Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】マルク・フェロー「戦争を指導した七人の男たち」

戦争を指導した七人の男たち: 並行する歴史

戦争を指導した七人の男たち: 並行する歴史

 

フランスの歴史家マルク・フェローの「戦争を指導した七人の男たち」を購入。第二次世界大戦の主要国元首……ヒトラームッソリーニチャーチルスターリンルーズヴェルト、ドゴール、昭和天皇という七人を軸に、第一次世界大戦終結後の戦間期から、その政治思想や、戦略・外交方針を概説した1冊。良くも悪くも人間味あふれる切り口で、参戦各国の動勢を、指導者個人に擬人化しているようにも読めるが、この側面から第二次大戦を読み解くというのも面白いなと。

政戦略級のウォーゲームになると、各プレイヤーはまさにこの国家元首の立場で戦争指導を行うが、各国元首の意思・意図を知ったうえで、ロールプレイング的に、そのキャラクター像に沿って政戦略を遂行するプレイも面白そうだ。とりあえずGMT「Gathering Storm」の参考書にはもってこい。

【Grand Tactical Series】「The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」(Battle for Normandy vol.1)

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昨年発売されたGTS(Grand Tactical Series)第4作にして、ノルマンディ上陸作戦三部作の第一弾「The Greatest Day:Sword, Juno, and Gold Beaches」を入手した。前々から欲しかったが予算が無かったため、そのうち買えればいいやと思っていたところ、なんと先に購入していたkotatu氏から代金後払いで譲っていただいたのだ。長年ウォーゲームを趣味にする間に、いろいろな方からご厚意を頂戴してきたが、今回も破格の恩恵に甘えてしまった。年末年始に本作をプレイさせていただいた後、現物が手元に来たというのも、ウォーゲームの神様からの「このゲームを翻訳してプレイしなさい」とのご神託かいや違うか。とにもかくにもkotatuさん、どうもありがとうございます。

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さて本作は、WWIIノルマンディ上陸作戦においてイギリス軍が上陸した3海岸、ソード、ジュノー、ゴールド海岸を含む地域を大型マップ4枚+ミニマップ8枚に収めている。キャンペーンゲームの期間は、イギリス第6空挺師団による6月5日の夜間降下に始まり、6月6日D-Dayの上陸から6月13日のヴィレル・ボカージュ戦までを扱っている。ゲームスケールは通常のGTSスケール、1ヘクス=500m、1ユニット=中隊、1ターン=2時間(夜間以外)。

さすがにマップすべてを使ったキャンペーンは敷居が高いが、そこはGTS。本作もマップ1枚以下で遊べるシナリオが多数用意されており、裏面にはシナリオ専用マップも印刷されている。これはGTS第1作「The Devil's Cauldron」と同じ仕様だが、第2作「Where Eagles Dare」で見送られ、GTSファンから「価格は上がってもいいからシナリオ専用マップを付けてくれ!」との要望が叶った形である。

先日プレイしたヴィレル・ボカージュ戦シナリオ「The Black Baron」「Day of the Tiger」も面白かったが、他にもイギリス第6空挺師団の戦闘を切り取った「Saga of the 6th Airborne」、D-Day夕刻のオッペルン・フォン・ブロニコウスキー少佐(指揮官カウンターあり)による第21装甲師団の反撃シナリオ「To the Sea」、「TCS:Canadian Crucible」でも描かれたカナダ第3歩兵師団と第12SS装甲師団の死闘を模した「O Canada」「Nemesis」シナリオ等、興味深い状況設定が詰まっている。

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本作で新たに登場した海軍と上陸ルールは、かなりボリュームがある。なにしろ海軍は戦艦・巡洋艦は艦名入りユニットで、駆逐艦、ロケット発射船、上陸用舟艇までユニット化されている。その上陸用舟艇に陸上ユニットを乗せ、海岸砲台や陣地と射撃し合いながら突破口を開く……のだと思う。なにしろ上陸ルールの分量が多すぎてまだ読めていないが、 第1ターン(つまり上陸時)だけのキャンペーンシナリオがある、というだけでも、かなりの大事になりそうだ。

