Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【The Second World War】「TSWW : Singapore !」

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2015年に発売された、TSWW(The Second World War)シリーズ「Singapore !」を購入。こちらは、1941年~1945年の南アジア戦線を包括したセットである。こちらもLieutenant版(地図とカウンターのみ、ルールと図表はデータ)を購入した。しかしやけに重いと思ったら、ほぼハーフサイズの地図が22枚+追加ミニマップ1枚が入っていて、カウンターシートも10枚(カウンター総数2800個)と、かなりのボリュームになっている。

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とりあえず我が家の六畳間に地図を広げてみたが、フルマップで言えば11枚以上なのだから、全部広げきれるワケもなく。手前のボックスが小さく見えるのは錯覚……

とりあえずメーカー側から、また VASSALモジュールも送っていただいたので、地図の広さについては、VASSAL画面で確認していただきたい。

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……まあ、こういう範囲である。西はインドから、タイ、イギリス領ビルマ(現ミャンマー)、フランス領インドシナ(現ベトナムカンボジア)、オランダ領東インド(現インドネシア)、イギリス領マレー、ボルネオと、いわゆる南方資源地帯が、TSWW(エウロパ)スケール=1ヘクス15マイル(24km)で描かれている。

扱う期間が長いだけに、シナリオも豊富。まず練習シナリオとして「日本軍のラングーン侵攻」「日本軍のカルカッタ空襲」「マレー沖海戦」「仮想・バッカニア作戦」「バリ島上陸戦」があり、本格シナリオとしては「マレー電撃戦」「ティモール侵攻戦」「タイvsヴィシーフランス戦争」「第一次・第二次アキャブ作戦」「ジャワ島侵攻作戦」「ジッパー作戦(マレー奪回戦)」「インド侵攻作戦」「キャピタル作戦(ビルマ奪回戦)」「インパールとコヒマ戦」「トレードウィンド作戦(モロタイ島奪回戦)」「仮想・ティモール奪回戦」「仮想・タイ=インドシナ奪回戦」「コックピット作戦(サバン島攻撃)とトランサム作戦(スラバヤ攻撃)」「オーボエ作戦(オランダ領東インド奪回戦)」がある。

正直、浅学な自分としては『その作戦なに?』『その島どこ?』と言いたくなるシナリオも多々あり、いかに自分が、この南方地域での戦闘に関する知識が薄いか痛感させられた。特に、日本軍が攻め込んだマレー作戦やインパール戦はある程度知っているものの、その奪われた領土を、連合軍が取り返した経緯については、あまり知らないあたり、我ながら知識が偏っているなあと大反省である。

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地図を拡大してみると、こんな感じ。こちらはインパール周辺。TSWWも、OCS(Operational Combat Series)に負けじと、詳細な補給システムを搭載しているので、それを用いてインパール戦がどのように展開されるのかは、是非確かめておきたい。 

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こちらが日本海軍の艦船と航空機カウンター。先に購入した北太平洋戦線を扱う「Day of Infamy(以下DOI)」同様、こちらもかなりの数が揃えられている。後発の「DOI」(2017年発売)と比べてみると、同じ艦船でも数値が異なるモノがあるが、それは「DOI」の評価を優先した方が良いのだろうか。ちなみに大和級戦艦3番艦「信濃」の姿も見える。

航空機に関しては、本作では1945年まで扱うため、1943年までしか扱わない「DOI」には登場しない機種が多々登場する。頼もしく見えるのは、N1K1J Georgeこと局地戦闘機紫電(空戦攻撃力12・空戦防御力8)か。これならP51K(空戦攻撃力10・空戦防御力9)や、P47D25(空戦攻撃力11・空戦防御力10)にも太刀打ちできるが、なにせ数が少ない。そして紫電が登場するであろう1945年ともなれば、日本海軍の戦闘補正(NEM)はマイナス2、アメリカ海軍はプラス3と、大きく練度差が開いているので、もはやどうしようもない気が……

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こちらは、日本陸軍カウンター。師団の多くが山岳部隊アイコンを持っているため、戦闘効率補正はプラスされ、峻険な地形も踏破できることになっている。問題は、それを支える補給面がどのように表現されているかだが、それもやはりインパール戦で試すしか。

