Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【1979 China Vietnam War / Company Tactics System】「The Battle of South Caobang 高平南之戦」

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5/14(日)の東京ゲームマーケット2017にて、中国のウォーゲーム・メーカー、Kuro Neko Design Workshopの中越戦争シリーズ「The Battle of South Caobang 高平南之戦」(日本語ルール付属)を購入。 本作は、1979年2月に始まった中越戦争を戦術作戦級スケール(1ヘクス=1.6km、1ユニット=中隊~小隊、1昼間ターン=4時間、1夜間ターン=8時間、5ターン=1日)で再現するシリーズの第一弾である。

スケール的には自分の好みど真ん中だったものの、ゲームシステムが分からず、ゲームマーケット当日に現地で買うかどうか判断しようと思っていたが、実際に現地で日本語ルールを読ませていただいたところ、まるで簡易GOSS(Grand Operational Simulation Series)のような造りだったので、思わず購入してしまった。もう新規シリーズには手をつけないつもりだったのだが……(^_^;)

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地図盤は、フルマップ2枚。A4サイズのミニシナリオマップ(両面)も入っている。舞台は、中越国境の高平市南部だが、さすがにまったく馴染みが無い。ただ、戦術作戦級らしく、詳細な地形が描かれた地図盤は美麗で、雰囲気は素晴らしい。

CTS(Company Tactical System)と銘打たれたシステムは、両軍がお互いにフォーメーション(連隊や大隊)を交互にひとつずつ活性化し、移動・戦闘を行うもの。ただし各ターン開始時に、両軍は各フォーメーションのモード(行軍・機動・突撃・命令無し)を秘密裏に決定する。行軍モードなら徒歩8/機械化18/高速機械化24移動力が使えるが、敵ユニットには隣接できない。機動モードなら4/9/12移動力で敵ユニットに隣接可。突撃モードなら1/2/3移動力しか使えないが、攻撃に有利なコラムシフトが得られる。

モードを選択するには、HQ(司令部)が持つ指揮ポイントを消費する必要がある。昼間ターンなら行軍1/機動2/突撃3、夜間ターンなら行軍2/機動3/突撃4指揮ポイントを消費しなければならない。しかし連隊や大隊司令部は、1~3指揮ポイントしか持っておらず、毎ターン突撃を仕掛けるなら、上級師団司令部や前線司令部から指揮ポイントを借りて支払えばいい。この指揮ポイントは、蓄積することも可能だが、それを表すカウンターやトラックは無い。これは、コンポーネント的にかなり頑張っている本作の中でも、ちょっと残念な部分か。

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こちらが中国軍ユニット。戦闘ユニットのレーティングは、攻撃力・質・防御力。砲兵には射程もあり、フォーメーションの活性化前には事前砲撃も行える。中国軍の場合、実際の中越戦争で76.2mm砲と85mm砲を直接水平射撃で用いたそうで、特別ルールとして、その2種類の砲兵を敵ユニットに隣接した状態で歩兵戦闘に付随させると有利なダイス修正が得られる。また中国軍戦車ユニットは、移動途中に浸透攻撃(オーバーラン)が可能で、1移動力を消費する毎に「遭遇戦」が行える。

戦闘には、遭遇戦と攻堅戦がある。双方1ユニット同士で射撃し合うような遭遇戦は戦力差式CRT(戦闘結果表)を用い、双方全ユニットを用いる攻堅戦は戦闘比式CRTを用いる。遭遇戦は、攻防両者がダイスを振り合って結果を適用し、攻堅戦は、攻撃側だけがダイスを振って結果を適用する。戦闘結果が後退になりがちなのが遭遇戦、ステップロスが多くなりがちなのが攻堅戦だろうか。

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こちらがベトナム軍ユニット。標準的なベトナム軍歩兵中隊は攻撃力6・防御力7、一方の中国軍歩兵中隊ユニットは攻撃力5・防御力6。あまり大差無いようにも見えるが、ベトナム軍歩兵中隊は中国軍歩兵中隊に対し、戦闘比1:1(攻撃力6:防御力6)が立つ。逆に中国軍歩兵中隊は、2個スタックしても攻撃力7.5(先導ユニットだけが攻撃力を100%使用でき、それ以外のユニットは攻撃力50%となる)、3個スタックしても攻撃力10(先導ユニットの攻撃力5+その他の攻撃力2.5+2.5)にしかならず、防御力7のベトナム軍歩兵中隊に対して戦闘比1.5:1に届かず、戦闘比1:1止まりであり、意外と質の差が表現されているようだ。また各フォーメーションは、一定のステップ数まで減少すると崩壊し、機動や突撃モードになりにくくなるが、ベトナム軍の中には、最後の1ステップになっても崩壊しないという頑強な大隊もあり、そのあたりでも質の差が表されている。

民兵ユニットは、5ターンに1度の夜間ターンに現れ、0~3攻撃力を設定し、地図盤上に裏返して(攻撃力を秘匿して)配置する。民兵は移動不可だが、たとえ0戦力でも、それが確認されないうちは中国軍の補給線を遮断できる。警察官や退役軍人で組織されたベトナム公安中隊は、指揮範囲の制限を受けないというボーナス付き。

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中国語版ルールブックには詳細なヒストリカルノートも付いているが、あいにく日本語化はされていない。一応、付録の中越戦争写真集を眺めてみると、この地域の地形の険しさが伝わってくるし、実際ゲーム上でも、機械化ユニットは道路や平地・灌木ヘクスしか通れず、難儀をしそうだ。シナリオは10本収録され、A4ミニマップで収まるシナリオもあるので、まずは小規模シナリオから試してみたい。

⇩Kuro Neko Design Workshop 公式掲示板(メーカーサイトがまだ無い)