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1ヘクス=500mのGTS規格で表現すると、カーン市街もこの通り。パンツァー・マイヤーことクルト・マイヤー(当時)SS中佐が観測に用いた修道院の教会も描き込まれているし、マイヤーSS中佐自身も第12SS装甲師団の指揮官としてカウンター化されている。

他にも、イギリス空挺師団の目的地ペガサスブリッジやメルヴィル砲台、ソード海岸に面した街ウィストレアムのカジノ等、戦史でお目にかかった地名をGTSスケールで探して眺めるだけでもかなり楽しい。

擲弾兵―パンツァーマイヤー戦記 (学研M文庫)

擲弾兵―パンツァーマイヤー戦記 (学研M文庫)

 

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カウンターシートは16枚にも及び、カウンター総数は2800個を越える。

GTS基本ルールがver2.0に更新されたことに伴い、ユニットの能力値にも変化が見られる。たとえば新たな火力タイプとして登場した「軽迫撃砲」(ユニット左上の紫ボックスの数値)は、迫撃砲と言いつつ射程1で弾幕も発生させない。その代わり基本ルールで禁じられている「師団活性化チットでの第1アクションでも射撃可」という便利能力を付されている。この「軽迫撃砲」は連合軍歩兵のみに見られ、ドイツ軍には皆無であり、戦術ドクトリンの差も表現しているようだ。

ちなみに連合軍として登場するのは、イギリス第3・第50・第51歩兵師団、カナダ第3歩兵師団、イギリス第6空挺師団、イギリス第7機甲師団、もろもろのイギリス機甲旅団、海兵コマンド部隊といったところか。また各歩兵師団には、イギリス第79機甲師団・通称ファニーズの変わり種工兵戦車(地雷除去用戦車シャーマン・クラブ、290mm迫撃砲装備チャーチルAVRE)も配属されている。

イギリス第50歩兵師団には、連合軍唯一の実名英雄、スタンリー・ホリス曹長(たった一人でトーチカを占領。コーネリアス・ライアン「史上最大の作戦」にも記述あり)もカウンター化されている。このあたりの戦史ネタを拾うのもGTSの楽しみのひとつだ。

一方、ドイツ軍ユニット。灰色ユニットが装甲教導師団……なのは分かるが、黒ユニットはSS師団ではなく、国防軍の第21装甲師団である。そして青ユニットが第12SS装甲師団。これ、色の配置、逆にできなかったか。昨今、SSユニットを黒くしない=ナチスをカッコ良く表現しない、という縛りがあるのかもしれないが……

ドイツ軍は、上記の3個装甲師団に加えて、第346、第352、第711、第716擲弾兵師団が登場。まあその辺りの3ケタ守備師団はともかく、第21、第12SS、装甲教導師団の指揮能力は恐ろしいほど高く設定され、数値を見ただけでも連合軍の苦戦は必至に思えた。

両軍の部隊編成に関しても、かなり時間をとって調査したらしく、ルールブックの随所にリサーチャーのコメントが多々挿入されている。他にもデザイナーやプレイテスター自身が「なぜこのルールはver2.0でこう変更されたのか?」「このルールは何を意味しているのか?」という疑問にあらかじめ答えており、読んでみるとルール設計の背後にある思想や史実が理解できて、すこぶる面白い。なぜイギリス軍海岸なのに1個だけアメリカ第987野戦砲兵大隊(M12キングコング155ミリ自走砲装備)がいるのか?なぜドイツ軍88ミリ砲なのに間接砲撃能力が与えられているユニットがあるのか?等々、制作陣の楽しいイイワケも満載だ。

とりあえずこれ一作で、優に一年以上は遊べる内容なので、しばらくはいろいろなシナリオを試してみたい。ノルマンディ三部作のオマハ海岸編、ユタ海岸編が出版されるのは、まだまだ数年後だろうし……

※ちなみにGTS第5作は現在プレオーダー中の「Operation Mercury(クレタ島降下作戦)」になるはず。

【Grand Tactical Series】「The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」Day of the Tiger AAR

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昨日は、2016年初のウォーゲーム会。昨年末に続き、FORGER氏と「The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」のヴィレル・ボカージュ戦シナリオ「Day of the Tiger」を対戦させていただいた。