陸軍機も、Ki-84-II Frankこと四式戦・疾風(空戦攻撃力11・空戦防御力8)が頼りになりそうだし、陸軍機の戦闘補正(CEV)は、終戦時でもプラス1なので、海軍機よりは粘れるかもしれない。いや……

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こちらは、オランダ海軍。スラバヤ沖海戦だけを扱ったシナリオは無いが、ジャワ島攻略シナリオの中で発生するのだと思う。

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こちらは、イギリス海軍。マレー沖で喪失された戦艦プリンス・オブ・ウェールズ巡洋戦艦レパルスはもちろん、未完成に終わったライオン級戦艦(主砲は40.6cm3連装✕3)が4隻とも収録されている。防御力は大和級と同格(最も堅い)だが、砲撃力では劣るという設定。

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こちらは、イギリス連邦軍の地上部隊。グルカ兵部隊の兵科アイコンに、グルカナイフ(ククリ)が描かれているのが、ご愛敬。イギリス空軍機にも、スピットファイアVIII(空戦攻撃力13・空戦防御力10)などというゴッツ頼もしい機種が登場。

またアメリカ軍には、ビルマ戦線で跳梁跋扈した戦闘工兵隊があり、唯一の指揮官カウンターとして、アメリカ式中国軍を指揮した、ジョゼフ・スティルウェル将軍が登場。戦闘効率補正(CEV)は、プラス0.1しか上昇させないが、作業成功表ではダイス+3というあたり、地味ながらも確実に仕事はこなしてくれそうだ。そしてアメリカ軍には、B29A爆撃機も登場しているが、1ユニット(40機)で戦略爆撃力39は、この時代最強か。空戦防御力も11あるため、これでは紫電が迎撃しても、追い返せないかも……

他にも、インドシナ駐留ヴィシーフランス軍や、タイ軍ユニット等もあるが、毎度毎度言うように、それを見て『おお、日本が建造したタイ海軍の潜水艦ウィルンも入っているぞ!』などと喜べるほど、自分は兵器マニアではない。そもそも南方戦線の全体的な流れすら把握しているか怪しいレベルなので、本作に触れたついでに、この方面の資料も読み込んでいこうかと思う。

とりあえずの第1目標としては、やはりインパール作戦シナリオか。先に購入した「DOI」もまだ練習シナリオの段階だが、TSWWとしてまとめて取り組もうかと。 

太平洋戦争 3―決定版 「南方資源」と蘭印作戦 (歴史群像シリーズ)

太平洋戦争 3―決定版 「南方資源」と蘭印作戦 (歴史群像シリーズ)

 

【The Second World War】「TSWW : Balkan Fury」

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2011年に発売された、TSWW(The Second World War)シリーズ「Balkan Fury」を購入。1940年~1941年の、枢軸軍によるアルバニアギリシャ侵攻を中心としたセットである。本家GDWのエウロパ・シリーズからも、このテーマを扱った「Marita-Merkur」が1979年に出版され、GRDからも「Balkan Front」が1990年に出版されたが、そのTSWW版という形か。今回、すでに箱入り版は売り切れていたので、ジップロックのLieutenant版(地図とカウンターのみ、ルールと図表はデータ)を注文した。内容物は、このシリーズとしては小振りな、ハーフマップ2枚、カウンターシート4枚(1120個)なので、わざわざ箱入りでなく、ジップロックで十分かもしれない。

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2枚のハーフマップには、ユーゴスラビアアルバニアギリシャはもとより、ブルガリア、イタリアとトルコの一部が含まれている。

収録シナリオは「イギリス軍によるタラント港空襲」「マタパン岬沖海戦(イギリス海軍vsイタリア海軍)」「枢軸軍によるアルバニアギリシャ侵攻キャンペーン(1940年10月後半ターン開始)」「マリタ作戦(1941年4月のドイツ軍によるギリシャ侵攻)」「メルクール作戦(1941年5月のドイツ軍によるクレタ侵攻作戦)」等。ちなみに本作とは別に、ドイツ軍のクレタ島侵攻ミニゲームも出ている。

