Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【全域戦場 Joint All Domain Operation】「東南2X-乙」台湾本島上陸演習 Assault Landing Exercise Solo-Play AAR

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今回は「全域戦場 01-B(台湾編・陸戦)」から、中国軍による台湾本島上陸作戦、コードネーム「東南2X」のうち、台中方面だけを切り取った「東南2X-乙」シナリオをソロプレイしてみた。陸戦用の地図盤は、海空戦用の地図盤とリンクさせるために、ネストヘクスと呼ばれる複数ヘクスの集合体的な地域に分割されている(上写真で言うと、黄色いヘクス境界線で示されている)。「東南2X-乙」シナリオでは、ネストヘクスTC-1、TC-2地域だけを使用し、台湾軍は第4戦区部隊(部隊番号4)、第4苗栗戦区(部隊番号4-ML)がこれを守備し、中国軍は第72集団軍(部隊番号72GA)が上陸する。

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こちらが、陸戦用の地図盤端に描かれている、台湾本島のネストヘクス分割図。海空戦と連結した場合は、たとえば、海空戦の地図盤上で台湾本島のTC-1ヘクスに地上支援の航空機を送り込んだ場合、この陸戦用の地図盤上のネストヘクス図に移行される。上写真のように、すでにネストヘクスTC-1には、中国軍のJ-15戦闘爆撃機と、BZK-005無人偵察機1が配置されている(いずれも中国本土から飛来)。J-15戦闘爆撃機は、ネストヘクスTC-1内での地上戦闘を1回支援したら、中国本土の基地へ帰還する。BZK-005無人偵察機は、バッテリーが続き、そのヘクス内に存在している限り、そのヘクスでのすべての地上戦闘(攻撃、反撃、準備砲撃、特殊攻撃)に有利なダイス+1修正を与え、またネストヘクス内の全ヘクスに位置特定が行える。

上陸する中国第72集団軍は、合成旅団6個から編成されている。そのうち上陸第一波は、中型自動車化合成旅団(M-CCG)2個と、軽型合成旅団(L-CCG)1個である。この3個旅団は、軽装ユニット(移動力の数値が中抜き)である。各上陸海岸は、敵ユニットがいなければ2兵力値(ステップ)まで上陸でき、敵ユニットが存在すれば1兵力値までしか上陸できない。しかし重装ユニット(移動力の数値が実数字)の、中型機械化合成旅団(M-CCG)は重装備を抱えているため上陸時に1兵力値を2倍にし、まったく敵のいないヘクスにしか上陸できない。さらに重型機甲合成旅団(H-CCG)は1兵力値を3倍に換算するので、荷卸能力の高い港湾ヘクスにしか陸揚げできない。

となると、まず第一波として軽装ユニットを上陸させ、安全に重装ユニットを上陸させられる海岸や港湾ヘクスを確保する必要がある。上陸する軽装ユニットにしても、旅団全体としては4ステップもあるため、1ステップに分割した小型ユニットとして上陸し、後に再集結すると。

また中国本土の航空基地には、ヘリコプター部隊も待機し、特殊作戦群ユニットが搭乗している。すでに台湾本島内にも潜伏中の特戦群マーカーがあり、呼応して台湾軍の防衛を阻害する予定である。

さて第1ターン。中国第72集団軍の第一波は、台中市の南部6ヘクスに上陸。今回は特別ルール2.14のソロプレイ・ルールを採用し、中国軍が上陸したヘクス毎に10面体ダイスを1個振り、5以下が出たら海岸堡マーカーが出現することにした。結果、3ヘクスに海岸堡が現れ、2ヘクスは無血上陸。そしてすでに海岸ヘクスで待ち構えていた台湾軍機甲歩兵大隊ユニットに対しては、唯一の航空支援としてJ-15戦闘爆撃機を投入し、これを制圧(火力半減、移動を阻害)。さらに上陸部隊による準備攻撃(火力1.5倍)によって、台湾軍ユニットを除去した。また中国軍は、1海岸堡も除去し、残る2つにも1ステップロスを与えている。

