Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Grand Tactical Series】「The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」Day of Days AAR

f:id:crystal0207:20160304131625j:plain

本日はFORGER氏に誘われ、秋葉原イエサブにて「GTS:The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」の「Day of Days」シナリオを初対戦。このシナリオは、6月5日夜間に行われたイギリス第6空挺師団の降下に始まり、翌D-Day日没までを扱うもの。第6空挺師団が、上陸海岸の東側面を守るためペガサス・ブリッジなどの要衝を確保し、海岸からやって来る増援部隊を待つというシチュエーションである。

本作では、「The Devil's Cauldron」「Where Eagles Dare」の降下ルールとは少々異なり、降下結果によって損失を被ったユニットは離散兵(Strugglers)なる迷子ポイントを発生させる。この離散兵ポイントは、各大隊毎に集計され、あらかじめ決められた集結地点(Rally Point)に補充ポイントとして変換され、周囲3ヘクスのユニットを回復させたり、集結地点上にユニットとして登場したりする。この新ルール、離散した部隊を再結集させる、なかなか面白いアイデアだが、今回は最初に降下した6個大隊のうち3個大隊が無傷で降下してしまい、大きな混乱は見られなかった。

f:id:crystal0207:20160304142956j:plain

第6空挺師団は、6月5日夜間ターンを終える頃には、最重要目標ペガサス・ブリッジとホルサ・ブリッジを確保。降下ゾーンN近辺にいたドイツ第21装甲師団の工兵中隊に痛撃を浴びせて後退させ、順調な滑り出しである。

f:id:crystal0207:20160304143009j:plain

海岸に近い降下ゾーンVの第3空挺旅団第1カナダ空挺大隊は、降下した結果、全中隊が後衛(Rearguard)に変換されるという混乱に陥ったものの、同旅団第9空挺大隊は無傷で降下し、重要目標メルヴィル砲台へ接近。夜間のうちに砲台へ強襲をかけ、最初の2個中隊が武勇(Bravery)チェックにしくじったものの、最後の1中隊がなんとかこれを制して事なきを得た。

海岸に布陣するドイツ第716歩兵師団は、上写真ではKrug指揮官が居るものの、実は特別ルールによってランダムに来ては去り、来ては去りをくり返し、なかなか指揮下になれなかった。指揮ポイントも僅かしかなく、ほぼ置物状態に……

f:id:crystal0207:20160304152023j:plain

明けて6月6日0700時ターン。海岸ではいよいよ上陸が始まり、第6空挺師団にも艦砲射撃の恩恵が来た……と思ったら、頼みの巡洋艦2隻が双方砲撃ダイスで9を出し、弾幕マーカーさえ張れぬ失態。それでも中央の降下ゾーンNに降り立った第5空挺旅団は、ドイツ第21装甲師団の部隊にダメージを与えつつ前進を果たしている。

f:id:crystal0207:20160304160236j:plain

こちらは0900ターン終了時。ドイツ軍は、増援の自走迫撃砲部隊を降下ゾーンNに向かわせたが、イギリス空挺歩兵の強襲をくらってあえなく全滅。ペガサス・ブリッジに向かった7.5cmPak装備の装甲車隊も、対戦車砲と艦砲射撃に叩かれ除去。さらに歩兵も失った第21装甲師団のLuck指揮官は、いったんTroarn(ヘクス11.030)方面に退却して部隊を集めることに。

f:id:crystal0207:20160304164918j:plain

こちらは1100ターン終了時。すでに写真左下には、上陸海岸から急行中のコマンド部隊の縦隊列が見える。退却したドイツ軍を追って第5空挺旅団は広く散開。しかしドイツ軍にも増援のStG200(火力は高いが装甲は無い簡易突撃砲)中隊が駆けつけ、ようやくLuck麾下の部隊も戦闘団らしく行動し始めてきた。なにしろ内陸に居る第21装甲師団の歩兵たるや、強襲力が複合火力(最も効果的な射撃種別、恐らくパンツァーファウスト装備)で赤文字(強襲の際は強襲力で2回射撃する)、しかも通常火力より強襲力の方が高いという、殺る気満々の精鋭部隊であり、とても軽装備の空挺歩兵がかなう相手ではない。

