろ紛争当事国同士が、領土を接しているうえ、核兵器を持っているというのは、穏やかではない。しかも両国のドクトリンから言って、戦術核兵器を使用する敷居が低いのではないかという考え方もある。

そもそも両国は、国力の低いパキスタンが攻撃的であり、国力の高いインドが防御的というスタンスから始まっている。しかし1980年代後半、インド陸軍参謀長の名を冠した「スンダルジー・ドクトリン」が採用され、もしパキスタン軍が攻めてきたら、インド軍としては、歩兵防御部隊で戦線を支えつつ、機甲打撃軍団をパキスタン領内に侵入させて国土を奪うという攻勢主義に変わったと。さらにインド軍は、2004年に「コールド・スタート」という、師団規模の統合戦闘群8個を攻勢の主軸とし、防御軍団も開戦から積極的に攻勢に出る、さらに積極的なドクトリンが噂された(実装はされていない模様)。

これに対してパキスタンも、もしインド軍機甲部隊が領内に侵入してきた場合、使用のハードルが低い戦術核での応戦をちらつかせていると。たしかに戦略核なら、国際世論も厳しくなるし、インド軍も報復のハードルが下がるが、果たして戦術核を使用された場合に、インド軍は報復として戦術核を使用するのか?という疑問もある。本作も、そういった核戦争に至る緊張を検証できる作品だと思う。 

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地図盤は、南北に長い地域で、北はカシミール地方の山々、南はパンジャブ地方の河岸平原になっている。北部は、パキスタン側が支配するアザド・カシミールと、インド側が支配するラダック連邦直轄領、ジャンムー・カシミール連邦直轄領が接している。さらにその北の地図盤外には、中国の新疆ウイグル族自治区があり、この国もまた、インドとパキスタンの紛争に関与する可能性があるとされている。 

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こちら茶色がインド軍ユニット。やはりコールド・スタート的な編成はされておらず、8個の統合戦闘群ユニットも無い。以前からの、防御的な歩兵師団と、攻勢的な戦車師団に分かれている。空軍的には、ロシアから買い付けたSu-30(空戦力5★)が目を引くが、その国力や人口ほど、部隊が多いわけでもない。

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こちら緑色がパキスタン軍ユニット。インドよりも国力・人口ともに小さいせいか、個々の陸上ユニットも、やや戦力が低い。しかし航空ユニットを見ると、アメリカ製のF16、フランス製のミラージュ、中国製のJ-10と、あちこちからかき集められた感がある。両国の空軍とも、どこか「エリア88」的だなあ……

本作には、カシミール地方シナリオ、パンジャブ地方シナリオ、その統合シナリオがあるうえ、政治的にパキスタンが分裂・崩壊し、その国内に中国が進出し、パキスタン軍が保有していた核弾頭の半数も行方不明となったという恐ろしい想定も。これに対してアメリカ、インド、ロシアが手を組んで、パキスタンの治安維持と、核兵器のコントロールに乗り出すという、軍事スリラー小説的なシナリオもある。

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そのアメリカ、ロシア、中国軍ユニットがこちら。インド、パキスタン両軍の核兵器マーカーもあるのが恐ろしい。とは言え、両軍が核を握りしめたまま、通常戦争のまま押し切るのか、それとも核戦争へエスカレートするのか、という想定は興味深い。イン・パ両軍の戦力も拮抗しているため、通常戦争なら手詰まりになるような気もするし、だったら戦術核で状況を打開しようとしてもおかしくないかも。本作では、先に戦術核を使えるのはパキスタン側と決められているが、戦術核を一発撃って、それで打開できなかったら? インド軍も一発撃ち返して、バランスが振り出しに戻ったら? そこで2発目を撃つのか、3発、4発と有利になるまで撃ち合うのか? 実際に懸念されている核危機だけに、本作の想定が実現しないことを祈る。