対する台湾軍も、上陸部隊の両翼に準備攻撃を仕掛け、中国側の中型合成ユニット1ずつを除去。しかし攻撃/反撃を行ったユニットは消耗状態(移動戦闘不可)となり、回復までに最短でも2ターンかかるため、果たしてここで攻撃するのが良いことなのかマズいことなのか。

第2ターン。中国軍は第二波として、補給大隊1(第一波ユニットの回復用)、特戦群3ユニットを上陸。残った海岸堡を攻撃した。特戦群はわずか火力2だが、情報化値(このゲームで超大事な数値)が8と非常に高く、それに対して海岸堡のような施設マーカーは情報化値0と見なすため、その差分+8を戦闘ダイスに加えられる。これによって残る2カ所の海岸堡も除去。しかし、そうか、こんなに簡単に上陸できるなら第一波を特戦群にして海岸堡を掃討してもらい、その後で主力の合成大隊を送り込めば良かったなあ。いやでも、非力な特戦群だけでは、台湾軍が攻め込んできた場合、上陸海岸が維持しにくい。あるいはもっと広範囲に上陸して、一気にユニットという名の手数を増やすべきだったか……

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第3ターン。中国軍は、占領した麦寮港(港湾規模値4)に、第三波として中型機械化合成旅団(重装ユニット)を1兵力値だけ上陸させた。この港湾ヘクスか隣接ヘクスに、中国軍の指揮センターユニットがあれば、規模値と等しい兵力値(この場合は4)を荷卸できるが、まだ指揮センターは到着していないので、現時点ではその半分の2兵力値しか下ろせない。そして重装機械化ユニットは、荷卸の場合2倍として計算するので、さらに半分の1兵力値しか下ろせないと。

しかしこれでは上陸部隊の蛇口が細すぎる。やはりこれは台中港(規模値6)を占領して、重装ユニットを続々と送り込むべきか。もちろん台湾軍も、このような大型港湾を重点的に守った方が良いのだろう。あと、上陸部隊の消耗・回復ローテーションも考えないと……

……というあたりが見えてきたところで、今回の練習ソロプレイはおしまい。まあ、いろいろなメカニズムが絡み合っているので、少しずつ理解していこう。

 

【全域戦場 Joint All Domain Operation】空母戦闘群・接近阻止/領域拒否(A2/AD)対抗演習 Carrier Battle Group A2/AD Exercise Solo-Play

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久しぶりに「全域戦場 01-A (台湾編・海空戦)」をソロプレイ。今回は想定シナリオ4「空母戦」に挑戦。攻撃側アメリカ軍の空母戦闘群(CBG)が、台湾本島に艦載機の攻撃フォーメーションを送り込めれば勝利。防御側中国海軍がそれを阻止できれば勝利という、いわゆる接近阻止/領域拒否(A2/AD)的なシナリオになっている。シナリオ開始時点では、アメリカ海軍は、中国軍の超水平線レーダーの範囲外にあり、中国海軍はすでに台湾本島を越えて外洋に進出している。まあ、完全規模のシナリオなら、海上自衛隊まで出撃してきそうな位置だが、あくまで空母部隊の運用を学ぶための練習シナリオなので。

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攻撃側アメリカ海軍は、空母ロナルド・レーガン(CVN70)を中心として、タイコンデロガ級巡洋艦(CG71)、アーレイ・バーク駆逐艦(DDG76、DDG77、DDG78)が随伴している。空母レーガンには、FA-18EFスーパー・ホーネット戦闘攻撃機4ユニット、EA-18Gグラウラー電子戦機3ユニット、E-2Dアドバンスド・ホークアイ早期警戒機2ユニット、MH-60Rシーホーク・ヘリコプター4ユニットが搭載。各巡洋艦駆逐艦にもシーホークが搭載されている。またロサンゼルス級攻撃型原潜(SSN71)も、空母群とは別に活動。また各艦には、アウトレンジ攻撃を想定して、RGM-109Eトマホーク巡航ミサイル(射程22ヘクス)を多めに積載してみた。