そこで第6空挺師団は、このあたりから後衛ユニットを捻出。後衛とは、歩兵ユニットが捻出できる0ステップの小部隊で、GTSver1.1では移動もできず、射程も1しかない、単なる足止め部隊に過ぎなかった。ところが本作の連合軍後衛は、なんと移動が出来るようになり、ルールブックにも「後衛の使い方を習得するのがGTSver2.0をうまくプレイするコツ」と書かれているほどだ(ちなみにドイツ軍には、移動できるうえに複合火力、さらに射程が2以上ある後衛もいる)。

第6空挺は、この後衛ユニットをわらわらと(工兵アクションによって)生産し、後衛ではなく前衛として中隊ユニットの前に展開。なにしろ一応、射撃ゾーンを持つので、ドイツ軍としても師団活性化の第1アクションでは隣接できない。後衛は0ステップ・ユニットなので損耗打撃を一発くらえば死亡だが、わざわざそんな矮小ユニットのために射撃アクションを消費するのも面倒臭い。除去されても、すぐまた再生産されて、前線に出てくるゾンビのような存在になってしまった。また第6空挺師団の場合、後衛カウンターは15個も用意されており、数も脅威になっている(他の連合軍歩兵師団ではせいぜい5個)。

f:id:crystal0207:20160304172530j:plain

そして1300ターン終了時。増援のコマンド部隊は、今やペガサス&ホルサ橋を渡っており、写真では判別できないが、橋の近くには戦車隊(M3スチュアートとシャーマン・ファイアフライ装備)も到着している。第5空挺旅団の一部は、すでにカーン市郊外の要塞ヘクスに進入。ドイツ軍の増援を塞ぐ構えである。

f:id:crystal0207:20160304172541j:plain

降下ゾーンK周辺には第3空挺旅団第8大隊が陣地を築き、これに第21装甲師団の砲兵支援下、StG200突撃砲、IV号戦車中隊、歩兵中隊が襲いかかっている。赤いイギリス軍ユニットも多くいるように思えるが、その実、写真だけでも8個の後衛ユニットが見える。イギリス軍は、ドイツ軍の射程外で後衛を捻出して前線に送り、除去されたらまた別の後衛を送り込むという戦術を用い、なんとか急場をしのいだ。ドイツ軍からは「イギリス空挺部隊はアレクニド@宇宙の戦士か!」という悲鳴が上がったが……

本日は1300ターン終了時にて時間切れ。これにて「The Greatest Day」の空挺シナリオも味見できた。やはりイギリス軍にとって後衛が重要、というか後衛を使わないと勝てないと思う。プレイ後に後衛をマップから取り除いてみると、実際のイギリス軍戦線はスカスカで、この状態ならドイツ軍戦車隊を駆使して海岸まで突破できると思われた。後衛のルール変更はちょっとしたものだが、いやいや、プレイに及ぼす影響は確かに大きいと実感したシナリオだった。

【参考文献】「戦術学入門 戦術を理解するためのメモランダム」

新刊「戦術学入門」を購入。古今東西の戦術研究の歴史を紐解き、戦闘原則を交えつつ、現代の戦場に適合した戦術判断を導き出すには?というあたりが主眼か。

個人的に興味深かったのは、アメリカ陸軍の状況判断プロセスであるMDMP(軍事意思決定プロセス)とTLP(小部隊指揮手順)の紹介。部隊規模で言うと、旅団戦闘チームや大隊以上の判断はMDMP、中隊以下の判断はTLPとなる。このMDMPのために、CRM(危険見積)とIPB(情報見積)があり、7段階のステップを踏んで進めるわけだが、途中の4段階目にウォーゲームの実施が挟まっている。そしてウォーゲームの結果を見た後、指針を修正し、最終判断を下す……という、なかなか面倒なプロセスになっている。ややお役所仕事的にも感じるが、旅団規模ともなると、そこまで入念な準備が必要なのだろう。しかしTLPも、8段階のステップを踏むため、小部隊の判断でも、それだけ念入りにということか。4段階で済むOODAループは、まだ簡単な方なんだなと。

