Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退したウォーゲーマーの置き土産

【Operational Combat Series】「Smolensk : Barbarossa Derailed」

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プレオーダーしていた、OCS(Operational Combat Series)の第17弾「Smolensk:Barbarossa Derailed」が到着。本作は、その名の通り、1941年7月8日~9月8日にかけてのスモレンスク周辺の戦闘を扱っている。なんとなくOCS版「Panzer Gruppe Guderian」といった趣である。

本作は、フルマップ1枚と手頃だが、同じく1マップの「OCS:Reluctant Enemies」はシリア戦線というお題がマイナーだったし、やはり1マップの「OCS:Sicily II」は陸海空の統合作戦が味わえる反面、航空・海上ルールの比重も高く、敷居の高さがあった。その点、本作は陸上戦闘メインだし、ウォーゲーマーには知名度のあるテーマなので、OCS入門者には一番向いているかもしれない(本作のみの特別ルールも、たった4ページしかない。慣れていれば直読みでイケるレベル)。 

そしてこの「Barbarossa Derailed(脱線したバルバロッサ)」というサブタイトルは、日本でも「詳解 独ソ戦史」でお馴染みのDavid.M.Glantzの著作から取られていると思う。この著作、スモレンスク戦だけで4分冊という大ボリュームなのだが(自分も全部は読み通せていない)、実はドイツ軍のソ連侵攻・バルバロッサ作戦は、開戦序盤の、このスモレンスク戦から脱線していた、綻びが見え始めていたという解釈で書かれている。ソ連軍は、大規模な反撃には成功しなかったし、スモレンスクも奪われてしまうものの、各地で果敢な反撃を見せ、ドイツ軍の電撃突破を封じて『フランスとは違うのだよフランスとは!』と思い知らせたらしい。またドイツ軍は、鉄道のゲージ変換の遅れに伴う補給の遅延にも苦しんだようで、そのあたりの解釈が本作にも反映されているようだ。他にもスモレンスク戦に関しては、David.Stahelの著作も参考になると思う。 

Operation Barbarossa and Germany's Defeat in the East (Cambridge Military Histories)

Operation Barbarossa and Germany's Defeat in the East (Cambridge Military Histories)

 

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1枚のみの地図盤は、オルシャ~スモレンスク~ヴィヤジマに至る街道を中心に。「OCS:Guderian's Blitzkrieg II」の地図盤と繋げてみると、モスクワが遙か彼方に…… 

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こちらは、ドイツ軍のカウンターシート。「OCS:Guderian's Blitzkrieg II」とほぼほぼ同じなので、特に目新しい部分は感じず。しかしこれだけ強力な装甲師団ユニットがあっても、各ターンに届く補給ポイントは、ゲーム前半(8月19日以前)で平均7、後半になると平均3と目も当てられなくなる。このあたりも、ドイツ軍が、早くもこのスモレンスク戦の時点から補給に苦しんでいたという解釈の反映だろうか。

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驚いたのは、ソ連軍に複数ステップの戦車師団ユニットが登場し、20~14戦力が与えられていること。「OCS:Guderian's Blitzkrieg II」では、6戦力の戦車旅団か、4戦力の戦車大隊ばかりで、正直、反撃する気も起きない能力値だったが、これなら一応、戦力だけはまともに見える(AR=アクションレーティングは、相変わらず低い1のままだが)。もちろん、いくら戦力が高くても、さすがにAR1では単独で反撃する気にはならないが、AR3のオートバイ連隊と組み合わせれば『ワンチャンあるかも?』と思えるかもしれない。いやそれよりも、AR4の精鋭NKVD国境守備隊の上にこの戦車師団を置いて隠し、攻めてきたドイツ軍にはAR4で逆撃を……

そう言えば田村尚也氏の「各国陸軍の教範を読む」でも『ソ連軍はスモレンスク戦で、整然とした攻撃をしようとしても無理だったが、これを遭遇戦と捉えて、損害が出ても良いから、とにかくドイツ軍装甲師団の足止めをした』と書かれていたが、そういった徒花的な攻撃を仕掛けるためにも、この戦車師団ユニットが必要なのだろう。恐らくARの低さから、ソ連軍の攻撃はほとんど失敗に終わるだろうが、そこはOCS、どこか一カ所ぐらいは思わぬところで反撃に成功する可能性も微かに……

各国陸軍の教範を読む (ミリタリー選書 38)

各国陸軍の教範を読む (ミリタリー選書 38)

 

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予告通り、60個以上のOCSシリーズ訂正カウンターが付属。 

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OCSの基本ルールは、v4.3に更新。大きな変更はなく、明確化とエラッタの反映が主のようだが、まだ細かい部分は未確認。チャートもレイアウトが変わったが(青い……)、こちらも数値的な変更は無いと思う。太字を多くして読みやすくしたのは、OCSプレイヤーの高齢化に対応したのかも?

収録シナリオは、導入用の「Vitebsk」(1ターンのみ)、フルキャンペーン(19ターン)、ショートキャンペーン(8ターン)含めて、7本。個人的には、OCSであまり短いシナリオはやる気がしないので、とりあえずショートキャンペーンから味見をしてみようと思う。