Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Operational Combat Series】「Hungarian Rhapsody」

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プレオーダーしていたOCS(Operational Combat Series)第18弾にして、2年ぶりの新作「Hungarian Rhapsody」が到着。本作のお題は、1944年10月から1945年2月までのハンガリー戦である。史実としては、ブダペスト陥落で終わる時期のため、1945年3月から開始されたドイツ軍の「春の目覚め」作戦、それと平行するソ連軍の「ウィーン」攻勢の時期は含まれていない。恐らく「春の目覚め」だけなら、今回の地図盤範囲でも収まるだろうが、ソ連軍の「ウィーン」攻勢まで含めようとすると無理なのだろう。

ちなみにシナリオは、グランドキャンペーン(43ターン)含めて18本。地図盤1枚シナリオが5本、10ターン以下のシナリオも7本と、取っつきやすい構成にはなっている。 

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地図盤は、フルサイズ2枚とブダペスト周辺の拡大地図が1枚。範囲としては、東にルーマニア領、南はユーゴスラビア領、北はドイツとスロバキア領に囲まれた、ハンガリー領土の大半が収められている。中央のハンガリー平野は、機動戦向きに見えて、各所に点在する湿地が邪魔なような気も。 

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ブダペストの市街戦に焦点を当てた作戦級ゲーム「Hungarian Nightmare」は、あいにく手放してしまったが、「ASL:Festung Budapest」は手元にあるので、スケールを変えてプレイできそうだ。

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カウンターシートは全6枚、カウンター総数1680個(うち1/3は、マーカー類)。

こちらはドイツ軍ユニット。中隊ユニットとして分割された第501SS、第503、第509重戦車大隊や、スロヴァキア蜂起に対して臨時編成されたタトラ装甲野戦訓練師団(AR3というドイツ装甲師団とも思えない低練度)、ブダペスト市街戦で全滅したフェルトヘルンハレ(将軍廟)装甲擲弾兵師団など、末期戦らしいユニットであふれている。 

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また、やはりブダペスト市街戦に投入された第8SS騎兵師団フロリアン・ガイアー、第22SS義勇騎兵師団マリア・テレジアも登場。このあたり「カンプフ・オブ・ヴァッフェン」第1巻で読んだ連中である。しかし第3SS装甲師団トーテンコップフ、第5SS装甲師団ヴィーキングの各大隊・連隊ユニットを見ると、一度除去されたら二度と戻ってこれない再建不可マークが付いているので、もう継戦能力がガタ落ちしているのが良く分かる。ちなみに青灰色のハンガリー軍ユニット等もご同様で、いったん崩れたら取り返しがつかないのだろう……

唯一、気を吐いているのがドイツ空軍ユニットで、撃墜王エーリヒ・ハルトマン(空戦力6!)、戦車狩りのハンス・ウルリッヒ・ルーデル(敵の戦闘機が来たら自動的に逃げられるし、敵の対空砲に撃たれても撃墜はされない)が登場。 

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対するソ連軍は、「OCS:Baltic Gap」同様、機甲、対戦車、砲兵ユニットをふんだんに備えたゴージャスな陣容。そもそも補給表を見ても、1944年10月は平均13SP(補給ポイント)が届き、11月は平均13SP(最大19SP)、12月は平均29SP(最大36SP)と、かなり潤沢に戦えそうに見える。しかしソ連軍のルーマニアハンガリーへの進撃は速すぎて、鉄道のゲージ変換作業が追いつかず、ドニエストル河からは、トラックと馬車を使うしかなかったため、その兵站上の制約を表した特別ルールも入っている。

ちなみに枢軸軍の補給量は、10月が平均7SP(最大12SP)、11月~12月が平均8SP(最大13SP)。つまり補給量だけで見ても、ソ連軍は2倍から3倍となっている。 

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しかしNKVDだ、突撃工兵だは良いとして、ソ連軍歩兵師団の練度(アクションレーティング)は総じて低く、頼りになる奴と、頼りにならない奴の高低差が激しすぎる。 

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「Hungarian Rhapsody」自体の特別ルールとしては、ソ連軍の補給制約の他にも、ブダペスト包囲戦を生き抜くための「グヤーシュ(ハンガリー料理)」や、タンクバスター機、スロヴァキアやチェコパルチザン部隊等、小ネタも満載。 

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地形チャートや管理ディスプレイも、今までのOCSに無かった、カラフルで見栄えのするものになっている。本作は、ハンガリー在住のStephane Acquaviva氏の作だが、これが氏の最初のデザイン作品であり、最初のOCS作品でもある。恐らくOCS界隈にも新たな人材が入りつつあり、そういった人たちが、古参者が気にしなかった部分を見直したり、ルールに手を入れたりしているのだろう。ネット上でも、自分でOCS作品をデザインしている人たちが見られるし、また新たなOCS作品が登場するかもしれない。

自分がOCSに触れた20年前は、まだこのシリーズもその真価を正しく評価されておらず、ある意味、不憫なシリーズだった。しかしこの20年、コンスタントにシリーズを継続し、ルールも整備され、真っ当な評価もされ、国内ユーザーも増えてきたようで、良かった良かったと。むしろ自分としては、新たな不憫なシリーズ(TSWWやBCS)に力を入れたいので、OCSも後回しでいいかなと。というわけで、本作に触れるのも先延ばしになるかと思うが、そうこうしているうちに、シリーズの次作「Third Winter」が出てしまいそうなのだが……