ただ、このMDMP、TLPという判断ステップを、自分もウォーゲームをプレイする際に、自然とやっているかもしれない。つまり、対戦するゲームを決めたら、その情報と危険を見積もり、事前にソロプレイをして、作戦を修正した後、本番で対戦する……みたいな。それをお役所仕事的に書き連ねるとMDMPになるのかもしれない。

【参考文献】ラリー・コリンズ & ドミニク・ラピエール「パリは燃えているか(上下)」

パリは燃えているか」の新装版文庫が出たので購入。実はこの版が出るまで、読んだことがなかったのだ。昔からハヤカワ文庫版で見かけていたのに、スルーし続けて来たのはなぜなのか。もしかしたら昔、映画版の「パリは燃えているか」を観た時に、あまり面白く感じなかったせいかもしれない。その映画も今、観直してみたら、印象も違っているのだろうな。

あいにくパリ解放に焦点を絞ったウォーゲームは手元に無く、その存在も知らない。「Decision in France」でも、連合軍がノルマンディ半島を突破した後は、あれよあれよと一気に後退戦が始まるし、ドイツ軍もわざわざパリに踏みとどまらない場合があるので、あまり戦闘の焦点にならなかったような……うん、そういうことだから、本書のことも、ずっとスルーしてきたのかもなあ。

【参考文献】イアン・トール「太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで(上下)」

太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 上

太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 上

 
太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 下 (文春文庫)

太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 下 (文春文庫)

 

「太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで(上下)」が文庫化されたので購入。一応、全3作(6冊)のうちの最初の1作(2冊)。アメリカ側によって書かれた太平洋戦争の通史と言えば、ジョン・トーランドの「大日本帝国の興亡」があるが、あれもだいぶ古くなっているし、こちらはやや海軍寄りでもあるし、戦闘経緯もより詳細なので、WWII海戦ウォーゲーマーが、太平洋戦争全般を見渡すには良さそうだ。個人的には、日本側が太平洋戦争を書く場合にすっ飛ばしがちなウェーク島攻略戦(最初は日本軍が攻略に失敗)にもかなりのページを割いているのがありがたい。だいたい負けた側は、その戦いのことをあまり詳しく書かないものだから……

【Grand Tactical Series】「The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」Storming Gold Solo-Play AAR Part.2

f:id:crystal0207:20160215153202j:plain

さてゴールド海岸上陸シナリオ「Storming Gold」6月6日0700ターン、最初の海上チットが終わったところから。ドイツ軍は、続く第716歩兵師団チット、直接指揮チットで反撃開始。しかしWn33aが地雷原処理中のイギリス軍工兵を射撃し1ステップロスさせた程度で、さほどのことはなく。

対する連合軍も旅団フォーメーションチットが連続したが、すでに指揮ポイントが尽きており、第2アクションまでやる余裕無し。とりあえず海岸ヘクスでの渋滞を避けるため、前進のみで終わっていく。ようやくイギリス第50歩兵師団チットが来たが、Wn33攻略に呼び寄せた戦闘爆撃機4個は3回外れ、1損耗打撃というていたらく(シナリオ中に使える戦闘爆撃機4個をすべて使い切った)。それでもターンの最後に再び海上チットが引かれ、支援用舟艇の射撃でどうにかWn33を吹き飛ばした。上陸第二波が海岸に着き、第三波が上陸波ボックスに入った時点が上写真。

