Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】マーチン・ファン・クレフェルト「戦争の変遷」

戦争の変遷

戦争の変遷

 

日本でも「補給戦」「戦争文化論」等でお馴染みの、マーティン・ファン・クレフェルトの「戦争の変遷」を購入。初版は1991年。今までの戦争の流れを振り返る部分はもちろん、(1991年から見て)将来、どのように戦争が「変遷(Transformation)」していくのかに重点を置いた一冊。

特に、通常戦争よりも、低強度紛争の方が優勢となり、旧来のクラウゼヴィッツ的通常戦争や戦略が適用しづらくなってくるという分析を、イラク戦争前の1991年に導き出していたあたり、さすがだなと。ウォーゲーマー的にも、現代の低強度紛争の成り立ちを学ぶには良さそうだ。ただ自分の場合、旧来的な通常戦争ウォーゲームに触れるばかりなので、低強度紛争にあまり興味が無いのも事実。 

現代の戦略

現代の戦略

 

しかし本書に対しては、クラウゼヴィッツ学派の戦略家コリン・グレイが「現代の戦略」の中で『クラウゼヴィッツの国民・軍隊・政府という二次的な三位一体にしか注目しておらず、その根底にある感情・偶然性・理性という一次的な三位一体を理解せずに読み違えている』と批判している。またグレイは「戦略の格言」でも、本書を「確かに鋭く刺激的で、深い洞察によって書かれたものであるとは思うが、根本的に間違ったものだと考えている」としている。そして「現代の戦略」の訳者あとがきによれば、その間違いをクレフェルト本人があっさり認めているという事実もあり。

また、このクレフェルトによる非三位一体的な考えが「第四世代戦」という、新しい戦争学派を生んだものの、それは本当に新しい戦争なのか?という批判もある。このあたりは、エリノア・スローンの「現代の軍事戦略入門」でも概説されているので、併せて読むのが望ましいかと。 

現代の軍事戦略入門【増補新版】陸海空からPKO、サイバー、核、宇宙まで

現代の軍事戦略入門【増補新版】陸海空からPKO、サイバー、核、宇宙まで

  • 作者: エリノア・スローン,奥山真司,平山茂敏
  • 出版社/メーカー: 芙蓉書房出版
  • 発売日: 2019/03/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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