今回はまず自分がドイツ軍を担当。前回同様、第1ターンは連合軍直接命令チットから始まった。イギリス第7機甲師団第22機甲旅団は、あらかじめ下車して213高地からヴィレル・ボカージュ近辺に展開。

対してミハエル・ヴィットマン中尉率いるティーガーI半個中隊は、そのど真ん中に降臨。最初の4アクションによる4回射撃でファイアフライ中隊をずたぼろにしてやろうと思ったが、意外に射撃が当たらず、3個ファイアフライ中隊にCohesionヒットを与えた程度であった。この後、ティーガーI半個中隊は、返す刀でファイアフライ中隊から撃ちまくられ、あえなく除去。

しかし増援で駆けつけた装甲教導師団のIV号戦車中隊が、ファイアフライ戦車中隊1、クロムウェル戦車半個中隊、イギリス歩兵中隊1をそれぞれ一撃で除去し、むしろこちらに乗っているのがヴィットマンなのでは?と言うほど活躍した。

もうひとつのティーガーI中隊も、M3スチュアート2個中隊を吹き飛ばし、213高地に陣取るイギリス歩兵中隊も蹂躙してこれを奪取。さらに高地に隣接するファイアフライ中隊を射撃で制圧したうえ、高地から飛び出して強襲戦闘を挑み、これをも除去した。

しかし調子に乗ったIV号戦車中隊は、不用意にファイアフライ中隊の射撃ゾーン内を移動したため機会射撃をくらってステップロスし、後に除去。これによってがら空きになった213高地にイギリス軍ユニットが飛び込めば勝利……だったが、あいにくそれを成し得る部隊が無く、ドイツ軍勝利となった。

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2時間ほどでプレイを終えたので、続けて陣営を入れ替え2戦目を対戦した。今回もまた連合軍直接命令チットで始まったため、イギリス軍には下車して態勢を整える余裕が与えられたわけだ。とりあえず自分はイギリス軍戦車を少し散らばせてみた。213高地周辺に集めておくと、第1ターンのヴィットマン中尉に全部撃たれてしまうかもしれない……と思ったもので。

しかしやってみるとこの策は失敗。たしかに戦車中隊は生き残ったが、GTSは適正な射撃位置に着くのにも苦労させられるシステムであり、わずか4ターンのシナリオでその時間を取られるのはムダだった。集めれば撃たれる、散らばれば撃てない、という何とも厳しい状況設定ではある。まあ元々ヴィットマン中尉が派手に勝利したシナリオなのだから、それを覆すのも難しいということか。

また今回はイギリス軍セクストン自走砲中隊による間接砲撃によって、ティーガー部隊に弾幕を放ち、目つぶし(弾幕マーカーが乗せられたユニットは射程が1ヘクスに限定される)をしてみたが、たいした効果は得られなかった。連合軍チットが先に回ってきてターン序盤に撃てればいいが、無理して指揮ポイントを使って弾幕を置くぐらいなら、普通にファイアフライ中隊にティーガーIを撃たせた方が良いような。

一応、213高地の北側からRidgeヘクスサイドを介さずに射撃すると、縦隊のティーガーIにもかなりの確率でダメージを与えられることは分かった。戦闘モードの戦車でも進入でき、なおかつ防御効果のあるヘッジロウヘクスから撃つのが最良かと思う。

ただし増援のIV号戦車が背後から来てしまうので、そちらをカバーする部隊も必要になる。今回はM10駆逐戦車を配したが、IV号戦車が射程内を接近しているのにもかかわらず、臨機射撃トリガーに4回失敗して一発も撃てないまま、隣接ヘクスまで迫られるというていたらくであった。

という感じで2戦目もドイツ軍が勝利したものの「Day of the Tiger」シナリオもだいぶわかってきた。イギリス軍が勝つのは難しいが、それでもかなり面白い。

※ゲームを提供してくださったFORGERさん、ありがとうございましたm(_ _)m

鋼鉄の死神

鋼鉄の死神

 