f:id:crystal0207:20160215160223j:plain

ターン変わって0900。今度はイギリス第50歩兵師団チットから始まり、ケンタウロスMk.IV自走砲中隊の砲撃によりWn33aがあっけなく除去(0ステップユニットなので損耗打撃をくらっただけで死ぬ)。東ヨークシャー大隊もWn34を潰し、一気に開けた東側から、戦車隊が自軍弾幕ヘクスを突っ切ってドイツ軍側面へと躍り出た。

f:id:crystal0207:20160215162222j:plain

一方西側でも、ハンプシャー大隊がWn36へ強襲をかけこれを撃破。こちらの開口部からも戦車隊が飛び出し、強力なシャーマン・ファイアフライ中隊が要衝Le HamelのWn37へ隣接した。このWn37を突破すれば、勝利条件のひとつ、83.007が見えてくる(シナリオ終了時までに83.007から最低4ステップの第47海兵コマンドを突破させる、というのが第二勝利条件)のだが、ドイツ軍もヘクス81.006に集結するLa Hamel攻略スタックめがけて増援の砲兵部隊が砲撃開始。Wn37自体、防御修整-3と本シナリオに登場するWnユニット中で最も固く、連合軍はボトルネックになったヘクス81.006から先へ進めなくなってしまった。

f:id:crystal0207:20160215185111j:plain

1100ターンは、海上チットからスタート。ここでの艦砲射撃により、連合軍の行く手を阻むWn37、Wn38がようやく消し飛んだ。これにより83.007への道筋は空いたものの、その道路上には連合軍自らの重弾幕マーカーが並んでしまい(入退出に部隊練度チェックが必要)、おいそれとは通れない。

さらにドイツ軍は、ボトルネックの81.006に積み上がった連合軍スタックを執拗に撃ちまくり(6ステップ積まれていたため混雑修整+3)、コマンド部隊をひとつ除去して気勢を上げた。

結局、連合軍の第一勝利条件である「1100ターン終了時までに海岸オーバーレイを掃討する=抵抗拠点・海岸障害物・突破口レベルを0にし、増援ヘクスから3ヘクス内にドイツ軍ユニットがおらず、もはや海岸ヘクスに連合軍ユニットがいない状況」が達成できず、ここでソロプレイを終えた。

f:id:crystal0207:20160215201902j:plain

1100ターン終了時の西側。弾幕マーカーが外れると盤端までの道が開けて見えるが、街の中にはまだドイツ軍部隊もおり、そう簡単には抜けそうもない。

f:id:crystal0207:20160215201954j:plain

一方の東側。散々砲撃をくらった2つの海岸砲台は最後まで生き残り、ドイツ第352歩兵師団に属するウクライナ人中隊もステップロスしつつ戦線を支えている。

また連合軍の第三勝利条件は「シナリオ終了時にイギリス第50歩兵師団が指揮ポイントを最低10残していること」だが、これもなかなか厳しそうだ。実際1100ターン終了時には、1ポイント余ったのみである。ただGTSver2.0から新しく導入された軽迫撃砲火力(紫)の歩兵部隊(他では禁じられている師団チットの第1アクションでも射撃可能)は、指揮ポイントを浪費せず攻撃ができる。今回は前線に出すタイミングを間違えたが、紫火力の部隊はどんどん接敵させて、無料の射撃チャンスを増やした方が良い。

一応、上陸自体は軽微な損害で済んだが、これもダイス次第でどうなるやら。DD戦車を撃ってくる海面状況レベルは減らしようがないため(海の荒れようなど人間の力ではどうにもならないのだ)、史実のオマハ海岸のように、DD戦車大隊全滅も十分ありえる設定だ。DD戦車が海岸に着かなければ抵抗拠点レベルも減らせず、続く工兵隊にも損害が出れば海岸障害物の撤去も遅れ、上陸する歩兵部隊の損害も増す、という負のスパイラルが容易に想像できた。

シナリオブックには本シナリオのプレイ時間を「1.5時間」と書いてあるが、最初はそんな時間では終わりそうもない。上陸の手順自体は一度プレイすれば飲み込めるだろうが、判定も多いため、それなりに時間がかかるだろう。