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こちらがイタリア軍ユニット。イタリア陸軍の戦闘効率補正(CEV)は1.0(つまり額面戦力値そのまま)。イタリア空軍も、イタリア海軍も、補正は無し。もしかしてマイナス補正が入るかと思ったが、ごくごく普通のレベルの軍隊として表現されている。そうなると、戦艦ヴィットリオ・ヴェネト、リットリオも頼もしく見えてくる。しかし空軍の主力戦闘機がMC.200(空戦攻撃力5、空戦防御力4)では頼りないか。 

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こちらがギリシャ軍ユニット(紺地に白字)。ギリシャ陸軍の1940年の戦闘効率補正(CEV)は1.4(額面戦闘力✕140%)、1941年は1.3と、なかなか頑強で、しかもギリシャ陸軍ユニットは、戦闘時にすべて山岳部隊扱いとなるし、実際、師団ユニットの大半は、山岳部隊アイコンになっている。つまり戦闘効率が、全地形・全天候で+0.25されるため、1940年なら1.65(額面戦闘力✕165%)、1941年なら1.55ということ。ギリシャ陸軍の師団ユニットは、4戦力前後なので、実質6.6戦力(1940年)、6.2戦力(1941年)になる。イタリア陸軍の歩兵師団ユニットが5~6戦力(補正無し)なので、額面戦力では劣るも、練度や気概で、ほぼ同格になっている。

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こちらは、イギリス海軍。とりあえず「マタパン岬沖海戦」シナリオは試してみたい。イギリスの戦艦ウォースパイト(砲撃力41・38.1cm連装✕4、15.2cm単装✕8)は、砲撃力ではイタリア戦艦ヴィットリオ・ヴェネト(砲撃力47・38.1cm三連装✕3、15.2cm三連装✕4)に劣るも、イギリス海軍には有利な戦闘補正+1が入るので、それがどこまで作用するのか。 

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そしてこちらがドイツ軍。装甲師団が戦力15~14、歩兵師団でも戦力12、しかも1939年~1941年は、戦闘効率補正(CEV)1.5(額面戦力値✕150%)なので、ギリシャ軍なぞは鎧袖一蹴というところか。後に、アルバニア兵で第21SS山岳師団が編成されるが、そのカウンターは無し。恐らく東部戦線後期を扱う「TSWW:Veangeance」あたりに入ってくるのだろう。

他にもユーゴスラビア軍、ブルガリア軍、トルコ軍ユニット等が登場するが、ぱっと見て『おお、あの部隊・艦艇・機種が入っているとは!』などとすぐ分かるほど、自分は戦史マニアではない。それでも『へえー、ギリシャ海軍にも装甲巡洋艦(イェロギオフ・アヴェロフ)があったのか』とか思って、ぐぐってみると、その艦名がギリシャの富豪の名前だとか、第二次大戦ではクレタ島からアレキサンドリアに脱出して自由ギリシャ海軍の旗艦となり、今では記念艦として保存されているという情報を知ったりと、掘れば掘るほど予備知識が増えそうなのが、TSWWシリーズの楽しいところでもある。

まあ、恐らくプレイする優先順位は低くなってしまうが、もし触れるとしたら、イタリア軍ギリシャ侵攻をプレイしてみたい。史実のイタリア軍は、アルバニアこそ1週間で落としたものの、ギリシャ軍には押し返されてしまったので、そのあたり、なんとかマトモに作戦できないものかと。せっかくイタリア軍には、戦闘効率的なマイナス評価は付けられていないので、ドイツ軍の手を借りずに、どこまで独力でやれるか見てみたいなと。実際、小規模の戦役だし、ささっとプレイしてしまうという手はある…… 

Viva! 知られざるイタリア軍

Viva! 知られざるイタリア軍

 

【参考文献】ロバータ・ウォルステッター「パールハーバー 警告と決定」

パールハーバー ――警告と決定 (日経BPクラシックス)

パールハーバー ――警告と決定 (日経BPクラシックス)

 

ランド研究所ロバータ・ウォルステッターによる「パールハーバー 警告と決定」の新訳が出ていたので購入。真珠湾奇襲を許した、アメリカ側の齟齬について詳しく分析している。ちょうど「Day of Infamy」で真珠湾シナリオにも触れたし……とは言っても、ここで言う齟齬は、外交シグナルを間違って受け取ったり、戦略的な見積もりや諜報活動を誤ったり、組織的な情報の流れの阻害、はたまた技術的な未熟さ等々、多岐にわたるが、あまりウォーゲームに直接反映される部分ではないかもしれない。ゲーム上で表現される「索敵判定に失敗」という裏に、どれだけの要素があったかを知るには、良い内容。