【Wargaming Column】ゆく年くる年2015

ウォーゲーマーとして「ほぼ引退」状態に入ったため、2013年・2014年はお休みした「ゆく年くる年」記事だが、今年は3年ぶりに書いておこう。

2014年は購入ウォーゲームわずか2個+1冊だったが、2015年に至ってはとうとう1個+2冊にまで減ってしまった。さらに去年に引き続き断捨離的にウォーゲームの処分を進め、コレクション総数としては全盛期の半分近くにまで減らせたと思う。今年はとうとうTCS(Tactical Combat Series)にも見切りをつけ、ほとんど手放してしまったし、ウォーゲームの購入数・所有数だけ見れば「ほぼ引退」状態が進んでいるようにも思える。

ところが6月以降、仕事で急ブレーキがかかったため、思いがけず自由な時間ができてしまったのだ。だったらこの機会にと、積んだままだった「France'40」、今年買った唯一の新作「Ukraine'43 2nd」、ここ数年の懸案シリーズ「Hurtgen:Hell's Forest」と「Wacht am Rhein 2012」、時間がかかるからと敬遠していた「OCS:Hube's Pocket」などをゆっくりソロプレイできてしまった。このBlogの年間記事数を見ても、急激に落ち込んだ2014年(たった13記事)からV字回復したように見えるし、ここまでくれば「ほぼ引退」と言うより「ほぼ復活」状態なのかもしれない。

今年購入したゲームも1個のみだが、一応まだ物欲もあり、先日プレイした「GTS:The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」は勿論、「OCS:Beyond the Rhine」「ASL:Hakkaa Paale」あたりは入手したいと思っている。来年以降の新作でも「GTS:Operation Mercury」「ASL:Yanks 2nd」「ASL:Forgotten War(Korea)」「OCS:Tunisia II」「OCS:Sicily II」には惹かれている。

そう、欲しいのはGTS、OCS、ASLといずれもシリーズゲームなのだ。いろいろ処分する中で最後まで手元に残ったのもこのシリーズだったし、結局これらが本当に好きなウォーゲームなのだろう。

1999年から始まったウォーゲーム再収集は、知見を広げる意味でも様々なタイトルに手を出したが、もうそういう時期は終わったのだ。だからこそここ数年の断捨離で、中途半端に興味のあるゲームを手放し、自分のスイートスポット的なゲームだけを選別したのだろう。そのコレクション再構築作業もようやく終わり、この2015年後半から、点数を絞りこんでプレイする、新しいウォーゲーマー・ライフが始まったのかもしれない。

まあ自分でも、まさか今年こうなるとは思わなかったので、2016年もどうなるかは未知数である。しかし引き続き「ほぼ引退」と言い張りつつ、自分の好きなシリーズゲームばかり遊ぶのだろう多分。

というワケで今年遊んでいただいた皆様、どうもありがとうございました。

2016年も引き続きよろしくお願いいたしますm(_ _)m

【Grand Tactical Series】「The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」The Black Baron / Day of the Tiger AAR

MMP「The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」

GTS(Grand Tactical Series)第4作「The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches(以下TGD)」(1944年6月のノルマンディ上陸作戦~上陸後一週間のイギリス軍戦区を扱う)はまだ未購入だが、N村氏がカウンター(総数約2800!)をすべて切り、FORGER氏と対戦に漕ぎ着けたうえ、ありがたいことに練習プレイにも誘っていただいた。ということで昨日、秋葉原イエサブにて「TGD」に初めて触れることができた。GTS基本ルールもver2.0に変わっており、そのあたりの感触も確かめつつ、である。

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まずはN村氏+FORGER氏インストのもと、練習シナリオ「The Black Baron」をHA氏と対戦。こちらはドイツ第101SS重戦車大隊のエース、ミハエル・ヴィットマン中尉の活躍で名高い1944年6月13日のヴィレル・ボカージュ戦を模したミニシナリオである。道路上にずらりと並んだイギリス第7機甲師団第22機甲旅団に対し、ヴィットマン中尉指揮のティーガーI半個中隊と、同じく第101SSのティーガーI中隊が攻撃を仕掛ける形で、わずか1ターンのみだ。チット順も、(第101SSが所属する)第12SS装甲師団チット、ドイツ軍直接命令チット、イギリス第7機甲師団チットの順で活性化するよう決められている。

GTSでは基本、活性化したユニットは移動や射撃などの1アクションを行い、指揮範囲にあれば追加Commandポイントを払うことによって二度目の活性化=第2アクションが行える(ただし第1アクションと同じ行動は行えない)。