またGTSver2.0から独立部隊ユニットは、活性化した指揮官の指揮範囲にあれば1ターンに何度でも活性化できるというルールに変更された。実際このシナリオでも、イギリス軍側に3人の旅団長がおり、それらが活性化するたびにケンタウロス自走砲迫撃砲中隊が射撃できたのは便利だった。独立ユニットは直接指揮チットでは活性化しないというデメリットもあるが、うまいこと複数の指揮範囲に引っかかるよう配置するのが得策かと。

シナリオ勝利条件は厳しいものの、上陸部分だけでも面白く、いずれジュノー海岸、ソード海岸シナリオもプレイして、それぞれの状況を比較してみたい。

※枢軸軍リサーチャーVincent Lefavraisが「The Greatest Day」制作のため、ドイツ軍戦闘序列の基礎とした書籍がこちら⇩

Normandy 1944: German Military Organization, Combat Power and Organizational Effectiveness

Normandy 1944: German Military Organization, Combat Power and Organizational Effectiveness

 

【Grand Tactical Series】「The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」Storming Gold Solo-Play AAR Part.1

f:id:crystal0207:20160215141830j:plain

いよいよ「GTS:The Greatest Day」の上陸シナリオに挑戦。ルールブックによると、ジュノー海岸はドイツ軍の防備が固く、狭いソード海岸は渋滞地獄だそうで、まずは上陸するのが一番簡単なゴールド海岸シナリオ「Storming Gold」からソロプレイしてみた。

使用するのは、上陸時のみ地図盤にかぶせる海岸オーバーレイと呼ばれるA4サイズのミニマップ。もっともこの他に上陸部隊の管理ディスプレイや、登場するイギリス第50歩兵師団、ドイツ第352・第716歩兵師団ディスプレイも置くため、それなりにスペースは要る。

守るドイツ軍は、Wn(防御陣地)ユニット、海岸砲台(Coastral Battery)ユニットが主体。自由配置できる地雷カウンターはすべて海岸からの突破口(Gap)の出口に配置した。目に見えるユニットの他にも、様々な防御レベルが設定されている。

 ・海岸障害物 Beach Obstacles=レベルに等しい複合火力(白)で上陸用舟艇を攻撃。

 ・抵抗拠点 Resistance Nests=レベルに等しい小火器火力(赤)で上陸部隊を攻撃。

 ・海面状況 Sea State=レベルに等しい対戦車火力(青)でDD戦車を攻撃。

 ・突破口 Gap=このレベルを0に下げないと海岸から出られない。

旧来のゲームであれば、それぞれの影響を判定するチャートを用意するだろうが、そこはGTS。すべての判定を戦闘結果表にやらせるという割り切り方が面白い。「波が対戦車火力7でDD戦車を撃ってくる」などと聞けば、お前はいったい何を言っているのだと思われそうだが、すでに馴染みの戦闘結果表なので、それがいったいどれくらい危険なのか、ぱっと分かるところが良い。

対する連合軍は、その海岸障害物、抵抗拠点レベルを攻撃して減らしつつ、突破口を開いて海岸から出る、というのが第一目標となる。もちろん艦砲射撃あり、航空支援あり。DD戦車はそのまま泳がせるか、上陸用舟艇に積んでいくか、という選択も可能。史実では荒れた海面を危惧して上陸用舟艇で下ろしたそうで、実際このゲームでも上陸用舟艇に積んだ方が安全である。ただしDD戦車状態で海岸に泳ぎ着けば、その後、第2アクションも可能なのが悩ましい(舟艇で行くと第1アクションは消費したものとみなされ、第2アクションは行えない)。

