Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】ヒュー・アンブローズ「ザ・パシフィック (上下)」

ザ・パシフィック 上

ザ・パシフィック 上

 
ザ・パシフィック 下

ザ・パシフィック 下

 

先月、ふと古書店で見かけて、そういやまだ読んでいなかったなと思い出し「ザ・パシフィック(上下)」を購入。2010年にアメリカで、同年に日本でも放送されたテレビシリーズの原作本。著者は、アメリカ第101空挺師団第506連隊E中隊の戦闘を描いた「バンド・オブ・ブラザーズ」の著者スティーヴン・アンブローズのご子息、ヒュー・アンブローズ。テレビシリーズでは、アメリカ第1海兵師団の戦いを描き、ガダルカナル島ペリリュー島、沖縄などの戦闘が扱われていた。

しかしこの原作本をあらためて読むと、さらにメイン登場人物として、空母エンタープライズの急降下爆撃機乗りや、フィリピンで捕虜となった海兵隊員など、ドラマでは描かれなかった人々が登場し、太平洋戦線をより包括的に描く作品となっている。その分、海戦の話になったり、空戦の話になったり、上陸戦の話になったりで、個人的には読みにくかった。複数のキャラクターを散りばめて、それぞれの物語を追うというのは、一般的なアメリカのテレビシリーズでは良くある群像劇パターンなんだけどね。むしろ本書の元ネタの一冊でもある「ペリリュー・沖縄戦記」を読んだ方が、ずっとシンプルに物語を追えたし、そちらの方が好み。

一応、自分も2010年の放送時に「ザ・パシフィック」はひととおり観たけれど、結局その一回限りで、また観直すことはなく、この原作本も今まで買わなかった。同じ制作陣による「バンド・オブ・ブラザーズ」は何度も観返すほど気に入ったのに、「ザ・パシフィック」はそうではなかったのは何が理由なのだろう。西部戦線の方が、ヨーロッパ十字軍的な物語性があり、それを成し遂げたカタルシスもあったからだろうか。あるいは「ザ・パシフィック」では、アメリカ兵が感じていた『どうして俺たちはこんな島で死ななきゃいかんのだ』という、厭戦気分や徒労感が強調され過ぎていたのかもしれない。もちろんその厭戦感は、日本軍兵士としても同じだったのだろうが、観ている方としても疲れてしまうシリーズ演出だったので、これから先も観直す機会は無さそうだ……