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対する中国海軍は、空母遼寧(CV01)を中心として、南昌(055)型大型駆逐艦1、昆明(052D)型駆逐艦2、徐州(054A)型フリゲート2が随伴し、さらに漢(091)型攻撃型原潜1も、やはり別働隊として活動する。空母遼寧には、J-15B(Su-27SK フランカーBの中国バージョン)戦闘機2ユニット、Z-18F対潜ヘリコプター3ユニット、Z-18Y早期警戒ヘリコプター3ユニットを搭載。各駆逐艦フリゲートにも、Z-9C、Z-20対潜ヘリコプターが搭載。こちらは逆に、迎撃戦闘を想定してHHQ-9対空ミサイルを多めに積載。

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まず第1ターン、第1航空作戦フェイズ。先攻アメリカ海軍は、空母レーガンからFA-18EF+E-2D各1ユニットを上空戦闘哨戒(CAP)に高空で配置。さらにもうワンペア、FA-18EF+E2Dのコンビを、レーガン戦闘群から4ヘクス先に先行させた。E2D早期警戒機は、航続距離は17ヘクスだが、大型目標探知距離13ヘクスと同じ分の航続距離を消費すれば、大型哨戒区域を設定できるので、4ヘクス移動して13航続距離を消費したと。E2Dの探知能力は「W(自動的に敵を発見)」なので、これで13ヘクス先の大型目標まで自動探知できる。この高度が中空や低空の場合、探知距離が制限される(高高度ほど遠くまで見れる)。

後手の中国海軍も、J-15B+Z-18Y各1ユニットを上空戦闘哨戒(CAP)に配置。Z-18Y早期警戒ヘリの大型探知距離は6だが、飛行高度は中空域までに制限されている。遼寧戦闘群の中で最も探知距離が長いのは、南昌(055)型大型駆逐艦の小型目標6/大型目標7ヘクスなので、レーガン戦闘群を探知するなら、超水平線レーダーに期待するか、7ヘクス以内に近づくか、J-15B戦闘機(探知距離3/4ヘクス)が1ユニット余っているので、それを接近させて探知させる手もある。しかし当然、E2D早期警戒機に自動探知され、FA-18EFが迎撃してくるので、手が出しにくい。

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続く第1海上作戦フェイズ。先手アメリカ海軍は、レーガン戦闘群を前進させ、中国軍の超水平線レーダーの探知範囲に入ったものの、中国側は探知失敗。逆にレーガン戦闘群に先行するE2Dは、探知範囲に入った遼寧戦闘群の座標位置を特定した。ここでアメリカ海軍の戦闘艦4隻が、それぞれトマホーク巡航ミサイルを2ヒットずつ合計8ヒット発射。これに対して遼寧戦闘群もHHQ-9対空ミサイル10ヒットで迎撃し、全弾撃墜した。

続く第2航空作戦フェイズ。アメリカ海軍は、すでに遼寧戦闘群の位置を特定したものの、彼我の距離は14ヘクス。FA-18EFスーパー・ホーネットの航続距離は11ヘクスなので、まだ攻撃範囲内ではない。一応、航続距離を+50%増加できる「長距離搭載」ルールもあるが、その場合は空戦力、兵装の搭載数が-50%となるため断念した。また攻撃隊にEA18Gグラウラーも随伴させるなら、その航続距離は9ヘクスとさらに短いので、もっと接近する必要がある。