ところがヴィットマン中尉に関しては、登場した瞬間に4アクションが可能で、しかも同じアクションをしても良いという。つまり射撃を4回行っても良いわけだ。さらに部隊練度チェックも自動成功するそうで、まさにヴィットマン無双!状態である(ただしシナリオでヴィットマン中尉マーカーが使えるのは1ターンのみ)。

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今回はGTS初心者のHA氏にドイツ軍を受け持ってもらったが、さすがヴィットマン、鬼のように凶暴な射撃を連発し、次々イギリス軍ユニットにダメージを与えていく。

ところがヴィットマン中尉、M3ハーフトラックに乗ったイギリス軍歩兵ユニットを強襲(同一ヘクスに進入して互いに撃ち合う)した際、小火器射撃を受けて2Cohesionヒットをくらってしまった。ティーガーIユニットの装甲値-5は、被弾率を50%下げるほど頑丈なのだが、そこはGTS。どんなに不利な射撃でも、10面体ダイス目「0」が出れば何らかの被害が生じてしまうのだ。ヴィットマンが駆るティーガーIは、1ステップしかないため、3ヒットをくらうと除去されてしまう。あわてて2アクションを使って回復したが、さらに小火器射撃で1ヒットを受け、恐るべきイギリス歩兵の逆撃をくらう格好となった(つまりイギリス軍担当の自分が射撃ダイスで「0」を3回出した)。

一応、シナリオ勝利条件であるイギリス軍4ステップ除去は達成し、213高地ヘクスの占領も達成したため、ドイツ軍勝利(最後にM3スチュアート戦車が213高地に滑り込もうとしたがあえなく制圧)。しかしヴィットマンの意外な不甲斐なさに「こいつ偽物では……」との声も上がったり。

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気を取り直して、同じくヴィレル・ボカージュ戦を扱った導入シナリオ「Day of the Tiger」(ハーフマップ、4ターンのみ)を対戦。担当は同じく自分がイギリス軍、HA氏がドイツ軍である。

シナリオはまずイギリス第22機甲旅団が盤端から登場し、ヴィレル・ボカージュと213高地に入る所から始まる。今回はその後、連合軍直接命令チットが引かれたため、歩兵は街中と高地に下車したが、この状態が初期配置のようなものである。

次に第12SS装甲師団チットが引かれると、先ほどのヴィットマン中尉+ティーガーI中隊✕1.5個が、イギリス軍ユニットのいないヘクスに忽然と現れるという恐ろしいシナリオなのだ。先に書いたようにヴィットマン中尉マーカーは1ターンのみで消えてしまうが、それでも射撃に適した位置に現れるや、またも鬼のような連続射撃でファイアフライ戦車中隊を1個除去、1個制圧、1個にヒットを与えた。ドイツ軍は213高地を守っていたイギリス歩兵も全滅させたが、森ヘクスの故に、ティーガーI中隊も縦隊(火力が落ち、撃たれやすくなる)にならねば進入・占拠はできず、しばらく空いたままとなった。

これに対しイギリス第22機甲旅団は、ヴィレル・ボカージュの街に籠もる歩兵に陣地を築かせ、後方に控えていたファイアフライ戦車中隊ユニット✕3に射撃や視認に不利なRidge地形を迂回させ、213高地の北側へ送り込んだ。

またイギリス軍は、ティーガーI中隊に隣接しながらも運良く生き残ったファイアフライ中隊とM3スチュアート中隊、さらに3ヘクス先のM10駆逐戦車でちくちくと射撃を繰り返した。しかしRidgeヘクスに陣取ったティーガーIは堅く、ファイアフライ中隊が中隊ボーナスを得て火力を2上げて隣接ヘクスから射撃しても、当たりは10面体ダイス「1」以下である。無論、M3スチュアートと3ヘクス離れたM10駆逐戦車に至っては、当たり目「0」のみ。もう「0さえ出ればいいんだ0出れば」精神で撃つしかないのだが、これが意外と当たってしまい、ティーガーI中隊に2ヒットをくらわせた。

