Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】マーティン・ファン・クレフェルト「新時代 戦争論」

新時代「戦争論」

新時代「戦争論」

 

日本でも「補給戦」「戦争文化論」「戦争の変遷」等でお馴染みの、マーティン・ファン・クレフェルトの「新時代 戦争論」の訳が出たので購入。『戦争とはなんぞや』というテーマを、孫子クラウゼヴィッツが触れていない領域を指摘しつつ、その穴を埋める形で、現代の戦争を紐解くという内容。先の「戦争の変遷」では、それまでの通常戦争から非正規戦へのシフトを予見し、クラウゼヴィッツ的な通常戦争はもう古いし通用しないと説き、実際それによってアメリカ軍全体も非正規戦仕様に変容してしまった。しかしそれに対してコリン・グレイ等のクラウゼヴィッツ学派から反論も出ていたので、本書にはそれに対する回答という面もあるのかもしれない。

本書では、サイバー戦争、宇宙戦争といった空間的な拡大による戦争の変化にも触れているが、21世紀を扱うウォーゲームでも、こういった要素は次第に取り入れられている。ただ、技術的な革新スピードが早まっているので、今現在を扱うウォーゲームであれば、日々のアップデートも必要なのだろうなとは思った。

たとえば、911以後の対テロ戦争を扱ったGMT「Labyrinth」も、比較的新しいゲームだが、拡張セットを追加することで、より最近の要素も取り入れている。もちろん基本的に抽象的なゲームなので、ゲーム自体が変わるほどの変化ではないかもしれないが(追加セットは、いまだに触れていない)

また仮想・第二次朝鮮戦争を扱う「Next War:Korea」も、旧版の「Crisis:Korea 1995」からアップデートされているが、あくまでも第二次大戦型の戦争として表現されているので、やはり追加サプリメントで、サイバー戦要素が追加されているそうだ。ただ「Next War」シリーズの場合、元々のシステムが詳細かつ重たいので、後からルールを追加すると、どんどんプレイしづらくなるのでは?と感じている。そのあたり、サイバー戦なり宇宙戦なりを、もう少しシンプルに統合した形で、21世紀の戦争を再現するシリーズシステムがあっても良いかもしれない。「レッド・ドラゴンライジング」も、そうではないような気がするしなあ……