さらに第2海上作戦フェイズでも、レーガン戦闘群は再びトマホーク巡航ミサイル8ヒットを放ったが、これまたHHQ-9H対空ミサイルに全弾撃墜、完封された。

第3海上作戦フェイズ。中国側の超水平線レーダーは、いまだにレーガン戦闘群を捕捉できていない。そのレーガン戦闘群は三度トマホーク巡航ミサイル攻撃を継続。ここで遂に中国側の弾数が減り、かろうじて迎撃をかいくぐった1発が空母遼寧に向かったが、これは電子防御判定で回避され、結局これもまた完封。しかしこれで双方、巡航ミサイルと、区域防空ミサイルをほぼ使い切ったことになる。

第2ターン。すでに両戦闘群の距離は10ヘクス。第1航空作戦フェイズ、先手アメリカ海軍は、まだ攻撃隊を発艦させない。後手の中国海軍は、空母部隊より手前に哨戒区域を設定しようと、J-15Bを出撃させた。当然これはアメリカ側の哨戒範囲に探知され、遊弋していたFA-18E/Fが迎撃に向かい、空戦となった。第1空戦ラウンド、E2Dの探知支援を受けたFA-18E/Fが先手を取ったものの、攻撃はハズレ。後手のJ-15Bは、ヒットを与えたものの、FA-18E/Fに回避されノーダメージ。第2空戦ラウンドも同様にお互いダメージを与えられぬまま、双方とも母艦に帰還。これでお互い1艦載戦闘機ユニットをこのターン中は使えなくなった。

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第1海上作戦フェイズの後、第2航空作戦フェイズ。遂に空母レーガンから攻撃隊が発艦する。まず露払いのFA-18E/Fに対して、空母遼寧上空で哨戒中だったJ-15Bが迎撃にあたり、またもお互いノーダメージのまま、双方とも母艦に帰還。しかしこれで空母遼寧上空には、まったく直掩機がいなくなった。ここで攻撃隊のFA-18E/Fが、LRASM(長距離対艦ミサイル)を4ヒット発射。これに対して遼寧戦闘群は、すでに区域対空ミサイルを使い切っていたため、近接対空ミサイルHHQ-10の12ヒットで迎撃。1ヒットが再び空母遼寧に向かったものの、やはりこれも撃墜された。しかしこれで中国軍は、近接対空ミサイルもほぼ使い切ったことになる。

ここで空母レーガンの哨戒機以外、両軍の艦載機はすべて帰還し、非活性化された。ターン終了時の維持フェイズで再び整備されるが、それまでこのターン中は活動できない。第3ターンになれば、再び両軍とも艦載機を使用できるが、そうなると遼寧戦闘群は再び、空母レーガンの航空戦力に押されて、対空ミサイルがほとんど無い状態でまた対艦攻撃を受けなければならない。それはさすがに分が悪いということで、ここで撤収することに。一応、あと1ヘクス前進すれば、中国側も巡航ミサイルYJ-18(射程8ヘクス)で攻撃できるが、アメリカ側は迎撃ミサイルを残しているので、結局は完封されるだろうと。

まあ、お互い、どのように相手の手数を減らしていくか、封じていくかが問題で、今回の戦闘手順にしても、こういう御作法で良かったのか、もっと良い手があるのか、よくわからない。そして潜水艦も配置してみたけれど、とてもそこまで動かす余裕が無かった。まだまだ練習プレイを続けてみよう……

【参考文献】「後期日中戦争 華北戦線 太平洋戦争下の中国戦線2」

新刊「後期日中戦争 華北戦線 太平洋戦争下の中国戦線2」を購入。2年前に出版された前巻では華中戦線がテーマだったが、今回は華北戦線。引き続き、あまり知られていない日中戦争の軍事的経緯をまとめた一冊になっている。とは言っても、単なる正規部隊の戦闘だけではなく、中国民間人を含めた焦土戦や治安戦、さらに軍閥の調略など、複数次元にまたがって展開されるので、これはなかなか単純化して理解しにくいなと思ったり。