当然、ティーガーIも猛反撃。逆にこちらの射撃は「ダイス目9さえ出なければ中隊ボーナスが入って火力+2」「ダイス目9さえ出なければ当たり」「30%の確率で一発で戦車1個中隊が吹き飛ばせる」ほどの威力なのだが、まず成功するであろうダイス判定なので、Commandポイントを支払って自動成功させるまでもない……という時に限って絶対失敗の「9」が頻発した。おかげで貧弱なM3スチュアート中隊がいつまでも生き残り、ティーガーIの注意を引き続けてくれた。

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今回はルール間違いもあったので、3ターンまで進めてゲーム終了。一応ドイツ軍はまだ213高地に入れていないが、増援のIV号戦車、対空砲車輌中隊も来ており、イギリス軍の苦戦は必至である。

まあ練習・導入用シナリオとして「The Black Baron」も「Day of the Tiger」も非常に面白いと思う。ヴィットマン中尉にしろヴィレル・ボカージュ戦にしろWWII戦史ファンには馴染みだろうし、無双ルールもばかばかしくて良い(褒め言葉)。

ヴィレル‐ボカージュ―ノルマンディ戦場写真集

ヴィレル‐ボカージュ―ノルマンディ戦場写真集

 

またGTSver2.0についても、ずいぶんver1.0とは変わったなあという印象だ。目についた点をざっと上げると、強襲手順(勇敢チェック必須、3ラウンド制から2ラウンド制に)、独立部隊の活性化方法(各指揮官に活性可能な独立ユニット数値が記されるようになった)、射撃修整値、盤上からの間接砲撃禁止などなど、細かいマイナーチェンジばかりだが、このver2.0をそのまま「The Devil's Cauldron」「Where Eagles Dare」「No Question of Surrender」には適用できないと思う。やるならユニット数値の見直しも必要になるだろう。

そのためOCSのように基本ルールがバージョンアップされたからといって差し替える必要はなく、旧3作はそのままGTSver1.1で遊び、本作以降はver2.0で遊ぶという、並行して存在する形になるはずだ。近々再版される「The Devil's Cauldron」が特に変更点も無くGTSver1.1を添付されて発売されるのも、そういう意味なのだ。自分も来年は本作を手に入れ、GTSver2.0の研究を深めていきたい。

※ゲームを提供してくださったN村さん、インスト役のFORGERさん、ありがとうございましたm(_ _)m

【Grand Tactical Series】「The Devil's Cauldron」 A Bridge too Far AAR

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昨日は、Karter氏と2015年最後の自宅ゲーム会。来年もGTSを遊ぼうということで、久しぶりに「The Devil's Cauldron」の「A Bridge too Far」シナリオを対戦した。GTSはあれこれ遊んでいたものの「TDC」に触れるのは2012年3月以来である。

今回はKarter氏がドイツ軍を担当。ナイメーヘンから出撃したイギリス第43歩兵師団第214歩兵旅団サマセット軽歩兵大隊を迎え撃つべく、第10SS装甲師団クナウスト戦闘団の戦車隊を前のめりに配置してきた。時間の都合で3ターンしかプレイできなかったため、オーステルハウト近郊での戦闘のみ記しておく(ポーランド空挺旅団vs第9SS装甲師団の戦区にはほとんど動きが無かった)。

まず第1ターン(1944年9月22日0900時ターン)、サマセット軽歩兵大隊の露払いを務める装甲車中隊がオーステルハウトに立て籠もるSS守備隊へ発砲。これがラッキーヒットとなり、一撃で最初の陣地を吹き飛ばした。しかしダイス目が良かったのはこの時だけで、第43歩兵師団はチットを購入するDispatchポイントが減るアクシデント(ダイス目9)を出す始末。早くも師団運営に暗雲が漂う……

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第2ターン(1100時ターン)。ドイツ軍クナウスト戦闘団のIV号・III号戦車中隊が果樹園に隠れながら前進。イギリス軍のM4シャーマン戦車中隊と撃ち合うも、お互いなかなか決定打が出なかった。クナウスト戦闘団は、後方のネーヴェルベルファー・ロケット砲中隊などと連絡をつけ、阻止砲撃を放つも、連絡途絶(砲撃ダイス目9で発生)も頻発。一方の第43歩兵師団も、わざわざ師団砲兵チットを投入したにもかかわらず、真っ先に来て欲しかったのに、最後の最後にカップから引かれるという運の無さ。

