Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Grand Tactical Series】「The Devil's Cauldron」

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この数年、待ちに待っていたゲームが到着。 MMP社のGTS(Grand Tactical Series)第一弾「The Devil's Cauldron」である。テーマは、WWIIマーケット・ガーデン作戦アルンヘム&ナイメーヘン戦を扱う。1ユニット=中隊、1ヘクス=500メートル、1ターン=2時間の戦術作戦級。 地図盤は、23.5x35.5サイズの大型マップ4枚+拡張ミニマップ3枚。大型マップ3枚は両面印刷で、それぞれシナリオ専用マップにもなっている。地図は、うっとりするほど美しいが、ヘクスラインが市街地にしか描かれておらず、もしかしたら遊びづらいかもしれない。

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カウンターは、5/8サイズが1800個以上。 各ユニットには射撃力、射程、強襲力、防御修整、移動力、部隊練度が記載。連合軍はNATO式、ドイツ軍はドイツ式兵科記号になっている。指揮官ユニットは肖像画入りで、車両ユニットもフルカラーイラスト。こちらも眺めてるだけで楽しくなってくる。どうしても真紅のイギリス第1空挺師団Red Devilsユニットや、第506重戦車大隊のティーガーII型ユニットに目を奪われがちだが、ここは「ラスト・オブ・カンプフグルッペ」に記された老将フォン・テッタウ師団に注目。なにせ装備戦車はシャールB2だわ、迫撃砲中隊を運ぶのは消防車だわ、軍楽隊ユニットはいるわで、いかにも寄せ集め部隊と云う感じである。

ユニット毎に練度にも微妙な差があり、イギリス第1空挺旅団第2大隊(フロスト中佐)や、アメリカ第504空挺連隊第3大隊(クック少佐)は、強めに設定されているのが嬉しい。この辺りは、ヒストリカル・ブックレットにも記述されている。またマーカー類は、ユニットのどの能力値に影響を及ぼすかが一目瞭然。

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GTSの基本ルールはVG社「Panzer Command」に基づいている。チット引き+指揮ポイントによる活性化システムで、3-5ヘクスの射程で行われる戦車戦から、歩兵の近接突撃まで再現する。指揮官の概念は、本作から採用されている。

ターン・シークエンスは、天候判定、空軍力決定、天候変化、フォーメーションチット投入、増援配置、航空支援、チット投入、チットを引いて活性化、弾幕マー カー除去、と云う順番。天候判定と空軍力決定は、その日最初の日中ターンのみ行い、天候変化も特別ルールで言及された場合のみ行う。つまりターンの大半は「チット投入」「チットを引いて活性化」である。

チットは「師団チット」「フォーメーション・チット」「直接指揮チット」の3種類がある。「師団チット」は、各師団に1枚。 「フォーメーション・チット」は、師団麾下の旅団・連隊・戦闘団などに各1枚。 「直接命令チット」は、両軍各1枚。このうち「師団チット」「直接命令チット」は、常にカップに投入されるが、 「フォーメーション・チット」はチット投入時にコストを払ってカップに入れなければならない。

そのコストとは、各師団が持つ派遣ポイント(Dispatch Point)である。2派遣ポイントを払えばそのターンに、1派遣ポイントだけなら次ターンにチットを投入する。

コストを払って入れるだけあって、一番頼もしいのは「フォーメーション・チット」である。 各「フォーメーション・チット」の所属ユニットは、まず第1アクションが行える。アクションとは、移動、射撃、強襲、回復、そして工兵活動。移動は、塹壕への出入り、縦隊・輸送モード転換を、 工兵活動は、陣地・塹壕・道路障害の設置、後衛部隊の捻出を含む。

さらに指揮下ユニット(指揮官の指揮範囲内にある)は、 師団が持つ1指揮ポイント(Command Point)を払えば、追加第2アクションも行える。 ただし第1アクションと異なる事、工兵アクションは不可、が条件。 移動、射撃、近接戦闘、回復なら自由に組み合わせられるワケだ。

これに対して「師団チット」は、射撃、強襲、(敵射程内への)移動が不可。やはり1指揮ポイントを払えば、追加第2アクションも採れ、 第2アクションであれば射撃や強襲も行える。このチットは、戦略移動、撤退と回復など師団全体の調整がメインである。また「師団チット」が引かれた時に、指揮・派遣ポイントの増減チェックを行う。指揮ポイントは、各師団に設定された指揮値+d10の半分(端数切り捨て)増加する。派遣ポイントは、d10を振って9なら1減少、0なら1増加、師団の派遣値以下なら1増加、師団の現有派遣ポイント未満なら1増加する。

最後の「直接命令チット」だが、これはどの指揮下ユニットでも1指揮ポイントを払う事でアクションが行える。ただし第2アクションはなし。工兵アクションも不可。 言うなれば、緊急行動用チットだ。

とまあ「3種のチット」「指揮・派遣ポイント」「アクション」の関係さえ分かれば、GTSの基本は、把握できるはず。意外にシンプルで、遊びやすいシステムだと思う。

また「The Devil's Cauldron」固有ルールとして、橋と渡河、降下、ランダムイベントルール等がある。シナリオは導入2本、中間2本、上級4本、キャンペーン4本。 個人的には2008年最大の注目作であり、以後のラインナップにも興味津々だ。マーケット・ガーデン作戦南部を扱う続編 「Where Eagles Dare」もそろそろプレオーダーに出るはず。