また、中国戦線を扱ったボード・ウォーゲームも、太平洋戦線に比べると圧倒的に少なく、堀場亙氏の「日本の戦歴 太平洋戦争編」を眺めてもそれは明らか。自分も今現在は、中国戦線のウォーゲームをまったく所有していないし、以前にもプレイしたことがない。以前、MMPから「War of the Suns」という日中戦争全般を扱うビッグゲームが出版されたが、それも触れていないしなあ。

いや待て、政戦略レベルの「A World at War」+「Storm over Asia」が手元にあるけど、いまだに翻訳作業が途中だからなあ。そしてこれだと解像度が低すぎる。

いずれTSWWの日中戦争モジュール「The China Incident」が出たら取り組んでみたいが、いつ出るのやら。一応、TSWWの中の人から以前『台湾に駐留していた日本軍の戦闘序列が知りたいけど戦史叢書の文章が読めないから訳してくれ』というリクエストがあったので、作業はしているようなんだけど……

【参考文献】「軍用レーダー」

新刊「軍用レーダー」を購入。自分は完全に文系の人間で、こういった理系の本は苦手なのだが、せめてこういった簡単に解説してある本ぐらい目を通しておこうと。昨年購入した21世紀の戦争を扱った「全域戦場」シリーズでも、軍用レーダーや、探知能力の重要性が強調されていたので、参考になるかなと。

もっと本格的な参考書としては「電子戦の技術」シリーズも出ているけれど、こちらは自分の頭ではついていけなそうなので……

【参考文献】ジョン・キーガン「ノルマンディ戦の六ヶ国軍:Dデイからパリ解放まで」

1982年に原書が出版された、軍事史家ジョン・キーガンの「ノルマンディ戦の六カ国軍」が邦訳されたので早速購入。サブタイトル通り、1944年6月のノルマンディ上陸作戦から、同年8月のパリ解放までの経緯をまとめた一冊……なんて書くと、コーネリアス・ライアンの「史上最大の作戦」や、アントニー・ビーヴァーの「ノルマンディ上陸作戦1944」と同じような内容に思えるが、これはまたちょっと違う。

まず序盤は、WWII当時イギリスの小学生だったキーガン本人の回想……当時の疎開先の心象風景を微に入り細に入り語った後、そこから第二戦線をいつどこで開くかという連合軍の戦略レベルの葛藤を、マーシャル、アイゼンハワー、ブルックといった人物を軸に述べていく。そしていよいよ本編に入ると、ノルマンディ戦に関わった六カ国軍(イギリス、アメリカ、カナダ、自由フランス、ポーランド、ドイツ)の戦闘経緯になるという、なかなかスロースタートな構成になっている。遅ればせながら先月入手した「戦場の素顔」の訳者あとがきでも、キーガン独特の筆致や、その意図……キーガン自身、戦争に参加したことがないのに、王立士官学校で戦史を教える立場にあるため、当時の兵士たちの戦場心理を探求した……について触れていたが、単なる戦記本として読み始めると、ちょっと面食らうかもしれないが、それはそれで面白い視点だと思う。

ウォーゲーマー的には、第二章以降の各国軍の戦闘記録が興味深く、アメリカ第101空挺師団の各大隊の降下戦闘はもちろん、カナダ第3歩兵師団の上陸戦闘についても、まるまる一章を割いているので「GTS:The Greatest Day」の参考文献にぴったり。

またカーン周辺での、エプソム作戦(6月24日~7月1日)、グッドウッド作戦(7月18日~19日)におけるイギリス軍部隊についても、兵士たちの心理という観点から、スコットランド部隊や、ヨーマンリー(19世紀の義勇農民兵)部隊の伝統や気質も詳しく述べられている。さらにファレーズ包囲網を閉じる際の、ポーランド第2機甲師団の戦闘も紹介されていて、ウォーゲーム的に言うと、詳細な作戦級~戦術作戦級レベルの話が載っているし、他の邦訳書ではあまり見かけない部隊の話も多いので、そのあたりにご興味のある方は是非是非。個人的には「GOSS : Atlantic Wall」に再チャレンジしたくなった(^_^)