【Battalion Combat Series】「Brazen Chariots」Operation Skorpion Solo-Play AAR

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2ヶ月前に購入した「BCS:Brazen Chariots」のカウンターを、ようやく切り離し完了。まあBCSシステムそのものに関しては、もう自分的評価は安定しているし、今さら面白さを確かめる必要もないので、ついつい後回しにしてしまった。とは言え「Brazen  Chariots」に触れていないのもマズイので、まずは入門者向けシナリオ「Operation Skorpion」から味見を。

本シナリオは、1941年5月26日~27日にかけて、ドイツ第15装甲師団が、イギリス第22近衛旅団が籠もるハルファヤ峠の奪取を狙うというもの。ハルファヤ峠近辺には、イギリス軍歩兵大隊2個、マチルダ戦車大隊(ただし1ステップのみ)があり、南からはイギリス第7機甲師団第7機甲旅団(戦車大隊1+歩兵中隊3)が迫っている。また27日には、さらにイギリス軍予備部隊(歩兵中隊3)も来援する。

これに対してドイツ軍は、Wechmar戦闘団(偵察大隊✕2)でスクリーンを展開し、第7機甲旅団を牽制しつつ、Herff戦闘団(III号戦車大隊2、ただし合計3ステップのみ)でマチルダ戦車大隊を抑え、第15装甲師団本隊(歩兵大隊1+オートバイ歩兵大隊1)でハルファヤ峠を攻めることになる。

期間は2ターン(2日)のみ、ハーフマップ、両軍3フォーメーションのみと、規模的にもお手頃だし、歩戦共同による目標地点奪取という基本的な作戦行動をBCSで学ぶにはちょうど良いシナリオだと思う。 

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さて第1(5月26日)ターン。攻めるドイツ軍は活性化ダイスが振るわず、 Herff戦闘団のIII号戦車隊は、英軍マチルダ戦車隊に接近したのみ。第15装甲師団本隊も、ハルファヤ峠に籠もる英軍大隊(6ステップ)を2ステップ削ったのみ。両軍とも、非常におとなしい展開となった。

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続く第2(5月27日)ターンは、打って変わって激しい展開に。まずドイツ軍Herff戦闘団が、III号戦車1ステップを犠牲にして、マチルダ戦車隊を除去。残ったI/8戦車大隊は、第2活性化でイギリス軍後方に向かい、第22近衛旅団本部とその補給段列ヘクスに突入。双方は、別ヘクスに転送されたものの、協調(Coodination)をくらうこととなった。

しかし返す刀で、イギリス第7機甲旅団が、Herff戦闘団司令部ヘクスに突入し、これを後退させ、I/8戦車大隊を指揮範囲外に孤立させた。まあ、孤立による損耗判定は、このシナリオ範囲外の第3ターンになるので、今回は無問題だが、お互いの前線司令部を踏み潰し合うという、いかにも北アフリカな展開に。

そして第15装甲師団本隊は、二度の活性化でハルファヤ峠を攻め、これを奪取。しかしイギリス軍も、増援部隊を送り込み、オートバイ歩兵大隊を後退させ、ハルファヤ峠へ攻撃開始。ところが、ハルファヤ峠にしがみついたドイツ軍歩兵大隊の最終1ステップが削りきれず、シナリオ終了。峠を占拠したドイツ軍の勝利と相成った。

たしかに、入門向けには良いシナリオだと思う。その分、すでにBCSに慣れているプレイヤーには、ちと物足りないボリュームだが、その役目はバトルアクス作戦シナリオなり、クルセイダー作戦シナリオが担ってくれるだろう。個人的には、ようやくプレイ準備も整い、ひと安心と……。

【参考文献】「日本の戦歴 太平洋戦争編」

日本の戦歴 太平洋戦争編

日本の戦歴 太平洋戦争編

  • 作者:堀場亙
  • 発売日: 2019/05/10
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
 