上陸部隊に対するドイツ軍臨機射撃のタイミングも、上陸用舟艇に乗っている時に撃つか(固い装甲目標扱いだが当たれば複数の乗船部隊すべてにダメージが入る)、それとも海岸に下船した瞬間を狙うか(当たりやすい非装甲目標扱い、射撃ゾーン間移動の修整も得られるが、複数ユニットが下船してきても1ユニットしか撃てない)という選択肢もある。

f:id:crystal0207:20160215142536j:plain

そんなゴールド海岸上陸シナリオ、6月6日0700ターン最初にプレイされるのは海上チット(Naval Chit)。まずは連合軍の艦砲射撃から。沖合にいる巡洋艦7、駆逐戦隊3、ロケット舟艇(LCR)2、支援用舟艇(LCS)2が海岸に向けて砲撃をたたき込んだ。 まあほとんどが間接砲撃扱いなので、あまりヒットは得られなかったが、海岸沿いのWnユニット、海岸砲台ユニットにはすべて弾幕マーカーが置かれた。弾幕マーカーが置かれている間は射程が1になるため、上陸したばかりの部隊が狙い撃たれる可能性も減り、これでも十分な効果である。

さて、いよいよ第一波の上陸だが、どのユニットから動かすべきか。

ルールブックではテストプレイヤー2人が口を揃えて「とにかく海岸障害物レベルを3以下にしろ」と言っている。つまり海岸障害物レベル4=複合火力4で上陸用舟艇(装甲目標、防御修整は適用しない)が撃たれると、1ステップロスする可能性があり、元々1ステップしかないコマンド部隊が乗っていた場合、一発で全滅する危険があるのだ。

海岸障害物レベルを減らすには、工兵か工兵戦車(第79機甲師団)を第1アクションで海岸に下ろし、第2アクションで海岸を攻撃させるしかない。しかしいずれも独立部隊扱いであり、第2アクションを行うには指揮官の指揮範囲にいる必要がある。つまり先に誰か指揮官を海岸に行かせるしかないのだ。

しかしいまだ抵抗拠点レベルが高い=高い小火器火力で臨機射撃される状態で、歩兵旅団指揮官を送り込むのは気がひける。というわけで最初の上陸部隊は第50歩兵師団に配属(Attachment)された第8機甲旅団Cracroft旅団長となった。Cracroft旅団長が海岸に到達すれば、半径10ヘクス以内が指揮範囲になるし、6個までの独立ユニットも指揮下における。たとえ一緒に行くDD戦車が波に撃たれて全滅しても指揮官は死なず、また次のDD戦車に乗っていけばいいので、危険だけれどDD状態で海岸へGO!

f:id:crystal0207:20160215143256j:plain

結果、第8機甲旅団のDD戦車4個中隊は、1ステップロス、3損耗打撃(Cohesion Hit)という損害を喰らいつつもCracroft旅団長ともどもゴールド海岸にたどり着いた。それぞれ海面状況レベル8=対戦車火力8で撃たれたため(しかも防御修整は適用されない)、30%で全滅、20%でステップロスする可能性があったので、だいぶ運が良かった。抵抗拠点5レベルにも撃たれたが、そちらはノーダメージ。DD戦車たちは上陸後、いずれも射撃を行い、5レベルあった抵抗拠点を0レベルまで低下させた。これで後から上陸してくる歩兵たちが助かるだろう。

f:id:crystal0207:20160215143806j:plain

次に上陸したのは、第79機甲師団の工兵戦車4個である。こちらは上陸用舟艇に乗り、海岸障害物レベル5=複合火力5で撃たれ、2損耗打撃。抵抗拠点0レベルにも撃たれたが(そう0レベルでも撃てる、当たる)、やはり今回もノーダメージ。[※訂正:撃たれるのは0より大きい場合だった] Cracroft旅団長の指揮下にあるため、上陸後の第2アクションで海岸を攻撃し、海岸障害物レベルを3低下させた。さらにこの後、徒歩の工兵部隊が上陸し(これもCracroft旅団長の指揮下として)やはり第2アクションで海岸障害物レベルを0に下げ、ようやくひと安心。