【The Library of Napoleonic Battles】「Napoleon's Resurgence」The Battle of Bautzen : Approach to Battle Scenario Solo-Play AAR Part.2

さて昨日のTLNBバウツェン会戦の続き。夜間ターン中に敵からの離脱、夜間行軍なども済ませ、明けて1813年5月21日、決戦当日の朝06:00ターン。先手フランス軍は、各軍団とも活性化に成功。全戦線にわたって攻撃を開始し、各所で同盟軍スタックを包囲・除去した。特にここまで渡河攻撃に苦しんできたネイのフランス第3軍団は、ようやく部隊も揃い、一気に同盟軍北翼にプレッシャーをかけた。この攻勢によってロシアのランゲロン将軍が捕縛され、同盟軍右翼はほぼ破られた。

07:00ターン。フランス軍は、正面のマルモン、ベルトランが活性化に失敗したものの、最北部のネイ第3軍団は、完全に同盟軍の側面兵力を一掃した。これを見た同盟軍は、フランス軍正面が止まっている隙にと、ブリッヒャーのプロイセン第1軍団を後退させ、北翼に足止めの騎兵部隊を放った。

08:00ターンも、フランス軍のマルモン第6軍団は活性化せず。最も強力な20戦力スタックが2個もあるのに、なんというていたらく。

そしてこの08:00ターンには、ロシアの2個軍団が増援に現れるのだが、配置表を見ると、盤端からではなく、いきなり盤上に現れるように指定されている。なんだこれ?エラッタか?と思ったが、どうやらそれで合っているらしい。ロシア予備軍団が出現するヘクスは、すでにネイの第3軍団に占められていたため、今回は少し離れた位置に出現させてみた。

そして戦線中央では、マクドナルド麾下のフランス第36師団が着実に前進しつつあり、これをロシア第5軍団の親衛部隊が迎え撃った。結果は、白兵戦(Sk)からの双方1ステップロスという激戦。また、ロシア第2軍団の重騎兵スタックも前線に投入され、ブリュッヒャーの側面を援護している。

09:00ターン。前のターンから始まった、戦線正面での主力部隊同士による殴り合いが激化。このターンのフランス軍は、マルモン第6軍団も活性化し、マクドナルド第9軍団と肩を並べて、正面攻撃にかかったが5スタック中3スタックが撃退された。前線に踏みとどまった2スタックは、逆に同盟軍6スタックから殴り返されたが、こちらも単なる防御側後退で終わり、一進一退の攻防が続いている。

10:00ターン。戦線正面では、またもマルモン第6軍団が活性化に失敗。個別スタックも活性化できず、正面ではマクドナルド第9軍団だけで攻撃する羽目に陥った。これに対してロシア第5軍団は、親衛砲兵旅団(砲撃力8)による防御砲撃で、フランス第36師団をステップロスさせたうえで撃退した。しかし北部では、ネイ第3軍団の圧力が強まり、ブリッヒャーのプロイセン第1軍団も徐々に後退し始めた。

11:00ターン。後退する同盟軍に対して、フランス軍は両翼から包囲を狭めたいが、たしかに史実通り騎兵ユニットが少ないため、敵を追い込めきれていない。同盟軍は、とにかく1戦力の軽騎兵ユニットで主力スタックを遮蔽し、歩兵+砲兵のフランス軍に接敵されたら戦闘前に下がる、また接敵されたら下がる、という遅滞行動で包囲を逃れている。

12:00ターン。フランス軍は、北翼のネイ第3軍団、ローリストン第5軍団が活性化せず、南翼のウディノ第12軍団も、後退にしくじって第29師団スタックが除去され、なかなか包囲網を狭められない。フランス軍は戦線正面でも攻勢に出て、遂に親衛軍団スタックも投入したが、あえなく後退。