コマンドマガジン86号(2009年)から126号(2016年)に掲載された、堀場亙氏の連載記事「日本の戦歴」が太平洋戦争編としてまとまったので購入。コマンドマガジンも毎号買っていないので、こうして記事だけまとめてもらえるとありがたい。

本書では、太平洋戦争で行われた主な作戦・戦闘が網羅され、それにまつわるウォーゲームが紹介されているので『この戦いのゲームをプレイしてみたい』と思った場合には、とても便利な一冊になっている。もちろん2009年~2016年以降に発売されたゲームは含まれていないが、脚注部分でその後に出版されたゲームにも触れられているので、まだまだ内容は古くならないと思う。そもそも太平洋戦線を扱ったゲーム自体、ヨーロッパ戦線モノほど出版されるわけでもないし。

まあ、本書では詳しく触れられていない、近年の太平洋戦線ゲームをうちのBlogから紹介するなら「CSS:Saipan」「CSS:Guam」「CSS:Tinian」「TSWW:Day of Infamy」「TSWW:Singapore !」かな。

 

【Advanced Squad Leader】「ASL Starter Kit #4」

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ASLの新作「ASL Starter Kit #4」をクロノノーツゲームさんから購入。#1が基本の歩兵戦闘、#2が砲兵器、#3が戦車と来て、この#4は太平洋戦線編。しかし#1~#3までが価格30ドル前後だったのに、突然この#4が65ドルなのは、何故なのか。コンポーネント的には、前作とさほど変わらない量なので、なんとなく値上げ感もある(いやむしろ#1~#3が安すぎたとも言える)。 

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カウンターシートは、2枚。SKシリーズでは初お目見えとなる、アメリ海兵隊と日本軍が登場。もちろん日本軍の分隊カウンター裏は、本家ASL同様、混乱面は無く、ステップロスして戦闘を継続するという、ある意味、規格外の扱いになっている。万歳突撃ルールも入っているので、ASL日本軍の独特さがSKでも味わえそうだ。ちなみに本家ASL太平洋戦線モジュール「Rising Sun」には中国軍も入っていたが、そちらは割愛。

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地図盤は、3枚。第一印象としては、太平洋戦線ではなく、一般的なヨーロッパ戦線の地図盤に見えてしまった。「Rising Sun」に入っている地図盤、特に34、36、39、47あたりは、森と川と高地(場合によっては田んぼ)が入り組んだ地形で、それが太平洋戦線の面倒臭さを再現していたのだが、こちらは、地形的にも、入門者向けにマイルドなものになっている。一応、このSK#4にも太平洋戦線の地形ルールは入っているが、それがASL太平洋戦線のハードルを上げている一因でもあるので、地図盤をシンプルにしたのは、賢明な判断だなと。

収録された8本のシナリオも、いずれも規模が小さく、戦車が出てこず、砲兵器も迫撃砲だけというシナリオが4本ある。ASLの太平洋戦線シナリオも、なかなか小振りなモノが少ないように思うので(などと言うとASLマニアから、あれがある、これがあると言われそうだが)、ちょっと日本軍を試してみたい時には、このSK#4で済ませてしまえるのは、ありがたい。

とは言え、実際このSK#4をやるかと言うと、それよりは死蔵中の、ヒストリカルASLのガダルカナル戦か、グロスター岬戦か、嘉数高地戦に挑戦したいところ。もちろん日常的に遊ぶなら、断然SK#4だが……

【C3 Series】「Less Than 60 Miles」

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イタリアの新興メーカー、Thin Red Line Gamesの新作にして、C3シリーズ第1弾「Less Than 60 Miles」を購入。このThin Red Line Gamesは、昨年2018年に、デビュー作「1985:Under an Iron Sky」を発売したが、それがなんと、かつてSPIから発売されていた1980年代の仮想・第三次世界大戦ゲーム「The Next War」を今風のグラフィックでリメイクした作品だった。

それに続くメーカー2作目となるこの「Less Than 60 Miles」は、やはり同じく1985年想定の第三次世界大戦モノだが、一応オリジナルシステム……しかしルールを読んでみると、どう考えてもSPIの「Central Front」シリーズと「NATO Division Commander」のハイブリッド=魔合体のような作品だったので、ついつい手を出してしまった。このC3シリーズも「Central Front」シリーズ同様、全5作で欧州中央戦線をすべてカバーするらしい。ああ、もう所有ウォーゲームはWWIIモノだけに限定しようと思っていたのに、冷戦真っ只中の1985年当時に青春を送ったウォーゲーマーとしては、こんなモノを出されて買わないワケにはいかなかった…… 