しかしここでCracroft旅団長の配属値(Attachment Rating)ぎりぎりまで独立ユニットを使い切ったため、第231歩兵旅団のStanier旅団長、第69歩兵旅団のKnox旅団長も海岸に行かせ、あらたな独立ユニット指揮権を確立。続く工兵部隊は、これら歩兵旅団長の指揮下で第2アクションを行い、突破口レベルを下げていった。

f:id:crystal0207:20160215144830j:plain

結果、第一波が上陸を完了した様子がこちら。すでにいくつかの突破口ヘクスには啓開(Open)マーカーが置かれている。先ほどまで第一波がいた上陸波ボックス(Landing Wave)には、すでに第二波が待機。ここまで進めて海上チットは終了だが、本シナリオではもう一度、海上チットをカップに入れ、この0700ターン中にもう一回、これと同じプロセスをやることになっている……という説明までがPart.1。続きはまた明日…… ※デザイナーAdam Starkweatherの推薦図書はこちら⇩

Gold Beach  Jig: Jig Sector and West June 1944 (Battleground Europe. Normandy)

Gold Beach Jig: Jig Sector and West June 1944 (Battleground Europe. Normandy)

 
Normandy: Gold Beach; Inland from King (Battleground Europe)

Normandy: Gold Beach; Inland from King (Battleground Europe)

 

【Grand Tactical Series】「The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」Day of the Tiger AAR

f:id:crystal0207:20160213145627j:plain

入手以来1ヶ月がかりでようやく「The Greatest Day(以下TGD)」のルールを翻訳完了。これにてルール全体が見通せたので、今日はKarter氏をお招きし、おなじみ「Day of the Tiger」シナリオを対戦した。

初戦は初「TGD」のKarter氏がドイツ軍を担当。忽然と現れたティーガー1.5個中隊は、ゲーム終了までにイギリス軍のシャーマン・ファイアフライ3個中隊、M3スチュアート1個中隊、歩兵1個中隊を除去し、213高地を確保した。イギリス軍は高地奪取どころかティーガーIに1ヒットも与えられず敗退……。

Karter氏本人は出目がイマイチと感じていたようだが、いやいや、今までのプレイの中では一番マトモなヴィットマンだった気がする。きれいにイギリス戦車大隊1個全滅させたし。

f:id:crystal0207:20160213174032j:plain

2戦目は陣営を入れ替え、自分がドイツ軍を担当。しかしミハエル・ヴィットマン中尉効果=連続4アクションによる4回射撃が3回外れ、与えたのは1ヒットのみ。逆にイギリス軍は、ティーガーIにこつこつとヒットを与え、第101SS重戦車大隊第2中隊をあと1ヒットくらえば全滅というところまで追い詰めていく。イギリス軍はさらに十字砲火を浴びせたが、第2中隊はなんとか最後の1ヒットを回避し続けた。

そして最終ターン。初手の4連続アクションが外れまくったおかげで、ここまでドイツ軍は勝利条件の213高地に入れてすらいない状況に。しかし満身創痍のティーガー第2中隊は、第1アクションの射撃で213高地に残るクロムウェル戦車を吹き飛ばすと、第2アクションで213高地へ突入。この際、イギリス軍歩兵とシャーマン・ファイアフライ戦車の射撃ゾーン内で縦隊になって臨機射撃をくらい、213高地に入るタイミングでも臨機射撃をくらったが、いずれでもダメージを受けず高地を占領。対するイギリス軍が最後に引いたのは直接指揮チットだが、残る指揮ポイントは1のみ。これを213高地に隣接するファイアフライ戦車に用い、ティーガー第2中隊のいる213高地へ強襲をかけよう……かと思ったようだが、突入成功か否かを決める武勇チェック(Bravery Check)にしくじりジ・エンド。最終局面ぎりぎりでドイツ軍勝利となった。

今回もそれぞれ2時間弱で終わったし、派手な戦車戦でもあるので、GTS入門者には良いシナリオかと。ヴィットマン初手の4連続アクションに成功しても失敗しても、それぞれ楽しめると思う。さて次はいよいよ上陸シナリオだ……

鋼鉄の死神

鋼鉄の死神