12:00ターン後手。同盟軍は南部において、フランス第13師団スタックも除去して、ウディノの第12軍団を士気崩壊に追い込んだ。と同時に、中央で突出したベルトラン直率のフランス第12師団スタックを、ブリッヒャー率いるプロイセン第1軍団4個スタックが包囲してこれも除去。ベルトランは捕縛チェックこそ逃れたものの、一気に20戦力を喪失し、第4軍団も士気崩壊一歩手前まで追い込まれた。

13:00ターンは、天候と回復チェックが入り、除去されたユニットも一部戻ってきたものの、今回のソロプレイは時間的にここまで。大ざっぱに言えば、史実通りフランス軍は両翼包囲が成らず、という形に。フランス軍は51戦力を除去され、同盟軍は48戦力を除去されたので、ほぼほぼ痛み分け。やはりフランス軍は、騎兵も足りなかったし、司令能力(自動的に軍団を活性化できる数値)が低かった。むしろ司令能力としては同盟軍の方が上回っていたので、局地的な反撃でどうにかなったなと。

シナリオとしても、バランスは良い方だと思うので、接敵(Approach to Battle)シナリオは時間的に無理にしても、決戦日(Day of Battle)シナリオなら気軽にプレイできるんじゃないかと。結局ルールとしては、NAWに毛が生えた程度だから(^_^)

【The Library of Napoleonic Battles】「Napoleon's Resurgence」The Battle of Bautzen : Approach to Battle Scenario Solo-Play AAR Part.1

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TLNB(The Library of Napoleonic Battles)シリーズの「Napoleon's Resurgence」から、1813年5月20日~21日にかけて行われたバウツェン会戦をソロプレイしてみた。昨年、これに先立つリュッツェン会戦をプレイしたのでその続き。昨年末にTLNBの最新版シリーズルール7.36も翻訳したので、それも使おうと。今回は5月21日の決戦日(Day of Battle)だけを扱うシナリオではなく、前哨戦となる20日から始められる接敵(Approach to Battle)シナリオを選択してみた。もっと細かい戦術級の会戦ゲームであれば、もう両軍とも布陣が終わった決戦日だけでもいいけれど、TLNBのスケールだと、どこへどれだけ戦力を流し込むか、どう布陣するか、まで選択もできるし、やはりそこまでプレイするゲームシステムなんだと思う。今回はカードプレイ無しで、比較的史実に沿ったプレイを目指してみた(カードプレイも面白いけどね)。

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地図盤はフルマップ1.5枚と広く、その南北幅いっぱいに両軍が布陣している。こちらは西側に陣取るフランス軍、ナポレオン御大から見た景色。焦点となるバウツェンの街にはすでにロシア軍が立て籠もり、それへ向けて正面からマクドナルド麾下の第11軍団が正面攻撃をかける予定。右翼には、ウディノ麾下の第12軍団がスプレー川を渡って攻撃をかける手筈。史実では、両軍団とも渡河攻撃に成功しているが、深追いしすぎて対仏同盟軍から反撃を喰らっている。

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こちらは戦場の北端を移動中の、ネイ率いるフランス第3軍団。こちらもスプレー川を渡って、同盟軍の側面を衝けという命令を受け取っているが、史実ではそれに失敗し、敵を取り逃がしている。そのあたり、騎兵が足りなかったとか、ナポレオン/ベルティエからの命令が曖昧だったとか(移動目標の街を間違えた)、諸説あり。またネイのカウンターには司令官能力1(自力で自動的に1個軍団を活性化できる)が記されているが、このシナリオに限っては単なる軍団長として、ダイスを振って4以下が出なければ第3軍団を活性化できないようになっている。

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一方、対仏同盟軍のプロイセン=ロシア部隊は、スプレー川を第一次防御線として、後方に主力を温存している。また陣地マーカー(歩兵戦力2倍)を5個、スプレー川の橋ヘクスを守る歩兵部隊に配置。このあたり、川や湿地が幾重にも重なっているので、一応は守りやすいかもしれない。