C3シリーズ5作の連結図:https://trlgames.com/wp-content/uploads/2019/01/CFP-v2.jpg

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さてそのC3シリーズ第1弾「Less Than 60 Miles」は、欧州中央戦線のまさにど真ん中、東西国境線の、いわゆるフルダ峡谷から西ドイツの大都市フランクフルトへ向かう戦域を扱っている。まさにSPIがかつて発売していた「Fulda Gap」「Fifth Corps」「NATO Division Commander」が扱っていた地域であり、当時ベストセラーとなったジョン・ハケット著「第三次世界大戦」も、このフルダ峡谷でのアメリカ第11機甲騎兵連隊の戦闘シーンから始まるのは、当時を知る80's現代戦ウォーゲーマーならご存じのはず。 

第三次世界大戦―1985年8月 (サラ・ブックス)

第三次世界大戦―1985年8月 (サラ・ブックス)

 

ヘクススケールは、1ヘクス=5km。マップは1枚のみだが、通常のA1サイズよりやや横に長い。恐らく地図盤西端に、ワルシャワ条約軍の目標であるライン川を収めるためだろう。

ちなみに自分がウォーゲームに入門して2番目に買ったのがSPI「NATO Division Commander」なので、懐かしい地名を見つけて『Flitzlarよ、私は帰ってきた!』と叫びたくなる衝動に駆られた(^_^;) 

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想定としては、例の如く、ソ連を主体とするワルシャワ条約軍が西ドイツに侵攻し、それをNATO軍が迎え撃つもの。攻めるワルシャワ条約軍中央軍集団には、ソ連第1親衛戦車軍、ソ連第8親衛機械化軍、東ドイツ第3軍などが登場。守るNATO軍は、アメリカ第5軍団管轄として、アメリカ第3機甲師団アメリカ第4・第8機械化歩兵師団、アメリカ第11機甲騎兵連隊、西ドイツ第5装甲師団などが登場。

そう言えば中学1年生の時に「NATO Division Commander」を買った際、タイトルに「NATO」と入っているから、きっと西ドイツ軍やイギリス軍も入っているだろうと思ったら、米ソ軍のユニットしか入っておらず、酷くガッカリした思い出がある。ああ、当時の自分が求めていたモノは、まさにこれだよ…… 

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ワルシャワ条約軍ユニットは、主力部隊が連隊、支援部隊が大隊規模。1985年想定ということで、ソ連軍のカテゴリーA戦車師団は、当時新鋭のT80戦車を装備。モーター・ライフル師団はT72かT62戦車、東ドイツ軍はT55戦車という感じ。支援部隊として、スカッドB地対地ミサイル、Mi24ハインド戦闘ヘリコプター部隊もあり。

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NATO軍ユニットは、ほとんどが大隊規模で、戦闘ヘリコプター部隊が中隊規模になっている。こちらも1985年想定なので、当時新鋭のM1エイブラムズ戦車は、アメリカ第11機甲騎兵連隊には配備されているものの、アメリカ第3機甲師団は、まだ換装が済んでおらず、一部の戦車大隊はM60A3装備になっている。AH64アパッチ戦闘ヘリもまだお目見えしていない。また西ドイツ軍装甲師団も、レオパルト2とレオパルト1A3が混在している。

こういった戦闘ユニットは、それぞれ規模に応じた損耗限界(Attrition Limit)=損害や疲労の吸収度があり、連隊なら5、大隊が4、中隊が3、ヘリ部隊は規模に関係無く5となっている。SPIの「Central Front」シリーズは当初、連隊だろうが中隊だろうが損耗度が一律に設定されていて、1個中隊が妙に粘る展開もあったが、後期の作品では規模毎に損耗度が変更されたので、それに倣った形か。