それでもサマセット軽歩兵大隊は、オーステルハウトで二つ目の防御陣地を強襲してこれを粉砕。M4シャーマンと17ポンド砲?半個中隊で、どうにかクナウスト戦車隊を食い止め、善戦していた。

しかし第10SS装甲師団も、2ターン連続してDispatchポイントを2ずつ増し、余裕でクナウスト戦闘団チットを投入してきた。

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第3ターン(1300時ターン)。このターンは、ドイツ軍直接命令チットから始まり、Commandポイントを使い切る形で終わったものの、すぐさま第10SS装甲師団チットが来てCommandポイントが補充され、さらにまたクナウスト戦闘団チットが引かれるという、 怒濤のドイツ軍3連続活性化、鬼のような猛攻で始まった。

クナウスト戦闘団はこの機に、温存していたティーガーI中隊を前線に投入。頑丈な装甲値-4を頼りに平野に飛び出し、M4シャーマン中隊を狙い撃ち、がしがしとダメージを与えていく。続けてIV号戦車中隊がM4シャーマン中隊に強襲をかけたが、一発も当たらずあえなく敗退。IV号戦車中隊は、連続活性化を活かして再度強襲をかけたが、ここでも一発も当たらず、むしろステップロスに追い込まれて敗退した。粘るM4シャーマン中隊に対し、ドイツ軍はネーヴェルヴェルファー・ロケット砲を撃ち込み、ようやくこれを全滅させたが、むしろ1ユニットでこれだけの戦力を引きつけたM4シャーマン中隊こそ善戦したと言うべきか。

一応サマセット軽歩兵大隊は、オーステルハウト最後の陣地を潰して、街を制圧したが、支援のM4シャーマン中隊を失い、かなりのピンチである。後方に増援のコーンウォール歩兵大隊も来ているが、そちらにも戦車は無し。第4ターン(1500時ターン)になれば、M4シャーマン中隊✕2、M3スチュアート中隊✕1が来てくれるのだが……というあたりで時間切れ、プレイ終了となった。

このシナリオは何回かプレイしたが、今回のようにドイツ軍戦車が前のめりに来たのは初めてだった。もしかするとドイツ軍としてはコレが正解なのかもしれない。序盤のイギリス軍には戦車が少ないため、優位に戦闘を進められると思う。

今回、ドイツ軍はチットの流れこそ良かったものの、ダイス目にはずいぶん祟られていたと思う。かなりの通信途絶が起きていたし、IV号戦車の強襲2回失敗(射撃ダイス12回が失敗)も、イギリス軍にとっては僥倖だった。そういうプレイの振れ幅もまたGTSの魅力だと思う。

【参考文献】コリン・グレイ「現代の戦略」

現代の戦略

現代の戦略

 

アメリカのレーガン政権でアドバイザーも務めた戦略思想家コリン・グレイの「現代の戦略」を購入。小規模紛争、核兵器、サイバー戦争、スペースパワーといった現代戦争の側面にも触れつつ、クラウゼヴィッツ学派として普遍的な戦争論理を見いだしていくという姿勢を取っている。そのため、もはやクラウゼヴィッツ的な国家間の通常戦争は薄れていくと主張しているマーティン・ファン・クレフェルトや、戦争文化に傾倒したジョン・キーガンの著作に対して異を唱えている箇所も多々あり。まあ、これくらいハッキリと、学派の違いを主張してくれると、読んでいる方としても気持ちが良い。個人的には、クレフェルトが推す低強度紛争や、キーガンが推す戦争文化よりは、昔ながらの通常戦争の方に興味があるので、本書のような立場から戦略を語ってくれる方が楽しめる。もちろん本書でも、低強度紛争や戦争文化にも言及しているが、軸足はそちらではない。

昨年、日本語版が出たルトワックの「戦略論」(グレイは、本書も推している)も面白かったが、こちらはそれをさらに上回る内容だと感じている。今のところ、これまで読んできた現代戦略書の中ではイチオシ。これから、折に触れて読み返すだろう。