さてソロプレイ開始。最初の2ターン(1813年5月20日12:00、13:00)で、フランス第11軍団(マクドナルド指揮)は、立て籠もっていたロシア第2軍団の兵を押しのけつつ、バウツェン市街に突入した。この南では、フランス第12軍団(ウディノ指揮)も、渡河攻撃に成功し、同盟軍の側面に向かおうとしていた。

戦線中央では、フランス第6軍団(マルモン指揮)の強力スタック2個、第20師団(17戦力)、第21師団(20戦力)によって渡河攻撃に成功。北に位置するフランス第4軍団(ベルトラン指揮)は、まだ戦力が集まっておらず、攻撃が遅れている。さらに最北部のフランス第3軍団は、軍団長ネイ自ら陣頭指揮に立って渡河攻撃を行ったが、あいにくこれは撃退されている。

これに対して同盟軍は、前線のユニットたちを見殺しにしつつ、第2防御線を構築すべく、各部隊を糾合しつつあった。

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第3(14:00)ターン、フランス第11軍団は、立て籠もるロシア第2軍団をバウツェン市街から叩き出し、これを制圧。翌第4(15:00)ターンには、晴れてナポレオン御大もバウツェンに入城。南部のフランス第12軍団も残敵を一掃した。しかし第4ターンには、戦線正面のマルモン、ベルトラン両将が活性化に失敗。最北部のネイは活性化に成功したものの、またも渡河攻撃にしくじって後退した。フランス軍は、各所でEX(相互損失)も被っていたが、第4ターンには天候チェックに伴う回復と再編成手順が入ったため、いったん除去されたユニットをステップロス面で盤上へ復帰させた。

対する同盟軍も、ブリッヒャー率いるプロイセン第1軍団が、スプレー川を渡ってきたフランス第1騎兵軍団を押し返している。

続く第5(16:00)ターン、三度ネイが渡河攻撃をかけたものの、またまた敗退。戦闘比は悪くないのだがダイス目がイマイチ。そしてベルトランも活性化したものの、フランス第4軍団はいまだに渡河攻撃スタックを組めずにいる。

その拙攻を見て、どうせまだ渡って来ないとだろうとばかりに、ブリッヒャーが4個スタックを動員してフランス第1騎兵軍団を包囲し、これを全滅させた。軍団長ラトゥールも捕縛されてしまい、フランス軍としては最初の大打撃となった。

第6(17:00)ターン、ようやくネイが四度目の正直としてスプレー川の渡河攻撃に成功。しかしブリッヒャーの予測通り、ベルトランはまたも活性化できず、なんとか自力活性化に成功したユニットをかき集めて攻撃したものの、あえなく敗退。

第7(18:00)ターン、第8(19:00)、第9(20:00)ターンまで日中ターンが続き、ベルトランの第4軍団がようやくスプレー川の渡河に成功。それを塞ごうとするブリッヒャーのプロイセン第1軍団との間で押し合いへしあいの戦いとなった。最北部のネイも、ようやく順調に南下を開始している。これでフランス軍は、南北両翼から包囲できるような形に持ってきたが、やはり北部のネイ、ベルトランの両将が活性化してくれるのかが問題。第8ターンからは、北部にローリストン率いるフランス第5軍団も到着しているものの、先頭の2個師団はすでにステップロスしているという頼りなさ。ああ、こんな時に別働隊を任せられるキルヒアイスがいてくれたら……じゃねえ、故ランヌダヴーがいてくれたら……

対する同盟軍も、明朝には2個軍団が来援する予定だが、果たしてこの包囲態勢に対処できるのか……というところで、史実と同じく本日は会戦初日まで進めて、ここから先はリアルに明日プレイしてみよう。

※会戦初日の損失:フランス軍19戦力喪失:同盟軍24戦力喪失