そう、基本的にユニットの動かし方は「Central Front」的であり、各スタック毎に12行動力を持ち(強行軍を行えば+3行動力)、その行動力の範囲で、移動・戦闘を自由に組み合わせるもの。つまり6行動力で移動し、3行動力で攻撃をかけ、また3行動力で移動し、強行軍+3行動力でまた攻撃できるわけだ。もっとも「Central Front」シリーズでは、両軍が1スタックずつ交替しながら動かしていたが、この「C3」システムでは、一方がすべてのユニットを動かし終わったら、相手側に交替する仕組みになっている。

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その一方、「NATO Division Commander」からは、戦闘ユニットの態勢(Posture)システムが導入されている。各戦闘ユニットには「攻撃力-防御力」が記されているが、現状の態勢によってその能力は上下する。たとえば「全力攻撃(FASL)」態勢なら攻撃力+2、防御力+3だが、砲爆撃が+1当たりやすくなる。ちなみに態勢は「路上行軍(ROAD)」「戦術(TAC)」「攻撃(ASL)」「機動攻撃(MASL)」「全力攻撃(FASL)」「防御(DEF)」「定点防御(RDEF)」「積極防御(ADEF)」「警戒(SCR)」「偵察(REC)」「射撃&移動(S&S)」「砲撃(BARR)」「近接支援(CSUP)」「ヘリコプター(FARP)」「司令部展開(DEPL)」「司令部移動(MOV)」「補充(REFT)」の17種類。

この17種類の態勢は、大きく3つの移動モード……「行軍」「戦術」「展開」に分かれており、それぞれ移動や戦闘などの消費コストが異なっている。

また、どの態勢からどの態勢へ移れるのか、移れないのか、態勢を変更する場合、どれだけの時間がかかるのかも定められているあたり、ああ「NATO Division Commander」だなあと。

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また上位組織の命令は、TCS(Tactical Combat Series)を彷彿とさせるものになっている。いやそれとも「NATO Division Commander」も、こんな感じだったっけ?(もう処分したので確認できない)。

両軍とも、司令部の指揮範囲内にある部隊に、移動・攻撃・防御・補充・再編といった命令を出すのだが、それぞれ規模ごとに、必要な指揮ポイントや、それを伝達する時間、展開する時間が異なっている。簡単に言えば、大規模部隊の命令実行には時間がかかり、小規模部隊の命令実行は早く済む。ただし、指揮系統が混乱していたり、前線で部隊が拘束されていると、その命令が遅延する。 

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さらに各ターン毎に引かれるイベントカードもあり。空爆や特殊部隊作戦、暗号解読、司令部の捕獲、作戦地図の入手などなど。 

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ここまで書いただけでも、かなり詳細なゲームシステムだが、戦闘ひとつ解決するにも、かなりの要素を算定しなければならない。戦闘自体は、両軍ユニットの能力値を差し引いて見るが、それに対して砲爆撃とヘリコプターをどれだけ支援させるか、目標をどれだけ探知できているか、対空射撃で航空支援がどれだけ阻害されたか、電子戦の影響はどうかも判定し、場合によっては、化学兵器核兵器も使用される。

ユニットスケールとしては、よくある連隊/大隊級なのだが、1ターン=3時間なので、短時間でどれだけの行動が行えるかにも、こだわったシステムでもある。このあたり、ゲームデザイナーが「OODAループ」(相手より早く意思決定プロセスを回すことで、作戦テンポを高速化し、相手の思考・行動をマヒさせる)の再現を目指しているようだ。つまり、物量に優るワルシャワ軍は、それだけ部隊規模が大きいため、命令変更や実施にも時間がかかるが、NATO軍は、小規模ながらも、より柔軟に戦うことで対抗する、という場面を再現したいのだろう。

たしかに1980's現代戦作戦級ゲームとしては、ワルシャワ軍の梯団攻撃に対して、NATO(アメリカ)軍のエアランドバトル構想、運動戦理論が本当に通用したのか、というあたりまで再現してもらいたい。そういう意味では、かなり明確なテーマを持った作品だが、実際にプレイしてどうなるかは未知数。

シナリオは3本、キャンペーンは2本収録。まずは一番短い「The Eleventh Hour」(開戦当初の11時間を扱う・5ターン)シナリオから触れてみたい。ありがたいことに、すでに日本語訳ルールも入手したので(馬場夫さん、ありがとうございます)、近いうちに是非プレイしたい。

※7/3追記:日本語訳ルール、公開されました。

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