Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Company Scale System】「Saipan:The Bloody Rock」

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前々から気になっていたWWII作戦戦術級CSS(Company Scale System)第一弾「Saipan:The Bloody Rock」を入手した。以前にもこのBlogで書いたが、このCSSは、MMP社のGTS(Grand Tactical Series)から派生した兄弟シリーズであり、ゲームスケールはGTSとまったく同じで、大枠でのシステムもほぼ同じである。GTS大好きマンの自分としては、発売と同時に手を着けても良さそうなものだったが、あいにくその余裕が無く、まあ2018年になったら着手するか……と思っていたら、自分の予想より早く入手することになってしまった。CSSに関しては、少々遅刻した感もあったが、その間にゲームより早く翻訳ルールを頂いてもいたので、ある意味、準備万端で入手できたとも言える。

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さて本作のお題は、1944年6月15日~7月9日にかけて行われたサイパン島での戦闘である。1ヘクス=500mのCSS/GTSスケールで、ちょうどマップ2枚に全島が収まっている。 太平洋戦役での島嶼戦というと、なんとなくアメリカ軍の物量に日本軍がすり潰される一方的な展開を想像してしまうが、作戦戦術級スケールで見た場合のサイパン戦の注目点のひとつは『まだ日本軍の対上陸方針が水際撃滅だった』点かと思う。実際、サイパン上陸作戦時、日本軍の海岸陣地の健闘や、上陸からわずか5時間後に第40歩兵連隊が戦車を伴って上陸海岸を攻撃しているため、アメリカ軍が上陸初日にして死傷者2000名以上という損害を被ってもいる。これが後のグアム戦、沖縄戦と進むにつれ、両軍とも慎重になり、アメリカ軍は事前の砲爆撃を入念に行い、日本軍は水際撃滅を諦めて内陸誘引になるのだが、このサイパン戦ではまだそういった形になっていないあたりが注目点かなと。

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こちらが師団ディスプレイシート。GTSでは、師団毎に1枚ずつシートが用意されていたが、CSSでは基本的に2個師団でシート1枚になっている。まあ、ディスプレイシートも並べるとスペースを食うので、これはこれでOK。ちなみにアメリカ軍は、第2海兵師団、第4海兵師団、第27歩兵師団が登場。このサイパン戦で第27歩兵師団は、師団長が二度変わる(スミス少将⇨ジャーマン少将⇨グライナー少将)という珍事、いわゆる「スミス対スミス事件(上陸軍指揮官のスミス中将が、稚拙な指揮を執ったスミス師団長を更迭)」が起きているが、それを反映して師団の能力値も、師団長によって変わっている。

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カウンターシートは6枚。カウンター総数1056個。こちらがアメリカ軍ユニット。GTSより数値も少なくシンプルだ。またユニット表面を戦闘隊形、裏面を移動隊形としたのもGTSとは違う(GTSでは、裏面がステップロスか車輌移動隊形。移動隊形はマーカーで表す)。自分はもうGTSに慣れてしまったから良いが、多分CSSの方が分かりやすいと思う。

また以前のBlog記事で『戦車が支援火器扱いなのは寂しい』と書いたが、よく考えれば、CSSでは戦車を単独の中隊としても表現しているし、歩兵支援火器としても表現しているので、表現の幅が広がっていることになる。本作には入っていないが、たとえばアメリカ軍のM10駆逐戦車など、中隊ユニットとしてより、支援火器として表現した方が妥当だと思うので、そのあたりは自分の第一印象をあらためた。

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日本軍は、第43師団、独立混成第47旅団、海軍の諸部隊が登場。またこのサイパン戦の注目点のひとつとして『日本軍による、太平洋戦役最大の戦車攻撃とバンザイ突撃(ボックス裏の説明より)』が行われた点だろうか。日本軍には、第9戦車連隊(写真の4個中隊ユニット)があり、これが実際、歩兵と連携して攻撃を行っている。ただ連隊長自身は、もっと早期に、戦車連隊単独での攻撃を主張しており、そのあたりがどう表現されているかも確かめたい。夜間のバンザイ突撃もまた然り。ちなみに映画「太平洋の奇跡」で有名になった大場栄大尉(第43師団第18連隊の衛生隊長。終戦後もサイパン島タッポーチョ山でゲリラ戦を展開)のカウンターは無し。まあ……ね……

太平洋の奇跡 ?フォックスと呼ばれた男?Blu-ray

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マーカー類は、GTSを踏襲して、両軍専用のマーカーとして用意されている。

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シナリオブックを開くと、使用ユニットが図示されている。これは便利。収録シナリオは6本。2本のキャンペーンシナリオ(史実配置と自由配置)に加えて、上陸当日シナリオ、上陸からの一週間シナリオがあり、さらにミニシナリオ2本という構成。とりあえず(ミニ)シナリオ1「Shattered Jewels」から始めるつもりだが、いきなり夜間のバンザイ突撃戦闘を扱うもので、いつものAdam Starkweatherだなと思った(Adam作のGTSも、だいたいシナリオ1からしてヒドい状況なのが常)

ということで、ようやくCSSにも着手できるわけだが、カウンター切りはお正月に、実際のプレイはお正月明けでいいかなと思っている。また年明け早々に、CSS第二弾「Guam:Return to Glory」も入手するかもしれない。とりあえず2018年は、CSSでスタートということで。